第42話 期待を裏切られる

土曜日の午前中。待ち合わせ場所に行く。


「これが、あんたの車?」

「そうだよ、椅子だっけ・・・入るかね。」

「まぁ大丈夫なんじゃない?」

暫くしてやってきたミキちゃんが無責任に言う。

ほんとかね。


「じゃあ、行きますかね。」

助手席にミキちゃんを乗せて、エンジンをかける。


「え?何このエンジン音」

「どうした?」

「いや、エンジン音すごいんだけど。」

そしてメーターを見て言う。

「”M”かよ・・・」

「わかるの?ずいぶん車に詳しいんだね。男でもよっぽど詳しい人しかわからないよ。」

「前の彼氏が車に詳しかったからね・・・」

「ふうん」


車を発進させる。

高速に乗ってちょっと走ってすぐインターチェンジで降りる。


北欧のメーカーで有名な家具店に入る。

広大な駐車場に入っていく。まだ午前中なので結構すいている。


「はい、ついたよ。混む前に買いに行こう。」


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(ミキ視点)

正直、すっぽかされてもしょうがないと思っていたが、待ち合わせ場所に行くともう待っていた。

コンパクトカーと言っていいハッチバック。

聞いていた通り、ドイツ車だ。

”前の彼氏、ほしいって言ってたメーカーだなぁ”

別れた彼氏が、ほしがっていたことを思い出す。

まぁあんなダメ男はこちらから振ったんだけどね。


「じゃあ、行きますかね。」

迷いもなく高速に乗る。

やはり大人の男。余裕があるじゃないか。

あっという間にお店についた。


「はい、ついたよ。混む前に買いに行こう。」

「はいはい、行きましょー。」


お店に入る。

まずはショールームで買うものをチェックする。

「どれが欲しいんだ?」

「これこれ、このダイニング用のいす。」

「なるほど。これなら折りたためそうだから車に入るか。」

「実家から親が来るんで椅子を増やさなきゃならなくてね。」

「なるほどね、じゃあ1階に行って探しますか」


ここは、自分で商品を倉庫から探してきてレジに運ぶシステム。

ただ、そこまでにいろいろな雑貨とかもあって・・・

「あ、このグラスかわいい。買っていこ。」

早乙女さんの押すカートに追加する。

「おいおい、買いすぎると大変だぞ。」

いつのまにか結構商品が入っている。

「ここに来ると、ついついね・・・」

「まずは、目的のものを入手したほうがいいんじゃないのか?」

その通りである。


目的のいすの在庫は2個しかなかった。

危なかった。ちょうど2個必要だった。


「じゃあ、レジに向かおうか。」

早乙女さんにせかされて、レジに向かう。

まだ、レジは混雑していなく、スムーズに会計ができた。

冗談で言って見る。

「おごってくれない?」

「甘えすぎだって。さすがに自分で払ってよ。」

「ちぇ、残念。けち」

「ケチじゃない」

なかなか、いい反応をしてくるじゃない。


レジを出ると、ドリンクコーナーがあった。

「あ、コーラ飲みたい!ちょっと買ってくる。」

「あぁ、俺が買ってくるから荷物見ていてくれ。」

さっさと行ってしまう。

暫くして、飲み物を2つもってやってくる。

「はい、コーラ」

「ありがとうーおごってくれるの?」

冗談めかしてい言うと

「これくらい別にいいよ」


エレベーターに乗って、駐車場に戻る。

車には何とか乗せることができた。

ちょっとぎりぎりだったけど。


「さて、では配送しましょうか。」

「お願いしまーす。」


家の住所を教える。普通は付き合った人か友人にしか教えないけど。

まぁこの人ならなんとなく教えても大丈夫かな。


なんとなく、美月が惚れた理由がわかってきた。

大人の余裕と距離感。どこか安心できるのだ。


まだ付き合ってないみたいだし、今は私もフリー。

それはどうなんだろうと思ったが、ちょっとからかうくらいなら・・


家について、早乙女さんが椅子を運んでくれる。

マンションの3階。エレベーターがあるとはいえ自分だけなら苦労しただろう。


部屋のドアを開けて、迎え入れる。

「さぁ、こっちだよ。」

「はいはい」

玄関で椅子を下す、早乙女さん。

さて、この後どうなるんだろう。

ちょっとドキドキしてきた。


「じゃ、これで帰るね。」

「はぁ?」

思わず声に出てしまった。

「いや、お礼にコーヒーでも入れるよ。」

「いい、いい。お礼なら今度”いい天気”でいっぱいおごってくれ。

 じゃ!」

唖然とした私を置いて、あっさり出て行った。


いままで会った男は部屋になんとか入ろうとするやつばかりだった。

それとはあまりにも異なる態度。

暫く、茫然としたあとで、つぶやいてしまった。


「あまりにも淡白過ぎない?」

ちょっとは期待したのに・・・

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