緊急クエスト・3 ~ちょっと一息~

◆ ローレイの海岸・緊急会場 ◆


 グレートドラゴン討伐完了、3体・・。その文字を見た瞬間に『お? お昼寝さん達も倒したのかな?』と思ったけど、それだとタイム的にありえないことに気がついて思わず二度見した。クリアしたパーティメンバーの情報とタイムは見ることが出来るので確認してみると……。


『グレートドラゴン討伐タイム・1位:52秒』

『グレートドラゴン討伐タイム・2位:2分23秒』

『グレートドラゴン討伐タイム・3位:5分55秒』

『1位:【ペルセウス】、【07XB785Y】、【リンネ】、【NPC・どん太】、【NPC・オーレリア】、【NPC・フリオニール】、【NPC・姫千代】』

『2位:【お昼寝大好き】、【ハッゲ】、【レイジ】、【エリス・マーガレット】、【赫】、【ミッチェル】』

『3位:【夜家高菜】、【うぅ~い】、【つくね☆】、【メガイラ】、【ブリザーマン】、【ちょーー】、【ぽむ】、【NPC・大五郎】』


 うちのパーティが異常なほどに早いのはとりあえずおいといて、3位のパーティには今まで一回もキルしたことがないプレイヤーの名前がズラッとならんでた。一応、私に害を与えてくる――ような気がする――ヤツの名前は覚えてるから、間違いない。どん太がキルしたことがないということはきっと、いい人たちのハズだ。


「3位の人達、知らない人達ばっかりだね」

「えっ!? 会ってますわよ、一部の方に一度ですけど」

「えっ」

「リンネ、忘れてる? 酷い子。私は知ってる人ばっかり。初心者の時に装備あげたけど、ちゃんと返しに来た偉い子ばっかり」

「やっぱり出来るプレイヤーはしっかり伸びてますのねぇ~!! うんうん、そうですわね!」

「ど、どこで会ったの……!?」

「教会ですわ! どんちゃんを押して貰ったでしょう? 夜家高菜さんは頭に目玉焼きが乗っかっていた方ですわ!」

「あああああーーーーーーーーー…………!!」


 理解、この人達はとてもいい人達の集まりのようです。どん太を教会に押し込むのを手伝ってくれた人とか、スクショ撮って貼っていいかって聞いてきた人とか、どんちゃんのファンで『もふらせて~肉球でぷにぷにして~』ってアバチケをプレゼントしてくれた人達だ! いい人達が順当に強くなってる光景、ちょっと感動……!


「やっほ~」

「あ、お昼寝さん! お疲れ様です」

「こんっちわ~!」

「あら、噂をすれば! ほらリンネさん、この方でしてよ!」

「ああーーーー!! 一度会ったこと、ある……! あの時はどん太がご迷惑を……」

「いえいえ、可愛いどんちゃんのお尻をむにむに出来たので幸せです! それと会った回数的には、実は2回目だったんですよ~! 砂浜でペロッとされて砂をシャシャッとかけられたプレイヤー、僕です!」

「…………どん太、覚えてる? この人に最初に会った時のこと」

『わうわうわうわう!!! (覚えてるよ! 初めてうみのどーくつに行った時だよ!)』

「覚えてるみたい……! その時もどうも、ご迷惑を……」

「いいえ~! あの時がどんちゃんのファンになったキッカケですから! ん~~……今日もふわっふわしてますね~~……」


 そうっか、この人がどん太がペロ砂行為をした人で、教会でどん太を押し込んだのを手伝ってくれた人かぁ~……。頭に目玉焼きが乗っかってる……。このインパクトで覚えてないんだから、私が外部の人間をまったく覚えようとしてないのがわかるね。本当にすみません。


「高菜さんと他のパーティの人も居るんだけどね~? 半分の4人は華胥の夢に入ることになったから、後輩さんが4人も増えるよ~。オーガバトラーの大五郎くんも合わせて5人かな?」

「おお~……! 一気に増えますね~」

「お昼寝さんが入れたのでしたら、大丈夫ですわね~」

「んっ、大丈夫」

「今日からよろしくお願いします~! 夜家高菜やけたかなです! 職は剛体僧兵、レベルは78です!」

「よろしくおねがいします~。リンネです、一応サブマスターみたいです」

「あ! うぅ~いって言いま~す! レベル78のライトシューターやってます! ういって呼んでね~!! どんちゃんのスクショいっぱい撮ったヤツで~す! どんちゃぁ~~~~ん♡」

『わう? わんっ!! (う~ん? あっ! あの時の人だ!)』

「つくねです…………オーバーキル、レベル78……よ、よろしく……」

「つくねちゃんはネットだと俺とか偉そうなおっさん口調なんですけどねー! 実際気弱なフリをした女の子なんですよー!」

「あっっ…………! っく……!!」

「よ、よろしくおねがいします……?」


 やけたかな、うぅ~い、つくね……。まーた濃い人達が……。高菜さんが男性で頭の上に目玉焼きが乗っかった中盾と鈍器持ちのダークプリースト系の人? ういさんがナイスバディなお姉さん。ボウガン持ちのライトシューター、赫さんのヘビーシューターの別系統のやつかな? それでつくねさんがレーナちゃんといい勝負しそうなロリっ子の大戦斧持ち、オーバーキルが職業名なのかな……。戦闘になると豹変するのかもしれないね。


「ぽむです。よろしくお願いします」

「…………!? よ、よろしく、おねがいしま……ッスーーー…………」


 ちょっと待って、ずっと居た? もしかしてこの人ずーっと居た? ずっとこの巨体が側に居たのに、全然気が付かなかった……!? ハッゲさんよりガチムチマッチョマンなんだけど!? あ、でも髪はあるな……! いやそうじゃなくって、この巨体でこの存在感の薄さ……! 嘘でしょ……!? それでお隣に居るガチムチマッチョな眼帯を着けた大剣を背負った歴戦の傭兵みたいなのが、もしかして……大五郎くん……!? くん・・じゃないでしょお昼寝さん! どう見ても!!


「ぽむ師匠の弟子、大五郎。名はぽむ師匠から授かった。趣味は鍛錬、世話になる。よろしく頼む」

「おお、おおおお……お世話になななななな…………」

「リンネさん落ち着いて!? あ、わたくしがペルセウスですわ。どうぞよろしく!」

「名前はへんてこだけど、レーナって呼んでね。よろしく」


 ぽむさん……ビーストテイマーで、まさかのオーガをテイミングしたのね。この歴戦の傭兵みたいなオーガを倒して従者にしたのか……。どうやったんだろ……。


「ぽむさん、大五郎さんはどうやって……その……」

「拳で」

「ぽむ師匠の鉄拳には敵いやせん……」

「こう見えて大五郎はまだ15歳でして」

「15です……。世の広さ、俺の育った環境の狭さを思い知りやした……」


 こ、拳で……。きっと、壮絶な戦いがあったんでしょうね……。え? 15……? この屈強なオーガが……? いやいやいやいや……嘘は良くない。年下だなんて信じられない……。

 あれ、ぽむさんが……ナチュラルにどん太をもふってジャーキーあげてる……大喜びじゃんどん太。リアちゃんには、飴渡してる……。あ、リアちゃんお礼言えて偉いね~……。え? なんだろうこのいい人感マックスのオーラ。どん太とリアちゃんに向けてる表情だけでもわかる、この人はいい人だよ……。千代ちゃんねぇ、『いいなぁ~……』じゃないんだよ、サラッと何か貰えないかな~って近寄るんじゃないよ。


「千代ちゃんほら、こっちおいで。これで我慢して?」

「あっっっ!!!! そ、そのようなつもりは~~…………い、頂きますっ!」


 千代ちゃんには、たぶんおさかなさんのソーセージで我慢してもらうことに。おにーちゃんのことをチラッと見たけど『(ヾノ・∀・`)』って拒否ってきたし、あっちは良いか。


「高菜さ~ん。お待たせしましたー! ポーション買ってきました~」

「あ! メンバーが帰ってきたので、もう一体討伐して来ます! また今度、しっかり挨拶させてください!」

「いってらっしゃ~い」

「おう、頑張ってこいや~」

「丸焦げになったらアカンで~!」

「がーんばれーー」

「ういさーん! 今度ライトシューターのスキル教えてくださいッスーー!」

「はーーーい!!」

「つくねさん、ほっぺ。ほっぺに食べかすが……」

「ぅぇ……!? ううぅぅぅぅ…………!!!!」

「行ってきます」

「それでは」

『わんっ!!』

「あ、いってらっしゃいませっ!!」

ふふんふふふんふっどうぞお気をつけて!!!」

「千代ちゃん……」

『(´・ω・`)』


 とりあえず顔合わせだけになっちゃったけど、夜家高菜さん、うぅ~いさん、つくねさん、ぽむさんと大五郎…………さん。あれを15歳と認めたくない……。またグレートレッドドラゴンの討伐に行くみたい。他のメンバーが合流して来たから、中に入って行っちゃった。また時間がある時に話が出来るといいね。


「で? 52秒ってなにこれ~?」

「レーナちゃんが蜂の巣にしました!」

「した~」

「あ、参考にならないタイプの倒し方したのね! アレのHP10Mぐらいあったでしょ~」

「あった。多分きっちり10M」

「あ、そうそう! この大砲で水属性砲弾を何回かぶつけたら、体温減少で動けなくなったッスよ!」

「リアちゃんが大規模な水属性魔術を撃って特殊凍結した時も動けなくなってました」

「熱いほうは大丈夫だけど、寒いのはダメみたいだね~」

「ああなればただの肉袋や! ズタズタに斬れば簡単に死ぬで!」

「おう。レイジが、とりあえず斬れば終わる」

「雑にワイの活躍を紹介すんなっちゅうてるやろ!」

「はははは!」


 それで情報交換だけど、向こうも水属性の砲弾が使えるらしい赫さんの攻撃で体温低下が発生して動けなくなったらしい。熱いのは耐性が凄い高いみたいだけど、寒いのにはかなり弱いんだね。

 ん……? 今思ったんだけど、お昼寝さん達って初手のブレス攻撃をどう対処してるんだろう? あの広範囲攻撃、防ぎようがないような気がするんだけど?


「そういえば、ブレスってどうやって避けてるんですか?」

「あ~避けてないよ~。ミッチェルさんのお陰で吸収してる~」

「ブレスの属性を闇に変えて、全員闇属性吸収のバリアを貼って突破しています。今なら暴竜炎帝ドレイクといい勝負が出来そうな気がしますね」

「グレートよりすこーし大きいぐらいなんだけど、威力が桁違いだったねぇ~……。皆は見てないけど、その次の爆滅の炎槌も辛いね~。勢いよく急上昇して、急下降して来て衝撃波と熱波が飛んでくるんだよ~そこからは僕もわからないな~」


 あ~なるほど、ミッチェルさんの闇付与と闇バリアで抜けてるんだ。物凄い曲解な気がするけど、攻略に自由性があって面白いなぁ~……。んでんで、暴竜炎帝ドレイクは初手ブレスの次はジャンピングプレスで衝撃波と熱波が来るのね! サイズはグレートよりちょっと大きいぐらい、と。え~楽しみだなぁ~……。でもまずはスーパーレッドドラゴンから倒しに行こうか?


「そっちは? これからスーパートカゲ君?」

「そうですわね、スーパーな方に行きますわ!」

「よおし、じゃあ先に倒して帰ってきちゃお~~それ、皆行くぞー」

「おう! またな」

「ほな! やっぱ覚醒はお昼寝でええんちゃうか~? ワイより効果ありそう――――」

「まったね~。エリスちゃんもお昼寝で――――」


 ん、お昼寝さん達がスーパーレッドドラゴン狩りに行っちゃった。私達も行こう行こう! ほら千代ちゃん、いつまでも名残惜しそうにソーセージを包んでたヤツを見つめてないで行くよ! どん太もジャーキーの味を思い出してくぅんくぅん言ってるんじゃないの! リアちゃんは……あ、まだ残ってる飴を今バリッと噛んだ。噛んだね? 小さくなると噛んで割っちゃうタイプか、私と一緒だぁ……。あれ? おにーちゃん? おにーちゃん……ちょうちょを観察してる……。なにしてんの……。


「そうですわ! わたくし、乙女の応援スキルが処刑の号令に変わりましたの! 1分間攻撃力が1.5倍ですわ!」

「おおーー! それは、今度はペルちゃんにも効果があるの?」

「ありますわよ! でもわたくしより……」

「んっ!! ワンセット、3M出る!」

「「うわぁ~~……」」


 うわぁ、ペルちゃんがねーさんと同じ効果のスキルを手に入れてる……。これ絶対効果が干渉してどっちかしか効果出ない奴だわ、多分。それでこれが使えるってことは、レーナちゃんがワンセット3Mダメージ出せるようになったってこと……! ぶっ飛んだ装備にぶっ飛んだカードが刺さりまくってるレーナちゃんが、準備に時間がかかる代わりに強力な覚醒スキルをブッパして、それにバフがかかりまくったらそりゃぁ、ミンチより酷いものが出来上がるよ、これは。


「みんな~~~次のをミンチにしに行くよ~」

『わんっっっ!!! (いこいこっ!)』

「また、最初にストーンウォールで大丈夫ですか?」

「とりあえずストーンウォールで! おにーちゃんは挑発、その後どん太はおにーちゃんと一緒にレーナちゃんを守るように待機。リアちゃんはストーンウォールの後は隙を見てミュートブリザード! で、千代ちゃんは自由にぶった斬る係の人!」

「ええ、そのように!」

『わんっ! (わかった!)』

『(*´ω`*)b』

「はいっ!」

「今度は迷わず覚醒初手スタンバイにする~」

「では、行きますわよ~!」


 さて、スーパーなヤツはどれぐらいスーパーなのかな~? このまま全員ミンチで終わりじゃ、ただのデカいだけのまとで終わりだよ君たち! ドラゴンで、しかもレベル100なんだから、楽しませてくれるよねぇ!!


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