第66話 ココファーム・ワイナリー 第一楽章 2017

会場ではピアノの生演奏が流れている。

夜も更けてきて、雰囲気も良く素晴らしいディナー。


いよいよメインの肉料理だ。

その前に、次のワインを注文しておく。


「ワインを頼むんですか?やはり赤ワインですか?」

「そうだね、やはり最後の肉料理は赤ワインと一緒にいただきたいからね。」

そうだ、やはりここはココファームワイナリーのワインにしよう。

となると・・・

「このワインはどうかな?」

「あ・・私も気になっていました。」


ココファーム・ワイナリー 第一楽章 2017

メルローから作られたワイン。


口に含んでみる。

ちょっと驚いた。

日本のワインのメルローは果実味を売りにしたものが多い。

それに対して、このワインは重厚な味わい。どっしりした味覚に対して繊細で奥行きのある香り。そしてその奥にやはり大地の香りを感じる。

「このワインも美味しいですね。」


料理が運ばれてきた。

那須北和牛のひれステーキ。

那須の野菜をたくさん添えられている。

「こちらは、岩塩・ワサビ・醤油をお好みでお使いください。」

余計なソースはかかっていない。


ステーキを切り分けて口にする。

うん・・相変わらず見事だ・・

「うわぁ・・こんなステーキ初めて食べました。全然脂身がないのにしっとりとしていて柔らかいです。」

「ほんと、脂っぽくないのに肉のうまみがおいしいですね。」

ワインを口に含む。あぁ・・これは非常に合う。

肉の脂身がワインの香りを邪魔することなく、お互いを高めあっている。

「本当・・素晴らしい味です・・・」

瀬戸さんもうっとりしている。

この一皿は今日の夕食のクライマックスにふさわしい料理であった。


----

最期にデザートを食べている。

瀬戸さんは、ミントのアイスクリーム。私はチーズの盛り合わせ。

この赤ワイン、チーズともよく合う・・・


支配人の中山さんがやってきた。

「早乙女様。本日の料理はいかがでしたでしょうか。」

「本当に素晴らしい料理でした。いつも感動させてもらっています。」

「私も感動しました。私は初めて来たんですが、こんなに素晴らしい料理は生まれて初めて食べました。」

「ご満足いただけたようで、こちらといたしましてもうれしく思います。」


すると、瀬戸さんはとんでもないことを言った。


「残念なのは、お酒を飲んでしまったので・・・昼間に見に行った展望台から見る夜景が見に行けなくなっちゃったんですよね・・。それだけが残念です。」

「あはは・・私はお酒飲んじゃったから車の運転はできないですよ。」


ごまかしたつもりだったんだが・・・

支配人がうれしそうに言ってきた。


「え?本当ですか?うれしいです!」


マジですか。

「いや、この時間忙しいのではないですか?夕食の時間ですし。」

「いえいえ、お客様の・・特に魅力的な女性の願いをかなえなくては当ホテルとしてはサービス失格となってしまいます。ぜひご案内させてください。」


支配人・・・相変わらずサービスしすぎですよ。

そこまでしなくても・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る