第172話 大池ワイン 三姉妹 長女・次女・三女

◇◇◇◇◇◇ 

 何とか間に合った?

 3月4日は 3姉妹の日だそうです

◇◇◇◇◇◇


 健司と美月の婚姻届け。証人をお願いした一人目は、美月の親友の高橋ミキであった。

 ところが、高橋ミキが指定した場所は・・・美月の実家であった。

 なにやら、母親の瀬戸さくらと妹の瀬戸ひなたと一緒に女子会をしたいとの指定。


「ミキちゃん、なんで女子会なの?」

「だって・・ひなたちゃん二十歳になったんでしょ?一緒に飲みたいじゃん」

 そう、美月の妹の瀬戸ひなたは今年成人を迎えたばかりであった。

「よく覚えてるわね~」

「え~?基本じゃん?」

 誕生日などのイベントを覚えている。それが、もてるかどうかの分かれ目である。


 婚姻届けに署名・捺印をしてもらった。あとは女子会の始まりである。


「で、美月はお酒を持ってきたんでしょ?」

「そう、健司さんに言って適当に持ってきたわよ」


 ミキはひなたに聞いた。

「ひなたちゃんは、好きなお酒は何かな?」

「それが・・まだ飲んだことなくて」

 母親が言う。

「健司さんのところから持ってきたワインならきっとどれも美味しいわよ」


 美月が持ってきたワインは3本。

 

 長野県東筑摩郡山形村 大池ワイン

 三姉妹と呼ばれるワイン


 シャルドネ 2018 (しっかり者の長女)

 ソーヴィニヨン・ブラン 2019 (個性的な次女)

 メルロー2017 樽熟成 (村の人気者三女)


 瀬戸ひなたが不思議そうにボトルを見る。

「どれも、変わったイラストが描いてあるんですね」

 裏を見ると書いている文言。

「しっかり者の長女?変わった名前ですね・・・」

「えぇ・・・?しっかり者・・・?」

 慌てる美月。美月は長女である・・・がしっかり者とはとても・・・。


「私も長女だからいいじゃない」

 瀬戸さくらがフォローする。

「イラストは美月になんか似てるけどな・・」

 ミキが言う。


 シャルドネ2018。

 すっきりとした白ワイン。柑橘系のような香りのするさわやかなワインだ。


「こっちは・・・個性的な次女?」

 眉を顰めるひなた。

「次女だからって個性的とは言えないと思うんだけど」

 目をそらす、さくらと美月。

 ひなたは、我が道を行くところがあり・・・ちょっと個性的ではある。


 ソーヴィニヨン・ブラン 2019

 こちらは、まろやかな味と香り。フルーティーである。

「白ワインって言っても全然違うんだね・・・」

 ひなたが感心する。

「このワイン。おいしい・・・」

 気に入ったようである。


「お・・こっちは本格的な味がするな!」


 メルロー2017 樽熟成

 しっかりした赤ワイン。樽の渋みが引き締めるメルロー。

「村の人気者三女?あたしも三女だからちょうどいいな」

 ミキはこのワインが気に入ったようである。


「それで、さくらさんはこの結婚は全然問題ないの?」

 ミキが聞いた。

「全然問題ないわ。健司さんが美月をもらってくれるなら大歓迎よ」

「へえ・・どこがいいの?かなり年が離れてるけど」

「料理もできて、家事もできるなんて。美月にはもったいないくらいよ」

「なるほどねえ・・」

「え?え?そういう理由なの?私も料理頑張ってるのに」

 美月が抗議する。


「で、ミキさんはまだ結婚しないの?」

 今度はさくらが聞く。

「そうねえ・・・まだ結婚はできないかな?」

「相手はいるの?」

「まぁ・・・結婚してもいいかなと思っている相手はいるんだけど・・」

 美月が驚いて聞く。

「もう結婚考えてるの?」

「もう?」

 さくらが不思議に思って聞く。

「だって・・・海斗君ってまだ大学に入ったばかりでしょ?」

「え?そんなに若い彼氏なの?」

「えぇ・・・まぁ・・」

 ミキが顔を赤らめ、照れながらうなづく。

「すごいわねえ・・」

 女子会らしくおしゃべりが尽きない。


 そして、そのうち3人は気が付いた。




「あ・・・」


 瀬戸ひなたはいつの間にかソファに横になって寝ていた。

 あまり飲んではいない。1~2杯のはずではあったのだが。


 瀬戸さくらと美月はお酒は強い方である。

 しかしながら・・・瀬戸ひなたは父親に似てお酒が強くなかったようである。

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