第228話 笛吹甲州 グリ・ド・グリ 2020
山形 源治は久しぶりに”いい天気”の店内に来ていた。
窓を開け放ち、空気を入れ替える。
”まずは掃除からだな・・・”
埃が積もっているわけではないが、ちゃんと掃除することは大切であろう。
すでに開栓してしまっていたお酒は、全部捨てるしかない。
しかし、未開栓のお酒はセラーや冷蔵庫に保管しているから大丈夫だ。
もちろん、新たに仕入れる必要はあるだろうけど。
ニュースでは、感染者数がかなり減ってきていると報道されている。
このまま順調にいけば、期日通りに緊急事態宣言は解除されるかもしれない。
ようやく、店が開けられる・・・
その実感が出てきたため、店の様子を見にやって来たのだ。
まずは掃除
そして、設備の点検。
開店に間に合わせるように、お酒やビールや食材の仕入れもしなければならない。
おしぼり業者にも連絡しないとな・・・
メニューも一新しよう。
店内の飾りつけも、見直そう。
小さな店ではあるが、やることはたくさんある。
そして、開店に合わせて新たに仕入れようと思っているワイン。
一本持ってきた。
山梨県甲州市 シャトーメルシャン勝沼ワイナリー醸造
笛吹甲州 グリ・ド・グリ 2020
白ワインと言っていいのだが、醸造過程で皮なども一緒に醸しているのでオレンジワインに近いのだろう。
爽やかな香り。さわやかな果実の甘みの中に渋みやコクを感じる。
まるでダージリンティのような風合い。
”さて、忙しくなるな・・・”
店員のミキちゃんにも連絡を取らないとな・・・
店を閉めている間、ミキちゃんは実家に戻っているという。
休業する時には、またここに戻ってくると言ってはもらっていた。
だが、長居休業期間中に十分に給料も払えていない。
また、ミキちゃんは一緒に働いてもらえるだろうか?
お客さんは、戻ってきてくれるだろうか?
休業期間中、借金も増えた。
いろんな不安はある。
だけれど、前を向いて頑張るしかない。
そのためにも、緊急事態解除後にすぐに開店できるように準備を始めるのだ。
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