ステラヴェルチェ・1 ~突撃!~

◆ ステラヴェルチェ・ギルドハウス(無断借用) ◆


「随分と様子が変じゃねえか?」


 ハッゲさんに言われて外を見て、最初はその違和感に気がつくことが出来なかった。何がおかしいんだろうと、そんな程度。でもこのステラヴェルチェの特徴を思い出して、今の時刻を考えて何がおかしいのか理解に至った。


「昼なのに、動いてる……」

「カシュパの魔力が強くなっていますっ! 恐らく配下の兵士を強化するために使った魔術の影響で、国中のアンデッドにも効果が及んで昼でも徘徊するようになったのかと」

 

 昼間なのに住民アンデッドが動き回っている。夜間しか動かないはずだったのに、カシュパが魔術で配下の兵士を強化した影響を受けて徘徊するようになったらしい。でも、なんで? 前より警戒度が上がってるのはどういうことだろう……。


「警戒度が高くなってるってことだよね、なんで――――あっ……」

『Σ(´∀`;)!!!!』


 あ……!! おにーちゃん、あの時兵士の一人を殺しちゃったからじゃないの……!? 茂みに隠してもその場凌ぎにしかならないもん、あの兵士の死体を納棺して持ち帰るべきだったぁ……!! 大失敗じゃーん!!!


「おにーちゃん、あれは私が納棺し損ねたのが悪い……!」

『(´;ω;`)』

「あら~偵察した時にそういえば、ですわね……」

「うっかり。そりゃ見つかる」

「あ~。偵察した時に兵士を殺しちゃったんだね~?」

「そうなんですお昼寝さん……死体を茂みに隠して、そのままに……」

「まあ、しゃーないやろ!」

「この様子だと、やはりカシュパの周囲には防御の魔術や結界の類があるかもしれませんね」

「飛び道具に反応して反射するカウンターミサイルなんて魔術もあるッスからね~。魔術や飛び道具を無闇に撃つと痛い目に遭うッスよ、これは」


 んー失敗……失敗が続くなぁ。でもさっき作戦会議をしたお陰で、魔術とか飛び道具を撃ち込んで反射されて壊滅なんていう、更に大失敗に発展してしまうことはなくなっただろうから、ここから取り返していきたいね。


「まあまあ、警戒されてるけど作戦通りに行こう~! いくら身構えててもどうにもならない物があるってのを、思い知らせてやらないと~」

「わかりました。リアちゃん、千代ちゃん、行くよっ! どん太とおにーちゃん、そっちは頼んだよ!」

『(´;ω;`)b』

『わんっっ!! (頑張るよっ!)』

「行きましょうーっ! ルナ!」

『オーレリアが【使い魔・ボス猫のルナ】を召喚しました』

『なぁぁ~~~お』

「お、おや……? そんなに黒猫殿はまるまるとして居たでしょうか……?」

「…………ちょっと太ったかもしれませんっ!」


 待ってリアちゃん、それは太ったんじゃない。絶対に貫禄が出たって方だよそれ。絶対これリアちゃんに猫耳が生えた影響でしょ、お猫様辺りのスキルが悪さしてるでしょ!? 聞こうと思って目を合わせたら、ニコッ♡ として誤魔化すのずるい……ずるいよリアちゃん……。いつの間にこんなに悪い子になっちゃったのぉ……!


「ほな、ワイが道を作ったるで。どうせカチコミになるんや、堂々と行くで!」

『レイジが【剣鬼の波動】を開放、圧倒的なプレッシャーを発動します。格下モンスターが【怯み】状態になります』

「以前よりも力量が上がりましたね! 印術のほうは如何で御座いますか?」

「乾坤一擲、流星しか編み出せてへんなぁ。そっちはまだまだや」

「左様ですか! この短期間で二つも、努力の賜物で御座いますね!」

「なんやめっちゃ褒めるやん、褒めても何も出えへんで!」

「闘気の波動が強くなっておりますよっ!」

「お、おう……せやな!」

 

 レイジさんも、千代ちゃんに褒められるぐらいに強くなっちゃったか~……。うわ、その剣鬼の波動凄いですね……住民アンデッドが怯んで逃げてく。これで王宮までアンデッドに絡まれる心配がなくなりましたね! 

 あーレイジさんいいな~、私も千代ちゃんに褒められたいな。よし、そうだ! 今回いっぱい頑張って皆に褒めてもらおう! そうしようね!




◆ ステラヴェルチェ・王宮2階 ◆




焼け死ねグィ・ゾダス絶滅しろアニェーラ!! 絶滅焼夷弾アナイアレーションナパーム!!!」

『オーレリアが【絶滅焼夷弾アナイアレーションナパーム】を発動しました』

『Weak!!! 蛇神兵(Lv,80)に997,557ダメージを与えました』

『Weak!!! 蛇神兵(Lv,80)に1,005,004ダメージを与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』

『【死体安置所・5】に【蛇神兵(Lv,80)】を納棺しました』

『Weak!!! 蛇神兵――――』

 

 ――――王宮内は私達が想像していたよりも、もっと酷い状態になってた。前は一般兵みたいな、それこそちゃんと名前が付いてる兵士しかいなかったはずなのに、今はどれもこれも頭が蛇になって体表が蛇の鱗で覆われた蛇人間みたいな奴らしかいない。しかも恐らくゾンビ状態で、どいつもこいつも生気を感じない。意思もなく飛びかかってくるような、気味の悪い兵士だらけになっている。


「穿て、カーススピア」

『Miss……。蛇神兵(Lv,80)にダメージを与えられませんでした。不死属性、もしくは死霊系モンスターです』

「不死属性か、死霊系モンスターだって!」

「不死か~焼くのが手っ取り早いけどね~」

「この嫌な死臭、やはり死霊の類で御座いますか!」

『キャァァアアアァァアアアアアアアーーーーーーー!!!!!!!!」

『嘆きのバンシー(Lv,75)が【クラッシュスクリーム】を発動しました』

『姫千代が【狂戦士化・弱】状態になりました』

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!! おばけ、おばけおばけおばけおばけおばけ!!!!!」

『レイジが【一刀両断】を発動、Resist……。嘆きのバンシー(Lv,75)に481,119ダメージを与え、消滅させました。経験値 750,000 獲得』

「おばけが何やねん師匠!!! ぶった斬ればおばけもモンスターも変わらへん!!!」

「此方はおばけが、透けているのが嫌いに御座いますぅううううう!!!!!!」


 あーーーー……。千代ちゃんが苦手な奴が紛れてる……。これ多分、王宮に連れてこられた女性の住人NPCだよね……。流石に襲ってくるタイプの強力な住人NPCまで手出ししないわけにはいかない。申し訳ないけど、倒させてもらおう。それにしてもレイジさん、レジストって表記されてるのに481kダメージですか! や、ヤバい、とんでもない火力ですね……。


「呪え、喝采し、死を謳歌せよ。禁断の呪いをここに」

『ミッチェルが【禁断の呪い】を発動しました』

『解除まで永続的にSTR、AGIが170増加します。攻撃基礎値が+1,000されます。攻撃力が1.3倍になります。HPが毎秒0.3%減少します』

「ああああ我慢できないぃぃいい!!! きひっ……!! 戦闘だぁあああああ!!!!!!!!」

『つくね☆が【★オーバーキル!!!】を発動しました。攻撃力が2倍になり、受けるダメージが2倍になります』


 つ、つくねさん!? なんですかそのぶっ飛んだ自己バフスキル!? 両手斧を、片手で持ってらっしゃるーー!? ねーさんは両手斧を片方ずつだったけど、つくねさんは一本かぁ!! 


「殺す殺す殺す殺す……!!!」

『つくね☆が【大車輪】を発動!』

「おーこれこれ。ヤバいんだよね~凄いよ~」

「あかん、近くに居たら巻き込まれるでこれは!」

「むっ……!! トルネーダよりも危険ですね、これは……!」

『姫千代の【狂戦士化・弱】が解除されました』


 あ、これやばい。つくねさんは戦闘になるとスイッチが入っちゃうタイプだ。しかも味方とか関係なしに大戦斧を振り回して振り回して振り回しに振り回す、敵が死ぬまで徹底的にぶった斬るタイプのバーサーカーだ、これは!


『蛇神兵(Lv,80)が【大車輪】を受け、全装備破損! 合計1,301,109ダメージを受け、死亡しました。経験値 800,000 獲得』

『つくね☆が【高揚・1】状態になりました。攻撃力1.1倍加算、被ダメージ5%減少、毎秒HP0.5%回復』

「死ねぇぇえええ!!!!」

『…………ッ!』

『蛇神兵(Lv,80)が【大車輪】を受け、全装備破損! 合計1,411,791ダメージを受け、死亡しました。経験値 800,000 獲得』

『つくね☆が【高揚・2】状態になりました。攻撃力1.2倍加算、被ダメージ10%減少、毎秒HP1.0%回復』

「あっはぁああああ♡ あっははははは!!!!! あーーーーーーーーっははははははっっっっっ!!!!!!!!!」

「あ~完全にスイッチ入ったねぇ~。楽しそうだなぁ~つくねちゃん」

「火刑、執行。焼き払え」

『ミッチェルがつくね☆の攻撃属性を【火属性】に変更しました』


 つくねさんが、蛇神兵を次から次へとつくねに変えてるよぉ……。怖いよおぉ……!! というかサラッとやりましたねミッチェルさん、これでつくねさんが焼きつくね量産装置になりましたよ。


「この場の敵はつくねさんに任せましょう」

「任せるも何も、近寄れる気がせえへんで!」

「んっ、追いついた。二階の階段で陣取る……なにあれ」

「うっひゃーあれって片手斧~? エリスちゃんには両手斧に見えるんですけど~?」

「片手で持ってるから片手斧だろ。どれ、リアちゃんもう一発、一階を焼いといてくれ。次から次へと沸いてきてキリがねえ」

「はいっ! 焼け死ねグィ・ゾダス絶滅しろアニェーラ!! 絶滅焼夷弾アナイアレーションナパーム!!!」

『オーレリアが【絶滅焼夷弾アナイアレーションナパーム】を発動しました』

『Weak!!! 蛇神兵(Lv,80)に1,466,551ダメージを与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』

『Weak!!! 蛇神兵(Lv,80)に1,505,007ダメージを与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』

『【死体安置所・6】に【蛇神兵(Lv,80)】を納棺しました』

『【死体安置所・7】に【蛇神兵(Lv,80)】を納棺しました』


 後から突入したレーナちゃん達も合流してきた。1階の敵が多すぎるから、階段で陣取って地の利を活かして頭上有利を取って戦うらしい。うわ、チラッと見たけど火の海の奥から次から次へと出てくるわ、蛇神兵……。これ、レーナちゃん達だけで大丈夫かなぁ……。


「がぁああおおおっっっっ!!!!」

『つくね☆が【ぺったんこ!】を発動、蛇神兵に1,511,791ダメージを与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』

『つくね☆が【高揚・5】状態になりました。攻撃力1.5倍加算、被ダメージ25%減少、毎秒HP2.5%回復』

『ヾ(*´∀`*)ノ』

『フリオニールが【ダークアスパーション】を発動、パーティメンバー全員が完全に回復しました』

『わうぅ!! (ここは任せてね! 行ってきて!)』

「わっ! ありがとうおにーちゃん、どん太も気をつけてね!」

『(`・ω・´)b』

『わんっっ!!』


 いやいや、こっちはレーナちゃん達を信じて任せようっ!! ペルちゃんは既に一階で乱戦状態みたいだし(高笑いが聞こえる)、私達は先に進もう! 


「この奥、カシュパの魔力を感じますっ!! 間違いなく、居ますっ!!」

「よぉし、各員バフとか諸々のチェック~」

「っしゃあ……!! 行くで!」

『ミッチェルが【エネミーサーチ】を発動しました』

『レイジが【乾坤一擲】を発動、次に使用する攻撃スキルが強化される状態になりました』

『姫千代が【一騎当千】を発動、次に使用する攻撃スキルが大幅に強化される状態になりました』

「つくねちゃ~~~ん!! ボス部屋行くよ~~!!」

「ボスぅ……!? 行く行く行く行く行く!!! 殺す殺す殺す!!!!」

「この先に居るとしたら……随分と、モンスターの表示数が多いようです。大勢の護衛に囲まれていますね」

「あ、ふぅ~ん。じゃあつくねちゃ~ん、ストップ~~!!」

「がぁあぉぉぉおおお!!!!!?? とまれぇ……!? わっちは早く、早く早く早く早く、敵を潰したい潰したい潰したい!!!」


 つくねちゃんの殺意が高すぎる……。職業名のオーバーキルになんだか、すっごい納得しちゃったんだけど……! でも完全に狂戦士ってわけじゃなくて、こっちの言う事は一応聞こえるのね……。


「まあまあ、まずは挨拶よ。ほら、挨拶って大事でしょ~? 僕は挨拶ってどんな形であれ、ちゃんとするべきだと思ってるんだよね~」

「……耳塞いで口開けとけや!!」

「え? あ――――」

「なるほど。挨拶ですね? デストロイハリケーンクリーナー、発動します」

『ミッチェルが【デストロイハリケーンクリーナー】を発動、蛇神カシュパ(Lv,200)に1ダメージを与えました』

『反射ダメージでミッチェルが1ダメージを受けました』

『蛇神カシュパ(Lv,200)に掛かっていた補助魔術が全て解除されました』

『エリート蛇神兵(Lv,100)に1ダメージ――――』

 ………………

 …………

 ……

『エリート蛇神兵長(Lv,120)に掛かっていた補助魔術が全て解除されました』


 うわあ、ミッチェルさんが突撃した!? あ、待って? つくねちゃん以上にヤバい人が隣に居るんですけど。お昼寝さん、その肩に担いでる大タルって、もしかしてもしかしなくても……あの伝説の、敵対ギルドをギルドハウスごとふっ飛ばしたっていう……あの……!!? え、ヤバい!! 耳を塞いで、口を――――



「みーちゃん、なーーーいすっ!!! こんっちわ~~~~~!!!!! カシュパさぁぁあん!!! ギルド華胥の夢から、お届け物で~~~すっ!!!」

『なんだ、貴様――――』


 あれ? もしかしてこれは、先制大ダメージチャンスなのでは……?! 補助魔術が剥がれて反射されない今なら、お昼寝さんのと私のを合わせたら――――きっと芸術的な大爆発になりますよねぇ…………!!!!?


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