新・ルテオラ共和国、首都アルミスにて

◆ 新・ルテオラ共和国・首都アルミス ◆


 ――――雪はなんだか知らないけどとにかく嫌い。

 寒いし、滑るし、何もかもを覆い隠して奪われるような、そんな感覚に陥るからとにかく嫌い。これが雪道を歩き続けて、首都アルミスを発見して~ってとこから探索が始まるようだったら、さっさと諦めて帰って、バビロニクスでぬくぬくとバカンスを満喫してるところだったわ。


「真円斬ッッッ!!!!!」

『姫千代が【真円斬】を発動しました』

『クリティカル! バッズ(Lv,61)に55,556ダメージを与え、撃破しました。経験値 1 獲得』

『ミカ(Lv,61)に42,339ダメージを与え、撃破しました。経験値 1 獲得』

『クリティカル! ナーナ(Lv,58)に53,495ダメージを与え、撃破しました。経験値 1 獲得』

『【巨人の剣+5】を入手しました』

『【★魔導弓+7】を入手しました』

『【フレイムシールド+5】を入手しました』

「や、え、ちょちょちょちょちょ、ちょっとたんまっ!!!?」


 いやーそっちから殺しにかかってきておいて、逆に反撃を受けて死にかけてるから今更待っては無理でしょ。そっちの魔女が初手でファイアボールをぶっぱして来なければ、お互いに何の干渉もなく他人で居られたのにさ。


「此方の主に刃を向けた報いッ!!! 償って貰うッ!!!!!」

「ひっ――――」

『姫千代が【一刀断鉄】を発動、即死! みかりん(Lv,60)の首を撥ねました。経験値 1 獲得』

『【ウィッチブルーム・灰】を入手しました』


 おー派手に行ったわ。あ、住人NPCの皆さんが武器に手をかけてらっしゃる……。大丈夫ですよ~私は火傷のスリップダメージ分の4,000ダメージぐらいしか受けてませんよ~ファイアボール自体は0ダメージなんだけどね、状態異常はキッチリ入りよる。まあその火傷ダメージも、ちょっと温かいな~ぐらいにしか思ってませんからね~?


「あっ! お仲間さん達、みんな死んじゃいましたよ? 後はあなただけですね! どうしてファイアボールなんて撃ってきたんですか?」

「私達のことを先に攻撃して装備奪ったの、そっちじゃないですか~!! 装備返して!!!」

「じゃあ装備返してって言えばいいじゃないですか。違いますよね? 装備を返して欲しいよりも、殺したいから攻撃しただけですよねっ?」

「どっちもに決まってるじゃないですかぁ!!」

「装備を返せばとりあえず前者は清算で良い? それ相応の装備をあげるよ、ほら」

『【巨人の剣+5】を捨てました』

『【★魔導弓+7】を捨てました』

『【フレイムシールド+5】を捨てました』

『【ウィッチブルーム・灰】を捨てました』

『【★マル・デ・ウニ】を捨てました』

『【ダーク+7】を捨てました』

『【ヤリイカ】を捨てました』

「え、ちょ、ちょっと……!?」


 ほら、拾え拾え。返して~って騒いでた装備より、もっと良いものだろう装備をあげるよ。未だにアイテムインベントリを圧迫してた、倉庫に入れあぐねてたネタ装備にゴミ装備、アンコモンからユニークの装備、全部持っていけ~?


「拾った? これで過去の分は清算ってことでいいかな?」

「え、っと……いい、です、けどぉ?」


 ――――言ったな?


「リアちゃん、過去の分は清算したって。チャラだよチャラ」

「よかった! これでめでたく過去の分は清算ですねっ! じゃあ、今回の清算をしましょ~♪」

「…………へ?」


 過去のは清算した。この魔女はそれに合意した。じゃあ今回の分の清算をしようよ、きっちりと。ファイアボールが当たったの、私だけじゃあないんだからさあ? ねえ?


「ファイアボール、私にも当たったんですよ? 痛かった~! だから一発は一発、お返ししないと」

『にゃ王様が【にくきゅーすたっふ】で攻撃にゃ! くりてぃかる! メリアーヌ(Lv,61)に220,202だめ~じを与え、撃破したにゃ! つよい! 経験値 1 獲得にゃ~」


 ――――え、何そのリアちゃん専用のバトルログ、可愛いんだけど……。


『にゃ王様は慈悲深いので、弱き者から装備を奪わなかったにゃ! えらい!』

「えらいっ!! かわいい……!」

「可愛いですか? 可愛いですよね、このにくきゅーすたっふ! ねこちゃんの肉球マークがペタッと付けられる杖なんですよ♪」

『わうわう (ちがう、そうじゃない)』

「お見事! お強くなられましたね!」

『(*´ω`*)b』

「えっへへ~♡」


 にゃ王様、慈悲深いお方……。ああ、これは……にくきゅーすたっふで攻撃した時専用のログ表記なのか……! リアちゃんの偽装工作が今だけ一時的に剥がれてたから、正しい表記が見えちゃったよ。そして偽装工作、ステータスにスキルの表記に、リアちゃんが猫化するのも偽装工作の効果なんだ……。この偽装工作ってスキルがカバーしてる内容、もの凄く多いよ……。さすが【レジェンダリースキル】って書いてあるだけあるわ~。あ、元に戻った。戦闘に集中してる時は戦闘用に偽装工作のリソースを割くせいで、ステータスとかのカバーが剥がれちゃうのね。なーるほど。


「これで因縁に終止符が打たれたね。面倒なプレイヤーって嫌いだなぁ~」

『(´・ω・`)』

「そういえばさ、おにーちゃんもアルトラとかいうプレイヤーに付け回されて大変だね。今度見かけたら私が倒してあげるよ?」

『щ(゜д゜щ)カモーン』

「え? むしろばっちこーいって?」

『(*´ω`*)b』

「頼もしい限りですわ……。まあでも、レベルはそこそこ高いんだから、注意しないとダメよ?」

『(`・ω・´)ゞ』


 よしよし、じゃあ今度こそ氷の宮殿に向かおうか…………っと?


「――加勢する必要はなかったみたいだな」

「流石、魔神様を堂々と崇拝してるお方は違うねえ」

「いいセンスだ、お嬢さん! それに赤い騎士鎧のにーちゃんも、魔神様の紋章の盾を授かってるなんて、相当に位が高いんだろ? 格好いいねえ」

『(*´ω`*)』

「今度うちに寄っていきな! 安くしとくぜ」

「うちにはね、この雪国でも寒くないふわっふわの布団が売ってるんだ! 今度来なよ!」

「うまいメシ! うまい酒! うちにも来てくれ!」

「あ、ありが……と……ござ……ま……っお、お騒が……せ……しまんた……」

『わうわう!』

「美味しいご飯が食べられるお店! 行きたいですね!」

「また太りますよ」

「う゛っ゛…………!? ちょ、ちょっと、だけ……」

「…………ぽんぽこぽ~ん♡」

「う゛う゛う゛っ゛っ゛……!?」

「千代ちゃん、土日だけで確かにこう、幸せそうなふっくら具合になったね」

「へぅ……!? こ、此方は、そんなに、ふっくらしておりますかぁ……!?」

『わう (したよね?)』

『(´ε`;)』

「おばけ殿まで!?」


 そうかそうか、私はこの世界の住人からは『魔神崇拝者に見える格好』をしてるのね。ナイスな情報ありがとう皆さん……。そしてごめんなさい、私は人見知りなので……。そしておにーちゃんも魔神兵ってわかるのかな、盾が魔神の紋章って……あーこれかー……。気をつけようね。

 それでそれで~~? 千代ちゃんはご飯ご飯って毎日ぱくぱく食べて食べて食べまくってるけど、いよいよ尻尾の燃焼で燃やしきれなくなってきたんじゃないの~?? 特に太ももとか、タイツが悲鳴を上げ始めそうだよ? セーラー服もちょっとパツッとしてるし? あれ、出るところが出て引っ込むことろが引っ込んでるだけ? 食べまくって理想体型になるって何この子、妖怪? そういえば妖怪だったわ。妖狐でしたわ。ずるい……。


「ところで……。氷の宮殿ってどっちだと思う……?」

『Σ(´∀`;)』


 ところで話が変わるんだけど、肝心の氷の宮殿ってさ、どこなの…………?




◆ 新・ルテオラ共和国・氷の宮殿前 ◆




【氷の宮殿】(推奨レベル65~)

・発見ギルド【華胥の夢】、発見者【赫・ミッチェル】

・初クリアパーティ【赫・猫踏んじゃった・カイナ・僕が盾になろう・ドンドコ・くるみん・メガ盛りトントロ・ハセオ】

・最大8人までパーティ入場可能

・メモリアルダンジョン

・ペナルティ:水属性無効

・1日1度の挑戦が可能(毎日5:59に回数制限リセット)

・ソロ、ペア、フルパーティ用はクリア回数を共有します

・パーティメンバーは全員ポータル内に入って待機してください

・30秒のカウントダウン後、ポータル内のメンバーがダンジョン内に転送されます


 ここが、氷の宮殿ダンジョンの入り口なのね~……。一応入り口が四箇所あって、一つはソロ用、二つ目はペア用、三つ目がこのフルパーティ用の氷の宮殿の入り口になってて、それぞれがクリア回数を共有してるから、どれかしか入れないってのは注意が必要だね。それで、四つ目がね、あるんだけど…………。



【真・氷の宮殿】(推奨レベル85~)

・発見ギルド【華胥の夢】、発見者【リンネ】

・初クリアパーティ【なし】

・最大4人までパーティ入場可能

・ハイレベルメモリアルダンジョン

・ペナルティ:水属性無効

・1度のみクリアが可能(クリア後、ダンジョンのストーリーはUIの【ストーリー】から閲覧して下さい)

・挑戦回数無制限

・ソロ、ペア、フルパーティ用はクリア回数を共有しません

・パーティメンバーは全員ポータル内に入って待機してください

・30秒のカウントダウン後、ポータル内のメンバーがダンジョン内に転送されます



 なんでこれ、誰も発見してないんですか……? 真隣にあるダンジョンなんですけど……? そして、うーん……! 4人までしか入れないのかーこのダンジョン……。


「――あ、居た居たぁ~」

「あっ、お昼寝さん!」

「まだ行ってへんかったんや。おいっす~」

「レイジさんも、こんばんは!」

「ぁ……こ……ば……ゎ……」

「つくねちゃーん! こんばんは! アバター変えたの? 可愛いですね!!」

「ぁ……!? え、へ……♡ あ、ありが、と……っあの……っ! リンネ、ちゃ……も……せく、しーで……好き」

「んっ!! ありがとうつくねちゃーん!」


 おおっと、お昼寝さんとレイジさん、つくねちゃんも居る! つくねちゃんは前の黒ずくめの暗殺者っぽいアバターから、アイドルっぽい可愛いアバターになってる! そっか、そういえばあの時『服が被るだろうがぁ!!!』ってブチギレてたもんね、あの天使要求おじさん暗殺者と被ったのが許せなかったのね。そのアバター可愛いなぁ~……。え、つくねちゃん胸でっか。え、でっか!!! リアモジュ、だよね……?!


「つくねちゃん、その、大きい、ね……?」

「リンネちゃん、ほどじゃ、な……い、けど……」

「お、なんだなんだっ……シンパシー感じてる?」

「ぁ……の、い、いややっぱり、何でも……!!」

「あっ!! そうだお昼寝さん! ここ、ここにダンジョンのポータルあるのわかります!?」


 あかーん。余計なことに口を出して、つくねちゃんが嫌がるような話題に流れそうだったから引き戻さないと! ここにダンジョンポータルがあるのに、なんで誰も入ってないのか、その話題に持っていかないとーー!!


「え? 無いけど?」

「え?」

「え?」

「おん、ないなあ? つくねちゃん、なんかあるけ?」

「な、い、です、けどぉ……」

「え~……?」


 なんでお昼寝さん達にはここにポータルがあるの見えてないの~……? じゃあ、私がそっちのパーティに入ったら見えるようになる? いや逆に、私のパーティに入ってもらえば見えるようになるのでは?


「ちょっと、こっちは5人なんで、ちょっとだけフルパーティにしてみませんか?」

「いいよ~」

「ええで~~?」

「ぁ、っす……」


 お昼寝さんと、レイジさんと、つくねちゃんにパーティ招待を出してっと……。どうだっ!


『お昼寝大好きがパーティに加入しました』

『レイジがパーティに加入しました』

『つくね☆がパーティに加入しました』

「あ、え!? ある!」

「ほんまや、何言ってるんやって思ったら、あるなあ!?」

「え、うぇえ……!? あ、あるぅ……!」

「これで、出たらどうですか?」

『お昼寝大好きがパーティから脱退しました』

「あ、見えなくなった。あーこれは、そっちにフラグ持ちが居るってことかもしれないねー」

「フラグ? 事前になんかクリアしたとか、そういうのもあるっちゅ~ことけ?」

「な、る……ほどぉ……」


 な~るほど。私達のパーティに、フラグを持った誰かが居るからここに真・氷の宮殿なんてダンジョンが増えてるのか~……。


「千代ちゃんごめん、ちょっと一瞬だけ検証がしたいの! パーティから外れて貰ってもいい!?」

「構いませんよ! 探究が必要なのですね!」

『姫千代がパーティから脱退しました』

「消えへんなぁ」

「次、おにーちゃん! ごめんね、すぐ拾うから!」

『ヾ(*´∀`*)ノ』

『フリオニールがパーティから脱退しました』

「消えへん」

「ある、ます……」


 千代ちゃんとおにーちゃんじゃ消えない、と……。誰だと消えちゃうんだろ。


「私抜けてみますっ!」

「ごめんねリアちゃん、すぐ拾うから!」

『オーレリアがパーティから脱退しました』

「あるなあ」

「どん太……いや、敢えての私……?」

『パーティから脱退しました。レイジにパーティリーダーが引き継がれました』

「あるで、まだある! どんちゃんにフラグがあるみたいや!」

「どん太ァ!?」

『わう?』


 どん太がフラグ持ちだったかぁ~~~…………いや、私まだポータル見えてるわ。私もフラグある、なあ……?


「どん太、ここに転送の魔法陣見える?」

『わんっ!! (あるよっ!)』

「リアちゃん見える?」

「見えないですね~」

『(*´ω`*)』

「此方には見えませぬ……」


 私、どん太、おにーちゃんがフラグ持ちか~。この3人に共有するフラグって…………何? わっかんない……。あっは~。


「え~これ行ってみたいな~」

「行きたいわなぁ~」

「ぃ、き、たい……隠し、ダンジョン、で……すぇ……? ひひっ……!」

「どん太どん太、お昼寝さん達がね? この魔法陣見えなくて困ってるの。どん太が一緒だと見えるんだって」

『わう? わんっ!! (僕、とっても役に立つ? 一緒に行ってもいいよっ!!)』

「本当? 嫌じゃない? 一人だけ私達と別になっちゃうけど、大丈夫?」

『わんわんっ!!! わうぅん?(今度別の場所、ご主人が一緒に行ってくれたら、いいよ! 僕が必要でしょ??)』

「ありがとうどん太ぁ~~~!! 今度、またドラゴンのお肉取りに行こうね!」

『わんわんわんわん!!!! (絶対行くーーー!!! 約束ーーー!!!)』


 よし、どん太がいい子だった! どん太には申し訳ないけど、今度どん太には埋め合わせのドラゴンハントへ一緒に行く約束で、今回向こうはどん太に引率をお願いしよう!


『オーレリアがパーティに加入したにゃ~ん』

『フリオニールがパーティに加入しました』

『姫千代がパーティに加入しました』

「わ~! どん太さん、またトカゲ肉を集めにいきましょうねっ!」

「ええ、すぐに参りましょうっ!」

『(*´ω`)ノシ』

『わん!! (後でいこーーっ!!!)』

「あとで行こうね、どん太! じゃあこっちはこの4人で、そっちはどん太、お昼寝さん、レイジさん、つくねちゃんで!」

「どん太君、よろしくね~? 頼りにしてるよぉ~ふわふわ~~」

『わふわふっ……! (わ、お昼寝さんの撫で撫では上手だから、ふわぁ~~……)』

「なんやええ顔しとるなぁ」

「ふわ……ふわっ……!」


 いいねえどん太、美女と美少女に撫で回されて……。あれ? レイジさんは撫でないんですかね?


「レイジはさっきね~ちびバビロンちゃんに、ちびバビぱ~んち♡ を食らってゴミ箱とお友達になってたんだよ~」

「…………レイジさん?」

「ちゃ、ちゃうねん! ちょっと撫でたかっただけやねん! 怒らせるようなことはしとらへん、誓う! 誓うて!!」

「信じてます……」

「こ、こわぁ……!」


 なるほど。レイジさんは今ちょっとだけ、なでなでにトラウマがあるんですね? それにしてもちびバビぱ~んちかぁ……! 私も、ちょっとくらってみたい……。かも。


『真・氷の宮殿への転送がリクエストされました。パーティメンバーは転送ポータル上で待機してください。30秒後に転送が開始されます』

「それじゃあ、先に入ります! どん太、おねがいね!」

『わんっ!! (まっかせてね!!)』


 どん太、いい子だぁ……! 行ってくるよどん太、後でドラゴン肉収穫祭りだよ!



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