重大な選択

◆ 魔神殿・ギルドルーム【ロビー】 ◆


 レーナちゃんがすんごい可愛いアバターになってるなーって驚いたのが1回目、そしたら急に腰のあたりから機械の翼が展開して度肝を抜かれたのが2回目、そしてフライトテストの為に海岸に行こうって思ったらねーさんが『そういえば船が見てみたいねえ』って付いて来たから一緒に行ったら、海岸に到着した途端に緊急クエスト『緊急事態! ドラゴン大集結! 小龍の仇討ち!!!』ってのが発生して、何事? って思ったら何十ものドラゴンが空から襲来したのに驚いたのが3回目、そしてエキドナさんとグリムヒルデさんが来て障壁内に全部のドラゴンを隔離したのに驚いたのが4回目。

 私はこの短時間に、何回『えええええええええ~~~~~~!?』って言えば気が済むんでしょうか? ちなみにこの緊急クエストのことはお昼寝さんに個人チャットで連絡済み。向こうも出来るだけ早く戻って来て行きたいって返事が来た。


「深淵より這い出し魂よ、今一度我がもとに。目覚めよ、どん太!」

『反魂の儀式により【☆4魔晶石】を10個消耗しました』

『NPが0になりました』

『【どん太】が復活します』


 それで、なんで戻ってきたのか。あの緊急クエストへ参加するのに流石に私、ペルちゃん、レーナちゃん、ねーさんの4人では厳しいので全員で行こうと思って。ちなみにペルちゃんレーナちゃんはMP回復ポーションを仕入れに一旦1階の錬金術師のNPCのところに行った。私は待ってる間暇だから今のうちにNPブレイクから復帰したついでに、どん太を起こしちゃおうってことで。


『わうぅ……? わんっ! (あれ? お家だ!)』

「どん太~。どん太のお陰で倒せたよ、あの強い黒シャチ。頑張ったねぇ~」

『わぅぅん♡ きゃぅぅんわんわんわんわんっっっ♡ (わ、なでなでだ! くすぐったいよ~~)』

「いつみても、でっかいワンちゃん」

「大きなワンちゃんですわねぇ……本当……」


 良かった。起こしたどん太がちゃんとどん太だった。別のやつの魂が入ってきたらどうしようとか思ってたから、なんか安心した。可愛いヤツめ。


「力を取り戻したってことは、あたしの進化とやらも出来るのかい?」

「あ、そうですね! 出来ます!」


 そうだそうだ、NPブレイク中は【アンデッド作成】【アンデッド強化】【アニメイト・フェティッシュ】【アニメイト・ミックスフェティッシュ】【反魂の儀式】【アビスウォーカー】が使用できない状態って言われてとても焦った。【特殊】って表記されてるだけだから使えるでしょ? って思ってたんだけど、職専用スキルはNPブレイク中には発動出来ない状態になってた。どうやら内部的にはNP0消費スキルみたいな感じで、NPが【0じゃなくてNULL】……存在しない状態だから使えないよって判定だった。難しい。


「じゃあまず、ねーさんから進化しちゃおう!」

「おや、どんちゃんも出来るってさっき言ってたけど、先輩を差し置いて先に進化して悪いねぇ」

「良いの良いの。どん太はちょっと特殊みたいなんで」

「そうかい?」


 さて、ねーさんの進化先を見て――――うーーーーん……!? うーーーーーーーん…………!? あれ、この人、これは…………どういうこと、ですか……?



【★★秘匿】(不明・不明・不明)

・使役アンデッドがこの選択を望んでいません

・強制的にこちらを選択することも可能です

・不明

・不明

・不明


 これは…………。ねーさんのことを知らなすぎるから、選択肢はあるけど開放されてないってことかー。確かに出会ってねーさんのこと全然知らないもんなぁ、それに多分これはねーさんが嫌な選択なんだろうね。スルーしよう、触れちゃいけない部分がある。これはスルーで。



【★★海賊無双】(水属性・人間系・中型)

・この者を差し置いて海賊を語ることなかれ。海賊無双ここにあり

・他に並ぶ海賊なしとされる海賊の中の海賊。豪快に敵をなぎ倒す様は他の追随を許さない


 絶対こっち。わざわざねーさんの触れちゃいけない方に触れてまで選ぶ必要がないもん。まあ後一個あるし、それも見てみようかな。



【町娘】(無属性・人間系・中型)

・戦場から身を引き、一人の町娘として過ごすことを選んだ姿

・静かに暮らし、いつかパートナーを見つけ、幸せな家庭を築くのも一つの進化の形である


 まあ、うん、そういうのもあるか……。こういう選択肢は初めて出てきたけど、確かに一つの進化の形ではあるわなぁ……。いやいや、ねーさん離脱したら困るから! これは、うーん……。


「ねーさん、海賊無双ってクラスになるみたいなんだけど、いい?」

「ッ! そうかい、それなら良かった。まだまだ海賊引退なんて御免だからね」


 やっぱりねーさん、私に言いたくない何かがあるんだなぁ……。私だって話したくないことが沢山あるし、触られたくない部分だっていっぱいあるからわかるよ。だけどいつかねーさんから信頼されて、話しても良いってなる時が来るといいなぁ。


「それじゃあ、これにするね」

『【アンデッド強化】を発動、トルネーダの【★★海賊無双】への進化がリクエストされました』

『海賊王クラスの所有者が検出されませんでした。トルネーダの進化を開始します』

『覇者の証を消費しました』

『トルネーダの複数のスキルが強化され、統合されました』

『トルネーダの一部のスキルが統合により削除されました』

『トルネーダのステータスが大幅に上昇しました』

『トルネーダの【★★海賊無双】への進化が完了しました』


 おお、終わった……。どれどれ、どんなステータスになったかな? ねーさんちょっと見せて頂戴な。


・ステータス

【名前】キャプテン・トルネーダ

【レベル】1

【属性】ボス属性・水属性・人間系・中型

【性別】女性

【職業】★★海賊無双

【カルマ値】-850(海賊無双)


【HP】110,000

【MP】0

【VP】10


【STR】339+400

【AGI】325+200

【TEC】4

【VIT】412+440

【MAG】0

【MND】4


【スキル】

【海賊無双】

・★トルネーダスペシャル【VP1】【攻撃毎に加速】【防具破壊】

・ギロチン【VP1】【即死】【素手可能・素手発動時VP使用0】

・フルバスター【VP1】【大ダメージ】【素手可能・素手発動時VP使用0】

・ストームスラッシャー【VP1】【素手可能・素手発動時VP使用0】

・攻撃の号令【VP1】【攻撃力上昇1.5倍】


・もっと略奪!【攻撃成功時に20%の確率でVP 1 回復】

・黄金の宝物庫!【様々なアイテムを大量に収納出来る異次元空間】


・嵐を呼ぶ海賊王【パッシブ:カルマ下限値-150、風属性吸収・吸収時強化】

・超人【パッシブ:STR+400、VIT+400、AGI+200】

・魔神崇拝・狂【パッシブ:カルマ下限値-200】




 ほぎーーー超人だわこれは……。あ! フルバスターはおにーちゃんと一緒のスキルだ! こういう被りスキルとかも出るんだー面白いな……。似てた性能の素手系スキルは全部統合されて、素手で発動した時はVP消費無しかー! 強い……! あれ、覚醒スキル無い……まさか……うわーーーー次は75レベルで進化!? 絶対遠いよ、いつになんのよ……。


「いいねぇ、しっくり来る? って言うのかねぇ! 力が馴染むようだよ」

「お~……良かった良かった~!」

「それじゃあ、あたしは終わったからどんちゃんだねぇ?」

『わんっ!!!』


 とりあえずねーさんはこの結果に満足してくれたみたい。またレベル1からだけど、頑張ろうね……。私も頑張るからね……! さーて、どん太かぁ……。


「さーてどん太、覚醒なんだけど」

『わんっ!! (行こう!)』

「行く? どこかに行かなきゃ進化出来ないのかい?」

「うん、そうなの」


 無事に進化してくれると良いんだけど、大丈夫かなどん太……。覇者の証は持ったから、よし……行こうか! あ、アイテムインベントリ見て今更見つけた! 忘れないように隔離して置いた【?大砲】の鑑定、忘れないようにして忘れてた!! 後でペルちゃんにやってもーらおっ!




◆ 魔神殿・1階 ◆




『わん!!!! (モッチリーヌちゃんっ!!)』

『わんっ! (あら、どんちゃん。遊びに来たのね?)』

『わうわうわう……! (今回は、遊びじゃない。戦って欲しい!)』


 会話の内容がわからない人からすれば、真っ黒い大きなワンコが仲睦まじくわんわんしてるように見えるかもしれないね。でもねどん太がかなり、本気の本気な感じなのよ。どん太もいつもの可愛いオーラが引っ込んで、凛々しい感じが…………うーんやっぱり可愛いな! ごめんねどん太、シャキッとした表情も可愛いぞっ!


『わうっ…… (しかし、まだ私には及ばないでしょう。まだその時では――)』

『――あら~? モッチリーヌ、もしかしてビビっちゃってるのかしら~♡ やるわよね~?』


 バビロンちゃん!!!!!!! …………の、幻影!!!!! 幻影でも可愛い!! んんんんんんんん…………!! プリティ……! ごめんねどん太、バビロンちゃんには勝てんっ!


『わうぅぅ!? わうわうわうわうわんわう!! (主!? ビビってなどいません! しかしどんちゃんはまだ子供、私の相手になりません!)』

『ふ~ん……♡ ま、来なさいよ。責任はワタシが取るから、全力で殺りなさいな~♡』


 ああ、消えちゃった……!! でもこれから本体に会えるし!? なにも問題ないね! 周囲がざわざわしてるけど、無視無視! じゃあバビロンちゃんのところに行こうかっ。


『わんっ! (先に行くよ、待ってる!)』

『わうっ……(此方の方の指導が終わったら行きますわ。お待ちになっていて?)』




◆ 魔神殿・3階 ◆




『イカれ女~? どんちゃん、勝てると思う~?』

「…………ア゛!!!! なんですかぁ!?」

『どんちゃんと、ワタシのモッチリーヌのどっちが勝つと思うか、聞・い・て・る・の~~~♡』

「すみません!! どん太が勝ちます!! あ、いやその」

『ふふっ♡ 迷わず答えたわね~? モッチリーヌは強いのよ? どんちゃんより更に更に上の進化形態だもの~♡』

「…………」


 バビロンちゃんの可愛さでどうにかなりそう。そしてどん太とモッチリーヌちゃんの無言の睨み合い、その緊張感がこっちまで伝わってきてドキドキが止まらない。

 あの時どん太が覚悟を決めたのは、私達を守ってあの黒シャチを倒す覚悟という点もあったのだろうけど、それ以上にこれを覚悟してたんじゃないかなって。どん太のチャンピオン・ワーグより更に上の進化形態は【魔狼王】。魔狼王になるには、現王に認められるか、超えなければならない。魔狼王と言えばモッチリーヌちゃんだから、大好きなモッチリーヌちゃんと本気で戦う覚悟もあの時に決めたのかなって。


『ワタシのことよりどんちゃんが気になるなんて、よっぽどね~?』

「え、っと……」

『ワタシも不安~♡ モッチリーヌが万に一つ、億に一つの確率で負けないか……♡ お互い一緒ね~? じゃあ、不安解消の為に~……始めましょっか♡』


 バビロンちゃんがどこからかコインを取り出した。あれは……あ! 呪いのコイン!! 指でぴーーんっと弾くと消えて、おでこに当たるヤツ!


『これを弾いて、床に落ちたら開始よ~? 行くわよ~♡』

「え、それ」

 

 それ、自分に当たっちゃうんじゃないんですか、バビロンちゃん!? あ、弾いた!!!


「いったぁ!?」

『うっふふ♡ 呪いぐらい擦り付けられま~す♡』


 私のおでこに当たったァ!? 呪いの擦り付けって何!? 凄いよバビロンちゃんっっ!! あ、床に落ち――――


『ワオォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!』

『ワオォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!』

『どん太が【超咆哮】を発動しました』

『モッチリーヌ3世が【超咆哮】を発動しました』


 ――――耐性があるのに、気絶するかと思った。お互いに超咆哮からとは……。でもそれ、どっちも効果無いみたいだね。お互い挨拶みたいなもの、かな。


『どん太が【魔狼身弾】を発動しました』

『モッチリーヌ3世が【魔狼身弾】を発動しました』


 両者突進、一気に間合いを詰める気だ。どっちもインファイターなんだから距離を詰めるのは当然だけど、お互い巨体と巨体のぶつかり合い。ただじゃ済まない。


『どん太が【金剛】を発動しました』

『モッチリーヌ3世が【剛体】を発動しました』

『相殺!! 両者ダメージを受けません!』


 なんて音出してぶつかってんのよ。まるで巨大な金属と金属がぶつかり合うような轟音、ダメージを受けてないなんて表示は出てるけど、体の芯までしびれるような衝突だった。でもまずここまでは互角、ここから勝負の分かれ目……どう出る、どん太!


『どん太が【金剛】を解除しました』

『モッチリーヌ3世が【剛体二段掌】を発動しました』


 剛体二段掌!! モッチリーヌちゃんは防御力を上げる剛体を発動したままでもスキルが撃てる!!! どん太の上位種だって言ってたけど、本当に上位互換みたいなスキルが使える!!! どん太が、やられる!


『どん太ドッペルが消滅しました』

『ガァ!!?』


 どん太のドッペル、幻影に当たった……! モッチリーヌちゃんが攻撃を見誤った? 違う、どん太は魔狼身弾の発動後にすぐに距離を取ってる! モッチリーヌちゃんが剛体のまま攻撃してくるって感づいてた、攻撃を空振ったモッチリーヌちゃんは右足を上げた状態で体勢が悪い。距離はやや離れている、どん太っ……!


『どん太が【魔狼身弾】を発動しました』

『どん太がモッチリーヌ3世に6,140ダメージを与えました』


 やった! モッチリーヌちゃんの下顎をえぐり飛ばすようなかち上げタックル、このままコンボに繋げて、ラッシュを叩き込むのよどん太!!!


『モッチリーヌ3世が【徹底抗戦】を発動しました』

『モッチリーヌ3世が【剛体】を解除しました』

『モッチリーヌ3世が【徹底斬滅】を発動しました』


 かち上げられた体勢からわざとジャンプして、空中で体勢を立て直した!? そんなのありなの!? しかも今、空中をジャンプしたように見えた! 空中に壁を作って蹴ったような方向転換、刀みたいに鋭い爪が伸びてる!


『どん太が【金剛】を発動しました』

『モッチリーヌ3世がどん太に合計11,241ダメージを与えました』


 金剛を発動して防御力が上がって、これ!? 発動してなかったら死んでるんじゃない!? いやまだ、モッチリーヌちゃんは徹底斬滅の後にもまだスキルを用意してるはず、これじゃ止まらない!


『2COMBO! モッチリーヌ3世が【飛来四段掌】を発動、どん太に合計22,774ダメージを与えました』


 もうどん太のHPが残り10kぐらいしかない、攻撃を受けてHPが減ることが多かった45から50区間、どん太のHPがかなり伸びる傾向になったお陰でこのスキル連打に耐えられた、でも後がない! 空中から高速で打ち込まれるスキルに、為す術がない……!


『ガアアアアアアアア!!!!!!』

『モッチリーヌ3世が【超究極魔狼拳】を発動しました』


 モッチリーヌちゃんが決めに来た、空中で見えない壁を蹴って、高速急降下の超ダメージスキル……。空中からでも大技が使えるなんて……本当に、上位種って強い……。どん太、モッチリーヌちゃんと戦うのはまた今度……今度? 違う、どん太はあの時もそう。無理だって止めたのにやりきった。今回だってモッチリーヌちゃんにまだその時じゃないって言われてもやるって聞かなかった。バビロンちゃんに怯えたりせず、対戦相手のモッチリーヌちゃんが来るのをジッと待ってた。


「負けるな、負けるなどん太……!」

『…………ガウッ!!!!!』

『どん太が【極限化】を発動しました』

『ッ!!! ガアアア!!!!!!』


 頑張れ、どん太……負けるな! 踏ん張れ!!!


『モッチリーヌ3世の究極の右足が炸裂! クリティカル! どん太が776,551ダメージを受けました! どん太の【巨大魔狼の矜持】が発動! どん太がHP1で食いしばりました!』

『ガァアアア!!??』

『ワオォォォォオーーーーーーン!!!!!!!!!』

『わぁお……♡』

「行け!! どん太!! どん太やれ! やっつけろ!!!」


 モッチリーヌちゃんが、どん太を倒しきれなかった……! いや、どん太が倒れなかった!! モッチリーヌちゃんは地面に降りた、どん太行け、どん太行け!!!


『どん太が【究極魔狼身弾】を発動、モッチリーヌ3世に55,428ダメージを与えました』

『ガッァ……!!?』

『モッチリーヌ3世が【剛体】を発動しました』

『2COMBO! どん太が【究極爆滅二段掌】を発動、モッチリーヌ3世に合計61,177ダメージを与えました。どん太は食いしばっている!!』

『どん太のドッペルが復活しました』

『あっは……♡ うっそ……♡』

「どん太ーーーーーッッッッッッッ!!!!!!!」

『ワオォォォオオオオオオオオン!!!!!!!!』

【3COMBO! どん太が【超究極魔狼拳】を発動、究極の黄金の右足が炸裂! クリティカル! モッチリーヌ3世に311,442ダメージを与えました。モッチリーヌ3世が【魔狼王の誇り】を発動、HP1で食いしばりました』

『4COMBO! どん太ドッペルがモッチリーヌ3世に311,442ダメージを与え、撃破しました。経験値 0 獲得』

『どん太が力尽きました……』


 あ……あは……ははは……!! 勝った……。いや、相打ち……? いいや、勝った……! どん太の攻撃でモッチリーヌちゃんが倒れたんだから、どん太の勝ちだよ!!!


『魔神バビロン(Lv,????)が【リコンストラクション】を発動、どん太とモッチリーヌ3世が復元されました』

『わうぅ……? (勝った……?)』

『くぅ~ん……(主様……主様……負けてしまいました……)』

『よくやったわね、モッチリーヌ。勝負に絶対はないの、こういうこともあるのよ』

「どん太!! よくやったよ、どん太ァ……!」

『わうぅぅん♡』


 バビロンちゃんがどん太とモッチリーヌちゃんを復元してくれた。どん太は大喜びだし、モッチリーヌちゃんは激凹み……。バビロンちゃんのモッチリーヌちゃんを撫でてるときの優しい目、慈悲深い目だぁ……。大事にしてるのが、伝わってくる……。


『認めなさいな、モッチリーヌ。どん太が魔狼王を名乗ることを許しましょうね?』

『わんっ……! (認めますわ、完全に敗北したことを。今日から貴方は、魔狼王どん太ですわ)』

『ふふっ……♡ 伴侶が見つかって、良かったわねぇモッチリーヌ♡』

『わうぅぅん……(そ、そんな、まだ決まったわけでは……)』


 魔狼王どん太……魔狼王どん太かぁ……! 開始して数日で、どん太が魔狼王になるとは、思いもしなかったなぁ……。


『わうんっ(僕は、ならないよ)』


 え…………? 今、なんて言った、君? どん太くん…………?


『理由を言いなさい』

『わうっっ!!! わうわう……わんっ!! (僕はもっと、世界中を旅して、もっと強い奴らと戦って、もっともっと強くなったら、そうしたら、モッチリーヌちゃんを迎えに来ます!!)』

『…………ねぇ~~~イカれ女ァ~~~~!!! この子、いい子!』

「どん太ぁ……」

『わぅ、わうっ……♡』

『わんっ!! (僕は、もっと修行します! もっと強くなりたい!)』


 どん太がいい子過ぎて、私にもったいないぐらいだぁ……! そうだね、私のわがまま横暴な立ち振舞に文句も言わず、最初から言われた通りに何でも素直に従ういい子だったねお前は……。そっか、強くなりたいか~……。ギルドには強い人達がいっぱい居るし、強いモンスターともいっぱい戦った。全部を圧倒的な力でねじ伏せられるぐらい強くなりたいんだね、君は。


『どん太の進化先が新たに開放されました』


 お……? 新たな、進化先……? とりあえずアンデッド強化を起動して、見てみよう……。



【★魔狼王】(不死属性・悪魔系・大型)

・巨大魔狼族の王として認められし存在

・魔狼拳を鍛え、その極限の一撃を敵に叩き込む王者の戦いを遺憾なく発揮する


 こっちは元々あったほうだから、こっちじゃない……。


【★★探究者】(不死属性・悪魔系・大型)

・巨大魔狼族の王としての道を棄て、魔狼拳を極めることを選んだ存在

・魔狼拳を極める道は困難なものとなるだろう。この選択を後悔しないよう、覚悟するべし


 これだ……。今でも極限化と究極魔狼拳が使えるのに、これを更に上回る何かを求める選択ってことね。あてもない、困難な道の選択だわ……。でも、どん太が魔狼王にはならないって言うんだから、この先にある何かを欲してるんだから、こっちしかないよね。


『【アンデッド強化】を発動、どん太の【★★探究者】への進化がリクエストされました』

『魔狼王クラスへの進化が放棄されました。スキル【統率者】が削除されました』

『スキル【巨大魔狼の矜持】が削除され、【食いしばり】に変更されました』

『スキル【魔狼王の誇り】が習得出来ませんでした』

『覇者の証を消費しました』

『どん太のスキル強化はありません』

『どん太のステータスが大幅に上昇しました』

『どん太の【★★探究者】への進化が完了しました』



・ステータス

【名前】どん太

【レベル】1(MAX75)

【属性】ボス属性・不死属性・悪魔系・大型

【性別】オス

【職業】★★探究者

【カルマ値】0


【HP】130,500

【MP】0

【闘】10


【STR】591

【AGI】721

【TEC】633

【VIT】849

【MAG】0

【MND】4


【スキル】

【究極を求める魔狼】

・斬滅

・爆滅二段掌

・魔狼身弾

・食い千切り

・超咆哮

・金剛

・究極魔狼拳


・食いしばり【HPが0になった時、10秒間HP1で耐える】【クールタイム10分】

・ドッペル【パッシブ】

・黄金の右足【パッシブ】

・愛されマスコット【パッシブ】


【覚醒スキル】

・極限化【全スキル強化】



「どん太、これで良いんだよね」

『わんっっ!!』

『きっと道は険しいでしょうけど……応援してるわね~♡ ほらモッチリーヌ、今更恥ずかしがらないでくれるかしら~?』

『わぅ、わんっ、わうわう……?(ずっと、待っていますわ。きっと、迎えにいらしてね……?)』

『わんっっっ!!! (もっと強くなったら、プロポーズするから!)』

『きゃぅぅん……!?』


 ――ねえ、それはもうプロポーズだよどん太。


『イカレ女、お友達が探しているみたいよ~?』

「あっ……! 行ってきます、あの、バビロンちゃん、モッチリーヌちゃん! ありがとう、ございました!」

『は~い♡ モッチリーヌは此処に残りなさい? 判ってるわよね? ワタシと修行ね? ちょっとたるんだんじゃないのかしら~?』

『わぅぅぅ……!?』


 お、おお……モッチリーヌちゃん、実質プロポーズを受けたばっかりなのに即座に地獄送り……。どうか強く生きて……。私達は、ペルちゃんのところに戻るからね……。


「いこっか」

『わんっ! (わかった! お腹へった!)』

「あ、そうだ! 美味しいご飯があるんだった! 後でペルちゃんにオッケー貰ったら、あげるね!」

『きゃうぅぅううぅぅん♡♡♡』


 どん太も、ご飯の話になったら格好いいどん太からいつものどん太になるのね……。でもどっちのどん太も、私は大好きだよ。ふふっ、可愛いヤツめ……。


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