第206話 シャトー・ホンジョー 2020 Koshu 雫 (白)

「先日は甘いワインを飲みましたけど、健司さんは甘口のワインはあまり飲みませんよね?」

「そうだね、辛口のほうが好きだからね」

「他に甘口のワインってあるんですか?」

「それだったら…」


 取り出したのは


 山梨県甲州市 岩崎醸造株式会社

 シャトー・ホンジョー 2020 Koshu 雫 (白)


 甲州ぶどうを使った甘口のワイン。ハーフボトルのワインだ。


「これって、このあいだのオレンジワインのところですよね」

「そうだね、このワインはちょっと変わっているんだ」


 甲州ぶどうは糖度が出にくい。そこで、独自の方法で濃縮したあとに醸造しているようだ。なんでも、低温にすることで濃縮するらしい。


 栓を開けると、爽やかな香り。

 色は少しオレンジがかってる。


 飲んでみると…


「え?甘口って言うから…想像と違う!?」

 美月が驚いている。健司も予想と違った味わいに驚いた。


 甘ったるくない。

 酸や甲州独特の渋みなど、味わい全体が濃縮されている。いわゆる甘いワインとは異なる。

 甘さはスッと消えていき、旨味が余韻となっていく。


「これは美味しいね」

 美月は、グラスのワインを見つめながら考え込んでいる。

「健司さん…」

「ん?なに?」

「健司さんなら、このワインにどんな料理を合わせますか?ちょっと、想像できなくて」

「う……難しいね」


 やはり、甘みもあるので肉類ではないだろう。

 だが、旨味の強さと繊細さ…合う料理が難しい。

 とても美味しいワインなのだが。


「食前酒として、そのまま飲むのもいいと思うけど。たとえば天ぷらとか?」

「なるほど、いいですね。あ…あと、クリームチーズとかにも合いそうですね」


 このワイン、他にもいろいろな飲み方ができそうだ。

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