第30話 朝日町ワイン ロゼ/中口

今日のワインは朝日町ワイン ロゼ/中口

「で、結局あんたらは付き合うことになったのか。」

これはさっぽりして、飲みやすい。

フルーティーな香りがいいね。

「誰と誰が付き合うだって?」

「あんたと美月に決まってるだろ。」

「付き合ってるだなんて、ありえないだろ。しばらく会ってないし。」

「会ってないんじゃなくて、会わないようにしているんじゃないのか?」


今日も、遅い時間に”いい天気”に来たんだが・・・

ミキちゃんにつかまってしまった。

なんか、やたらと絡んでくる。


「また泊まったらしいじゃないか。おかげでこちらはアリバイ作りに協力させられて大変だったんだぞ。」

「あれは、泊っているというより酔いつぶれて動かなくなったというのが正解だ。」

「その後、メールで連絡とってもそっけないらしいじゃないか。一度らもういいのか。」

「はっきり言って、一度もやっていない。」


するとびっくりした顔をする。


「なんで、やってないんだよ。不能か?それとも・・・」

「なんで、やること前提なんだよ。」

「そりゃあ、あんなかわいい子が泊っていくようなチャンスだったらどんな男だって・・・・ねえ。」

「それは思い込みなんじゃないか?俺は少なくとも違う。」

「ふうん・・・」


それより、気になっていたことを聞いてみる。


「あの子は何であんなの無防備なんだ?いままでどんな相手と付き合ってきたんだよ。知ってるんだろ。」

「あぁ・・・・それはたぶん・・・」

たぶん?


「あの子は、今まで誰とも付き合ってないんじゃないかな。彼氏がいたって聞いたことがないよ。」

「はぁ? じゃあ、もっと謎だぞ。なんで、あんなに無防備にぐいぐい来るんだ?」

「それは、たぶん・・・

  あの子はラブコメ小説とか好きでよく読んでたからなぁ・・。あと少女漫画も好きだったしなぁ。」

「ラブコメ・・・・・?」

「何か、そういう展開にあこがれとかあるんじゃないか?朝チュンとか。」

「えっと・・・それってなんかオタクっぽい感じがするんだけど。」

「あの子は、少なくとも高校の時は立派なオタクだったぞ?」


まじかよ


「それと、私が知る限り・・・アンタが初恋の相手だからね。」


おいおい


「あの娘を泣かしたら容赦しないからね。」


なんだよそれ。重すぎるっての。


「そんなの、俺には無理だっての。」

甘くてフルーティーなはずのワインが、ずいぶん苦く感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る