8-4 プリマヴェーラ

ひとっ風呂浴びた後、しばらく晩の作戦を3人で練っていると。


「2人とも、そろそろ夕食の時間だ。入ってもいいかね?」


バンマス中佐が迎えに来た。


『ではしばらく偽装工作の方に回っときますね』


「頼んだ」


さーてと、しなっしななカヨワイ幼女の演技しねーとなー。

通されたのはかなり広めの食堂……っても長いテーブルに豪華そうな調度品。

まるでお貴族様の部屋だな。


「お待たせした。掛けたまえ」


大統領に促され着席。

並べられたコース料理に舌鼓を打つ。

うん、思っきりナノマシンが反応してるな。


『睡眠導入剤みたいです』


グランドロアが文字だけで何が……入っているか教えてくれるが、やっぱりかー。


「さて、少し話がある」


「何でしょうか?」


お話は姉貴に任して、あたいは黙っとこ。


「現在、我々中央政府は反政府組織と戦っている。戦況としては我々が少し優勢、と言ったとこでね。政府としてはなんとか鎮圧したいと考えている」


鎮圧ねえ。

制圧の間違いじゃねーの?とか思うが。


「その為、地下に眠る旧文明の兵器を発掘し、軍備を整えてはいますが、それ等を操るパイロットが足りないんだ。そこで提案なのだが…」


そろそろ頃合いかな?

あたいが机に突っ伏すと姉貴も同じく眠らされたフリをする。


「我々の駒となってもらおうか」


大統領……ごめんなー……悪役らしく罠にかけてあたい等を捕らえたつもりなんだろうが、フリで騙してんのあたい等だから、すんげぇ間抜けに見えちまう………吹き出しそう。


「連れて行け」


入って来た兵士達に担ぎ上げられ、どっかに運ばれる。

ちょっと歩くと止まった……エレベーターに乗るんか。

で、この浮遊感、結構な速度がでてんなーてか、長くね?

あたいはおっさんにお姫さま抱っこされてっから目ぇ開ける訳にもいかねーし、すげー気を使ってくれてるから、マジで寝そうになってきた。


「中佐」


姉貴を抱っこしてる兵士が口を開いたな。


「なんだ?」


「やはり納得できません……まだ幼い子どもじゃないですか」


「……言いたい事は分かるが、それ以上は止めておけ。いくらエレベーター内には防犯用のカメラしかないとはいえ、何処から反逆者とみなされるか分からん」


「しかし!……いえ、すみませんでした」


「いい。聞かなかった事にする」


「へぇ、そいつぁ良い事聞いたぜ」


姉貴が動いた!!

驚きのあまり呆然としているおっさんの首に腕を巻きつけ足で脇を通して肩を極める。

ガタイが良いからやりにくい………。


「ぐっ……」


「はーい、お二人さん。エレベーターの到着まで質問タイムだ」


流石姉貴、兵士の持ってた銃を奪ってる。


「騙して……いたのか」


「こっちに跳ばされ状況が分かんなかったからな。大体把握したが」


「………降参だ。何が聞きたい」


降参ね。だったらあたいも降りるかな。


「鉄錆団、とか言ったか?あんた等……そのレジスタンスと繋がってるだろ?」


「そんな訳…!」


「よせ……彼は関係無い。団長とは古い仲で密かに連絡を取り合っている」


ほう?兵士君じゃなくおっさんの方が繋がってたか。


「中佐……!?」


「言ったろ。何処から反逆者とみなされるか分からんと。故に私1人で情報のリークをしていた」


「おっしゃっていただければ!」


いやいやいや。


「兵士君よー?この都市で誰がまともで誰がゲスか分かんないからおっさん1人で動いてたんだろうが。気付かなかったテメーが悪い」


「ウグッ……」


「それは普通、不可能では………なかなか辛辣だな……」


「俺もそう思うぞ……」


あれー?


「オ、オーケーオーケー。ともかく、味方がいるなら動きやすい」


「……逆に聞きたい。君達はどうしたい」


「あたい等はこの世界だか惑星だかに跳ばされて迷惑してんだ。帰還方法を知りたい」


「難しいな……だが、そろそろ時間の様だ」


ポーンとエレベーターが止まり扉が開く。

流石に降りねーとヤベーな。

んじゃ。

おっさんの首元にピョーンと飛び付く。

姉貴も同じく兵士君に飛び付く。


「じゃ、寝たフリ再開」


「あいよ。おっさんと兵士君、これから運命共同体って事で」


「「……………」」


連れて行く所あんだろうに。

2人ともポカーンとしてないで進んでください。

兵士君はまだ困惑してるが、おっさんは意を決して暗い通路を歩き出した。


「兵士君、この先は?」


「この先は……」


「ラボだ。発掘した兵器の改修や修理、研究する場所でもあるし、転移してきた者達や捕らえてきた反逆者達を洗脳する場所でもある」


まだ少し混乱してる兵士君に代わり、おっさんが答える。


「他の洗脳された人達は?」


「軍の兵士となっている。無論、洗脳を受けず自ら軍に協力してる者達もいるが」


奇特な奴もいるんだなー。

金目当てだろうけど。


「あらぁ?新人かしら?」


通路に響く新たな声。

若い女性っぽいな……おっと寝たフリ寝たフリっと。


「モルジアナ殿」


「今度は……あら可愛い。双子?」


「はい」


「ちょっとムカつくわね……まあいいわ!それで?彼女達はアレに乗せるのかしら?」


「同じ系統と思われるので双子には丁度良いかと」


「ふーん。ま、直ぐには使い物にならないでしょうし、戦いは「戦場のプリマヴェーラ」と呼ばれた私と愛機エースルビーSが全て引き受けるわ!」


スゲー自信だなー。


「お姉様」


次は誰?


「あらメイサ」


「まだ機体の整備が残ってます。お戻りを」


「えー」


「ただでさえ!……この世界にはあたし達の機体との共通パーツが少ないのです。それをお姉様が余計な塗装やらなんやらを…」


「分かった!分かったから!戻るから!じゃあね中佐さん」


2人が立ち去っていく……チラッと後ろ姿を確認すると、ピラピラ手を振りながら歩いてんのがモルジアナって奴だろう。

………てか、ピンク髪のツインテって。

もう一人は黒髪ストレートロングの……ありゃメイド服か!?

なんかキャラが濃いーな……。


「今の2人が率先して協力している者達だ」


ふーん、話の流れ的にあの2人も別の世界から来てるっぽいな。

それに共通パーツが少ないって事は、別系統の技術だろうから、めっちゃ興味深い。

どう転ぶか分からんけど。

2人と別れ、そっから少し歩くと研究所みたいなブロックに到着。


「主任、洗脳装置の準備はできてるか」


「ヒャヒャヒャ!とうの昔にできとるわ!」


主任って言われた奴はマッドな感じのジジイ。

目ぇ閉じてるから分からんが、洗脳装置なんてもんを扱ってんだ。

狂ってんだろう。


「コレを被せれば終わりじゃて!とっとと被せて機体に乗せい!」


「……了承した。だが被せるのは乗せてからだ」


「どっちでもええ!さっさとせんか!」


ジジイに急かされながらおっさんと兵士君が多分メットかなんかを受け取り、更に奥へ。


「此処からは中央政府所有の格納庫だ」


おっさんが口を開いたって事は喋る程度なら大丈夫って事だな?


「機体数は?」


「旧文明の量産機が100。内洗脳兵の機体は20」


「残りの80は?」


「機体を動かせるだけの技術を得ている者達用で、今朝方……つまり君等を連れてきた時に見た撃墜された3機……あのレベルだな」


「あー、ほぼ警備隊レベルかー」


「大した事ねーな」


「随分と辛辣だな。君達はそこまで強いのか?私を拘束した実力は認めるが」


「操縦系統にもよるが、妹の撃破数はダントツだぜ?」


「ありゃそう言う装備だからだってばさ」


「訓練でも負けたのもそんなにねーだろ?」


「ペダルに足が届かねーから立って操縦してたからな。今はどーだろ?防衛隊もレベル上がってるからなー」


「君等はどんな場所から来たんだ………」


————————————————————

補足


中央政府所有の機体

荒廃したこの世界において人形の機体はほぼ全て旧文明の遺産であり、地中等を掘り起こしスクラップ同然の物を組み合わせ作られている。

掘り起こす物の中でも特に貴重なのが壊れていない完品で、掘り起こす事が出来れば機体性能に限らず億近い金額を得る事が出来る。

中央政府はそれ等完品を集め自軍としているが完品自体が少なく、掘り出したスクラップは全て備品となっている。

これはパーツ等を整形する射出成形機や旋盤、プレス機や鋳造設備の大半が失われており、まともな製造が行えない為であり、ネジやナットなどは作るより使い回したほうが早いからである。


※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)人を支配するという。

おかしな被り物に意味はあるのか。

目して語らぬ目の前の巨人に問い掛ける。

その翼はなんの為。

支配の為か解放の為か。

次は己の心に問おう。

次回「エンジェルズ」

赤と青の天使達が今舞い上がる。

(ちゃんらーちゃん!)


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&70000PV突破感謝なのだ!

ストックがもう無いから毎日更新は出来なくなってるのだ……出来次第上げるのでまったり待っててもらえると有り難いのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

プリマヴェーラとその妹の機体は出来たのだ!アソビーに上げるのだ!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る