天使狩り・5 ~デジャヴュ~

◆ 魔神殿・ギルドルーム【ロビー】 ◆


【★★★地獄行き海鮮盛列車・タベラレール号】(地獄・アルティメット・食材)

・凄い! 器まで食べられる超特盛海鮮丼!

・器の素材は魚の練り物で出来ています。ボディの青い色は食用の着色料です

・食材カテゴリーですが、そのまま料理としてお召し上がり下さい

 ――魚の生の切り身でしょ!? 食材でしょ!? 料理!!?? これを食べるっていうの?! OMG...byとある人物の叫び

 加工可(加工後レアリティ降格)・完食時スキル獲得・開封後制限時間10分・重量50.0kg


「どん太、待て。待て……よだれが全然待ってくれてないんだけど」

『わぅぅんっっっ!!! (待ってるよっっっ!!!!)』

「前のおさかなのソーセージの5倍ですわよ……!?」

「どんちゃんなら行ける~」

「ちょっとそれさ、僕スクショ撮りたい~~~!! 待って、待ってどんちゃん食べないで~~」

「すげえな、デケえ……こういうのもアリなのか」

「なんやごっついなぁ!!? これ10分以内は人間には無理やでほんま」

「エリスちゃんはあの一角を食べたらお腹いっぱいですね~……」


 モッチリーヌちゃんとの激戦を終えて、どん太へのご褒美として用意されたのはもちろん、あの時宝箱から出てきやがったタベラレール号でした。ペルちゃんも『食べきれないからどんちゃんにあげましょう!』って許可してくれた。これ以上待てをさせるのも可哀想だけど、尻尾で風魔術が出せるんじゃないかってぐらい尻尾をブンブンさせておすわりしてよだれだらっだらのどん太の顔を見ると、なんかいつまでも見ていたいような……!!


「と、撮った!!」

「どん太、よしっ!!」

『わぅぅぅううぅぅぅう~~~~~~~!!!! わぅぅぅぅうううぅぅぅぅぅぅううううぅぅうん!!!!♡♡♡♡♡』

『【★★★地獄行き海鮮盛列車・タベラレール号】が開封されました。スキル取得の制限時間は10分です』


 いつの間にか帰ってきてたお昼寝さん達が見守る中、どん太のタベラレール号への挑戦が始まった! いやぁ、いつ見ても君の食べっぷりは凄いね……。そんな30kgの米袋の倍ぐらいあるサイズの魚介魚介魚介尽くしな鯨列車を再現した見た目ヤツ、絶対一人で食べるものじゃないからねそれ?  ねえ~~~もう半分ないんだけど!?


「す、吸い込まれとる……!」

「おいおい、このままじゃ瞬殺だぜ」

「10分いらんでこれ!?」

「私より重い。私、丸呑み?」

「エリスちゃんとお昼寝も丸ごと食われそうだねぇ~」

「僕ギリギリ50よりあるかも……リンネちゃんは~……あっ……」

「なにが”あっ”なんですか? どこ見て言ったんですか?」

「「「…………胸?」」」

「せめて誰か一人ぐらい誤魔化して身長って言いませんか!?」


 お昼寝さん達覚えてろよ~~~……!!!? ねえそれよりどん太、50kgだよ? 私よりちょっと軽いぐらいだよ?! ここに居る女性プレイヤーの誰か一人をバクバク食べてるようなもんなんだよ!? あ、半分食べ終わった辺りから残りの少なさを見て味わって食べるようになった……。10分まではかからないだろうけど、ちょっと時間を掛けて食べようって思い直したのね。偉いぞどん太……。


「リンネさん! アレの鑑定が終わりましたわよ!」

「え、ああ! どうだった!?」

「これですわ~!!」

「…………【★撃つボッ!】って、なにこれ……?」


【★撃つボッ!】(最上級・レジェンダリー・大砲(主武装限定)・空きスロット1【○】)

・スキル【重火器取り扱い】の習得が必須である

・MPの50%をチャージし、ウツボ型砲弾を発射する!

・ウツボ型砲弾はある程度ターゲットした敵を追尾する

・爆発時に射撃ダメージを参照した直接攻撃属性の打撃ダメージが追加で発生する

・爆発に反射相手が存在しない為、反射が実質的に無効

・射撃ダメージ+25%+0%

・空き

 ――――撃つ!! (ボッッッッッッッッ!!!!!!)

 強化可能・重量12.0kg


「うわ、うわまた変なのドロップしてる、なにそれ」

「あーそうでした。これは……」


 どん太が味わって食べてる間に、お昼寝さん達に何があったのか話しておいた。熱排気モードを何らかの方法で妨害すると熱暴走モードになって、そうすると禁じられた戦闘形態のヘルホエール号に変形するっていうこととか、ターゲットの優先順位、モンスター図鑑に記載されている詳細とか倒した方法とか。


「この、搦め手が一切効かなそうな真・殺戮者が一番困るね」

「黄金障壁盾で相殺3回決めても殺しきれねえな」

「ヘルホエール号のターゲット、私取れる~」

「赤いのをどうするかだよねぇ~」

「ワイが遠距離の斬撃もっとるから、誰かと交互にタゲ取りして、攻撃されたら即死亡のキャッチボールするしかあらへんやろ」

「スムーズに出来ればいいけどさ~」

「緊急時はエリスちゃんの幻影に、誘惑のワルツ踊らせてデコイにするしかないでしょ~」

「自分が踊っとらんでも踊りスキル発動出来るようになったんは、ほんまデカいなぁ」

『わうぅぅ……!? (これしかなくなっちゃったよ!?)』

「そりゃお前、食べたんだからなくなるでしょ……」

「自分で食べたのに無くなったのにビックリしてますの?!」


 一番ビックリしてるのは、お昼寝さん達とちょっと話をしてる間に最後の一口になっちゃってた君の食べる早さだよ!! 自分で食べたくせに、これしかなくなっちゃったって、そりゃあ食べたらなくなるでしょうが……! 食べたのに逆に増えてたら異常な存在だよ!! 


『どん太が【★★★地獄行き海鮮盛列車・タベラレール号】を完食しました。完食までの時間は7分11秒でした』

『どん太がパッシブスキル【地獄行き超特急】を習得しました』

『どん太のダッシュ性能が強化されました』

「うわ食べきった……」

『わんっっっ!!! (ごちそうさまでした! 食べ終わったら千代ちゃんが言ってた!)』

「ごちそうさま出来て偉いねぇ~……」

「本当に10分以内に食べきりましたわ……!?」

「その、わんっっ!! ってごちそうさまだったんだ、偉いねどんちゃ~ん」

「食べ物に感謝するとは、偉いぞ。それにしてもいつまでその空っぽの大皿舐めてんだ」

「まだ食いたりひんって顔しとるで! でもアカンアカン、それ以上食ったらアカンって、50キロやで!?」

「…………どん太、食い物を狩りに行くよ。ドラゴンだ」


 どん太が完食してもまだ物足りないって顔をしてるけど、これ以上は人間用のご飯しか持ってないから……どうしても食べたいなら、行くしか無い。肉を狩りに。ドラゴン狩りに行くしかないんだよ、お前……!


「おう、そういやドラゴン来てるんだってな。絶対レーナが殺ったやつの報復だろ」

「たぶん、そっ」

「子供が殺されて親兄弟総出で復讐しに来よったんか、仲間思いなやっちゃなぁ」

「あんなにいる。一匹ぐらい大目に見て欲しい」

「などと供述しており~」

「レーナ容疑者は反省の色を見せていない様子で~」

「私は悪くないもん。落ちて勝手に死んだ」

「と、容疑を否認しています」

「ほな、ワイらも共犯者になり行こうや!!」

「パーティ分け、どうする~?」

「教会はどうする?」

「あ~……ゴリ押ししに行く~? 機械だっけ? 超酸爆弾で一掃だ~」

「ほなサッサと潰そうや! 20分以内に帰って来てドラゴンや、ドラゴン!」

「おう、行こうぜ。ダッシュだダッシュ」

「ハッゲやる気じゃ~ん。じゃ、エリスちゃん達はささっと行ってくるですよ~」

「行く~~~。今度は不意打ちもセーフ」

「レーナ、お前それマジでズルいな、俺も飛びてえ」

「飛ぶハゲなんざ見たくないわ、ボケ!」


 あ、そういえば教会あったわ。完全に忘れてた。こっちも猛ダッシュで教会潰しに行って、パパパッと全滅させて、ドラゴン行こうよドラゴン! よ~し、全員集合だ~~! あ、この大砲どうしよ? 重いんだよなぁ~……。


「ペルちゃん、この大砲どうする?」

「重いですし、倉庫に……あ! 自慢がてらオークションに5万円スタートで即決無し3時間で出しませんこと?」

「いいね。さすがに買い手なさそう。自慢は大事」

「自慢は大事ですわ! それ、出品! わたくし達も教会潰しに行きますわよ!」

「ローラちゃんの恋敵と元想い人ぶっ倒しにいくかぁ~~」

『わんっっ!!』


 とりあえずオークションにぶん投げることになった。5万円出してまでこれ、買わないっしょ~。それに12時前には出品終了だし、この短時間で5万円以上になる商品を入札する覚悟は出来ないね。どれ、教会行こうよ! 全員集合してさ、ローラちゃんの因縁の相手を再蹂躙しに行こうぜい!




◆ 廃教会入り口 ◆




「せ~~~のっ!!!」

「「「押せ押せ押せ押せ押せっ!!!」」」

「「「うぉおおおおおおおっっ!!!」」」

「ふれ~。ふれ~」

『きゃぅぅぅうううぅぅぅう~~~ん!!!!』


 何が起きてるかって? 見ての通りだよ。どん太が教会の入り口でね、つっかかったんだよ!!! 前もやったでしょこれぇ!!!!! 日を跨いだからかしらないけど、廃教会入り口をどん太のおしりサイズにぶっ壊した穴が修復されてるのよ! またつっかかった! まただぁ!!


『ぎゃうぅぅぅううん!!!』

「あ!! 通った!!」

「通った~~~!!」

「ふぅ~……やれやれだぜ」

「ほんま、なにやっとんねん……」

「行った~~~~!!!!」


 でも前よりちょっとスリムになったか!? 通った、通ったよどん太! すぽっ……っと行ったよ! お昼寝さん、ハッゲさん、レイジさん、エリスさん……ありがとうございました。そして応援してくれたレーナちゃんもありがとうございました!


「ほな行ってくるわ!」

「またねぇ~どんちゃん~」

「初手でぶっ飛ばせばいいんだったよな?」

「そうです! いってらっしゃい~! ありがとうございました~!」

「撃ち抜く~」

「エリスちゃん達頑張ってくるよぉ~またねぇ~~」

『わうわうっ! (ばいばい! ありがとね!)』


 向こうの5人組が封じられた教会に入っていった。いやぁ~今回入らなかったら、今度は千代ちゃんのドロップキックとねーさんの全力タックルが待ってたから、入ってよかったねぇどん太……。


『わぅぅん!! (入った!)』

「そうだね、入れたね。良かったね……」

『わうぅぅん!!! (入った入った!!)』

「これで入れますわねぇ~! では、行きますわよ~!」

『パーティリーダーからの申請を受諾……。転送カウントダウンを開始します』


 前回入れなかったのがよっぽど悔しかったか。入れただけでこの喜びっぷり、可愛いやつよ……。どれ、私達も入るか~このダンジョンに。しっかし人居ないな~って思ったら、そうだね? みんなドラゴンの方に行ってるもんね? 居なくて当たり前なんだよなぁ。あ、初クリアパーティに私達の名前が入ってる。あれそっかまだローラちゃん達は居なかったな~。ん、ローラちゃんがなんか深刻そうな顔してる……? そうか! そうだったわ!


「…………」

「ローラちゃんローラちゃん」

「は、はいぃぃ……」

「ここはね、過去の記録の再現なの。昨日私達がぶっ倒したんだけど、今日になったらまた元通り戻ってるからさ、何回でもぶっ倒せるわけ」

「は、はいぃ……?」

「つまりこれから毎日、ローラちゃんはここに出てくるドゲルを好き放題ぶっ殺して良いということです」

「は…………はっ……!? やったぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁ~~~……」


 昨日そういえば殺したって言ってたからもう居ないと思ってたのね! 大丈夫だよ、何回でも殺れるから! 好きなだけぶっ殺して良いんだよ!


『カウントダウン、5……4……3……2……1……0。転送』


 


◆ 封じられた教会 ◆


「死者よ、嘆くなかれ。私に委ねよ、私が救い私が癒そう。悠久の休息を此処に、嘆きの死者に憐れみを――――」

『ローレライが【鎮魂歌レクイエム】を歌い始めました』

『ローレライが【夜想曲ノクターン】を演奏し始めました』


 ローラちゃんがね、敵は天使と不死者しか居ないよって言ったら、即これら二つを発動しましたね。ログ? 経験値1獲得しかながれてないから表示してないよ? だってこの狭い教会の中、反響がフルヒットする環境での大ダメージ連発の演奏・歌唱スキルよ? レベル45の天使だとかレベル10の雑魚アンデッドなんて粉砕よ粉砕。塵に帰れ。


『Weak!!! 堕ちた神官・ドゲル(Lv,70)に合計225,551ダメージを与え、撃破しました。経験値 533,599 獲得』

『クリア条件を達成しました。報酬を受け取る場合は入り口から見て中央交差路の左翼のポータルへお進みください』

『1階層でのボス討伐を確認』

『裏クリア条件を達成しました。報酬を破棄し、禁じられた楽園ダンジョンに進む場合、報酬フロアの反対のポータルへお進みください』


 はい。終わった。ざっこ……。


「はい」

「まあ、そうなりますわね」

「ざこざこアンデッドぉぉ……ざこざこ天使ぃぃぃ……よっわぁぁ……♡ うち、つよぉ~い……ドゲルざこざこ~~……♡」

「全くあんたは、すーぐ調子に乗るねぇ……」

「そこが可愛いのではありませんか!」

「弱い相手でも、油断しちゃだめですよっ!」

『わんっっ! (どんな相手も全力でやっつけないと!)』

「うぅぅ~~賛否両論だぁ~~……」


 全く、ローラちゃんったらすぐに調子に乗る……。そんなドスケベな格好でざこざこって煽りまくるんじゃないよ、もう。相手が興奮して復活したらどうすんの。まあしないだろうけど。


【裏ダンジョン・禁じられた楽園】(推奨レベル70~)

・発見ギルド【華胥の夢】、発見者【リンネ、ペルセウス、07XB785Y】

・初クリアパーティ【リンネ、ペルセウス、07XB785Y、どん太、オーレリア、フリオニール、姫千代】

・初クリア以外の直近クリアパーティ【なし】【なし】【なし】

・最大8人までパーティ入場可能

・メモリアルダンジョン

・ペナルティ:封じられた教会の報酬全破棄

・ペナルティ:制限時間20分

・ペナルティ:ダンジョン入場時全状態解除

・1日1度の挑戦が可能(毎日5:59に回数制限リセット)

・パーティメンバーは全員ポータル内に入って待機してください

・30秒のカウントダウン後、ポータル内のメンバーがダンジョン内に転送されます


『パーティメンバーを確認…………登録人数、7人』

「ん?」

「あら……?」

「どうしたんですかっ?」

「7人? あれ、ちょっと待ってね? 私、ペルちゃん、どん太、リアちゃん、千代ちゃん、ねーさん、ローラちゃん………………」

「あっっっ!?」

「あっ」

「あちゃ~~…………」

『わぅぅん!?』

「あ、いないぃ……!」

「おばけ殿……!?」


 し、しまった、おにーちゃんを拾ってくるの、忘れてたーーーーーーっっっ!? 弾よけにおにーちゃんって思ってたのに、どーーーしよっか…………どーしよ。




◆ 一方その頃、フリオニールは…… ◆


「なあ、あんた……。鎧のまま風呂に入ってて、その、大丈夫なのか?」

『(*´∀`*)b』

「そ、そうか。あんたが良いなら、まあ……良いのか……」


◆ 禁じられた楽園 ◆




「おにーちゃん、魔神殿の大浴場に居るわ……」

「なんでそんなところにいるんだい……」

「バビロン様に会いに向かって、その後何かをして、男湯の大浴場に居ましたのね……。回収に向かえる人が……どんちゃんしか居ませんでしたわね……」

「……ふ……ふっ……」


 悲報、おにーちゃん、置いてきた。そもそもなんで大浴場で風呂に入ってんのよ……。私が入れない場所に居るんじゃないよ……。呼びに行けないじゃん!! なーにやってんのよ~~~!!


「ローラ、やめときな、絶対口に出すんじゃないよ」

「ふ、ふへっ……! むりぃ……! いい、いいい、言っちゃう……っ!」


 待って、ローラちゃん絶対ロクでもないこと思いついたね? 言うなよ、絶対言うなよ!?


「フリオニールが、風呂にいーる…………っぐ、ふへ、んひっ……!!!」

『ペルセウスが【凍結】状態になりました』

「あああああああああああ!!!!! ペルちゃんアイギス使ってないから凍ったぁ~~~~~!!!!」

「あ、始まっちゃいますよ! 機械の天使が起き上がりますっ!!」


 うわぁ~~~!!! もう始まってるのに、しかもバフ全部剥がれてるの忘れてた! うわ、うわ、うわああ!? なにやってくれてんのローラちゃん、マジで、もぉぉお~~~!?


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