第38話 デート?③
「早乙女さん。私は早乙女さんと一緒にいると楽しいです。
でも、早乙女さんはどうだったんですか?」
そう聞かれた。
どう答えればよいのだろう。
観覧車の中。二人きり。
瀬戸さんの真剣なまなざし。
そのまなざしを直視できなくて
つい外の景色に目を向けてしまう。
「その、楽しくなくはなかったよ。正直、楽しんだと思う。」
「本当ですか?でも、何か早乙女さんから、まるで義務のように付き合ってるんじゃないかと思って・・」
どう答えればいいのだろう。
いままで、こんなに直接的に聞いてくる女性はいなかった。
「その・・・瀬戸さんのせいじゃないんだ。俺の問題なんだけど・・・」
「はい。」
瀬戸さんは真剣に聞こうとしている。
へたにごまかしても来てくれなさそう。
「俺は、以前いろいろあったから、他人と、特に女性とどう接していいかわからなくて。だから、瀬戸さんともどう接していいか・・わからなくて・・」
前回、つきあった彼女と・・・いろいろあった。
それ以来、女性とはいつも引いた態度になってしまう。
「だから、瀬戸さんが悪いんじゃない。俺に問題があるんだ。 ごめん。」
「早乙女さんは悪くないです。謝らないでください。」
瀬戸さんの目に涙が浮かんでいる。
正直どうすればよいかわからない。
「私、今まで男性に友達もいなかったし、付き合ったことも無いんです。だから、私も男性とどう接していいかわからないんです。」
「でも、早乙女さんとは一緒にいると楽しいし。おいしいもの一緒に食べるとうれしいし・・・」
「だから、早乙女さんにも楽しんでもらえたらと思っていました。」
「そっか・・・」
「早乙女さん。迷惑でしたか・・・?」
「迷惑ではないよ。どうすればよいかわからなくて。戸惑っているだけ。」
瀬戸さんも外の景色を見る。
「綺麗な夕焼けですね。」
本当にきれいな夕焼けである。
「早乙女さん。今日は楽しかったです。本当にありがとうございます。」
「ごめん、最後にこんな風に気を使わせて。」
「いいんです。」
観覧車を下りた後、二人で駅に向かっていく。
帰りの路線は別方向。違う電車になる。
「早乙女さん。またメールしてもいいですか?」
「うん、大丈夫だよ。」
駅の改札前で話す。
「また、一緒に遊びたいですけど。嫌だったら断ってくださいね。」
どう返事していいのか。
「そうだね、またどこかに行くのもいいかもね。」
瀬戸さんは微笑んで答える。
「ありがとうございます、よかったらまた誘ってください。」
「うん、今日はありがとう。」
「いえ、私こそありがとうございました。」
そう言って、瀬戸さんは改札の向こうに去っていった。
その後、メールが来た。
”今日はありがとうございました。本当に楽しかったです。”
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