第107話 閑話 瀬戸家の事情 ②

「あれ?お父さんは?」

風呂上がりの美月が聞いてくる。

「あなたの提供したワインで晩酌して寝ちゃったわよ。明日、二日酔いにならないか心配だわ。」

「大丈夫よ、おかあさん。いいお酒は二日酔いにならないから。」

「そうならいいけど・・」

うちの娘はいつの間にお酒に詳しくなっちゃったのかしら。


「ところで、大事な話があるの。そこに座りなさい。」

「はあい、何?」

色気のない部屋着(ユ○○ロ)を着た長女の美月がソファに素直に座る。

学生の頃は人見知りで将来を心配するくらいだったが、ようやく彼氏ができたらしい。

しかしながら、最近は外泊が多い。

今日は日曜日ながら珍しく家にいた。

どうやら、彼氏に言われて仕方なく家にいたらしい。

真面目そうな彼氏ではあるのだが・・

「最近、彼氏ができて外泊が多いけれど、大事なことを確認するわね。」

「なあに、あらたまって」

「今は、お父さんがいないから言うけど・・。あなた達、ちゃんと避妊はしてるのかしら。大事なことよ。」

すると、娘は困ったように言う・・

「え・・・とお。まだしてないというか・・・」

「まだって。ちゃんと避妊はしないとだめよ。彼氏さん、しっかりしてそうなのに、だめね。」

「いや・・おかあさん。違うの、そうじゃないの。」

「何が違うっていうの?そこはちゃんとしないとだめよ。」

「あのね・・まだ、そういうことしてないの・・・」

「え?」

理解が追いついて行かない。

ここのところ毎週外泊している娘。

まぁ、もう社会人だし自己責任と思っていたのだが。

「あの・・・早乙女さんて、真面目すぎるので、、まだ・・してないと言うか・・・」

「え・・・と、まだエッチしてないの?」

「いえ・・この間、ついにファーストキスはしました・・・・」



照れながら言う、24歳の長女。

ファーストキスって・・・未だだったの?


今どきの女の子はもっと進んでいると思っていたのだけれど。


それにしても、何度も外泊しているのに清い体を保っているって・・・


「何度も外泊しているので、彼氏のお家に泊まってたと思ったんだけど違ったの?」

「その・・早乙女さんのおうちに泊まったりしたけど・・・。

 でも、まだしていないというか・・

 早乙女さんが真面目すぎるというか・・」

「え・・・そうなの?付き合ってるのよね?」

「うん!正式に付き合う事になりました。」

嬉しそうに言う娘。

それにしても、家に泊めながら肉体関係にならない彼氏って・・・・

今どき、貴重なのではないかしら。


「美月・・そのうち、その彼氏をちゃんと紹介してもらえるのかしら?」

「うん、今度紹介するね!」

嬉しそうに言う娘。


このやり取りによって、瀬戸家の母親が娘の彼氏に対する好感度がさらに・・しかも非常に上がったのであった。

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