第60話 水庭

スタッフの方に案内されて、フロントがある建物を出ていく。

歩いていく先には、緑の木々の間に点在する建物。

コテージ・・というには石造りの立派なもの。

そのうちの一つに案内された。

扉を開けて、中に案内される。


まず入ったのは、広々とした部屋。

ソファがありくつろげるリビングだ。

何畳あるんだろう・・ものすごく広い。

「お荷物はこちらに置かせていただきますね。」

「ありがとうございます。」

「何かお部屋でわからないことはありませんでしょうか?」

「大丈夫です。ありがとうございます。」

「それでは、何かありましたらフロントまでご連絡ください。」

「はい、ありがとうございます。」


私はソファに座る。

目の前のテーブルに置いてあるものに目を見張る。


リビングに早乙女さんも入ってきた。

「早乙女さん・・・これって・・・」

テーブルの上にあるものを指さす。

早乙女さんもちょっと驚いた顔になる。

「サービスしすぎだ・・」


テーブルの上にはフルーツの盛り合わせの入ったお皿。

氷の入った器に入っているシャンパン。

そして花束。

メッセージカードもある。

「これ・・・早乙女さんが注文してたんじゃないんですか?」

「いや、たぶんサービスだよ。」

私が今まで泊まったことのあるホテルとはずいぶん違う。

サービスで、シャンパンがついてくるって・・・

「まぁ、フルーツを食べる前に部屋の中を案内しましょう。」

「あ・・・はい。」

ホテルに来てからすっかり度肝を抜かれた私は言われるがまま、ついていった。

「この扉を開けると洗面所があって、その中のこっちがトイレですよ。そしてお風呂がこちら」

洗面所も広かった・・・

私の自宅の部屋より広いかも。

「こっちが寝室です。」

リビングと別に寝室があるんですね・・びっくりです。

寝室も広い・・大きなベッドが2つ。

ダブルベッドより大きなベッド。



ベッドが一つ!?

その事実に心臓が止まりそう。

ベッドが一つって・・・そういうことよね。

ドキドキが止まらない・・・




寝室を出て、リビングに戻るのかと思いきや。

早乙女さんは、もう一つ扉を開ける。

「それで・・・こっちが・・・」

扉の先には廊下が続いていた。

その先には・・・

「和室になってます。」

和室も広かったが・・・それだけではなかった。

廊下と和室の一面はガラス張りになっていて。

そこには池が広がっていた。

よく見ると廊下の足元にガラスがはめ込まれていて、その下も池になっている。

つまり、廊下と和室は池の上に建てられているようだ。

広々とした池。

壮観な眺め・・・まるで別世界。

「この和室は気持ちいでしょう・・・こちらに持ってきて食べましょうか。」

「は・・・はい・・」


このホテルに来てから驚くことばかりである。

早乙女さんが、フルーツとシャンパンを持ってきた。

「この部屋が”水庭”という名前の理由がわかったでしょう。」

私は恐る恐る聞いてみた。

「早乙女さん。このお部屋って・・もしかして・・・」

にっこり笑って早乙女さんが答える。

「もちろん。スイートルームですよ。」


瀬戸美月。生まれて初めてスイートルームなんてものに入りました。

どうしてこうなったのでしょう。


“ぽんっ”

小さく音を立てて、シャンパンの栓が開いた。

それをグラスに注いで、渡してもらった。

「まぁ、まずはこれを飲んで。ちょっとは落ち着くかも。」


ちなみに、物凄く美味しかったです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る