バビロニクスでお楽しみタイム・3 ~騎士の誓い~

◆ バビロニクス・市街地エリア【修練場】 ◆


 リアちゃんは完璧に寝てしまうと、明るい黄色っぽいような感じの茶トラ猫に変身して眠ってしまうことが判明しました。いやービックリした、急にリアちゃんが光って小さくなったから何事かと。さすがにゃ王、猫の王だけある……いや自分でも何言ってるのかよくわかんないけど。


『うぉおおおおーーー!!!!』

『(。・_・。)』

『フリオニールが【マルチカウンター】の構えになりました』

『牡牛のグスタフが【★グスタフサイクロン】を発動しました』

『カウンター! クリティカル! フリオニールが牡牛のグスタフに349,551ダメージを与えました。スタンしました』

『フリオニールが【フルバスター】を発動、牡牛のグスタフに557,550ダメージを与えました。グスタフのHPが尽きました。フリオニールの勝利です』

『だぁあああ!!!?』

『ε-(´∀`*)』

『グスタフ、それが通じるのは雑魚だけだと言っただろう。リーダーにそれが通用するはずないだろうが』

『学習皆無』

『馬鹿の一つ覚えとはまさにこれですわ』


 それで、にゃんこリアちゃんがぐっすりすやすやしてる間に何をしに来たかというと、おにーちゃんが市街地エリアの修練場に居るってわかったから来てみたら、おにーちゃんがさっき召喚してた魔神兵の4人組が一緒だったので、それを見学してるところ。

 赤いマントが格好いい黒い全身鎧の【獅子のレオン】。身長が2メートルを余裕で超えてる巨体で、兜に牛の角の意匠が施された黒い全身鎧の【牡牛のグスタフ】、スラッとした細身でレーナちゃんが使ってるようなマスケット銃を担いでる黒い全身鎧の子が【射手のスージー】、鎧からしてボンッキュッボンッッ!! なのが容易にわかる、鎧すらも女性感が強い黒い全身鎧の方が【乙女のカヨコ】。それで煽り全イチ、我らが豪運の守護者フリオニール……おにーちゃんだけ赤い全身鎧なのが、なんかリーダー感あって面白い。


「おばけ殿は強くなったというよりも、元の技量を取り戻してきたような、そんな動きで御座いますね」

「え、そうなんだ。千代ちゃんにはそういうのわかっちゃう?」

「ええ。あの時、斬り殺してしまった時ですが、此方の剣閃に反応して初撃は防ぎましたね。今更思い出しましたけれど、それが原因で後ろを取ろうとして無理な体勢になって、殺したまでは良かったものの滑って転んで此方も死んだようで」

「ええ…………」


 ついでに様子を見に来た千代ちゃんが言うには、おにーちゃんは復活時点で弱体化状態だったらしい。やっぱり肉体がない分、違和感っていうか技量が下がってたのかな。なんていうか、こう~……自分の体をラジコン操縦してるみたいな違和感? みたいなのがあったのかもしれないね。それがこうして段々と取り戻してきてる……ってことは、全盛期のおにーちゃんってとんでもない化け物だったのでは? 初見で千代ちゃんの奇襲の初撃を防いでるし、やっぱり只者ではなかったのね。


『しっかし、ま~~~なんだ! おしゃべりフリオニールがここまで静かだと、なんだって寂しいなあ、おいっ!』

『リーダー、いつまでアンタは……いや、俺たちが口を挟むことじゃないか』

『口出無用』

『でも、これで良いのでしょう? リーダー』

『( ゜д゜ )彡そう!』

『あ、それウザったいですね。少し昔を思い出しました』

『言葉含有表情、愉快』

『マスターリーダー。リーダーを復活させてくれて、本当に感謝している。また会えて、一緒に戦えるとは思わなかった』

『おう!! ありがとうなぁ、胸のデケ――――ぐあっはぁああああああああ!!!!!!』

『フリオニールが【フルバスター】を発動、牡牛のグスタフに557,550ダメージを与えました。グスタフのHPが尽きました。フリオニールの勝利です』

『m(_ _;)m』

「別に、そこまでしなくても……」


 おしゃべりフリオニール……。昔はおしゃべりだったんだ~、そのくせ部下の失言には厳しいのね。あ、そんなに謝らなくていいよおにーちゃん。人の目を引く大きさだってのは自覚してるから……。それに、過去に何かあって、その戒めとして現状を受け入れてる感じなのかな。おにーちゃんの謎が深まるね。あ、そういえばおにーちゃん達って昔はどこで一緒に働いてたんだろう?


「それより、レオンさん達は昔どこで一緒に活動してたんですか?」

「此方も気になりまする」

『生前、最期の瞬間は聖王国ルテオラだ。俺達は盗賊討伐、モンスター退治、他国の密偵駆除、飢饉の時には隣国まで食料調達に、貴族の護衛に、まあ何でも屋だ』

『気に入らねえやつをぶん殴る仕事だ!』

『掃除屋』

『便利屋だったのは、間違いありませんね。そのくせ給料が安くって……。あ、リーダーそういえばあの盾まだ持ってたんですか』

『Σ(´∀`;)』

『ドラコンシールド、昔よく遊んでたでしょう。今思えば、それで窓を割ったのがキッカケでしたね……』

『(´・ω・`)』

「曰く付きの盾なのそれ……」

『全ての発端はそれだな。捨てたんじゃなかったのか?』

『_| ̄|○』

『捨てても戻ってくるなんて、忠実な盾じゃねえか! 俺達よりちゃんと戻ってくるやつだぜこいつは!』

『魔女様、天才』

『ええ、天才ですから』

『(*´ω`*)b』


 ルテオラかー……。そういえば、赫さん達がギルドハウス設置したし、ダンジョンも発見してたよね。今日はもう時間が中途半端だし、21時からは焼肉があるし~……あ、そうだ。レオンさん達にも参加して貰わないと。


「そうなんですね、ルテオラだったんだ……。そうそう、21時からプールエリアの辺りで打ち上げがてら焼肉パーティがあるんですけど、どうですか?」

『щ(゜д゜щ)カモーン』

『折角だから参加させてもらおう』

『当然行くぜ! 俺様は食うぞ、滅茶苦茶食うぞ!』

「あら、では此方と勝負ですねっ!」

『そんな細身で、俺様より食えるはずねえだろうが! がーーっはっはっはっは!!!』

『敗北予兆』

『わたくし、姫千代様に賭けても?』

『賭けにならない。グスタフに入れる奴がいない』

『同意』

『おめえら、俺様がこの美人の姉ちゃんに負けると思ってんのか!? 何処見て判断してんだ!? 入るところは腹! 胸じゃね――――うごぁあああああああああ!?』

『フリオニールが【フルバスター】を発動、牡牛のグスタフに557,550ダメージを与えました。グスタフのHPが尽きました。フリオニールの勝利です』

『m(_ _;)m』

「こ、此方は気にしていませんから!! おばけ殿、本気過ぎはしませんか!?」

『(´・ω・`)』


 おにーちゃんよ失言に対する制裁がフルバスターなの、殺意高すぎるって……。グスタフさんが毎回吹っ飛んでるって……。あの巨体が飛ぶんだから、おにーちゃんのパワーもなかなかのものよね……。


『リーダー!!! ガチで殺す気で殴っただろ!?』

『(*´ω`*)b』

『ちっくしょーーー!!! 殺ってやる、もう一戦だ!』

『癒やせ、施しの光。ダークアスパーション』

『乙女のカヨコが【ダークアスパーション】を発動、周囲全員のHPが完全に回復しました』

『両者移動、位置確認。再戦開始』

『っしゃあ!!』

『(^_^;)』


 昔っからこんな感じだったのかなー、おにーちゃん達。それに部下の人達もまだ復活してない人が居そうだよね。全員復活したら魔界軍団長とかに昇格しちゃうんじゃない? でもそうなると、私の配下じゃないほうが良くなっちゃいそうだなぁ~……。


「んーーっ、突進力はあるのですが。些か考えなさすぎと言いますか、馬鹿正直と言いますか……」

『そこがグスタフのいいところであり、悪いところでもありますわ。それをわたくし達が補って戦いますのよ。真っ直ぐはグスタフの担当ですの』

『横槍担当』

「なるほど、お互いの短所を補って、仲間全体で戦うと」

『そうなるな。背中を安心して任せられる仲間が居る、それだけで戦場では大きなアドバンテージだ』

『リーダーは一人で完結しているところがありますけれどもね』

『完璧超人』

「おばけ殿とは、万全な状態でお手合わせをお願いしたいものですね。まだお互いに十分力を取り戻しておりませんから、いずれまた」


 いいな~やっぱり、仲間っていうのは。私もちょっと前までソロプレイからどん太加入ぐらいまでは『●●があったら辞めよう』とか、すーぐ辞めるって方向に考えがちだったけど、リアちゃん達が入ってからは『楽しいから次に行こう!』ってなったし、やっぱり楽しめる仲間がいるのはいいことだね。


『うわああああああああああ!!!!!??』

『フリオニールが【フルバスター】を発動、牡牛のグスタフに557,550ダメージを与えました。グスタフのHPが尽きました。フリオニールの勝利です』

『(*´ω`*)』

『チクショー……!! 絶対当てられたと思ったのに、なんでだよ!』

『あれが当たると思ってるから負けるんだろ』

『絶対無理』

『あの大振りでは当たりませんわよ、リーダーを甘く見すぎですわ』

『Σ(´∀`;)』


 おー、またおにーちゃんが勝った。あの爆速の連撃からよくもまあカウンターが取れるもんだよこの人……。今思えば、復活当時からアルトラ相手にスタン気絶カウンターループでハメてたし、力量っていうか技術の差? 強かったんだなーって。


『…………(´゜д゜`)!!!』

『ん? なんだリーダー、剣? これを借りたいって? ほらよ』

『(*´ω`*)』

『フリオニールが【騎士の剣】を差し出しています』

「ん? え? 私?」

『( ゜д゜ )彡そう!』


 あえ? おにーちゃん、何? これでどうしろって? ぶっ叩けばいいの?


『m(_ _)m』

『ん……。ああ、そういうことですか、リーダー。マスターリーダー、リーダーの肩をその剣でぽんぽんっと叩いてあげて下さい』

『軽く』

『思いっきりでいいぞ!』

『馬鹿、本気にしたらどうする! 軽く、軽くぽんぽんっとやればいいさ』


 片膝突いてるおにーちゃんの肩に、この剣で……腹のほうだよね? 刃の部分はまずいか。ぽんぽんっとやればいいのね? まあなんかあるんでしょうし? ぽんぽんしたるか。


『フリオニールを騎士として認めました』

『フリオニールが貴方に騎士の誓いを立てました』

『ヾ(。>﹏<。)ノ゛』

「あっ!?」

『まあ物理的に、特に何か変わるってこともないんだけどな。気持ち的なところがあるか』

『リーダーの自己満足に付き合ってくださってありがとうございます。マスターリーダー……あ、リンネ様とお呼びするべきでしょうか?』

『呼称、主様』

『改めて、獅子のレオンだ。よろしく頼む、新しい我が主殿』

『牡牛のグスタフ、よろしくなぁリンネちゃ――――わかった! わかったって!!! 斧おろせや!! リンネ様、な!』

『(人´∀`):*・゜☆』

『射手のスージー、です。忠誠、誓う』

『改めまして乙女のカヨコと申します。勝手ながら、どうぞよろしくお願いします』

「よ、よろしくお願いします……? リンネ、です。ふちゅちゅかもにょですが……っ」


 はわわわっ……!? おにーちゃんが正式に私の騎士になった系……!? 前の主人から、私に騎士の誓いを移したってこと? 過去に踏ん切りがついたって思って、良いのかなぁ……? 何か特別スキルが増えたとかステータスがアップしたとかじゃないけど、気持ち的になんか切り替わった感じなのかな。おにーちゃんがこれでいいって思ってやったんだから、これでいいんだよね。

 でも良かった、これでおにーちゃんが私から離れていくことは多分、恐らく、きっと……! ない、はず! はず!!!


「あっ! ずるい、此方もずっと一緒だと誓いまする!」

『姫千代様も、何か儀式が?』

「…………ない、ですね」

『接吻? 接吻?』

『誓いのキスとか言うしな』

『お!? 美人と美人のズッキューーーンが見れるのか!? よーし行け行け! 激しく濃厚にい――――ぐぎゃああああああああああ!?』

『フリオニールが【フルバスター】を発動、クリティカル! 牡牛のグスタフに777,777ダメージを与えました。グスタフのHPが尽きました。フリオニールの勝利です』

『m(_ _;)m』

「「だ、大丈夫だよ (ですよ)、おにーちゃん (おばけ殿)……」」


 この場所がHPが尽きても死なない修練場で良かったね、グスタフさん……。私が来てからもう8回以上は死んでるよ……。そして残念だったなグスタフさん、このゲームはマウストゥーマウスのキスは、NPCとであっても出来ない仕様なのだぁ……!!!


『注意、空腹検知。食事休憩を推奨致します』


 あ、もうそんなに……わぁ!? もう20時に近いじゃん!! 早くご飯とお風呂と色々済ませて打ち上げ会場に行かなきゃーーー!!!


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