第222話 98Wines 霜 Sou ROSE 2020

「まだまだ暑いですね」

 

 早乙女美月は健司に言う。

 とはいえ、ここは冷房の効いた自宅である。


 夜。満月が綺麗である。

 夜とはいえ、まだ蒸し暑い。


 昨今の状況もあり、週末はほとんど家にいる。

 本を読んだり、ゲームをしたり。

 もともとインドア派の美月には、あまり苦にはならない。


 美月には・・・である。


 だが、健司には非常に苦痛であった。


 せっかくの夏。なのにどこにも行けない。

 そもそも、健司はほとんど在宅勤務。

 家から出ない日も多い。


「そうだね、本当なら涼しいところに旅行に行きたいところなんだけど」

「でも、今は旅行は難しいですよ」

「そうなんだよなぁ・・」


 冷たく冷やしたワインを飲みながら、健司は月を見ながら呟く。


 飲んでいるワインは・・・


 山梨県甲州市

 98Wines 霜 Sou ROSE 2020


 このワイナリーのラベルはどれも素敵な絵画が描かれている。

 

 さわやかな果実味に複雑な味。

 冷やして飲むと、夏にぴったりである。


”どこか、行きたいなぁ・・・”


 健司が考えていることを見通したのか、美月が健司に言った。


「状況が落ち着いたら、一緒に旅行に行きましょうね」


 健司は、そう言ってくれた美月の言葉がうれしかった。


「そうだね、そうしよう」


 早く、気軽に旅行に行けるようになってほしい。

 そう思う健司と美月であった。


 

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