第93話 山梨県 甲州市 ぶどうの丘 レストラン

夕方。

窓の外は夕焼けから夕闇になりつつある。


それを眺めていると、ベッドから起き上がる気配がした。

どうやら、瀬戸さんが目を覚ましたらしい。


ベッドから身を起こしている瀬戸さんにミネラルウォーターを手渡す。

「ごめんなさい、寝てしまって・・・」

「大丈夫ですよ。おはようございます。」

ベッドに腰を下ろす。

瀬戸さんは私の顔を見る。不安そうな顔。

だけれども、すぐに微笑んだ。

「ありがとうございます。」

そう言って瀬戸さんも横に座ると、喉を潤す。

「眠れましたか?」

「夢を見ました・・」

「夢?」

「はい・・・でも、目を覚ましたら早乙女さんがいて、うれしかったです。」

肩に頭をもたれてくる。何かいつもと雰囲気が違う。

「大丈夫ですか?」

「はい」

その後、2人はしばらく無言になってしまう。


ベッドから見える窓の外は夕闇。まだ少しオレンジ色が残っている。

「きれいです・・・」

「そうですね。」

二人で、しばらく景色を眺める。


「もう少ししたら夕食の時間ですけど、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。」

瀬戸さんは、私の目を見つめてにっこりと笑った。

「早乙女さん。一緒に泊まってくれてありがとうございます。」

まっすぐに目を見られると気恥ずかしい。


「ちょっと化粧室に行ってきますね。」

化粧直しをしてくるのだろう。

何か吹っ切れたのか、戻ってきた瀬戸さんはいつも通りの表情に戻っていた。


その後、レストランに一緒に向かった。


レストランに入り、席に案内される。

大きな窓から見える夜景。

大都会ではないのだが、見事な夜景である。


グラスワインを頼む。

「今度は飲みすぎないようにしないとですね。」

「そうですね。気を付けましょう。」

グラスを上げて乾杯をする。

すると、すぐにコース料理が運ばれてきた。

思っていたよりもおいしい料理。

コストパフォーマンスはよいかもしれない。

魚料理・・その後にメインのステーキが出てきた。

ちょっと・・いや、かなり量が多い。


「食事が終わったら展望台のほうに行きましょうか。そちらでも夜景を見られそうですよ。」

すこし腹ごなしをしないと・・

「はい、そうしましょう。」

微笑む瀬戸さん。

前も思ったのだけれども、女性の割にはたくさん食べる。


ちなみに、ワインは瀬戸さんは2杯、私は3杯にとどめておいた。

いくら泊りとはいえ、ここで酔いつぶれるわけにいかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る