1-6 契約

「って訳だ」


艦長室へと来たあたいは、グレッグと名乗ったくっそガタイの良いオールバック艦長に色々と説明した。

細かい事は博士が補って、だか。


「……わかった。回収した地球人なのは理解した。だが、アレを動かせたのは理解できんのだが」


どっかの誰かさんと間違われてたみたいだけど、誤解が解けてなにより。


「だから言ったじゃんよ。昔、似た技術が有ったって」


「技術云々じゃない。いやそれもあるが。俺も試したが気持ち悪いなんてものじゃない。うちで一番のパイロットであるマリアですら数歩歩くのがやっとだったんだが………」


「コツがあんだよコツが。てか慣れ」


現代、いや、あたいの時代的に言えばVRだからな。でっかいゴーグル着けなくて良い分かなり楽だ。

それに体調とかであたい等でも酔う時は酔うし、長時間でも平気な奴もいる。


「それと医療ブロックで研究員の一人がコールドスリープカプセルに入っていたのを確認した。アレも君が?」


「咄嗟にな。まだ装置自体は動いたから、緊急処置だ」


「そうか。その事に関しては感謝する。彼も大事なクルーの一人だからな」


「ワシからも礼を言う。小僧にはまだまだ教え足りんかったからな」


「今、医療ブロックの修復作業を急がせている。作業が終わり次第、すぐ横の治療ポッドで治療する予定だ」


あのメガネくん、助かりそうで何より。

てか、横に有った水槽みたいな物はやっぱ治療ポッドだったか。

使い方知らねーよ。


「それで今後の君の扱いだが」


「機密に触れたから拘束でもするか?」


「それは無い。それどころか君をパイロットとして雇いたい」


「軍隊に入る気は無いんだが?」


「ウチは軍規を使ってはいるが軍ではない。民間軍事…運送会社だ。コンプライアンス等はあるがそんなに締め付けは無いと自負している」


軍事会社なのか運送会社なのか。

両方か。


「ふーん、で、給料は?……っても今の時代の物価わっかんねーけど」


「そこは後で調べてくれ。契約開始は明日から。君にやってもらいたい仕事はこの艦の護衛とMA……特に置物グランシードを使っての船外作業、時間があれば博士の研究の手伝いも頼みたい」


「それ以外のやる事が発生した場合は?」


「同じ艦の仲間として手伝ってくれ」


「え~」


「俺だってたまに拭き掃除とか倉庫整理とかしているが?」


ま、冗談だが。

その後、契約書にサイン(300年経っても紙ベースなのは驚いた)して部屋を割り当てられた。

元々仮眠用の部屋の為かなり狭いけど、シャワーとトイレが付いてるのはなかなか良かったぜ………狭いけど。




次の日




回収作業がまだ終わってないマリア達の部隊を横目に、博士の研究の手伝いを始めた。

研究員のメガネくんの代わりだそうだ。


『おーし、これで良いか?』


「もうちょい右に置いてくれ……ふむ、右腕部の駆動速度が少し遅いか?振った感じはどうじゃ?」


『コンマで遅れる感じだなー……こう動かすとシュシュンって感じで、止まる感じがヌルッと止まる感じだな。伸びはその逆』


「プログラムのエンドか?ふむ………少し数値を変えてみたがどうじゃ?」


『お!シュッと動いてピタッと止まる!良いね、良い感じだな。あ、メインカメラの端にドット欠け』


「旧文明の液晶モニターじゃないんじゃ!んなもんあるかい!メインカメラにゴミでも付いとるんじゃないか!?」


『じゃ、後で掃除しとくー』


「火気管制の反応は?」


『ちょい速すぎる。暴発しそう』


「少し固くしとくか?後でやっとくわい」


「何か凄いな……持て余してたもんが一気に使い物になってきてやがる」


艦長が通路から飛んできた。

無重力だからできるんだが。

あ、今はハッチが閉まってるから空気はあるよ。

飛んできた艦長をあたいはグランシードの手を差し出し受け止める。


『なんぞ?』


「いや、様子を見に来たんだが……すぐにでも戦力として使えそうだな?」


「今までまともに扱えるパイロットが居らんかったからな。細かい調整が終わればすぐに出せるぞ」


『ところで艦長さんよぉ。回収作業ってのは何時おわんだ?』


「でかいのは終わってっから後は鉱物資源だな。ファイター用の鋼材はいくらでも流用できるが、ソルジャーとこのグランシードデカブツ用となるとレアメタルを探さにゃならんから、もう少し……そうだな、休息も兼ねて明日まではかかるな」


『その後は?』


「人員補充やら海賊共の引き渡しがあるから一旦「ギルド」に依るかな?いや、近場で考えたら「ファクトリー」か。「ファクトリー」で回収した鉱物資源でファイターかソルジャーを何機か購入する予定だ」


「ギルド」や「ファクトリー」がどんな所かなんとなーく想像できるが、そうかそうか。


『だったら、その前にちょいと行きたい所がある』



――――――――――――――――――――

補足


レアメタル

主に鉄や炭素鋼等(正確にはそれに近い鉱物)が主流だが、ソルジャーやグランシード、大気圏突入時に起こる断熱圧縮に耐えられる装甲(冷却方法はあるが鉄では耐えられない)に用いられている合金の素材の一つ。

地球が壊滅して100年ほどは合金は主にゴブリンに使われている鉄系合金とファイターに使われているチタン系合金に別れ、戦艦には耐熱性の高いタングステン系合金が用いられていた。

しかし、新たなレアメタルの発見とそれらを用いた合金が出てきた事により、ソルジャーやグランシード、最新鋭艦等は新素材合金を用いて作られている。

ソルジャーやグランシードがビーム兵器を主武装として運用できるのは、エンジン自体も新素材で出来ており、エネルギー効率やエンジン自体の耐久性が向上した為。



※実は艦長は2m超えの大男なのだ!

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