第106話 井筒ワイン マスカットベリーA 遅摘み2019

今日は土曜日。

数駅先の駅に直結しているショッピングモールにやってきた。


付き合い始めての初めて2人でのお出かけ。

”デートと言っていいのか?”


でも、買う予定のものは瀬戸さんのパジャマ。

先週は早乙女のスウェット上下を貸したが、案の定サイズが大きすぎた。

なので、パジャマやその他諸々を買いに来ている。

要は生活必需品の購入。

”デートと言うには色気がないかなぁ”

でも、瀬戸さんは嬉しそうだ。

「で、どこに行きましす?パジャマはユ○○ロでもいいですよ。」

なんとなく瀬戸さんの自宅の部屋着が想像できてしまった。

「そうですね、あちらのお店に行ってみませんか?」

そこは、最近流行りのおしゃれ系雑貨屋さん。

「え?あの店にパジャマがあるんですか?」

「まぁ、行ってみましょう。食器とかも買う必要ありますしね。」

そこは、食器・台所用品・タオル

類から・・・パジャマも置いていた。

「このパジャマ・・・おしゃれでかっこいいですね・・」

「それにしますか?」

「はい、これにしようと思います。」

早乙女が持ってきたかごに・・・・2つ入れる。

「え?」

見ると、片方は色違いの男性用パジャマ。

「えへへ・・おそろいです。」

買う時、ちょっと恥ずかしいのだけど・・


あと、同じ店で食器や箸も購入する。

バスタオルも買い足した。


「あと買うものは・・・と。」

「あ、そこのお店に行ってもいいですか?」

ショピングモールに入っているドラッグストアを指差す。

「もちろんいいですよ。」

行った先は歯ブラシコーナー。

「今の早乙女さんが使っている歯ブラシは何色ですか?色違いにしましょう。」

「オレの使ってるのは確か・・・ピンクだな。」

すると瀬戸さんは笑顔を引きつらせて言う。

「じゃ・・じゃあ早乙女さんも買い替えましょう。私がピンクにしますから、緑なんてどうですか?」

「いいですよ、私はこの歯ブラシを気に入って使ってるんですけど、これでいいですか?」

柔らかめの超コンパクトヘッドを選ぶ。

「じゃあ、私もそれにしますね、ピンクで。」

色にこだわりがあるらしい。


帰りの車の中。瀬戸さんが恥ずかしそうに聞いてきた。

「早乙女さん・・・せっかくパジャマも買ったんだし、今日泊まっていってもいいでしょうか?」

「えーっと、今週はだめだよ。」

「え・・・どうしてですか?」

驚いて聞いてきた。

「だって・・・先週も泊まったし。その前の週は山梨で泊まったし。

 このところ週末ずっと一緒に泊まっているから。」

赤信号で停まったので、瀬戸さんの方を向いて言う。真剣な顔で。

「そろそろ、ご両親が怒ってるのではないかと・・。」


ーーーー

(瀬戸家にて)

「美月は今日も出かけてるのか?」

父親が母親に聞く。

「そうですわね、出かけるときに今日も泊まってくるかも・・ですって。」

「なにぃ!今日も外泊か?

 美月の付き合ってるやつはほんとに大丈夫なのか?」

「あ・・今、メッセージが来ましたわ。

 彼氏に、いつも外泊すると両親が心配するから今日は買えるように言われちゃった・・ご飯食べて帰ります。ですって。

 やっぱり、美月の彼氏ってなかなか真摯なんじゃないかしら。」

そんな母親の言葉に対し、父親はまだ信用ならん・・・と思っていた。


ーーーー

「うぅ・・残念です・・。」

「まぁ機嫌直して。今日の夜ご飯とワインは豪勢にしたから。」

「そうですね、期待してます!!」


あいかわらず料理ができない美月は、食べる方専門であるのだが。


まずは、ルッコラ・ロメインレタス・パプリカを使ってサラダを作る。

その間に付け合わせの人参とじゃがいもを茹でておく。

そして・・メインはステーキだ。

熊本産の赤身肉。

まずは両面を高温で焦げ目をつける。

その後すぐに、濡れ布巾でプライパンを冷まして予熱で火を通していく。

最後にもう一度火にかける。

あとは・・・しばらく肉を休ませる。

この休ませる工程が重要だ。


その間に、ソースを作る。

玉ねぎをすりおろしたもの・バター・醤油・みりん・砂糖少々と・・隠し味にすだちを絞った汁。

肉を焼いたフライパンに入れて煮詰めていく。

皿に付け合わせとサラダと肉を盛り付けて、ステーキソースを肉にかける。

サラダにはオリーブオイルとバルサミコ酢。

あとはバゲットを用意して完成。


「わぁ美味しそうです。」

「いやいや、実は主役はこっちでね。」

とワインセラーからワインを取り出す。

「ようやく届いたんですよ。」

「あ・・それは!!」

井筒ワイン マスカットベリーA 遅摘み2019

以前、”いい天気”に持っていったワインの今年版である。

「今年のワインですけど。瀬戸さんは気に入っていたようなので注文しておきました。」

「嬉しいです!!また飲みたかったんです。」

瞳をうるうるさせている。

そんなに飲みたかったのか・・・


ワイングラスに注ぐ。やはり濃いルビー色。きれいである。

「うわぁ・・この香りです。これです!。」

ワイングラスを持ち上げて香りを嗅いでいる。

そして一口・・・

「あぁ・・」

ワイングラスの香りをかぎながら空中を見つめている・・・

そんなに感動しているのか。

そして、一口飲んで見る。

香りは昨年と変わらず素晴らしい。

味は・・・昨年同様フルーティーだが、複雑さがさらに加わって、しかもコクが増している?


やはり、進化しているなあ・・

瀬戸さんを見ると、さらにワインを飲んでは恍惚としている。

「どうです?昨年より美味しくなった気がするんですが。」

「早乙女さん・・素敵です。こんなワイン飲めて幸せですぅ・・」


その後、ご飯を食べ終えた瀬戸さんがやっぱり泊まりたいと(もっと飲みたいと)

言ってきた。なんとか説得しタクシーに乗せるのにとっても苦労したのであった。

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