ぶっちぎりでイカれた女・4

◆ 魔神殿 ◆


『ワールドアナウンス:貿易都市ローレイから【聖メルティス教会】【メルティスの聖域】が消滅しました』

『ワールドアナウンス:貿易都市ローレイに【魔神殿】――――魔神バビロンより訂正が入りました――――【ワ・タ・シ・の♡ まいほ~~~む♡】が出現しました』

『ワールドアナウンス:貿易都市ローレイ、及びローレイエリアが【魔神バビロン】の支配下に置かれました』

『ワールドアナウンス:貿易都市ローレイが【魔界都市ローレイ】になりました』

『ワールドアナウンス:ローレイエリアが【魔界化】しました』


 あー。あーーー……。バビロンちゃん降臨から意識が吹っ飛んでた……。すっごい可愛かった……。いやいや、しかも大変なことになっちゃったよこれは……。今までシークレット的な存在だったバビロンちゃんが、大々的に表舞台に出てきちゃったよ……?  しかも、魔界化ってなに……? 一度キッカケが出来た瞬間から、もうドミノ倒しみたいにだーーーーーーっと事態が進行してくんだけど!!! 何が起きてるのかついていけないよ?!


「ママー! 今日からバビロン様を堂々と信仰してもいいのー!?」

「ええ、もうメルティスの信徒だなんて嘘をつかなくてもいいのよ!」

「おお……! バビロン様、魔神様が降臨なされた……おおおお……。長生きはするものだなぁ……」

「アンタ! そのままぽっくり逝っちまうんじゃないよ! これから毎日参拝に行くんだよ!」

「遂に、遂に俺達は、隠れ信徒じゃなくなるんだ!!! やった、やったぁあああ……!!!」


 えええーー……? ローレイの住人NPCが次々と家から出てきたと思ったら、もう魔神崇拝始めてる人まで居るんですけど……? もしかしてこの都市の住人って、メルティス信徒ほとんど居なかったの……?!

 あー……。海賊と教会が結託してたのを知りながら、ご飯だけは受け取ってたのかな。教会の連中は丸々と肥えてた奴も居たし、そりゃ気がつくよね。どうして教会の連中は食い物に困ってないんだって。憎たらしいって思いながらご飯だけは受け取って、上辺だけの感謝をその場で述べて家に帰れば『悔しいです、魔神様~……!!』って泣いてたのかもしれないね。この狂喜乱舞の住人NPCを見ればなんとなく察しが付く。


『魔神殿よりギルド【華胥の夢】のギルドメンバーに招待状が届きました』

「お……。アカン、唖然として声も出んかった」

「招待状、だって~……? 僕たちにみたいだけど、行ってみようか……?」

「メールボックスに招待状アイテムが入ってるみたいよ~」

「おい、ギルドハウスに居たら滅茶苦茶吹っ飛ばされたぞ。何をやらかしたらこうなるんだ?」

「ハッゲ、カルマ値プラスだから、飛んだ」

「ハッゲさん以外全員カルマ値マイナスですもの、実質これはハッゲさん用の招待状ではなくって?」

「招かれてるんやから行かなアカンやろ! おらハッゲ行くで!!」

「おう。行くか! 遠目に魔神様の降臨を見たけど、すんごい見た目だったな! 近くで見たいぜ」


 わっと! 私も周囲が動くまでぼーっとしすぎた! 魔神殿を建てた張本人なのに、入り口でぽかーんと周囲の観察をしてるだけだったわ! お昼寝さん達も行くみたいだし、ハッゲさんも何かいつの間にか居たし! 行ってみよう入ってみよう!


「あら? どうして正門の外に、こんな絵が……」

「女神メルティスの絵が床に描いてあるねぇ~……はっは~ん……」

「踏み絵やな! メルティス踏んのぼって入ってくる奴しか入れんっちゅうやつやろ!」

「俺は別に信仰はしてねえからな。勝手にカルマ値がプラスになっただけだ。ほら、入れるぜ!」

「おお? なんかバリアをくぐったみたいな感覚ない~? ここ~」

「ほんまや、なんやこう、受け入れられてる感あるで!」

「多分招待状無しでも住人NPCは入れてるから、招待状が必要なのはこの奥かな~?」

『わんわんっっ!!! (中、広いね~!!! あ! 僕そっくりの子が居るよ!)』

「そっくり……? どん太が2匹……? 嘘でしょ……」

「え? あっっっ!?」


 魔神殿の中に入った途端、どん太がだーーーっと駆け出してった。その先に居たのは、ええ。どん太にそっくりなデッカイワンコ……。あ、どん太は狼だった……。でもあっちはワンコって言うより、狼!!! って感じのオーラがあるんだよなぁ……。


『わうっ!! (こんにちは! 初めまして!)』

『あう~……? わんわんわんわん!!! (おや……? これは同族、初めまして! こんにちは! 会えて嬉しいです!)』


 お、仲良くなったっぽい……。お互いの匂いチェックでぐるぐる回るそれ、やっぱりワーグ同士でもやるのね。あれでも、あっちはもしかして女の子じゃない? 今聞こえた声、女の子っぽかったよ?


「お、なんやどん太が増えたで?」

「同族……っぽい子だね~」

『わぅ~、わんわん!! わぅ? (僕はどん太! 君は?)』

『わんわんっ!! わうぅぅ!! (私は魔狼王モッチリーヌ3世、どん太と言うのね? 可愛い名前ね! 今日からお友達よ!)』

『わんわんっっっ!!! (お友達! やったー!)』

「モッチリーヌ3世…………?!」

「え? あの子の名前? まさかそれ?!」

「モッチリーヌ3世がお名前ですの?!」

「う、ん……魔狼王、モッチリーヌ3世……」

「「「「モッチリーヌ3世……」」」」

「「「「ああ……」」」」


 あの子、モッチリーヌ3世って言うんだ……。いやうん、確かにちょっと、もちっとした感じが可愛いよね……。もしこの魔狼王、誰かが使役してるとしたら……。ネーミングセンスが私並の人がいるってことだよね……。いや待てよ? この魔狼王、もしかして飼ってるのって…………。


『わん! わうわう? わう~~~! (我が主、魔神バビロン様に呼ばれているのでしょう? 行ってきなさいな)』

『わんっ! (わかった、またね!)』


 吉報、バビロンちゃん、ネーミングセンスが私と大差ないことが判明……!!!


『わふっ……♡ (可愛かった! お友達になった!)』

「良かったね、お友達が出来て……」

「友達になったんかい……」

「他にも、あからさまに人間じゃないでーすって見た目の方々がいっぱい居るねぇ……」

「まあご覧になって?! あの大階段の踊り場! バビロン様の黄金像ではなくって?!」

「……ほんまやなぁ!? あの大階段の手前の祭壇が、一般信者の参拝するところっぽいなあ」

「あれが、魔神様……? 俺が見たのと、なんか……違うな」

「ハッゲは遠くから見たから、よく見えてないだけ。絶世の美少女。結婚する」

「そ、そうか……」


 魔神殿に入って正面が大階段、その踊場にはバビロンちゃんの黄金像!! そこから左右に階段が別れて二階に上がれるみたいだけど、ミノタウロスみたいな悪魔の方が2人で大階段前に居て道を塞いでるなぁ~……。すんっっごい強そうなんだけど、通して貰えるのかな……?


「止まってくれ。おお、これはこれは……! どうぞお通りください」

「バビロン様がお待ちです。ここを上がって、更に三階へお進みください!」

「あ、ありがとうござい、ま~す……」


 メッチャ渋いオジサンボイスだったわ、ミノタウロスさん達! イメージとちょっと違う声だったけど、あれはあれで格好良いね……?!


「……絶対勝てへん」

「あ、わかる~。僕も絶対勝てないと思った~……」

「タゲ、した? 私、した」

「レベル表記が読めなかったな……」

「絶対強いですわ……。挑んだら即死しますわ、きっと」

「綺羅びやかだけどいやらしくない、静かで落ち着いた、いい神殿だねぇ~……。見なよ、信徒が大勢啜り泣いて感謝の言葉を捧げているよ」

「いつの間にかすっごい増えてる……」

「わたくし達は御本人に会うのですけれど、なんだか特別待遇でドキドキしますわね!」

「私達、直接会うんですか……っ?! こ、心の準備が……」

「此方はまたお会いできてもう泣きそうで御座いまする」

『((((;゜Д゜))))』


 ふーーー……。落ち着こう、落ち着いて、バビロンちゃんに会った瞬間意識が飛ばないように気を引き締めないと……。この三階への階段を上がったらバビロンちゃん、この階段を上がったらバビロンちゃん、ああああ心臓、出るっっっっ!!!!! 出るな、止まってろ!! 止まったら死ぬから動いてて!! うわああああああああ!!!!!


『ふんふんふ~ん♪ まいほ~む♡ まいほ~むっ♡ やっちゃ、やっちゃ♡』

「――リンネ様御一行、到着致しました!!!」

『あぁぁ~~来た来たぁ~~~♡ さ、もっと近くに寄りなさ~い!』


 エ゛――――いやまだ死ぬな私、今物凄く尊いものを見たけど死ぬな……! あああああ美少女……。絶世の美少女……。やば……いつもより1億倍以上輝いて見える……。無理、尊い……。心臓止まった……。止まらないで……。


「うおう……。やっぱすげえ見た目してるな……。目玉がいっぱいだぜ……」

「は? 超絶美少女、目は2つしかない」

「いや、ああ? ほら、スクショ」

「…………超絶美少女。ハッゲ、おかしい?」


 はあ? ハッゲさん? 何言ってるの? バビロンちゃんのお目々は人間と同じようにしか付いてないでしょ? 目玉いっぱいって、誰のこと見ていってるの? 今ここで死ぬ? ギルドメンバーだからって容赦しないよ?


『お前にはワタシの真の姿が見えないのね~♡ ざぁんねぇん♡』

「それにしても凄まじいパワーを感じるぜ。地元の住人から崇められる神様なんだから、とりあえず拝んどかないとな……ありがたやありがたや……」

『あは♡ それやったら聖人スキル消えちゃうじゃな~~い♡ でも私の真の姿、見えるようになるわね~♡』

「…………お? 見た目が変わったぜ!? 変身したのか?!」

「変わってない。ハッゲおかしい」

「あ~~…………。カルマ値がプラスだと凄まじい姿に見えて、逆にマイナスになると真の姿が見えるのかもしれないね~……」

「かも、しれへんなぁ……!」

「あ、私も、前よりずっと……っ!!」

「なるほど、私、もっと下げたい」

『わうぅぅぅぅ……きゅぅぅぅん……(怖いよぉ~~~……)』

『Σ(´∀`;)』


 ほえ~~~~…………? ああ、なるほど! ハッゲさん無罪! そういえば、前にショックで失神したメンバーはカルマ値が0からマイナス150ぐらいで、可愛いって言ったのはマイナス500以下のメンバーだった! ということは! 私がバビロンちゃんの超絶可愛い真の姿が、いっちばんハッキリ見えてるってこと?! やったーーーー!!!! ん……? じゃあ逆に私達、メルティスの方はすんっっっごい醜悪に見えるんじゃ……? ま、いっか! 邪魔してくる奴なんてどうでもいいわ!


『さて? あんた達本当によくやってくれたわね~♡ ワタシの教会が出来たらラッキーって思ったのに、あそこでワンモアを引き当てるんだも~ん! ワタシ笑っちゃったぁ~!!』

「バビロンちゃん様のお家が出来て私も嬉しいです!!!」


 バビロンちゃんめっちゃ嬉しそうなんだぁ……。玉座でぴょこぴょこ跳ねてて可愛いんだぁ……。うん……ワンモア……? もしかしてあの時『更に呪いが広がります』っていうのがワンモア? そういえば普通のアニメイト・フェティッシュでも追加投入出来る時があったような……。たまーに発生するボーナスみたいなのを、見事にあの場で引いちゃったってこと!?


『それでね? あんた達のギルドハウス、ここの二階に用意しといたから~♡ 大体内装も一緒にしておいたから、自由に使いなさいね~?』

「え、あるんだぁ……! 無くなっちゃったかと思った~」

「ありがとうございます!!!!!」

『元気なお返事で偉いっ♡ あ、そうだごっめ~ん! 金のシャチホコ? 溶かしちゃった~! ワタシの黄金像にしたから♡』

「はい!!! 大丈夫です!!! お美しく出来ていて最高でした! 持って帰りたいです!!!」

『だめよ~?! あれ、あんた達のギルドに恩恵が出るんだから~♡』

「はい!!!!! 持って帰りません!!!!!」

「リンネはん、バビロンちゃんの言う事なら全部聞きそうやな……」

「聞く。死ねって言われたら多分死ぬ。生き返れって言われたら生き返る」

「ほんまかいな……」


 んふ、んふ……。いっぱいお喋り、最高、ここ住む……。リアル帰りたくない……!


『イカレ女~。ワタシも大事だけど、自分も大切にしないとダメ~♡ ちゃんとしっかりご飯を食べて、しっかり日常を送って、健康的にワタシを崇拝するのよ~?』

「はい!!! 毎日ちゃんとログアウトしてぐっすり寝て学校行きます!!! いつも心にバビロンちゃん様健康生活です!!!」

『げ、元気ね~……♡』


 やっぱり毎日ちゃんと健康的な生活をして、バビロンちゃんを常に崇拝して生きていこう。最高、もう、あ、ヤバい、視界がぐらぐらして来た……!


『あ! これは失神する~! その前にやることやるから~! はいご褒美♡』

『魔神バビロンから【魔神バビロンの愛し子】に認定されました』

『カルマ値の下限が最低値に減少しました』

『カルマ値が-1000になりました』


 い、と、し……ご……? ン゛ォ゛…………!!!!




◆ ◆ ◆




 リンネさんがあまりの嬉しさに失神してしまいましたので、後でリンネさんにわかりやすいようにバビロン様から頂いた情報をメモして纏めておきましたわ。


・ローレイの住民は聖メルティス教会に対して恨みを抱いていた方が殆どで、逆に魔神崇拝を行ってある程度の力を授かっていた


 まずこれ。これがローレイの住人がすんなりと魔術が使えたり、武器を与えれば戦えた理由ですわね。魔神バビロン様から力を授かり『その時が来たら立ち上がりなさい』と耐えていたようですわね。その時というのは、わたくし達がローレイの海賊殲滅をしたタイミング。この件でローレイの住人からの魔神バビロン様への信仰はとても厚いものになっていたようですわ。


・魔神殿には【武器職人、六腕の鬼人アースラ】、【機織り職人、禍津アラクネのオリビエ】、【戦術教官、武人ロクドウ】、【武術教官、魔狼王モッチリーヌ3世】、【射撃術教官、自動人形姫グリムヒルデ】、【魔術教官、災厄の魔女にして初代ステラヴェルチェ女王、エキドナ】、【真理の追求者、錬金魔導師アルス】、【真理の追求者、禁断の技術者マグナ】、【葬儀屋ミーシャ】、【呪物師カーサ】、【反魂師リザ】【魔神殿料理長クック】、【調教師サディーナちゃん】、【魔界門番オルくん&トロスくん】、【魔界門番長ケルベロスちゃん】、【魔神殿警備兵ミノス】、【魔神殿警備兵タウロス】、他にも色々な不死系、悪魔系、霊体系NPCが闊歩している。


 今、ローレイは魔界化したらしく、魔神バビロンちゃんが通称『あちら側の世界』で保護していた魔界の住人が、このローレイにお引越ししてきたようです。ローレイの住人には最初警戒されていたようですけど、全体的に友好的なNPCらしくて今では親睦を深めているようですわね。ちなみに魔界門番長のケルベロスちゃんはお魚が好きだそうですわ……。大事そうに食べるそうでしてよ。一度会ってみたいですわね。


・魔神殿では魔族転生を願い出る事が出来て、魔族転生コマンドを実行して各種NPCに指導を頂くと、魔族側の職業に転職することが出来る。


 これは、わたくし達が天使をぶん殴って転生してバビロン様のオススメに転職した方法とは若干異なって、バビロン様のオススメではなく教官NPCに指導を頂いて教官NPCのオススメの職に就けるようですわね。

 しかも、各種教官NPCに稽古を付けて貰うとレベルもガッチリ上がるようですわね! なんと驚きの40レベルまでサポートが受けられるそうですわ! もうこっち側で魔族転生を行ったプレイヤーさんも居ますわね! わたくし達のギルドの魔術師チームと探検チームも、慌てて魔神殿にやって来て事情を聞いて、今は魔族転生を行ってみっちり稽古を付けて頂いていますわね!

 というわけで簡単にまとめると――


・魔神殿は聖メルティス教を信仰していると弾かれる

・魔神殿はカルマ値がマイナスになっていないと入れない

・聖メルティス教に異端者指定されるので、一度選択すると戻れない

・魔神殿では魔族側に転生できる

・転生後、教官に就きたい職業を述べると地下闘技場で稽古を付けてもらえる

・最大レベル40まで上げられる(ここがとても大きいですわね!)

・各種武器・防具の販売所が設けられている(幅広いラインナップ!)

・初心者プレイヤーが中級者まで追いつきやすい

・貢物を行うことで、その度合に従って魔神バビロンからちょっとしたプレゼントが貰える、かも?

・アイテムを渡すとアイテムを強化、変化させてくれるNPCが居る

・葬儀屋から【死体安置所】を貸してもらえる(棺桶ですわね! 1個まで!)

・呪物師に【素体】【死体】【呪い】を持っていくと、呪いの装備を作ってもらえる(かーなーり、ランダムデメリットがキツイようですわね……しかも成功率も低めですわ……何回も頼んで装備の効果は吟味が必要ですわ)

・調教師サディーナちゃんは【ビーストテイマー】に就くことが出来るそうですわよ!

・死んでしまった従者は、反魂師が蘇らせてくださるそう。葬儀屋から【死体安置所】を借りておくべし



 今判明しているのは、こんなところかしら? それと、わたくし達のギルド【華胥の夢】は魔神殿の二階にある大広間と小部屋を貸して頂けましたわ! ちなみに【★金のシャチホコ】から【★魔神バビロンの黄金像】に変わって、【経験値1.2倍、全ステータス永続+10、以上の宝箱から金貨袋出現or呪いのコイン袋出現】の恩恵が受けられていますわ!!!


『きゅぅ~ん……』

『わんっっ!!』


 どんちゃんは、モッチリーヌ3世ちゃんにボコボコに負けたようですわね……。モッチリーヌ3世ちゃんのほうが、圧倒的に格上ですのよね。完全にどんちゃんの上位互換……。魔狼王の名前は伊達ではありませんわね。


「ん~~~……♡」

「幸せそうですわねぇ……♡」


 リンネさんはわたくしがベンチで膝枕中。いえ、どちらかというと太もも枕……? んんっ! まあわたくしも幸せですのでどっちでも! それと、一瞬目が覚めた時に【★クラシックプリンセスロリィタドレス・黒】を返されてしまいましたの。もう着れないそうですのよ……でもね? わたくしこう思いましたの。

 あ、これあーちゃんが着てた、あーちゃんの匂い付きの最高級グッズじゃなくって……?! と!!! これであーちゃんがログインしていない時でも、これを全力で吸えばあーちゃんを全身で感じ取れますわ!!!!? それにこれだけが脱げただけ! わたくしのさしあげたアバターはまだ3着も残っていますもの、何も問題ありません!!! それにそれにそれにそれに!? わたくし、今、あーちゃんに似合うアバターをアバター倉庫から探していますのよ!!! 黒いベールよりヘッドドレス、靴もサイハイブーツか、アリスシューズにすべきか、悩む悩む! 悩みまくりでしたよ!


「おやぁ? 幸せ空間はっけ~ん」

「あ、お昼寝さん?! 違うのよ、これは違いますのよ? 決してリンネさんの匂いを嗅いでいたとか、そんなんじゃ」

「えぇ……。僕そこまで見てないし聞いてないんだけど……?」

「はっ?!」


 墓穴を掘りましたわ……?!


「ね~? リンネちゃんは僕がギルドマスターのままが良いって言ってくれたけど、本当に良いのかな~?」

「よろしいのでは? あーちゃ……リンネさんはそういうの、疲れてしまっていると思いますわ。絶対苦手でしてよ」

「そっか~」

「わたくしも、お昼寝さんがギルドマスターだからここが居心地が良くって、ほんわかとプレイ出来ますもの。お昼寝さんが良いですわ!」

「んんっ!! ありがとうっ! 嬉しいね、じゃあ僕……ギルマス続行するよ! 負けないぐらい強くなるからねぇ~……にっしし」

「か、覚悟しておきますわ!」


 形は変わりましたけれど、華胥の夢は変わらずの存続。これからもお昼寝さん率いるぶっ飛んだ集団として、最前線をかっ飛ばして行きたいですわね!


『わうぅぅ~~~』

「あらどんちゃん……? どうしたの?」

『わうん、わうぅん……』

「お腹が空きましたの? ハッゲさん、ハッゲさーん!」

「おう! 聖人から反転して魔人になった俺の、スーパーな料理を堪能させてやるぜ」

「……なんか黒光りしていて気持ち悪いですわ!? イカちゃんの白さが、目立ちますわぁ!?」

「可愛いだろ? (セクシーポーズを取るミニヤバイカ)」

「それ絶対ハッゲさんの意志で動いてますわよねぇ!? ほらどんちゃん、ハッゲさんがご飯を作ってくれたようですわよ!」

『わうんっっ!!!』


 ハッゲさん、反転して聖人から魔人になってますけれど……。日焼けしたみたいに黒光りしたあの光沢のあるツルツルの頭、ヤバいですわ……。あれは見ただけで笑いが……。しかもいつの間にサングラスなんて掛けてますの……?! 似合うのがまた、悔しい……!


「んぅ……? いくらぐんかん!!!! ん………………すぅ~…………」

「それ寝言ですの……!?」


 いくら軍艦、いくら軍艦が食べたいんですの……?! どうしましょう、リアルに戻ってあーちゃんの家にお寿司の出前を頼もうかしら……? もちろん、いくら軍艦多めですわよ。



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