7-5 成果

あーもー、しっちゃかめっちゃかだ。


「これをすると無駄に怒りを買うのであまりやらないのですけどね」


そりゃそうだろ。

てか、この先読みを悩んでる奴にやって聖女になったんだな。

敵対ならムカつくが、悩んでたのならそりゃ救世主様だわ。


「それで?その先読みで信者を増やしてたのが何故?その力があれば急進派なんて奴等、どうとでもなったろ?だと言うのに何故今になって接触してきた?」


あ。姉貴が少し苛ついてる。

話が進まないからな。


「はい、1番目のお姉様。仰る事は分かりますが、必要な事だったのです」


「必要?」


「はい。確かに急進派を最初から抑える事も出来ました。ですが、そうすると奴等に勝てないのです」


奴等?

この場合……ミ=ゴか?


「ミ=ゴもそうですが、その後ろにいる者……邪神にです」


「おいおいおい!邪神ときたか!急にファンタジーだなおい!つまりアレか?ラスボスに勝てねーから前もって技術力を上げときましょうって事か?ざっけんな!!」


あたいは目の前のテーブルを蹴飛ばす。

固定されてるから吹っ飛びゃしねーが。


「そのせいで何人死んだ!?撃ったのはあたいだ!そりゃ分かってる!殺しに来てんだからなぁ?けどな!止めれたのなら止めろよ!現状見ろよ!バカでかい戦艦でKAMIKAZEを平気でやらせる狂った頭の奴等になってんだろ!?隕石戦艦の時は下手すりゃ工房も消し飛んでたんだぞ!?結果的に指揮官と10名ほどの工作員が消し飛んだだけで終わったがなあ!」


聖女に近づき胸ぐらを掴んで引き寄せる。

ゴッとおでこがぶつかった。


「その指揮官なぁ…てめーが連れ去られたと思って必死だったぞ……そいつの前で未来で勝てない奴がいるから今死んでくれって、言えんのかよ」


「………」


「ある程度先読みできるのなら、姉貴に頼るぐらいはしとけよ」


これは時間軸的にできたはず。

あたいは最近目が覚めたばっかだから無理だが姉貴は教団ができた時には既にトップクラスの軍人だったし、姉貴から少将だったマリアさんに繋ぎ入れれたからな。


「もう良いぞケイト」


「あいよ」


あたいは掴んでた胸ぐらから手を放し妹を抱きしめた。


「ふぇ……」


目に涙いっぱいためた妹が驚く。

あー……まぁアレだ。


「すまない。だがあたい等は兵士だ。護る為に戦ってる」


「だから上の命令には従うさ。納得できなくてもな?それが兵士だからな。だからこそ上に立つ者はそいつ等の事にも責任を持たなきゃならないんだ。そうだろ?」


姉貴が妹の育ての親であるじい様を指差す。


「元死刑囚、いや、元統合銀河混成宇宙軍「氷槍」ネウロ・ヤエ・マーシュ中将?」


え?このじい様が中将だったの?


「知っていたか……名乗るのが遅れたな。ネウロじゃ。この娘はアトゥア。アトゥアシリーズからその名を付けた」


よ、良かったー!!

妹までケイトじゃなくて!!

同姓同名が3人も並んだらややこしい過ぎだっての!


「しかし、良く分かったのう」


「そのツ…ゴホン。その御顔と眼光の鋭さで思い出したのです。非合法な組織との癒着に非人道的な作戦の立案、その他諸々で捕まって、量子テレポートの人体実験にされたってニュースを。まさか教団の創始者になってるとは思わなかったが」


「色々あってな。今では教団のしがないジジイじゃて……それと、すまなかった。急進派を時期が来るまで放置するように指示したのはワシじゃ。責めるならワシにしとくれ。娘は止めようとしとったんじゃ」


「お父様……」


「分かっておりますよ!だが、閣下に対し1番堪えるのが今のだからな。俺もケイトを止めなかったんだ」


え?そうなの?

あたいはついカッとなって、止めなかった妹を叱ったんだが………リックが「合わせとけ」って目で言ってる……。


「お、おおう!そそ、そうだZE!」


んだよ!

これじゃあたい道化じゃん!

姉貴も気づいたんなら言ってくれよな!

先にキレたあたいが言うのもなんだが。


「こほん………だがよ?その時期が分かってたのなら、あんたほどの人ならどうとでもできたんじゃねーの?」


「まず、大前提として未来視はそこまで万能ではないのじゃ。この子の読める未来は精々数秒が限度なんじゃ」


「数秒?だがさっき17年は先を読んでるみたいだったが?」


「たまにじゃが、この子が高熱を出す時があってな。その時は遙か先まで見透す。つまり…」


「コントロールできてないのか」


使い勝手悪りぃなー。


「では、閣下。我等エンハンブレに接触してきたと言う事は?」


「時期が来た、と判断したからじゃな。ドルク大隊長、戦力の方はどうか」


「閣下の予想通り跳ね上がりました」


そういや、ドルクさんが知り合いとか言ってたな。


「そうか………」


「唯一の誤算は急進派の奴等が我等を捨て駒にしようと先手を打ってきた事です」


じい様がっと、ネウロ元中将がこめかみを押さえる。


「うむ……本来、言うべきではないのだが少し愚痴を言わせとくれ。何時もこれじゃ。何かを成そうとすると何時も犠牲を強いられる……ままならんもんじゃな」


ネウロ元中将が大きくため息を吐く。


「どう言う事でしょうか?」


「ワシは一兵卒の頃より軍の有り様を考えておった。厳しい訓練を経て、未開惑星へと赴き、最前線で若い兵達が死ぬ。ワシも兵士じゃ。それをどうこう言うつもりはない。じゃが、長い旅路で培われた社会は、惑星規模とはいえ閉鎖された社会には変わりがなく、過去の栄光や生まれによる貴族主義が横行し、同じ兵士だと言うに差別が生まれた。大した事も出来ぬのに見下し蔑み、あまつさえ窮地の同胞を見殺しにする者達まで出てきた。その度に何度友を亡くした事か………そして、これを変え、兵達がより生存できるようにと遺伝子工学の研究をしていた組織に援助していたら、非合法な組織として既得権益にしがみつく者達に潰された」


「ちょーっとまった!」


ジジイの愚痴に付き合うかー…とか思ってたらヤベー事言ったぞ!?


「姉貴、マリアさん言ってたな?「散歩がてらに組織潰した」ってよ」


「お、おう……じゃあ母さんはそっち側…なのか?」


「安心せい。あの娘は利権・特権に群がる者達に利用されたんじゃ。権利者共にな。考えてもみよ。例え向かう先に争いが待つ星の元に生まれたとて、ピンポイントにワシが支援する研究所に潜入するか?その組織に許可を出したのはワシじゃぞ?研究所も隠してはおらんかったし、それに同じ将じゃからな。たまたまとはいえ来れば説明を含め案内をする」


お、おう……そりゃそうだよな。

堂々と建ってる研究所にフラフラ入っていくマリアさんは……やっぱおかしいが、潜入じゃないなら玄関から入るよな。

じゃあ、マリアさんはどうして研究所、組織をぶっ潰したんだ?


「2番目のお姉様。その方は恐らく誘導されたのです」


おっと、読まれた?

ま、距離が近いからな。


「誘導?あんな非常識の具現化したみたいな人がか?」


「オイコラ。否定はしねーが言い方」


おっと、姉貴すまね。


「どうやったかは問題ではない。アレの事だ、実験を見て潰すべきと判断したのじゃろう?やっとる事だけ見れば生命倫理に反する事じゃからな」


今更だが………あったのね生命倫理。

ナノマシンとか医療ポットとかあるから、そこら辺曖昧だと思ってたが。


「だが、運良くというか何と言うか。ギリギリの所で成果はあった。そこだけが救いじゃな」


それがあたい等か……だけど、それがどう兵達に還元されるんだ?


「その成果はどう活かされるんだ?あたい等が理想通りの死なねぇ兵士でも、現役の兵士達は変わんねぇだろ?」


「あ、そうか」


リック?


「と、失礼。口を出すつもりは無かったんですが、理解できたので、つい」


「分かったのかリック?」


「うん。目的はケイト達死なない兵士ではなく、そこに付与された個々の能力……それこそが成果ですよね?」


「そうじゃ」


つまり……どう言う事?


「つまりね?個々の能力、中尉の場合は天才的な戦闘力……いや、指導力かな?ケイトの場合は先読みや発想、いや適応力の方が正確かな?聖女様は予知能力を中心とした超能力。どれも敵対した相手からしたら真っ先に潰したい相手なんだ。でも、簡単には……いや、絶対に死なない。その間に他の兵達がどんどん強く、兵器も高性能に、策を立てても予知される」


地獄じゃねぇか。

ゲームで言やぁ、BuffとDebuffをばら撒きつつ全回復してくるバグで死なない支援キャラ3人を有するパーティーを相手にするみたいなもんだ。

しかも、その相手はチートコード使って、攻略wiki見ながら攻めてくる。

シャレになんねぇ………。


「これこそがネウロ元中将閣下の仰る「成果」だね」


————————————————————

補足


ネウロ元中将と聖女

ネウロ元中将は元々一般出の兵士であり、叩き上げの軍人であった。

厳しい訓練を経て数々の任務をこなしていく中で身分による格差を知り、それにより多くの仲間を失った。

このままではいけないと思い立ったが、身分格差の壁は分厚く、正攻法では現体制を崩せないと知り、例え非合法であろうとも使える物は何でも使い中将の地位まで上り詰めた。

その過程で遺伝子工学を元に増産可能な兵士を造る組織と接触、組織改革を行い非合法から合法な組織へと転化させた(端的に言えば金儲けさせないようにした)

その目的は本編であった通り、死なない指揮官によって兵士達を鍛え上げ、生存率を高める事であった。

その中で脳の機能特化した個体なら、予想以上の成果を出せると踏み、生まれた個体を引き取った。

それが聖女であり、2人の出会いであった。



※強面のネウロさんも子育てには苦労してたのだ!!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

RGゴット○ンダム作ってたら60000PV突破してた!感謝なのだ!

止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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