ぶっちぎりでイカれた女・5
◆ ルナリエット聖王国【とあるプレイヤーはそれを見た】 ◆
バビロン側のギルド、華胥の夢ってところがセントミィナとこの国に対して突然宣戦布告をしてきた。それから暫くして女神メルティスから【ルナリエット聖王国、及び女神殿の死守】という緊急クエストが発令された。メルティス側のプレイヤーは全員参加、俺たちはこのルナリエットにギルドホームを購入したばかりなんだ、何が何でも守らなくちゃならない。全く迷惑なプレイヤー達だ、こんな夜中に宣戦布告してくるなんて、よっぽど戦力に自信がないんだろ。どうせ奇襲を仕掛けて終わり。そんなしょぼい戦闘で終わりになる。だってこっちには、メルティスの女神殿から戦闘教官や戦闘神官、異端審問官、すっげーおえらいさん達がぞろぞろ出てきてるんだ。総勢1,000以上は居るんじゃないか?
「みなさぁ~ん。このゲルディオンがたった今、聖なる西門に張った結界は絶対防御の守護結界。それも本気の本気、最強の結界です。私の実力は皆さんも知っての通り、私が今までみなさんとしてきた訓練で傷ついたことはありましたかぁ~? ありませんねぇ~。つまり、邪悪なる魔神バビロンの手先達がいくら束になって襲いかかって来ようとも、このゲルディオンに……そしてルナリエットの西門に、傷一つつけることすら不可能なのですよ」
法術戦闘教官ゲルディオン、スラリと背の高い金髪のイケメンNPCで、口先だけの実力ではなく本物の強さを持った術師。その強さはこのルナリエットでも十本の指には入るほどで、他のNPCからも一目置かれている……。あのゲルディオン先生が居るなら、もうこの防衛戦はクリアしたのも同然だ。
「さあ、御覧なさい。このルナリエットには西門が2箇所ありますねぇ? 南西門は完全に封鎖、聖獣オルグリフや聖獣アルトロス達が守りを固め、迎撃の為に貴方達異界人や我々戦闘神官が多く配備されています。そしてここにも同様、更にこのゲルディオンがいるのですから? 当然奴らは南西門へと逃げるでしょう。そこが挟撃のチャンス、逃げたゴミ共を四方八方から木端微塵に粉砕するのです」
「おお、さすがゲルディオン! どうやら、我々が出てくるまでもなかったようだな!」
「当然です、ゲルディオン殿は次期下位神の座に最も近いと言われる、天が二物も三物も与えたような素晴らしい実力者ですからな!」
「それに、万が一に備えて修行中の勇者ソル達も帰ってきている。南西門に勇者、北西門にゲルディオン、完璧ではないか!」
「はっはっはっは!!」
『にゃぁ~ん』
「おや、可愛らしいお客さんですねえ。どこから紛れ込んだのですか~? ここは危ないですよぉ~?」
教官達や神官達の楽勝ムードを見るに、本当に楽勝なのだろう。この人達が敵を過小評価することはないはず。なんせ常日頃から『上には上が居るもの。日々精進するのですよぉ~? 私のように』って言ってるんだ、あのゲルディオンですら日々努力し、上を目指している…………と言うのに…………。バビロン側の連中は本当、甘やかされてばっかりの邪魔者ばっかりだ。緊急だってバビロン側で急遽テコ入れで用意されたんだろ、あ、思い出したらムカムカしてきた。イベント内容が不平等過ぎる。
まあ良い、だってこれを防衛すれば今度はローレイに反撃で攻め込む大義名分が出来る。そうなれば今度はローレイはメルティス側の所有物、そうなればドラゴン討伐戦会場だって制圧してバビロン側を締め出せるし、ローレイを返してほしかったらバビロニクスから退去して譲渡しろって請求出来るって言ってたんだ。夢が広がる、面白くなってきた! バカなバビロン側のギルドの暴走で全てを失うんだ、最高じゃないか。
「ゲルディオン様! 万が一に備え、住民の女神殿周辺への避難及び、奴隷労働者の撤去作業が終了しました!」
「結構。天族でない人間風情の信徒が避難させてもらえるのですから、皆泣いて喜んでいるでしょう。まあ奴隷は場所を取りますし、臭いますから。致し方ありませんねえ……なんせ、皆罪人なのです。これまで生かされていたことに感謝して頂きたいですねえ……」
「南側、奇襲に備え防衛軍の配置が完了!」
「北側も完了しました!」
「よろしい。東側は回り込めば目立ちますし、そもそも女神殿に多くの兵が待ち構えているのですから、近寄れさえしないでしょう。これで、すぐにローレイへ反撃に進軍が出来ますねえ……。ミィナさん、貴方の呼び込んだ災いは、転じて福と成ったのです。良かったですねえ、愚かなバビロンの信徒を釣り上げるための見事な演技、素晴らしいものですよ」
「ありがとうございますぅ~~ゲルディオン様ぁぁ~~~♡」
あ~……。この女が発端らしいけど、まあ、本人も演技だったのに無許可で悪い所だけ切り抜かれて晒されて辛いって言ってたしな。いやでも、暴言は本当に言ったから制裁は受けてるのか……? いや……うーん、それにしては、ペナルティが重すぎる気が…………。
「橋を落とします!」
「やりなさい」
お、橋が落とされた……。凄い威力の法術が撃ち込まれて、橋が木端微塵だ……。すぐに直せるから大丈夫だって言ってたけど、まあ向こうの進軍を遅らせて蜂の巣にしてやるには、これが一番効果的だな。あの川は凄く深いし流れが早い。まともに歩けない内に、全員あの世行きだ。
「き、来ました! 北西門!! 敵影を発見!!!」
「おやおや、下賤な方々がのこのこと、死ににいらっしゃったようで――――」
――――バリィィィン!!!!!! ヒュゥゥゥン……!!!!
「――――」
「え、ゲ、ゲルディ、オン……さま……ぁ……?」
「ゲ、ゲルディオン……? お、おい、ゲルディオン!?」
「ゲ、ゲルディオン様が!!! た、倒れた!!!」
な、何……が、起きたんだ……? え、ゲルディオン教官、が…………。倒れた……? 頭が、え……? え……? あ……?
「――――脆い脆い脆い脆いぃぃぃ!!!!! 紙切れみてえなバリア張りやがって雑魚共がァ!!!!!!! 灰になれぇえええええええええええ!!!!!!!!!!!」
なんだ!? こ、こいつ、プレイヤーなのか!? ド、ドラゴン!? なんでプレイヤーが飛べるんだよ!!? 何、光っ――――
『つくね☆が【メガフレイムブレス】を発動、774Kダメージを受け、死亡しました』
『すべての装備が破壊されました』
――――は、はぁ……!!!??? な、なんだよ、これ!!?
◆ ルナリエット聖王国・北西門【リンネ視点】 ◆
「――――命中。頭に当たりました。偉そうな金髪が膝から崩れ落ちて、倒れました。バリアのようなものは消失しました。やりますね!」
「撃ってくれと言わんばかりの頭だ。簡単だったさ」
「ナイスショット、マリちゃん。
「いました。大慌てで逃げてます。逃げ足だけは速いですね、ルナに追跡させます」
「お願いね。絶対に逃さないで」
「はいっ!」
マリちゃんの完璧な狙撃によって、恐らくバリアを張ってたと思われる偉そうな金髪野郎の頭をふっ飛ばした。もしかしたら術師が動揺してバリアが消えただけかもしれないから、慎重に行かないと。
「つくねさんの先制攻撃は成功しているようですね。混乱に乗じて高速移動で突撃したペルセウスさんは、既に北西門に到達したようです」
「反撃は?」
「ないです。全員大混乱で、人数が多すぎて重なり合って倒れてます」
「烏合の衆が……!! 何人何十人何百人何千人何万人集まっても無駄だ!!!! 行くぞ、どん太!!! 準備して!」
『ガァァアアアアア!!!!! (あいつの頭を噛みちぎってやる!!!!)』
「マリにゃん、行きますよ!」
「…………にゃん?」
「今度猫耳を付けてもらうといいです!」
「いや、遠慮しよう……。どれ、まだ試作品なんだが……こいつを試してみるか」
『マリアンヌが【カモフラージュ】を発動、パーティ全員がステルス状態になりました』
「匂いや音はごまかせない。行こう」
「南西門側にテレポートします!」
「周囲に罠の気配はないよ。向こうに近付いたら使用禁止、いいね?」
「はいっ!!」
『オーレリアが【神出鬼没】を発動、転移しました』
ルナリエットへの先制攻撃は成功。こっちはあの川ぐらい跳躍すれば跳び越えられるから問題ない。どうせ200メートルぐらいの幅だし、どん太なら跳べる。跳んでるところを撃ち落とされるのが一番マズいから、この混乱とステルス頼りの突撃なんだから。
それに、撹乱の策はまだある。リアちゃんがテレポートしたから、そろそろかな……。そろそろ、ゴーサインが出る……。まだか、まだか……。
『オーレリアが【
来た!!! 合図だ!!!
「よし、行くよ!!!!」
『ガァァアアアアア!!!!』
「うわっ……!!! す、凄い、スピード、だ、え――――いひゃ……!?」
「黙ってないと、舌を噛むよ!!!」
「此方は先に!!!」
『姫千代が【驚天動地】を発動、転移しました』
よし、行くぞ、行くぞ、跳ぶぞ、跳ぶぞ……!!! 跳べどん太!!!!
◆ ルナリエット聖王国・南西門【お昼寝視点】 ◆
『ε≡≡ヽ(#`Д´)ノ 』
『リーダーに続け!! マスターリーダーに喧嘩を売った奴らをぶっ潰してやるぞ!!! うおぉぉおおお!!!』
『先にいけ、俺は後ろだ』
『透明敵、警戒』
『星よ、目覚めよ――――』
「「「「「…………!!!!??????」」」」」
『お、おい、カヨコ~……まさか、本気かぁ……!?』
『さぁいこぉお~~♡ またカヨコちゃんのマジモード見れちゃうじゃぁ~ん』
いやぁ……。魔神兵の皆さんも、ついてきちゃったんだよね……? わあ~これで42人か~なんて思ってたらね……?
「もふもふキングダム!! 突撃!! 騎兵前ーーー!!!」
「「「「おおおーーーー!!!!!!」」」」
「進め!!!!」
もふもふキングダム、可愛い系のスクショとかをシェアするほんわかスレの住民が集まって出来たギルドの人達がね……? 鬼神の如き形相で迫ってきて、どん太君をモノ扱いしたクソッタレ共に裁きの鉄槌を!!! って、いやぁ~飛び入り参加だよ。そしたら、いやぁ来るわ来るわ、俺たちも! 私達も! ってギルドが。
赫さん達に憧れて世界を旅して回ってる【イケイケボウケンシャー】、ミッチェルさん達が魔術を教えてた子達が立ち上げた【魔術図書館】、盾なろ君が個人的に交流のある【ラブマッチョクラブ】、シュタークさんときぬちゃんがカジノ攻略法を広めてカジノ狂いを量産した挙げ句出来た、何故かガンナーと鬼剣士しか居ないギルド【JACKPOT】……。他にも面白そうだからって駆けつけたいろんなギルドが合わさってすごい人数になっちゃったよ。だから作戦も大幅に変更して、こうやって二手に分かれて攻撃することになったんだ。まあ、こっちがほぼ全員で、向こうがリンネちゃん達1パーティだけなんだけどさ。あ、フリオニールさんはこっちで魔神兵パーティで動いてるか。
僕たち35人、魔神兵さん達7人、もふもふキングダムが34人と34匹、魔術図書館21人、ラブマッチョクラブ6人、JACKPOT19人、その他個人的恨み辛みを晴らすと集まった20人…………。総勢、176名。
「よぉし! リアちゃんが川を凍らせた!! 僕たちに橋なんか必要ない!!! 行くよ!!!」
デスペナは30秒以内に復活しなかった場合、5分間の復活クールタイムが入って……経験値が10%ロスト。それに保護してない装備は絶対に失われるし、消費アイテムさえも没収される可能性がある。それでもやるって人達がこれだけ集まったんだ。絶対にルナリエットを…………セントミィナを、潰す。リンネちゃんにあんな恐ろしい顔をさせた奴らを許しちゃおけないよ。
それに、今回は敵対プレイヤーやNPCを視認すると、相手の頭の上に髑髏マークが付くようになってる。乱戦になっても倒す相手がわかりやすい。でもリンネちゃんが『それを偽装できるプレイヤーもいるかもしれないから、誰も信用しない方が良いです。こっちに化けられるスキルがあるかも』とか言ってたし、実際ありそうだから注意しないと。
「南西門、上にプレイヤーが居る!!」
「そらよっ!!!」
『シュタークが【デッドエンドショット】を発動、クリティカル! マリオンに465Kダメージを与え、撃破しました』
「迂闊に頭を出すからさ」
「やるぅ!」
「銃がなきゃ何にも出来ねえ臆病者らしい、姑息な戦い方なら十八番さ」
渋いねえシュタークさん。よし、南西門まで後少し……でも、あの馬鹿でかい南西門をどうやって開こうか?
『おめーら!!!! 衝撃に備えろぉぉ!!! カヨコが、やるぞぉ!!!!』
ん、カヨコさんがやってくれるんだね! 一体どんな…………ん? 赫さん達、なんでそんな歯をガタガタさせて固まって防御してるんだい……?
「お昼寝さぁぁぁん!!! 伏せて、伏せてえええ!!!」
『――――星、目覚めたり』
『魔神兵:乙女のカヨコが【失伝究極魔術:アースデストロイヤー】を発動、地面に巨大な亀裂が走る…………!!!』
これ、ヤバくない?
『――――星が悲鳴を上げ、灼熱のマグマが吹き出します!!!!!』
これ、ヤバくない…………?!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます