ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~【1巻5/15発売】
エリーゼ
プロローグ
全国のゲームをプレイしたことがある皆さん、初めまして。そうでない方も初めまして、
皆さんは嫌いなものってありますか? 少なからず何かしらありますよね? 私も嫌いなものが多々あります。その中でも『天使』が私は嫌いです。御伽噺のヒロインに対して『まるで天使だ』とか、『天使のような笑顔』とか、とにかく可愛いものを持て囃す時ってなにかと天使天使天使天使天使天使、だから私嫌いなんです、天使。
『エ、ラー、深刻な、エ、ラ、error code 不明――――豺ア蛻サ縺ェ繧ィ繝ゥ繝シ――――――』
それで本題なのですけど、私は大注目の新作VRオンラインゲームの【メルティスオンライン】がヒョンなことでプレイ出来る環境が整いまして、アバタークリエイト権も付いてきたのと親友からの誘いもあってですね、早速プレイしようと思いまして。なのにログインして『さあ、アバターを設定しよう!』と思った矢先、ガイド役として現れたのが今足元に転がっている天使だったんですね。
当 然 殴 り ま し た 。
ええ殴りました、殴りましたとも。本気で。私、リアルでは絶対そんな粗暴なことはしないのですけれど、ゲームとなれば話は別です。気に入らない奴は殴る、重要人物であったとしても気に入らない場合倒せるなら倒す。当然天使が出てきたら問答無用です。絶対です絶対。
だって『ようこそメルティスオンラインへ! これから貴方と一緒に旅をする天使、ナビィちゃんです! 早速だけど、貴方の名前を教えてね!』って言ってきたんですよ? 天使が。アバタークリエイト前で動けるゲームなんて本当に稀ですけど『メルティスの地で自由な冒険を、貴方に』ってキャッチコピーがあった通りキャラクリ時点から動くことが出来まして……本当に自由なんだなーって。なので殴れるなら殴らずには居られませんでしたね。
『豺ア蛻サ縺ェ繧ィ繝ゥ繝シ豺ア蛻サ縺ェ繧ィ繝ゥ繝シ豺ア蛻サ縺ェ繧ィ繝ゥ繝シ』
「うっるさ」
『――――――』
というわけで、ゲーム開始前に終了しましたこのゲーム。深刻なエラーを吐き出してアバタークリエイトが進みません。いやまさか、こんな事で話題の新作ゲームに手も付けられずに終わるなんて……。一応合流予定だったリアルの親友になんて言いましょうか。うちのプレイ環境が水準に達してなかったから出来なかったとか? いやいや、無理筋。このVRダイブマシンってば、限定1名様に当たる! っていう懸賞に応募して見事に当たっちゃった『GOTHIC&LOLITA PREMIUM BLACK MODEL、ゴスロリプレミアブラック』っていう、超絶に可愛いゴスロリ感満載のデザインがされたカプセル型ダイブマシンで、性能も超とんでもないレベルのマシンだし……。というかこれに付いてきたの! メルティスオンラインのインストールパッケージとアバタークリエイト権が!!!
あーーーーーーーーどうしよーーーーーーーーー!!!!!!!! せめてキャラクリ完了まで我慢すべきだった、すべきだったのよぉぉぉおおお!!!!!
『――――メルティスの天使をぶっ倒したイカれた女って、あなたね~?』
――――どうしよう、呼吸止まった。
え、このゴスロリの娘、誰? 黒髪ツインドリルの、ザ・お嬢様感MAXのゴスロリお嬢様、誰? いつから居たの? 今? 今来た? もしかして、もしかしなくても、天使を殴ってエラーを出したことに対する救済措置?! やった、やった! 神ゲーだ、こういうのも予測して演出が組み込まれてるんだ、すっごぉい!
『そうみたいね。改めて、初めまして? メルティスの地へようこそ、天使を殴り倒したイカれ女? お名前は?』
「り、りんどう、あまねです!!」
『それはイカレ女の本名でしょう? メルティスの地でもその名前を名乗る気なの?』
「ひゃ?! いえ、いえいえいえいえ!」
やだどうしよう、Sっ気ムンムンのロリっ子、私すっごい弱いんだよね……。天使が嫌いな反面、小悪魔系とか悪魔とか、ゴシックとかロリィタとか、そういうの大好きなの! 目の前に理想のSっ気ムンムンゴスロリツインテドリルお嬢様が居たら、もう、どうしよう!! 跪かせて欲しい!!
いやそれより、どうしよう考えてなかった。こっちで使う名前を考えてなかった! どうしようどうしよう、どうしようね……?
『リンネ、最初と最後を取っただけだけど。どうかしら?』
リンネ、リンネって私の名前ですか?! それ、使って良いんですか?!
「はい! それにします!」
『そう、じゃあ今日からイカれ女の名前はリンネで決まりよ。それとリンネの容姿を決めるのだけど、リンネの身体情報は……。身長168センチ? でっかいわね。バスト102、ウェスト62、ヒップ89……ねえ、それ本物? 髪の色を紺色にして、髪を伸ばして髪型をちょっと変えるだけで良いんじゃない? リンネって結構可愛いし、コレで良いんじゃないかしら~』
それにアバターのクリエイトまで、いや、ほとんど変わってない様に見えるんですけど、だってほら! リアルモジュールアバターの判定消えてませんし。これって、リアルの見た目から95%以上変わってないと点灯するやつですよね? なんかそんな事前情報だけは知ってるんですけど!
『それで、職業ね』
「えっ」
『あら、容姿に文句でもあるの?』
「ないです!」
あー。あーーー。理想のSっ気ムンムンゴスロリお嬢様の迫力に負けた、負けました。今から私はほぼリアルモジュールアバターでこのゲームをプレイします……。ま、まあ、髪も伸びてるし? 紺色だし? 目も赤いし、行ける行ける……行けるって……。
『死霊術師、どう?』
「ねくろまんさー」
『貴方自身に大した戦闘能力がない代わりに、従者が戦うタイプの職業ね。最初のうちは経験値にボーナスもあるし、パーティにも恩恵がいくのよ。きっとサクサクとレベルが上がって強くなれるんじゃないかしら。あ、ただしアクセサリー枠がこの指輪で一つ埋まるから。私とお揃い、どう?』
お揃い――――お揃い――――?! この超絶激カワゴスロリお嬢様と、お揃い……!
「それにしまーす!」
『あら、まだ他にも色々とあったのだけど……。決まりね。細かい説明は必要あるかしら?』
「ちょ、ちょっとずつ自分で探るのが好きなタイプで!」
『じゃあ面倒だし、チュートリアルもカットしてあげるわね? そして私の名前はバビロン、メルティスなんて信仰したら赦さないわよ♡』
「はーい!!」
このお揃いの指輪って、もはやエンゲージリングでは? やった、バビロンちゃんと結婚した。このゲーム神ゲーだわ、間違いない。もはやゲーム内容があんまり面白くなくても良い、恐らく隠し要素であるバビロンちゃんとの邂逅イベントをノーヒントで辿り着いて、なおかつお揃いの指輪が手に入った。これだけで満足だ。もうログアウトしても良い――――いや、親友が待っているんだった。ちゃんとプレイしよう……。
◆ リンネ、メルティスの地に立つ ◆
メルティスオンラインは、いわゆる異世界系ファンタジーのオープンワールド系RPG。スライムとかゴブリンとかが出てきて戦ったり、魔法とかスキルとか使ったり、または商人みたいなプレイをしてお金を稼ぐのもありだし、もしくは生産型の職業を極めてもオーケー。最初に決められた職業以外にも、教会に行けば職業を変更できるから、最初に選んだのが合ってないなーと思ったら、別の職業に転職するのもオーケー。ちなみに転職が出来るのは45レベルまでで、それ以降で上位職に就くと変えられない、もしくは最初からやり直し(転生システムとかいうのを利用する)になるそう。
「…………私、対象外では?」
それで、私のステータスに書いてある制約、それを見てあらビックリ。
・あなたは魔神バビロンに気に入られている
・あなたは魔神バビロンを信仰している
・あなたは聖メルティス教会で転職することが出来ない
・あなたは不死属性である (装備効果)(解除不可)
私は転生とか無縁の存在ですね、これは……。魔神バビロンって、あのバビロンちゃんよね、魔神……。魔神だったんだ……。ええ……。めっちゃ可愛かった……。会いたい……また会いたい。
「細かいとこは、バビロンちゃん可愛かったし、いっか……」
何はともあれ、バビロンちゃんは可愛かったし、不死属性だからといって日光に晒されたら即死とかもない。というか今現在ゲーム内は昼で、それで即死だったらアホ過ぎてやってられない。とりあえず不死属性でもやっていけるはず、チュートリアルやってないけどなんとかなるはず……。ほら、
「ストレスフリーな作りに感謝だわ~……」
「ぴぎっ!」
「あ゛っ゛?」
『スライム(LV,1)から1ダメージを受けました』
こっちがストレスが無くて良いって、今言ったよね? 言った瞬間からそういうことするんだ、この液体生物。可愛くデフォルメされた顔が書いてあれば許されると思ったか? ゴミモンスターが、消し炭にしてやる……!
「こんのぉ……!!」
『スライム(LV,1)に2ダメージを与えました』
『スライム(LV,1)から1ダメージを受けました』
『スライム(LV,1)に2ダメージを与えました』
『スライム(LV,1)から2ダメージを受けました』
『クリティカル! リンネがスライム(LV,1)に4ダメージを与えました』
『スライム(LV,1)から1ダメージを受けました』
『スライム(LV,1)に3ダメージを与えました』
『スライム(Lv,1)を撃破しました。経験値 2 獲得』
『最下級生命ポーションを獲得しました』
――――経験値、2。今の死闘で、経験値……2。
「ぜぇ……はぁ……はぁ……っく……や、やるじゃない……ま、まあ私のほうが、強かったけどね……!」
わかっている。恐らく、このゲームで一番弱いモンスターなのだろう。そしてその一番弱いモンスターに対して私は、ギリギリで勝った。つまるところ私は、この世界で恐らく2番目ぐらいに弱い生物なんじゃなかろうか。マジか。マジなのか。
「……ポーション」
とりあえず、ポーション拾った。ポーションは回復アイテム、水薬、小瓶に入ったお薬系のアイテムのはず。アイテムインベントリにアクセスして、ええっと、ポーション…………。
うーん…………死霊魔術のススメ、闇魔術のススメ……? これ、チュートリアルでやるはずだった内容の本かな。これを読まないと、もしかして魔術系覚えないのでは……? あ、ポーションあった……。
『HPが回復しました(10/10)』
「じゅう。へるすぽいんと、じゅう……」
HPはヘルスポイント、これが0になると戦闘不能になって、一定時間以内に蘇生アイテムとかを使わないと死亡する。その限界値がたったの、10しかない。スライムの攻撃が当たりどころが悪かった場合、5発で死ぬ計算。あまりにも貧弱過ぎるわ私……。死霊術師って、かなり慣れてるプレイヤー向けの転生前提職業だったりしないこれ? 絶対初手で始めて良い職業じゃないよね? でも、でもクリエイトチケットは使っちゃったし……。これ、新しくキャラクリするのに抽選待ちなんだよね。抽選で当選したらクリエイト権が貰えて、3980円払うとキャラクリチケットが買えるっていう……。作り直し、出来ないし……。
何よりバビロンちゃんとお揃いの指輪! 手放したくなーい!! あ、この指輪ってどんな性能なんだろう! えーっと、装備欄……アクセサリー枠、1番……あった!
【死の欲動】空きスロット1【○】
・【呪】絶対に解除できない
・装備者を不死属性にする
・基本攻撃属性を不死属性にする
――魔神バビロンより授かった指輪。
解除不可・破壊不可・重量なし
不死属性の由縁これだあ……。絶対外せないようになってるから、マジで転職出来ない奴だあ……。あ! それで、本の方はどうだろう! これで魔術とか使えるようにならないと、私の冒険始まりそうにないんですけどー! 助けてーバビロンちゃーーーん!!!!!
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