真実を暴く者

◆ オーレリアはかく語りき ◆


 ターラッシュより西の王国、砂漠の国ステラヴェルチェ王国。オーレリアはステラヴェルチェ王国の末姫として生まれた。この砂漠を治める現国王は病を患っており、出来れば早々に……子供達の誰に玉座を譲るのが相応しいかを見定めたかった。

 オーレリアは14歳、オーレリア自身は『自分が国王になるのは荷が重い』と真っ先に争いから身を引いた。しかしオーレリアは才女であり、この砂漠の国では大変珍しい大規模な水属性魔術の使い手でもあり、その魔力も豊潤であった。頭もよく切れる。それ故か影では『身を引いたと言いながら虎視眈々と玉座を狙っている』と噂され、あろうことかこれまで仲の良かった兄弟姉妹達に敵視されることとなる。

 ある日、オーレリアの寝所を暗殺者が襲った。しかし暗殺は失敗、オーレリアの魔術によってその身を切り裂かれ絶命した。しかしこれが――――2つ上の兄、ディティリッヒだった。


『オーレリアは夜遅くにディティリッヒを寝所に入れ、騙し討ちをした』


 上二人の姉妹は口を揃えてそう言った。オーレリアは兵士に囲まれ捕らえられ――――なかった。オーレリアを慕う近衛騎士達はオーレリアが逆に騙されたと信じ、彼女を逃がすべく夜の王宮を脱出した。砂漠で追っ手を躱したものの、ターラッシュまで辿り着くも包囲網は敷かれ、更には見つかってしまい……。それでも疲れ果てた身体に鞭を入れて歩き続け――――追っ手を撒くのにのにちょうどよい森へと姿を隠した。

 見事に追っ手を撒いた一行は南を目指すことにした。海路を使って他国へ逃れればと、ローレイを目指すことにしたのだ。しかしそれは叶うこと無く、森で一行は命を落とすことになる……。




◆ ◆ ◆




「長兄、カシュパ……ねえ」

「兄は、カシュパは、ステラヴェルチェで黒魔術と呼ばれる魔術を学んでおりました。ご主人さ」

「リンネお姉ちゃん」

「リ、リンネお姉ちゃん様の扱う、闇魔術と同じようなものだとおもいます。人の心を操り、病を振り撒く。カシュパは二人の姉の心を操り、そして私達をあの森で待ち伏せして…………体が動かなくなって、皆血を吐き出して、毒だと、思います……。一人ずつ、一人ずつ倒れて……!!」


 オーレリアちゃんの死の真相は、実兄によって闇魔術で殺されたという理由だった。どうやら毒系の闇魔術とか、精神支配系の闇魔術が使えるらしい。多分位置を割り出して襲ってきたってことは、何かしら位置を知れるスキルも持ってるか、他に誰か協力者が居たか……。


「しかし、犯人が判っても証拠がなあ~。なんとかしてあげたいけど、ペルちゃんの話では今はそのステラヴェルチェの王はカシュパなんでしょ? 厳しいよねぇ」

「カシュパはこのローレイを華胥の夢が制圧した後に訪れましたわ。教会がどうだとかなんだとか騒いで、高圧的で如何にも悪役って面をしてましたわ……あ! そういえば、異端審問官をしていた時にカシュパに対して【処刑すべし】というスキルがアクティブになりましたから、相当にカルマ値が低いのは確定ですわよ。マイナス200は超えてますわね」

「そういえばカルマ値って何?」


 ところで、カルマ値っていうのがプレイヤーやNPCに設定されていて、この数値がプラスで高い程善良な行いをした、マイナスで低いほど極悪非道な行為をしたって判定がされるらしい。窃盗、殺人行為、その他犯罪とされる各種を行うとこの数値がもりもりと下落していって、マイナス100を超えた辺りから教会の『執行官』、『異端審問官』に狙われるようになるらしいけど、他の要因で下がったりもあるらしい。で、この値がマイナス200を超えてると異端審問官は処刑コマンドが使えるらしくって、カシュパはマイナス200を下回ってたみたい。


「…………誰基準から見て良い行い、悪い行いなんだろうね、これ」

「女神メルティス側に褒められる様な行為をした場合はプラス、逆ならばマイナス、なんて説もありますわ。どちらかというとこっちのほうが有力だと思いますわよ? だってわたくし達、下限のマイナス500ですもの」

「え゛っ゛」

「えっ、気がついていませんでしたの?!」


 今確認したら、うん……。マイナス500だった。大罪人だって。PKしすぎたせいかな……?


「メルティスの天使を殴り倒したんですもの、当然ですわね。上がる要素ないですわよ」

「…………あー。天使だから善良なのあいつ? はー? ムカつくムカつく、なんで天使が善って決まってるの? すっごい腹立つんですけど」

「プレイヤーに平等に成長する機会と手段を与えて導く、十分褒められることをしている存在ですわよ。それを殴り倒したのですもの、お互い。ね?」

「ぐぬぬ……」


 天使に対するヘイトはとりあえず置いておいて……。オーレリアちゃんの仇敵であるカシュパに関してだけど……。


・カシュパは恐らく優秀な兵を抱えていて、位置を探知出来るようなスキル持ちの相手が仲間にいる

・聞いた感じカシュパの計画は結構ガバガバ、ゴリ押しで王の座を手に入れたように感じる

・多分姉二人は操られてるだけ? 確証なし

・カシュパは闇魔術を使う? 毒か、もしくは呪いの可能性もあるけど、スリップダメージ系が使えると思った方がいい。その他にも何か攻撃方法があるはず

・今現状、カシュパを殺すことに対して正当な理由がない。殺るなら闇討ち確定

・堂々と証拠を突きつけても厳しそう。無かったこと、揉み消されてこちらが不利になりそう


 残念ながら現状手出しし辛い。それに申し訳ないけど、メリットがない。カシュパを殺して、クエストクリアしてハイ終わりーでは、どうにも腰が上がらない。オーレリアちゃんには申し訳ないけど、過去は忘れて新しい人生を歩んで貰った方がこちらとしては嬉しい。


「オーレリアちゃん。残念だけど、カシュパを殺すメリットが私にないんだよね。一国の王を殺すって、相当な覚悟が居ることだから」

「長兄カシュパは、封印の間には入れました。でも宝物殿は開けられないんです! リンネ、お、お姉ちゃん様のそのネックレスと私が揃わないと、開かないんです!」

「ほう、続けて」

「あ、あら……?!」

 

 なるほど、宝物殿。ふむふむ? 続けてオーレリアちゃん。


「そ、そこの宝物殿には! 歴史ある偉大な財宝が眠っています! 仲良しだったディティリッヒお兄様を私の手で殺させ、私の騎士を皆殺しにして、あの様な森で無惨に殺したカシュパを、憎きカシュパを殺して頂いたら、財宝! 全部、持っていっていいです!!!!!」

「…………ほう!」

「いけませんわ、一国を滅ぼす行為でしてよ……。ローレイのように海賊から開放して制圧したのとは訳が違いますのよ……?」

「ステラヴェルチェには、魔剣に纏わる財宝の話も、聞いたことがあります!」

「魔剣!!!!! ええ、ええ! なるほどなるほど!?」

「時期が来たらやろうね! ペルちゃん!」

「やりましょうねえ!? ええやりましょう! 戦力を上げて、カシュパの首を落としますわよ?!」

『きゅぅ~ん……(このふたり だいじょうぶかな……)』


 ステラヴェルチェの宝物殿! これは、やるしかあるまい。やるしかあるまいて……。鍵をこっちが持ってるなら、開けに行く資格がある、あるよねえ?! あるんだよ!


「50レベルぐらい? アンデッドも後2体欲しいかも」

「もっと進化させたいですわね! ☆3進化もあるのでしょう?」

「うん、どん太もオーレリアちゃんも、次が☆3素材系だから☆3進化で合ってると思う」

「レベリングですわ……! あ! まずは鑑定と、それからどんちゃんのごはんを」

『わうぅ!! (ごはん!?)』

「ごはんだけ言葉を覚えたな、お前……?!」

『わんっ!! (覚えた!)』

「あらあら、ご飯って言葉を覚えましたのね? 偉いわ、偉い! よしよしっ!」


 よし、落とそう。ステラヴェルチェ。そのための準備を進めよう……。ゲームなんだからやりたい放題やらなきゃ、クエストだって【オーレリアの仇討ち】に名前が変わってるし、ゲーム側からも『行け行け、やれやれ!』ってお墨付き! 殺るしかありませんねえ!

 

「じゃあギルドハウスに帰りましょう! ギルドハウスポータルを出しますわよ」


 何っ! ギルドハウスに帰るのは、そんな便利なポータルがあるんか! なんで最初っからこれ出してくれなかった?!


「ギルドメンバーしか入れないのでしたわ! オーレリアちゃんとどんちゃん、入れるかしら……」

「どん太、このぐにゃーーってなってる次元扉の中に入って」

『わう(わかった!)』


 なるほど、ギルドメンバーしか入れないのか。開いた瞬間に部外者がギルドハウスに押入れないようにしてあるのかな。良い措置かも。あ、どん太入れた。オーレリアちゃんも入れたわ。


「じゃあ、失礼して……」

「無事に入れましたわね、よかったですわ!」


 あっ……どん太が最初に入ったから、ギルドハウス内でビックリされるんじゃ……。


「うぉおおっほおおぉぉお?! なんだこのでっかいわん公?! もっふもふじゃ!」

「あ、どんちゃんおかえり~~。じゃあリンネさんも一緒だあ!」

「おう! 来たか! 待ってたぜ」

「リンネさんと初顔合わせの方もいらっしゃいますわね。皆様! 新入りのリンネさん、わたくしのお友達でしてよ! よろしくなさって?」

「うっひょぉおおぉぉぉおお~~~!! もっふもふわん公いいなぁ~~! どんちゃん? どんちゃんっていうのお前、どんちゃ~~~ん!!! もっふもふじゃなあぁ~!」

『わうぅうぅぅ~~~(なでなで 上手だよ この人!)』

「レイジさん! 人様のペットに失礼でしてよ!!!」

「うぉ、わりっ!! レイジや! 職業はサムライっ! 天使のサポート断って教会も入っとらん! よろしくのう!」

「ょ……しく…………」

『わんっ!!』


 早速どんちゃんがもふもふ好きに愛されてた。レイジさん、侍なんだ。確かに、刀持ってるけど……。素人には使いこなすの大変だって、よく聞くけど大丈夫なのかな。


「レイジさんはこのギルドのサブマスターでしてよ。わたくしと同じですわね」

「サブマスター、2人居るんだ……」

「いーや、5人居るぜー! 一番の有名人がそこのペルセウスお嬢さんなだけでな!」

「活動時間帯が微妙に違いますのよ。だから5人」

「なるほど……」


 レイジさん、サブマスターなんだ。活動時間帯が微妙に違う5人を置いて、スカウトとか管理とかをしあってる感じなのかな…………。あれ? オーレリアちゃんどこ行った?


「ねえねえねえ、こっちのアバターのほうが可愛くない?!」

「店売りの魔女ローブじゃ物足りないから、グレートウィッチドレスにしましょうよ~!」

「はわわわ……」

「この裏地が赤い三角帽子のほうが可愛くない!? 儚げな金髪が、映える~~~!!」

「じゃあドレスの内生地染める? 赤に染めちゃう?」

「こっちは黒黒で良くない? ワンポイントにして金髪が目立つようにしたほうが可愛い!」

「黒猫ヘアピンとかつけていい? ほら、おで娘! おでこが出て超可愛い女の子!」

「金髪、赤眼、すぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~…………高水準高品質なヨウジョニウムが体に染みる…………」


 …………ギルドのお姉さま方に捕まってた。はは、はは……めっちゃ着せ替え人形にされてる……。あれ、おでこの『目の模様ステラヴェルチェ・プリンセス』はどこに消えた? もしかして秘匿出来る? ああ、そういえばさっきポータルに入る前には既になかったかも。よかった、一発即バレは無かったか。

 もしバレたら、最終的に財宝山分けの取り分が減っちゃうところだったぜぇ……へっへっへっへっへ…………。


「リンネさん、素敵な幼女様を連れてきたけど、こちらの幼女様は、どなた?!」

「おねえちゃ、たすけ……」

「オーレリアを、可愛がってあげてください……」

「…………オーレリアちゃんって言うのね?!」


 オーレリアちゃんは14歳だけど、実はリトル・ウィッチになった時に9歳ぐらいまで若返って生き返ってる。なので中身は14歳だけど、外見は9歳っていう違法幼女だ。14歳で可愛い可愛いってもみくちゃにされるの、結構恥ずかしいよね。


「――はい、幼女が居ると聞いて別チャンから飛んできました~」

「エリス! どう、オーレリアちゃん! 新入りのリンネちゃんの妹ちゃんなのよ?!」

「NPC……です……。あるクエストで……仲間に、なりまして……」

「クエストでNPCが従者になるとかあるのーーー!? それも、こんな超絶可愛い幼女が?! アーーーーーーーー私がクリアしたかったぁああああ………………!!!!!」

「だからクエストは積極的にやれって言ってんの」

「でもクエスト面倒くさいんだもーーん!! あ、オーレリアちゃんお菓子食べる?! ハッゲが焼いたクッキー取ってこよう!」

「あら、わたくしもハッゲさんのお料理が出来るまでこちらにご一緒しますわ。オーレリアちゃん、飲み物もありましてよ?」

「はわわわわわ…………」


 あっちは、うん。放置しておこう。オーレリアちゃんはペルちゃん達お姉さま軍団にまかせて、どんちゃんは……もふもふ愛好家のお兄さん達に任せておいて……。それより先に、お昼寝さんに相談しておかないと。


「お昼寝さ~ん……居ますか~……?」

「あ、起きてるよ~~~。リンネちゃんだ~どうしたの~?」


 ギルマスルームに入ると、お昼寝さんがまだログインしてた。というより、居ますか~? に対しての返事が起きてるよ~ってことは、居るけど起きてないこともあるのね。まあ居たなら好都合、相談相談……。


「実は、うちのペットと従者をギルドハウスに置いてもいいかの相談でして……」

「ああ~。どん太くんと、さっき入ってきたオーレリアちゃん? NPC系だからログアウト中待ってるようになっちゃうのか。いいよ~? もし餌代とか置いていってくれたら、誰かしらが与えておくかも」

「餌代……。後で、捻出出来る分、確かめておきます……。ありがとうございます……」

 

 よし、どん太とオーレリアちゃんのログアウト中の安置を確保出来た。一応このゲームリアルタイムで進行してるから、従者の安置どうしようって悩んでたんだよね。良かった、確保出来て。


「あ~い。それにしてもさ、ねね、リアルでもそれなんだよね?」

「それ……?」


 ん……。それ、とは……?


「これ。やっぱり重い? お湯に浮くって本当?!」


 あ~~~~~~!!! む、胸……。初対面から見られてたけど、この人胸が好き過ぎるでしょ……。セクハラですよ、セクハラっ!


「お、重いですし、まあ、浮きます、けど……」

「うっひょおおおお~~~~本当だったんだ、自分ので確認出来ないから都市伝説かと思ってた~~~~!!! こっちでも、重いの?!」

「そういえば、こっちでは……重くない、ですね。そんなに重さは感じない、です」

「なるほど、そういうのは反映されないのか……? それとも身体能力が強化されてるこっち側だからそれを反映してる……? そんなにってことは、ちょっとは感じるし邪魔にはなる可能性が…………。うんうん、ありがと! 転生したら爆乳にしようか悩んでたんだよね!」

「そ、そうですか……。じゃ、じゃあこれで……」

「うんうん! ありがとねぇ~~~~…………ふへっ……」


 ぐぬぬ、やっぱりペルちゃんを連れて挨拶に来ればよかった。悪い人じゃないんだけど、コンプレックスをずかずかと踏み込まれるとちょっと、もやっとする……。


「あ! リンネさん、鑑定ーー!!」

「あ、忘れてた。お願いします」

「お? 鑑定タイムか。三番目の奥の部屋空いてるぜ」

「助かりますわ! さ、あちらで鑑定しちゃいましょう!」


 ギルマスルームから出てきたら、ペルちゃんが遂に鑑定を思い出してやってもらえることに。課金アイテムだって聞いた気がするんだけど、良いのかなぁ……。それにしても鑑定は個室でやるんだ。


「一応不都合なアイテムとかが出てきた時に隠せるように、こういうのは個室でやりますの。それとこの鑑定アイテムは有効期限内なら何度でも使えますから、使う度に消費ではありませんから気にしないで下さいまし?」

「あ、そうなんだ。確かにこのネックレスとか不都合の塊かも」

「わたくしにはバレてしまうけれど、我慢してくださいまし?」

「ペルちゃんなら全部バレてもいいよ、大丈夫」

「リンネさんの……全部……ん! んんんっ!!! では始めますわね!」


 鑑定アイテムは、この虫眼鏡みたいなアイテムなんだ。お、装備の情報ウィンドウが開いた! へぇ~~この虫眼鏡を通すと鑑定されて情報ウィンドウが出て来るんだ~。

 ちなみに手持ちに残ってるのは、どん太がどん太になる前のドロップの『?アクセサリー』と、オーレリアちゃんの死んだ地点に埋まってた宝石ゴテゴテネックレスだけ。他は大したものじゃないだろうし、ギルド倉庫に入れたままだ。鑑定済みで奪える戦利品も使えそうな奴とか、特定されそうなのだけ残してある。


「このアクセサリーは!!!!! た、大変ですわよ、これは!!!」

「え? 何何…………ええ…………」



【★ウルフカチューシャ】(アバター・頭 or アクセサリー【その他】)

 わおーん!! これを装備すれば貴方も狼人間?! コスプレ用アバターアイテム!

 アバター性能・なし



「これ、最低でも軽く1Mシルバーはしますわね」

「ひゃ……ひゃくまんシルバーってこと?!」

「リンネさん……。動物の耳系アバターは、ガチャからも出ませんのよ!!」

「あ、高い……。絶対高い……」

「もしも猫耳なんて出ようものだったら…………」

「ぜったいやばい」


 うっそ、どん太の落としたアクセサリー、アバターだったんだ……。鑑定するまで正体不明っていう珍しいアイテムだなー、取り出せもしないんだーって思ってたけど……。こういう事情だったのね。


「それで、こちらは……」

「オーレリアちゃんの言ってたとお…………りぃぃいいい?!?!?」

「うっわぁぁ…………」


 もう一つ、ネックレスの方は……。こっちも、とんでもない装備だった……。



【★ステラヴェルチェ・王家の首飾り】(極上・レジェンダリー・ネックレス・空きスロット1【●○】)


 !!!!!この装備は呪われている!!!!!


・資格なき者が身に着けた場合、装備者に対して呪い状態が発生し、一定時間毎に【即死、石化、凍結、沈黙、スタン、麻痺、睡眠】の状態異常が発生する。

・呪いの効果でMPの消費が2倍になる。

・呪いの効果でHPが自動で回復しなくなる。

・資格なき者に呪いあれ。

・【初代ステラヴェルチェ女王◆◆◆◆カード効果】MP消費時にMP消費分の2倍のHPを回復する。



「…………」

「…………これ、わたくしが着けてたら即死でしたわね」

「ソウデスネー…………」


 悲報、ステラヴェルチェ王家の首飾り、耐性が無いと絶対に着けられない装備と判明。


「金色のアイツカードのおかげですわね……。後、不死属性だから睡眠と麻痺も効いていないのですわね、資格がなくてもゴリ押しで装備出来てる状態ですわ、これ……」

「これ、もうカードが1枚刺さってるってことかな?」

「そうですわね、カード名は……あ、接頭語のステラヴェルチェがカード名ですわ、これ!」

「王家の首飾りって部分が、本当の名前なんだ?」

「初代ステラヴェルチェ女王のカード、って書いてありますわね……。カードの絵柄は、あ……」

「あーーー…………」


 ちなみにこの王家の首飾り、既にカードが1枚刺さってる状態だった。しかもそのカードの絵柄に描いてあったのは、とてもとても美しい金色の髪に赤い瞳の…………ラミア。つまり、下半身が蛇の女性のモンスターが、ステラヴェルチェの初代女王ということ。


「なんとなく、察しが付くような……」

「これで開く宝物殿って、絶対ダンジョン化してそうなんだけど」

「奇遇ですわね、わたくしもそう思ってましたわ」

「デスヨネー……」


 これを使って、そして王家の紋章持ちが居ないと開かない宝物殿……。なんだかことは単純な内容じゃない気がしてきた。大丈夫かな、私達の宝物山分け計画。


「それより、もしかしてですけど……ちょっと、わたくしにカーススピアを撃ってくださいませんこと?」

「アイギス切って良い?」


 それより、ペルちゃんが何かに気がついたらしい。ここでカーススピアを撃って欲しいらしい。アイギスがあると魔術が効かないし、切ってから……あれ、いつの間にかペネ2になってる?! 2回叩かないとだめなの?!


「よくってよ…………切れましたわ。さあ、どうぞ」

「穿て、カーススピア」

『カーススピアを発動し、ペルセウス(Lv,32)に327ダメージを与えました。呪い状態にしました』


 これでどうだ、っていうか威力上がったなー……。初級闇魔術でこの威力だもんね、ペルちゃんちょっと痛そうだった。


「な~るほど……。呪いを何度か霊体モンスターから受けたことがありますけれど、HP自動回復は止まりませんでしたのよ。でも、この呪いではHP自動回復が止まってしまう。つまり呪いの効果の対象はリンネさんだけではありませんわね」

「え、相手も止まるの?!」


 なんと、私の掛ける呪いはHP減少効果に加えてHP回復停止効果もあるらしい。通常はない機能だから、何もこの装備はプラス能力がカードのMP消費分の倍のHPが回復するって機能だけじゃなくて、呪いの強化にも一役買ってくれているみたい。デメリットだらけの装備じゃなくて良かった~。


「なるほど、なるほど……わたくしが考えていた仮説が正しい可能性が出てきましたわね」

「仮説?」

「ストーンアーマースライムですわ」


 それで仮説の話。私が推定HP500もあるストーンアーマースライムを倒せた理由について。


「あのスライムはHPが500なのではなくて、自動でHP回復が入っているから500ぐらいまで掛かるのではないかという説ですわ。叩いている内に回復されるから、通常は500回叩いた時にようやく自動回復を追い抜いて倒せるけれど、リンネさんの呪いダメージでHP回復が止まってしまうから5秒で死ぬ、という説ですわね」

「あーーーー…………ありえるかも!」

「同様にあのエリアボス、キングの方もHP自動回復が止まって削りきれたと、こう考えると倒せた理由がしっくり来ますのよ」

「なるほど、私に対してめっちゃ相性悪いってことね」

「そうなりますわね。噛み合った結果、あの雑魚の方の瞬殺というわけ……だと、思うのですけど」

「多分それで合ってるんじゃない? やっぱりHP500ってなると、呪いに対して弱くてHPが10倍以上のペースで減るとかになっちゃうし」


 つまりあいつらは元々HPが50ぐらいしかなくて、HP回復機能で本来は死ににくいけど呪いのせいでHP回復が止まってすぐ死ぬ、ってこと。この仮説が正しいと思う。他に何かダメージが跳ね上がるような要素の装備ないし、多分そう。


「ということはこれ、説明文の通りなら呪われた相手のMP消費ペースが2倍になりますわね……?」

「…………穿て、カーススピア!」

「あ、問答無用?!」

『カーススピアを発動し、ペルセウス(Lv,32)に331ダメージを与えました。呪い状態にしました』

「ハルパー!! あ、ぎゃああああああーーーー!!! 凄い勢いでMP減りますわーーー?!」

「わわわわわ…………」


 このネックレスの効果がとりあえずこれで判明した。


・私は常時呪われていて、色々な状態異常が発生しているけど【金色のアイツカード】と【不死属性】のおかげで、呪いの効果がほぼ発動していない。

・一部の呪いの効果は掛けた相手にも発動して、HP自動回復が停止、MP消費2倍も付与される。

・MPを消費した2倍の値、HPを回復する。

・ちなみにHP回復系のポーションは効き目無しになってた。ひっでえ。


「私のHP回復方法、乏しすぎない……?」

「かなり厳しいですわね……。お互い、倒れる時は一瞬な職業ですわね、間違いなく」

「辛い。強く生きていこうペルちゃん……」

「そうですわね、お互い強く生きましょう……」


 これは、効率的にMPを消費できる魔術を習得しないとHP問題が顕著に出てきそうだわ。早いとこなんとかしたいけど、闇魔術、死霊術かあ…………。なかなか本がなさそう…………あ、本!


「本も未鑑定だった!」

「そうでしたわ! そうでしたわね! 鑑定しましょう!」


 そうよそうよ、報酬で手に入れてたのすっかり忘れてた。さて、気になる本の名前は…………。




「「魔神バビロン・降臨の書」」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る