その名は、どん太
◆ リンネ、死霊術・闇魔術のススメを読んで ◆
あれからスライムの襲撃もなく、無事に死霊術のススメと闇魔術のススメを読み切ることに成功した。本当にこれ人気のオンラインゲームなのか? ってぐらい誰も通り過ぎなかったけど、邪魔されなかったのは幸いと逆に前向きに考えよう。
それで、死霊術のススメを読んだ内容――簡単にまとめると、こう。
・死霊術とは死体からアンデッドを作成し、動く死体の戦士を生み出す魔術
・生前が強力な存在であった場合、そのままの姿を取ることもある
・更に強力な存在であった場合、術者が貧弱だと操ることが困難になる可能性がある
・貴方がバビロンを信仰し、死の欲動を授かった死霊術師であった場合はアンデッド作成は簡単で、死体に触れて『起きろ』と命じるだけ!
・成功率、支配率はステータスの『
つまり、バビロンちゃんサイコーってこと。さっき倒したスライムに起きろって言えばアンデッドの戦士が作れたのかー……ガッカリ。でも次会ったら絶対に作ろう。そうすれば序盤が楽に進めそうだし。
それで、闇魔術の方は何が違うのかなーと思って読んでみた結果……これも簡単にまとめると、こう。
・闇魔術とはネガティブエナジーを糧とした魔術で、主に状態異常・妨害などの効果を発揮する
・対象がネガティブな存在であった場合、強化することも可能である
・初級攻撃闇魔術として『カーススピア』を習得すると良いだろう
・カーススピアは呪いや死に纏わる触媒があれば発動できる。その触媒から槍を発射するイメージを持とう
・貴方がバビロンを信仰し、死の欲動を授かった死霊術師であった場合はカーススピアは簡単に発射出来る。『
・威力、成功率はステータスの『
「バビロンちゃん、サイコー……」
もうこれで、スライムと大接戦を繰り広げる世界でワースト2位のクソ雑魚っぷりを発揮することはないはず。早速これで、アンデッドの戦士を作りに行こうと思います。では、対戦よろしくお願いします。
◆ リンネ、死闘 ◆
「
――――スライム、どこ。
「ギャゥゥウウ!!! ワォァアアアア!!!!!!!」
スライムを探してたんだけど、これは……スライムではないね。どこからどう見ても、もっふもふしてるし、滅茶苦茶速いし。あの前足、あの牙にやられたら絶対一撃で死ぬ。死ぬ前に殺す。そう思った瞬間、私はカーススピアを発射してましたね。
『?ウルフ(Lv,8)に27ダメージを与えました。ウルフ(Lv,8)が呪い状態になりました』
「ガァ……!」
直球ドストレートな名前、嫌いじゃないよ。こいつはウルフ、レベルはなんと8もあるらしい。私の8倍よ8倍。とんでもないレベル差だわ。それもこれも、バビロンちゃんからこの指輪と魔術のススメを貰ってなかったら、絶対何も出来ずに死んでたわ。と言うかこのウルフ、倒しきれるか心配なんだけど。
「穿て、カーススピア」
「ギャウゥン!!」
『?ウルフ(Lv,8)に38ダメージを与えました』
地面から突き刺すように、敵の足元から発射するカーススピアは非常に当てやすくて便利。このウルフが大きくジャンプした時、着地地点に置いておけば絶対に当たる。こんな序盤から空中で方向転換するようなヤバい奴はいるわけないだろうし、これは無双出来るかもしれない。
それに、呪い状態になるとダメージの通りが良い気がする。一回目より二回目のほうが手応えがあったし、それに動きもすっとろい。最初は絶対避けきれないと思ってた突進攻撃も、なんとか回避出来る程度に遅くなった。
「穿て、カーススピア!!」
このカーススピア、発射後3秒経過してからじゃないと撃てないけれど、起動ワードも短いしモーションも短いし、本当に使いやすい。おら、倒れろ!
『?ウルフ(Lv,8)に44ダメージを与えました』
『☆1ウルフ(Lv,8)を撃破しました。経験値 155 獲得』
『レベル2に上昇しました! おめでとうございます!』
『レベル3に上昇しました! おめでとうございます!』
『【?アクセサリー (その他)】を入手しました』
おー。倒した。倒した倒した! レベルも上がった、後で確認しよ……。MAGとMNDとかに振れば間違い無いでしょ。
いやーほぼ一方的だったけど、こうでもなけりゃ負けるし。こっちはHPたったの10しかないオワタ式なんだから、攻撃を当てられないウルフさんサイドに問題があるんで。私は悪くない。あ!!
「あ、そうだ! アンデッド作成は、えっと……?」
それより、アンデッド作成をしよう。あ、後って言ったけど成功率上げるのにステ振っちゃお!! 起動ワードは起きろの一言、これでアンデッドの戦士が出来上がるんだよね。わーどんなのが出来るか楽しみー…………?
「起きろ!」
『……わうっ!』
「…………生前が強力な存在であった場合、そのままの姿を取ることもある。お前、そういうこと?」
『わうっ?』
「やば、なんか、馬鹿っぽい……でもちょっと可愛いかも……」
なんか、そのまま起き上がっちゃったんですけど……。私より強いから、そのままの姿ってこと? 実は結構強い部類だった? こいつ? あ、もしかしてさっき倒した瞬間に頭に付いてた『☆1』ってのが関係あったりするのかな……?
『☆1ウルフが貴方の従者になりました。名前をつけてあげてください』
「ほし、1? 名前? 名前、名前……」
星が一つ……? 評価高めのウルフだった? あ、名前かー……こういうのもあるんだ。そっかそっか、名前かあ、名前ねえ……。私、自分の名前もバビロンちゃんに決めてもらうぐらい名前とか浮かんでこないタイプなのに、どうしよ……。名前かあ……。
「どん太」
「わうぅ?!」
「よし、お前は今日からどん太ね。よろしくね、どん太」
「きゃうぅぅ……」
「何、文句あるの?」
「くぅぅん…………」
生まれたてホヤホヤの私に負けるぐらい鈍くさいし、なんか太っちょな気がするから、どん太。どうせ短い付き合いになるだろうし、もう決定よ決定。こんなので一々頭を悩ませてられないからね。
「さてどん太、スライム狩りよ! いっぱい見つけて、いっぱい狩るの!」
「わうぅ……」
「文句あるの? ほら、行け!」
「わうぅぅ!!」
すっごい渋々だけど、どん太が草原を走ってスライムを探しに行った。なるほど便利、パーティも組まれてる扱いだし、あいつがどこまで行ったかもなんとなーくわかるし、死霊術――便利かも!!
『どん太(Lv,8)がスライム(Lv,2)を撃破しました。経験値 3 獲得』
『どん太(Lv,8)がスライム(Lv,3)を撃破しました。経験値 5 獲得』
『どん太(Lv,8)がスライム(Lv,2)を撃破しました。経験値 3 獲得』
…………強くない?
『どん太(Lv,8)がウルフ(Lv,6)を撃破しました。経験値 30 獲得』
『どん太(Lv,8)がスライム(Lv,2)を撃破しました。経験値 3 獲得』
『どん太(Lv,8)がウルフ(Lv,5)を撃破しました。経験値 25 獲得』
…………あいつ、強くない?!?!
『レベル4に上昇しました! おめでとうございます!』
えーーーーーーーーーーー。
◆ リンネ、草原を征く ◆
どん太は、強かった。私の想像する何倍も強かった。なんせこの草原でどん太は敵なし、全部一撃で撃破している。そしてなんかこう、アンデッド感もない。普通のワンコ感が凄い。
「お前、強いね。偉い偉い、おーよしよしよしよしっ……! 良い子だねえ!」
「ぐぅうぅぅぅ……♡」
お陰様で私のレベルが6まで上がったし、レベルが上がったお陰でステータスも上げられた。とりあえず私のステータスは、こう。
・ステータス
【名前】リンネ
【レベル】6
【性別】女性
【職業】闇魔術師 【秘匿】死霊術師
【HP】88/88
【MP】104/104
【STR】4
【AGI】4
【TEC】4
【VIT】4→8
【MAG】4→12
【MND】4→12
【スキル】
【死霊術】【秘匿】
・アンデッド作成【特殊】
・アンデッド強化【特殊】
・ボーンシールド【MP10】
【闇魔術】
・カーススピア【MP8】
・ネガティブオーラ【MP20】
【装備】
右手:ナイフ
左手:なし
頭:なし
体1:見習い術師のローブ
体2:見習い術師の服
足:見習い術師の靴
アクセサリー【指】:死の欲動【秘匿】【偽装名・金色の指輪】
アクセサリー【腕】:なし
アクセサリー【首】:なし
アクセサリー【他】:なし
全て最低値の4から、必要なステータスに割り振っておいた。ちなみにどん太はSTRとAGIとTEC、それにVITもバリバリ高い。人間とモンスターの差を感じさせられるね。
「とりあえず、あの街目指そうっか」
「わうっ!」
というわけで、色々とアイテムが手に入ったりでインベントリも膨れてきたし、未鑑定のアイテムとかもあるし、あの遠くに見える街を目指そう。バビロンちゃんも街を目指せって言ってたし。
どん太は一応アンデッドだけど……。こうしていれば、ただの犬っぽいし? まあでっかい柴犬みたいなもんでしょ、行ける行ける……。日光浴びても大丈夫そうだし、へーきへーき……。
「あ、そういえばお金持ってないけど、大丈夫かな……」
「わふぅ……」
「さすがに無一文状態で乞食スタートが必須なゲームなんて無いか。ま、行ってみよ……。あ~街に着いたら
「わうわうっ!」
街に着いたら、このゲームをやるキッカケになった真弓に連絡を取ろう。ログインしたら連絡してって言ってたし。真弓、真弓かあ……。悪い子じゃないんだけど、あのお嬢様オーラ全開でキラッキラしてるのが、どうにも私と正反対っていうか……。じめーっとしてる私なんか相手にしないで、もっと綺羅びやかな子とキャッキャしてる方が、輝いてるのになー。どうして私が良いんだろ。
「きゅっぴぃ!」
「あ゛?」
「わ゛ぅ゛?」
「キュ――――」
本当、この世界のスライムは私の邪魔しかしないな……? そんなにカーススピアが欲しいか、ええおい……。こっちは今、考え事してんだよなぁ……!
「穿て」
「ワゥゥゥウウウ!!」
『どん太(Lv,9)がスライム(Lv,3)を撃破しました。経験値 5 獲得』
「…………速い、な!」
「わっふぅ……」
どん太め、私と戦った時より明らかに速いじゃない。こんなに機敏に動けるのに、鈍くさいからどん太と名付けたのは失敗だったかも……? いや、私(Lv,1)に完封負けするような奴だ、やっぱりどん太で良いな……!
「よしよしよしよし、じゃあどん太? あの街まで行くのに邪魔そうなモンスター……一通り潰して来て」
「ワッフ!!」
あいつ、狼のくせに表情豊かね……。狼って表情筋なかったんじゃなかったっけ、ゲームと現実を混同するのは良くない? 良くないか。こっちの世界の狼は表情豊かで鳴き声豊富なんだよ。その方が可愛いし、そのほうが良いな。おー遠くまで行ったなー……大丈夫かな?
『どん太(Lv,9)がメリアーヌ(Lv,11)を撃破しました。経験値 310 獲得』
『戦利品として【魔術師の杖(良品)】を入手しました』
え…………やっば。どん太、強すぎてプレイヤー狩った? 狩ったよね、あいつ……?!
え、え、えっ……。えーーーーーーーーーーーー……。やっっばーーーー………………。
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