Memory of Luteola. part2

◆ 過去・氷の宮殿 ◆


『氷の宮殿・正門に転送されました』

『進行停止中です。スキルの使用は出来ません』

『真・氷の宮殿のエネミーからは一切の経験値取得が出来ません。クリア時に報酬として獲得されます』

『宮殿内部ではエネミーに対してのダメージが表示されません』

『開始するを選択した10秒後にダンジョンが進行します』

「――――おにーちゃん、このダンジョンやめとく?」

『Σ(´∀`;)』


 今の超長いムービーで大体ストーリーがわかったんだけど、この後絶対おにーちゃんの部下さん全員…………辛い過去をまた見ることになるよね? 私なら見たくないし、帰りたいかなって……。


『レッツ――――o(・∀・)○――――ゴー!!』

「どこから来るの元気の良さ……!?」

『(*´ω`*)っ【紙】』

「これは……?」

『フリオニールから【★想いを伝える紙片】を受け取りました』



【★想いを伝える紙片】(反復・レジェンダリー)

・この紙片の片割れを持った相手に想いを伝えます

・何度でも使用可能です

・特定条件によりこのアイテムは破損します

 ――私のだーいすきなみーちゃん♡ さあ、私のことをどう思って……え? 美味しそう……? byとある龍使い

 反復使用可能・特定条件で破損・重量なし



『カジノで交換したんだ。余ったコインでね、いつか話がしたいと思ってさ。ここは私の過去……いや、ルテオラの過去の世界だろう? サリーとクーガーが死んだ直後だと思う、残っているのはレオン達4人だね。俺はもう大丈夫さ、だから我が主に……どうか知ってほしい、ここで何があったのかを』


 う、わ……!? 紙片に、字が浮かび上がってくる!? これが、想いを伝える紙片の効果かぁ……。おにーちゃん、強がりを言ってるわけじゃないよね? この後全部を伝えたからって、ぱったり消えちゃったり、どこかに行っちゃったりしたら嫌だなぁ……。暫く立ち直れないだろうし、立ち直っても空虚な毎日になりそうだもん。


『そう想ってくれたとは、嬉しいね。どこにも行ったりしないし、消えたりしないさ』

「あ……!?」


 こ、これ、私の方からも伝わるの!? あばばばば……! 見ないでよおにーちゃん!!!


『ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ』

「リンネ殿、ここは……?」

「過去のルテオラのようですねっ……。周囲の時間が止まっているようです。恐らくですけど、お姉ちゃんがやると決断したら周囲の時間が流れ始めるのかとっ!」

『(*´ω`*)b』

「なるほど……戦闘地域にいきなり放り出されないようにと、今は保護されていると」

『オーレリアちゃんは聡い子だよね。ちょっと腹黒いところもある悪戯っ子だけどさ、可愛いもんだよ。頼りになるお狐様も居るし、大丈夫さ。それじゃあ、行こう』


 行こうって、そんな……。これから辛い過去をまた見なきゃいけないのに、軽く……。いや、軽くはないのかな。おにーちゃんがそう決断したんだし、知ってほしいって覚悟を決めてくれたんだから、行こう。行かないと。


「じゃあ、行くよ……!」

『周囲の時間が動き出します……』

「すぐに戦闘に巻き込まれるから、注意して!」

「見たところまだ正門、これは長くなりそうですね」

「敵は、あのメルティス教徒で間違いないですか?」

『(`・ω・´)b』

「おや……?」

『真・氷の宮殿が開始されます……3……2……1……』


 始まる……。ここで何が起きて、おにーちゃんが何を見て欲しいのか、目に焼き付けよう。


『姫千代が緋影御前を抜刀、【無双緋影】を発動しました。HPが50%消費されました』

『にゃ王様が【にくきゅーすたっふ】を装備したにゃん! おうつくしい!』

「リーダー!! サリーとクーガーが殺られた!!! だがやってくれたぜ、これで正門は開いた!!」

「まだ生き残っている者は返事をしろ! レオン!!」

「ああ!」

「グスタフ!!」

「おう!!!」

「カムイ!! ノンナ!! ドミエラ!! スージー!!!」

「健在」

「モーリス! ルゥ!! カヨコ!」

「ここに」


 あ……。レオンさん、グスタフさん、スージーちゃんに、カヨコさんだ……。そっか、最後まで生き残ってたのがこの四人だったんだ。サリーさん、クーガーさん、それと今呼ばれたメンバーに、エルとイルの双子を合わせて部下は合計13人――――それに、ダルク・・・さんを合わせて14人の部下が居たのね。なるほど、おにーちゃんの魔神兵召喚はこの時の……。


「5人だけかァ!?」

「まだ自警団も居る、ルテオラの冒険者ギルドに恩がある冒険者も駆けつけてくれた、まだ、まだだ、ここからだ! 正門を突破したここからが勝負だ!」

「そうだな、ここからだなリーダー。おっと……お前達は? 冒険者か?」

「支援要請」


 ええっと、これは、どうしよう……?!


『一緒に戦うと言えばいいさ。あの時は――駆け出しの冒険者四人だった気がするな。再度閉じられたりしないように、正門の破壊工作を頼んだはずだね』

「私達も、戦います!!」

「此方も助太刀致します」

「私も!!」

『…………』

「リーダー、こちらの冒険者四人にも、手を貸して頂くべきかと」

「ああ! 俺の名前はフリオニール、この国に仕えてた聖騎士のくせにこの国を裏切って反逆者のリーダーをやってる者だ、こんな逆賊の手伝いで良ければ、どうか力を貸してくれ!」

「リンネ、魔術師です! 一緒に戦います!」

「姫千代、千代と。斬ることしか芸のない女に御座いますが」

「リアです、魔術がつかえますっ!」

『…………』

「よし、わかった! 見たところ、結構強そうだ! 無理だと思ったら迷わず逃げてくれ、よし……行くぞ!!」

『★獅子のレオン(Lv,120)がパーティに加入しました』

『★牡牛のグスタフ(Lv,120)がパーティに加入しました』

『★射手のスージー(Lv,120)がパーティに加入しました』

『★乙女のカヨコ(Lv,125)がパーティに加入しました』

『★★★反逆の聖騎士フリオニール(Lv,180)がパーティに加入しました』

『限定加入NPCの名前表記は以降短縮されて表示されます』

『同名NPCが存在するため、★★★反逆の聖騎士フリオニール(Lv,180)を【★フリオニール】と表示します』


 ――――いや、おにーちゃん達強くない……? レベル……え……? レベル…………マジで……?


「貴様ッ!!! ここがどこだと思って――」

『★フリオニールが【次元斬】を発動、複数体のエネミーを始末しました』

 

 え、つよ……。え……?


「雑魚に構う暇はない!!! カヨコ、冒険者に対法術結界を!」

「ええ。聖なるを拒め、不浄の御手で触れ給う。アンチホーリー」

『すでにアンチホーリー状態です』

『姫千代が聖属性攻撃無効状態になりました』

『オーレリアが聖属性攻撃無効状態になりました』

『フリオニールが聖属性攻撃無効状態になりました』


 いやーーー強いんですけどそれーーー……!? 呼吸をするように凄い魔術使ってません、カヨコさん……!?


「――上ッ!!!!」

「それで優位を取ったつもりか!!! 甘いんだよ、ぬるま湯で修行した僧兵如きが!!!」

『姫千代が【緋影斬波】で攻撃し、エリート弓僧兵(Lv,95)に223,357ダメージを与えました』

『★フリオニールが【極光消滅波】を発動、エリート弓僧兵(Lv,95)を消滅させました』


 え…………? え………………? 本気で、強すぎない、過去のおにーちゃん……?


『フリオニールが【ダークアスパーション】を発動、パーティ全員のHPが完全に回復しました』

「治癒魔術か、助かった! 騎士で治癒魔術とは、珍しいなアンタ!」

『…………』

「リーダーとは真逆だなァ! 全然喋んねえ仕事人だぜこいつァ!」

「グスタフも見習え! 口じゃなくて手を動かせ手を!」

「わーーーってる!!」


 すみませんフリオニールさん、それ……未来の貴方です……。


「攻め込むぞ、スージー! 後方に警戒しろ! カヨコは魔術罠に警戒! グスタフは敵をぶっ飛ばせ! レオンはカバーしろ!」

「御意」

「罠は今のところは。強力な法術使いは奥に居るようですね」

「おっしゃあ!! 散っていった奴らの分まで俺様がぶっ殺してやらぁ!!!」

「張り切りすぎるなよ」


 この人達頼もしすぎるんだけど、もしかして私達これって……。付いていくだけで終わるのでは? これってイベントダンジョン的なやつなんじゃ? あ、紙片に反応が……。


『いいや、この後の宮殿内に突入してからが大変だった。激戦になる』


 ネタバレすんな……!!! いやでも、うん。気を抜いてたから、ありがとうだね……。


「おっしゃあああああーーーーー!!!!」

「――――今だ! 撃て!!!」

「グスタフ退け!! 蜂の巣にされるぞ!」


 待ち構えられてた! 正門が突破されるってなった段階で、宮殿内で迎え撃つように構えてたんだ! グスタフさんが危ない!!


「るっせえ!!! グスタフ、サイックロォオオオオオオン!!!!!!」

『グスタフが【グスタフサイクロン】を発動しました』

「怯むな!! 撃て、撃て! 奴とて人間、何本か当たればいい!!」

「ごろごろにゃーごごろにゃーご!! 斬殺空間つめとぎ!!」

『オーレリアが【斬殺空間つめとぎ】を発動しました』


 う……んっ……!? なんか、グスタフさんの周囲に、ぐにゃっとした空間が、でっかい猫っぽいようなシルエットが……あるような……!? これ、リアちゃんのにゃ術かーー!!


『スキルリンク! 【グスタフ空間】が発生しました!』


 グスタフ空間!? なんかごめんね、すっごい嫌なネーミングになったねえ!? いやでもこれなら、幾ら矢が飛んできててもグスタフさんに当たらないぐらいの暴風になった! 攻撃が止んだタイミングで、切り込めば――――


『姫千代が【妖狐化】、【驚天動地】を発動しました』

「な、なんだ!? どこから――――うわああああ!!!!!!」

「敵、敵が、いつの間に二階まで!!?」

「撃つな!! 味方に当たるぞ!!」

『姫千代が【真円斬】を発動、複数体のエネミーに直撃しました』


 ああ、千代ちゃんが二階に瞬間移動してる……。地の利を活かして攻撃することしか考えてなかっただろうし、弓兵しか居ない状態じゃあ突然現れた千代ちゃんに対してまともに抵抗出来ないだろうね。あれ、ダメージログとか撃破ログが表示されない……。宮殿内部に入ったからかー!! これ、面倒だなぁ……。


『さすが、お千代ちゃんはやってくれるねえ。こっちも出ようか』

『m9(^Д^)9m』

『フリオニールが【フリスビー】、【プロヴォーク】を発動、弓僧兵長ナイデルに攻撃が直撃し、【激怒】状態にしました』

「き、っさまぁぁぁぁ……!!!!」

「お? 面白い物を使うなぁ! ああいうの使うの俺だけじゃないんだなぁ!」

『…………』


 すみませんフリオニールさん、それ……未来の貴方です……。


「突破容易。射殺開始」

『スージーが【魔弾装填】、【スピットファイア】を発動し、複数体のエネミーに直撃しました』

『カヨコが【生命力変換】、【魔力譲渡】を発動し、スージーのMPが完全に回復しました』

「フリオニール! 陛下の忠実な犬である貴様が、なぜ、このようなことを!!」

「犬? 犬だぁ? 犬はてめーらだろうが、犬は犬らしくわんわん鳴いてみせろよ。ほれ、わん!! わん!!」

「貴様ァアアアアア!!!!!!! ぐがっ……!?」

『m9(^Д^)9m』

『★フリオニールが【プロヴォーク】を発動し、弓僧兵長ナイデルが【激昂】状態になりました』

『フリオニールが【フリスビー】、【プロヴォーク】を発動し、弓僧兵長ナイデルが【怒髪天】状態になりました』


 うわぁ、うわぁ……。もはや、うわぁしか言葉が出てこないんですけど……。これで二階でコの字・・・型に一階を見下ろしてた弓兵部隊は左翼が壊滅、中央の兵長が判断能力消失で突っ込んで来てるし、千代ちゃんをスージーちゃんとカヨコさんが援護してくれてるし……。後は囮役みたいになってたグスタフさんがどのタイミングで攻勢に転じるかだよね。あれ、そういえばレオンさんってどこに行ったんだろう……?


「あ……ああ……!?」

「レ、レオンだああ!!!!」

「死にたい奴からかかってこい。死にたくない奴も纏めて地獄に送ってやるがな」

『レオンが【獅子の構え】を取りました』


 ああ……!! 宮殿の外から、外壁を伝って回り込んで来てたのね……!! これで右翼側もどうにかなる、のかな……? 私は~~うーん、どうしようかな~……。あ、丁度目が会った気がするし、あの中央の陣に居るあのでっかい奴にしよう! そうしようっ! このまま棒立ちじゃ、ダメな気がするんだよね!


「…………ん~~っちゅ♡」

 

 あ、これ失敗したら死にたくなる奴だわ……。


『巨人グーが【悩殺】状態になりました』

「オオオオオオオオオオオオ…………!!!!!!!!! オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」

「おい、まだ動くな!! 言うことを聞け、やめ、離――――」

「ひぃぃいい!?」

「リューズが、リューズが……!! 巨人に、潰された!!! 巨人が暴れる!!! グーが暴走しているぞ!!!」


 よかったー成功したっぽいよ? これであのデカいのが暴れ出せば、左翼も右翼も中央も全部壊滅! 素晴らしい! 中央でさいくろーーんしてたグスタフさんがフリーになったし、リアちゃんもにゃ術を維持しなくて良くなったし! 反撃だ反撃ーーー!!


「フリオニールゥゥゥゥウウウ!!!!!」

「っるっせええ!! 俺様の横を素通りすんじゃねえ!!!」

『グスタフが【フルスウィング】を発動し、弓僧兵長ナイデルに特大ダメージを与えました』

「がぁぁぁ…………――――ッ!?」

「鳴けもしねえ、吠え面もかけねえ、犬ですらないお前はゴミのように死んでいけ」

『★フリオニールが【極光消滅波】を発動、弓僧兵長ナイデルに極大ダメージを与え、撃破しました』


 いやそれ、そんな気軽に撃って大丈夫なスキルなの……?! 光の柱がボワァアアアアアって立って、飲み込まれた敵が蒸発するって凄まじい威力のスキルなんだけど……。


「ッ」

『スージーが流れ矢により軽微なダメージを受けました』

「スージー!」

「平気、軽傷……」


 あ……。スージーちゃんが、肩に矢を受けちゃった……。すぐに抜いたけど、血が出てて……痛そう……。そうだ! 回復はおにーちゃんの専売特許じゃなくなったんだったわ!


「か弱き我らをお救い下さい、エピクレシス」

『パーティメンバー全員のHPが15%回復しました。回復分のバリアが付与されました』

「……! 感謝」

「あら、治癒魔術持ちが二人でしたのね。とても頼もしい限り……それに、これは……。守護の力を感じますわね」

「少しだけなら、攻撃を防げると思います! でも、あてにしないでください!」

「承知」

「肝に銘じますわ。聳え立て、ストーンウォール」

『カヨコが【ストーンウォール】を発動しました。周囲に石の壁が大量に生成されました』

「遮蔽物を盾に移動し、これでこちらの位置を掴みにくくしましょう。リーダーの後に続きましょう」

「微速前進」

「わかりました! リアちゃん、行くよっ!」

「はいっ!」


 よし、私も役に立ってる……! 本当はこんなにあっさり行かなかったんだろうなあ、昔はもっと、矢の雨を掻い潜って反撃の糸口を探ってって……激戦だったんだろうね。


「オァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

「グーよ!! 一体、どうしたというのだ!!!」

「助け、たた、助けて――――」

「戦場で、此方に背を向けるなどとッ!!!」

「グスタフ!」

「行くぞレオーーーーン!!!!!」


 二階も、賑やかになってきたね。よし、おにーちゃんズに続いて後衛組の私達も二階に上がろう! こんな前哨戦で躓いてられない、氷の11世を倒すのが本番なんだからね! 待ってろよ~暴君、ギッタンギッタンに叩きのめしてやるから!!


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