第4話 井筒ワイン マスカットベリーA 遅摘み2018
「いらっしゃい・・・あーー!おひさしぶりー!」
行きつけの店に久しぶりに顔を出した。
2か月くらい来ていなかった・・・というか店を閉めていた。
「ひさしぶり、ミキちゃん。無事再開できてよかったね。一人だけど席は空いている?」
「大丈夫ですよ~。こちらです~。」
店員の女の子に案内してもらい席に着く。
「お久しぶりです。来ていただいてありがとうございます。」
シェフのダイさんもあいさつに来てくれる。
「再開おめでとうございます。これ、お祝いです。」
持ってきた紙袋を手渡すと、驚いた顔をする。
「ありがとうございます。驚きました。」
「あーーー、覚えてくれてたんだー!。」
ミキちゃんがのぞき込む。
「中身はワインですよ、店に来ている人におすそ分けするなりして下さい。」
一つは、ココファームワイナリーの”陽はまた昇る”。そしてもう一つは・・・
「ごちそうさまです!」
常連の男性がうれしそうにグラスをあげてくる。
「どちらを開けるー?」
「そちらの青いほうがいいかな、”陽はまた昇る”は飾っておくといいんじゃない?」
「りょうかーい」
「あ・・・注文・・・。」
「あはは、忘れてた。なんにする?」
「じゃあトリッパの煮込みで。」メニューを見ずに注文した。
トリッパの煮込みが来た頃。ワインが開けられた。
グラスにちょっとずつ分けられた赤ワイン。
「なにこれ、すごくいい香りなんですけどー。」
ちゃっかり自分の分も確保したミキちゃんが言う。
「えーっと。井筒ワイン マスカットベリーA 遅摘み?」
「まあ飲んでみてよ。ではかんぱーい!」
「「ごちそうさまです!」」
飲んだ反応がどうか・・・みんなの表情を見る・
「まじか・・・」
常連の一人が言った。
そうであろう、そうであろう。
芳醇な香り。あふれる果実感。その感想が聞きたかった。
「これ・・・高いんじゃないでしょうか?」ダイさんが言う。
「いや・・ソンナニ高くはないよ。ただもうほとんど手に入りにくいけど。」
「え?」
「昨年の日本ワインコンクール金賞を取ったので。もう市場にあまり出回ってない。」
うちにはあと何本かあるけどね。
長野県塩尻市井筒ワイナリー マスカットベリーA「遅摘み」2018
ワインコンクールで賞を取るとみんな買い占めるからなぁ。
このワインとトリッパの煮込みは、思った通りよく合う。
「ほんと、ありがとうございます。」
「おいしいですー。ありがとうございますー」
「いえいえ、この店が再開してもらってほんとによかった。
せっかくの開店を祝わないとね。」
料理がおいしい行きつけの店があるということはほんとによい。
この日常が戻ってきたことがほんとにうれしいのだ。
◇◇◇◇◇◇◇
ちなみに、ミキちゃんはヒロインにはなりません。
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