天使狩り・3 ~狂愛の行く末~

◆ 禁じられた楽園 ◆

 

『実験体107号・キャミエル(Lv,85)が【ヘビーエンジェルダスト】を発射しました』

『実験体108号・クーガエル(Lv,85)が【ヘビーエンジェルダスト】を発射しました』

『実験体109号・ケリンエル(Lv,85)が【ヘビーエンジェルダスト】を発射しました』

『実験体110号・コディエル(Lv,85)が【ヘビーエンジェルダスト】を発射しました』

『実験体111号・サシャエル(Lv,85)が【ヘビーエンジェルダスト】を発射しました』

『特殊変異体・マリエル(Lv,99)が【ソードハリケーン】の構えを取りました』

『自動修理機・ナオールくん(Lv,55)が特殊変異体・マリエル(Lv,99)を完全修理しました』


 3階層、ここで時間を取られてしまった。既に戦闘開始から4分経って、残り13分を切った。この5体の時間差射撃による重機関砲掃射に隙が生まれず、今なら行ける! ってタイミングで切り込もうとすると特殊変異体マリエルって4本腕の機械天使兵がソードハリケーンを放ってきて、周囲に真空波を飛ばしてくる。これでまさかのペルちゃんのペネが全部剥がれるのが厄介で、遠距離無効のペルちゃん無双にならないのが非常に困る。しかも攻めあぐねると修理されるっていうおまけ付き。

 じゃあリアちゃんが魔術を撃つかっていうと、リアちゃんが頭を出すと集中砲火を受けて魔術を撃つための起動ワードからの魔法陣展開が間に合わない。これはおにーちゃんが必死に盾受けしてくれてリアちゃんが蜂の巣になるのを防いでくれたけど、ここの6体の連携が非常にうざったい。

 どん太は当然のように的。レーナちゃんはクイックドローショットを撃つけど、ほんっっっっっっとうにうざったいことに、この107号から111号が左腕に大盾を持っててそれで弾いてくる。千代さんは緋影御前を抜けば倒せるみたいだけど……。こっちのワガママで申し訳ないんだけど、どうにかして突破のいとぐちがないかだけでも探したい。こいつらを倒すのにゴリ押ししかないはずがないのよ。こういうところで無駄にゲーマーの血が騒いじゃうのね、ペルちゃんも私もレーナちゃん先輩も……。


「弾切れする様子もありませんわねぇ……」

「向こうがちょっと高いところにいるのも、うざい……」

「後衛を倒すには、一番前のデカブツ4本腕を倒さないと階段を塞がれてるし……」

『くぅ~ん……(頭の上、ぴゅんぴゅんって怖いよ~)』

『(´;ω;`)』

「此方が意見を述べても?」


 見かねた千代さんがアドバイスをくれるらしい。この段差を利用した遮蔽物から出て攻勢に転じる方法が、あるんですか? 千代さんのゴリ押し以外で……?


「頭を出せば集中的に狙われまする。それでは、全員同時に頭を出したら?」

「ソードハリケーンが飛ぶのでは……?」

「あの剣舞中、後ろにいる鉄の天使は隠れまする。まずは剣舞を出させ、終わりと同時に全員突撃。おばけ殿が四つ腕を抑え、ペルセウス殿とどん太殿が後衛を蹴散らし次第、挟み撃ちで四つ腕を倒す。此方が出なければ、これが最適解かと」


 私より戦況分析してる人がいるよう……。戦いの年季の違いみたいなの感じちゃう……。千代さん、こういう状況に何回か陥ったことがあるのかなぁ? 修羅場を潜り抜けてきた戦いの鬼って感じがするよね……。


「なるほど、それなら行けそうですわね……」

「後衛組は、先に数を減らす?」

「私が凍らせてから突撃は、どうでしょうっ!」

「氷の術も扱えるのですか! では、凍らせて突撃。これが一番では?」

『わんっ!! (もうジッとしてるの、我慢できないよ~!)』

『(`・ω・)b』

「じゃあ、それで行こう! 保険を更新しておこうね。阻め、ボーンシールド!」

『パーティメンバー全員が【ボーンシールド】状態になりました』

「賛成ですわ! では、わたくしが出てソードハリケーンを誘発致します」

「お願いしまーす」

「ペルちゃん、頼んだよっ! リアちゃんも、お願いね! 沈め、ネガティブオーラ!」

『3分間、パーティメンバー全員の全ステータスが+40されます』

「はいっ! 有象無象ラウダ・ナウダ黙れサレナ!!! …………」


 さて、じゃあ千代ちゃん立案&リアちゃんの機転の突撃作戦、行きますかぁ…………あれ? プレイヤー3人が脳みそ使ってらっしゃらないですね……? いや、いま気にするところそこじゃない! 集中っ!


「行きますわ!!」

『ペルセウスが【ヘビーエンジェルダスト】を無効化しました』

『ペルセウスが【ヘビーエンジェルダスト】を無効化しました』

『ペルセウスが【ヘビーエンジェルダスト】を無効化しました』

『特殊変異体・マリエル(Lv,99)が【ソードハリケーン】を発動しました!』


 ペルちゃんが銃弾を防いで、四つ腕が腕を回転させて真空波バラマキしてくる、後衛が盾の後ろに引っ込むハズ、真空波が着弾する音がした! 状況確認の為にひょいっと頭を出して確認! 本当だ! 全員後ろに隠れてる! 四つ腕も翼が真っ赤になって放熱モードに入ってる! ここだぁ!!


「いけぇリアちゃん!!」

永遠にエゥレス!!! 無音の白ミュートブリザード!!!」

『オーレリアが【完全詠唱・無音の白ミュートブリザード】を発動しました』

『Resist……。実験体107号・キャミエル(Lv,85)が100ダメージを受けました。空間凍結に巻き込まれました』

『Resist……。実験体108号・クーガエル(Lv,85)が100ダメージを受けました。空間凍結に巻き込まれました』

『Resist……。実験体109号・ケリンエル(Lv,85)が100ダメージを受けました。空間凍結に巻き込まれました』

『Resist……。実験体110号・コディエル(Lv,85)が100ダメージを受けました。空間凍結に巻き込まれました』

『Resist……。実験体111号・サシャエル(Lv,85)が100ダメージを受けました。空間凍結に巻き込まれました』

『Resist……。特殊変異体・マリエル(Lv,99)が100ダメージを受けました。冷却が終了しました。空間凍結に巻き込まれました』


 よぉしほぼ全員凍った! ただ、これ本来は凍らない気がするなぁ?! やっぱりゴリ押しになったくさいなぁ?! 本当は何を撃てばこいつら止まるんですかぁ?!


『ガウァアアアアアアア!!!!! (もうがまんできなーーーい!! ぺっちゃんこになれ~!!!)』

『どん太が【魔狼身弾】を発動、Weak!!! 特殊変異体・マリエル(Lv,99)が7,700ダメージを受けました』

「どん太に続けー!」

『(`・ω・´)』

「ばーん!」

『Weak!!! 07XB785Yが【スナイピングショット】を発動、クリティカル! 実験体107号・キャミエル(Lv,85)に65,200ダメージを与え、鉄くずにしました。経験値 107,107 獲得』

『フリオニールがレベル8に上昇しました』


 まず一体撃破! 完全にスクラップになれば、修理も何もないね! 


「どん太! そのちっちゃい奴潰せ!」

『わんっっっ!! (わかった!! あいつだ!! あ、逃げた! 待てー!)』

「でぇえええい!!!」

『ペルセウスが【魔大剣・ハイパースラッシュ】を発動、Weak!!! 実験体108号・クーガエル(Lv,85)に12,400ダメージを与え、鉄くずにしました。経験値 108,108 獲得』


 よし、順調に倒せてる。どん太は、あの修理ロボ意外とすばしっこいな……。追いついたら倒しといてね……。後は後衛を倒しきって、あの四つ腕を倒せば……。あ、あいつ動く! 凍結から回復する!


「おにーちゃん、そいつ動く!!」

『(´゜д゜`)!』

『特殊変異体・マリエル(Lv,99)が空間凍結から脱出しました。【ソードハリケーン】の構えを取りました!』

『フリオニールが【シールドバッシュ】を発動、Weak!!! 特殊変異体・マリエル(Lv,99)が1,100ダメージを受けました。スタンしました。【ソードハリケーン】の構えが崩れました』

『Error. Error. X<』


 おお、よく止めた! それにしても、さすがレベル99……。空間凍結とかいう特殊な凍結からの復帰が早いな。レベル差とかもあるんかね?


「後ろ、まだ残ってる」

『Weak!!! 07XB785Yが【スナイピングショット】を発動、クリティカル! 実験体109号・ケリンエル(Lv,85)に65,200ダメージを与え、鉄くずにしました。経験値 109,109 獲得』

『フリオニールがレベル9に上昇しました』

『姫千代がレベル5に上昇しました』

「纏めて串刺しにして差し上げますわ!! ワラキア!!!」

『ペルセウスが【魔大剣・ワラキア】を発動、Weak!!! 実験体110号・コディエル(Lv,85)に11,400ダメージ、実験体111号・サシャエル(Lv,85)に11,500ダメージを与え、それぞれを鉄くずにしました。経験値合計 221,221 獲得』


 おおっ! ペルちゃんのそのスキル初めて見た! 魔剣を地面に突き刺すと、前方の敵を足元から串刺しにするのかな?! 盾でガードしてる状態でも、足元からこれをやられたらガードの意味ないね! でも今パーティメンバーのHPとかMPバーを見てたけど、ごっそりと90%ぐらいMP無くなったねぇ?! 1回発動で45%ぐらい、2回目で更に45%って感じの減り方したよ?! これは、乱発出来ないタイプのスキルか、ペルちゃん……。


「MPすっからかんですわ?! これ都度消費ですの?!」

『どん太が【爆滅二段掌】を発動、黄金の右足が炸裂! クリティカル! 自動修理機・ナオールくん(Lv,55)に合計14,800ダメージを与え、鉄くずにしました。経験値 55,000 獲得』

『わうっ!! (やっと倒した! すばしっこいネズミみたいだった!)』


 お、どん太君おつかれおつかれ。修理ロボが四つ腕をちょいちょい直そうと向かっていってたから、スタンから復帰されちゃたまったもんじゃないし、ナイス妨害だったぞっ!


『特殊変異体・マリエル(Lv,99)が【ソードハリケーン】の構えを取りました!』

『フリオニールが【シールドバッシュ】を発動、Weak!!! 特殊変異体・マリエル(Lv,99)が1,100ダメージを受けました。スタンしました。【ソードハリケーン】の構えが崩れました』

『(`・ω・´)』

『Error. Error. X<』


 そして二度もソードハリケーンを止めたおにーちゃん。カウンターとかバッシュ効く相手なら貼り付ければ、あなた無敵なんじゃないですか? そのスタンとか気絶とかのループコンボ鬼過ぎない?


「終わりよ」

『Weak!!! 07XB785Yが【スナイピングショット】を発動、クリティカル! 特殊変異体・マリエル(Lv,99)に65,200ダメージを与えました』

『Weak!!! 07XB785Yが【デッドエンドショット】を発動、クリティカル! 特殊変異体・マリエル(Lv,99)に122,200ダメージを与えました。特殊変異体・マリエル(Lv,99)が自爆します!』


 あーーーやばい、自爆持ちだったぁああ……!!!


『( ゜д゜)!』

『フリオニールが【シールドバッシュ】を発動、Weak!!! 特殊変異体・マリエル(Lv,99)が1,100ダメージを受けました。スタンしました。【自爆】が停止しました……』

『(`・ω・´)』


 やっる。おにーちゃん、やるじゃん……。おうおうおう、自爆持ちのクズ鉄よぉ……。覚悟出来てるよなぁ……?!


「先生、お願いします」

「せ、せんせ……?! 此方に任せてくだされ! それっ! ぽんぽんぽん、ぽーーんっ!!」

『姫千代が特殊変異体・マリエル(Lv,99)に合計44,400ダメージを与え、鉄くずにしました。経験値 999,999 獲得』

『オーレリアがレベル36に上昇しました』

『フリオニールがレベル10に上昇しました』

『姫千代がレベル6に上昇しました』


 ぽんぽんぽん、ぽーーんっ…………? え、なにそれ、ちょっと可愛くないですかそれ、先生……?! あ、リアちゃんもレベル上がった。久々にレベルアップの表示見たなぁ……。姫千代ちゃんの時は戦闘参加してなかったから、経験値が私とどん太にしか入ってなかったんだよね。


「残り10分ですわ!」

「沈め、ネガティブオーラ!」

『3分間、パーティメンバー全員の全ステータスが+40されます』

「行こっ、多分ここが雑魚の最終エリア」

「四本腕が6体とか出てきたら、どうしましょう……」

「その時は、今度こそ此方が斬り伏せまする!」


 いけない、残り10分だ。バフだけは切らさないようにしないと。ボーンシールドは誰も剥がれてないからオッケー! ここでかけ直すと、クールタイムが出て無駄撃ちになっちゃうからね。


「行きますわよ!」

「ごーごー」

「行こうっ! どん太、もうちょい詰めて!」

『わうぅぅぅ~~~…………』

『)ヽ´ω`(』

「はわっ……?!」

「此方とリンネ殿の間、定位置になって参りましたねっ! わぁっ?!」

「しあわせくうかん…………」


 この狭いポータル内でイチャイチャし始めるのやめてもらっていいですか?! 私、幸せな空間が目の前にあって死にそうなんですけど?! あ、どうせだからペルちゃんも引き入れちゃお!


「え、ええ?!」

「ほら、ペルちゃんも」

「いいですね! 狭い空間はこれが一番よいです!」

「はわわわ、三人のお姉さまに囲まれてます……!」

「ちょう、しあわせくうかん……」

『わんっっっ!! (仲良しだねっ!)』

『ボスフロアに転送します。準備はよろしいですか?』


 ちょっとシステムメッセージさんキレ気味じゃないですか? 混ざりたいんですか? ダメです。あ、転送はしてください。役目でしょ。


「やっぱり、次がボスですわね! 気合い入れていきますわよ!」

「おあ~~……いやもうちょっと……」

「レーナちゃん先輩、しっかり! 魂が抜け掛けてる顔してますよ!?」

「頑張って焼きます……!」

「焼いて斬って撃ち殺しましょう!」

「ぶった斬りますわよ~!」

「撃ち殺~す……」

『わんわんっっっ!! (殴りたお~す!!)』

『Σ(´∀`;)』


 この人達物騒過ぎない? もしかして皆、どこぞの戦闘民族の出身だったりしない?


『転送を開始します……3……2……1……転送』




◆ ◆ ◆




 ナタリア……。悪魔に魂を売って手に入れた時間を巻き戻す装置も、アンデッドとして蘇らせる為に禁術に手を出しても蘇らなかった君を……。今僕が、この手で、この力でッッッ!!! 封じられた、禁じられた僕の機械生命体を作り出す力でッ!!! 再び命を与えて見せる!!! もはや君の故郷の国も、僕らを裏切ったあの悪魔も、全て、全て! 何もかも失った! どうか、君だけは……。君の声が聞きたい、君がいないと僕は、僕は――――ッ!!! 

 だから、蘇れ! 蘇ってくれナタリア! この熾天使の心臓で!!! 蘇っておくれ!!!



 ――――僕の最愛の人魚姫!!! 



『エクス・マキナ・ナタリア(Lv,105)が蘇りました』

『エクス・マキナ・ナタリア(Lv,105)が暴走しました』

『ドゲルゴースト(Lv,70)が【アンデッド憑依】を発動、完成体・マイスタードゲル(Lv,100)が復活しました』



◆ ◆ ◆

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