クエスト

5-1 その道のプロ

数日後


「初めまして可愛らしいお嬢さん」


うわー……開口一番口説き始めたよコイツ。

艦長室にやって来た目の前に居るその男は、艦長が呼び出した艦長の同族、スピリットの男性だ。

スピリット族だから見た目は当てにならないが、今は茶髪のロン毛の……チャラ男だ。


「ケイン、うちのクルーを口説くな」


「ヘイヘイ。あ、エリーゼちゃん、今日も美人だねー」


舌の根乾かん内にソッコーで口説き出してるよコイツ。


「はぁ……コイツはケイン・ストラトス。元諜報部のスピリットだ」


「どぅもー元超絶エリート諜報部隊員そして今は!フリーのジャーナリスト、ケイィィィィィィィィン………ストラトスどぅえす!」


うん、チャラい。

てか、ウザイ。


「でもグーたんも相変わらずカッチンね?そんなんじゃエリーゼちゃんをデートに誘ったりしてないんじゃなーい?」


「忙しいからそれは追々な」


艦長の「追々」でエリーゼさんがめっちゃ固まった。


「うっわ、しらけるー……」


「それよりケイン、お前を呼んだのには訳がある」


「思考伝達で聞いた事ね?オッケーよーん。あの宗教法人うっさん臭いんだよねー。それに元々潜入取材しよーかってウチ等ジャーナリストの業界でも話出てるし」


「頼む。襲撃を受けた証拠はあるんだが、簡単に逃げられるからな」


「あいよっと。因みにだけどさ、報酬は?」


「質にもよるが、有益なら10、ひっくり返せるほどの証拠なら100出そう」


「うぃーねぇー!100個ほど見つけてくるわ」


「あれば良いな」


「じゃ、準備したら向かうわ。チャオ♪」


陽気なままケインが艦長室から出ていく。


「なあ、グーたん?」


「やめろその呼び方」


「アレ大丈夫か?イマイチ信用出来ねぇんだが?」


「ありゃ演技だ。ああ見えて潜入の腕は俺以上だ。表立っていないから知らん奴の方が多いがな。アイツが諜報部時代になんて呼ばれてたと思う?」


「何て?」


「……モンストゥラスアパリッションだ」


「ん「怪物幽霊」?」


翻訳の差なのか、「モンストゥラス」は「怪物」とか「ぞっとする」とかで、「アパリッション」は「幽霊」とか「いきなり現れるモノ」とかの意味があるんだが………


「まぁ間違っちゃいないが「恐るべき幻影」だ。何度か訓練で手合わせした事があるが、俺は一度も勝ってない」


「マジで?」


「相性も有るがな。何回ケインに後ろからキル判定食らった事か………ともかく、諜報に関しちゃアイツを超える奴はそうそういないだろうな」


はー……チャラ男がねぇ。

人は見かけによらないもんだなー……スピリットだから……違うか。


にしても、ちょくちょく出てくる軍って、優秀な人材いなくね?

仕事する分には問題ない、それなりに優秀なのはプロだからいるんだろうが………

えー、かつての戦争の英雄と称される「フェニックス隊」、つまりカリンさん、グレッグ艦長、姉貴とギルドだかファクトリーだかで療養中の人と……後、行方不明のカリンさんの弟さんがごっそり辞めてる。

で、マリアさんもそうだし、さっきのケインも辞めてる。

エンハンブレのクルーも全員ではない(軍の依頼で教育中の訓練生が300人ほどいる)けど、グレッグ艦長を慕って着いてきた。

………ざっと500人以上が辞めた事になってない?

しかも最優秀な人材ばっか。

ちょっと前に現在の軍を調べたが、軍の総数は100万は超えてるから問題ないのか?

そんだけ居りゃ、麒麟児や金獅子はゴロゴロいそうだしなあ………



さて、情報が入るまで時間あるし、何しようかね?とか考えながら艦内をふらふらしてると、マリアさんに呼び止められた。


「ケイトじゃないか」


「あ、マリアさんチースッ。なんか久しぶりっすね。専用機、受領できたんすね?」


「そうね。調整なんかで本部と工房に行ってたからファクトリー以来ってとこね」


工房ってのはカリンさんがオーナーしてるフィール工房ってとこで、服飾やら化粧品だけでなく、武器と最近はMAも作るようになった手広すぎる会社だ。

他の企業と違って、女性目線で女性兵士の為の備品や服装、パイロットスーツなんかを扱っており、あたいのスーツも専門店で買ったのにフィール工房製で、下着なんかもそうだ。

元軍人だけどデザイナーとしても一流で、カリンさんのワンマンなのに大人気で、もうすぐ大企業の仲間入りになるそうだ。


「それより聞いたわよ?謎の機体複数相手に大立ち回りしたって」


「グランシードの性能のお陰っすよー」


実際にそうだしな。

アレがソルジャーなんかだったら、あたいは新兵レベルだからやられてたはず。


「その性能を引き出せるのだから大したもんよ……あ、そうそう、ケイト知らない?」


「姉貴っすか?艦長室で別れたきりっすね。連絡してみます?艦内にはいるはずなんで」


「お願いできるかしら?グレ坊に新型受領したのを報告しなきゃいけないから……」


グレ坊って。

艦長、色んな呼ばれ方してんなー。

マリアさんも軍では歴戦の兵士だから、凄いんだけど、艦長達の関係性が分からん。

ま、ここでズケズケと聞くのもなんだし、暇な時にでも聞いてみよう。


「了解っす。あ、今新型って……」


「1番格納庫よ。見てきていいわよ?あなたがMA、と言うよりロボットとかが好きなのは知ってるから」


「アザッス!じゃ、姉貴に連絡したら1番格納庫で新型見とくっす!」


「お願いね……そうそう、もう少ししたらサユリも帰ってくるから、そこで待ってて?」


そう言ってマリアさんは艦長室に向かった。

さて、姉貴に連絡しますか。



――――――――――――――――――――

補足


フィール工房

現在、軍部を中心とした放浪の民である統合銀河混成宇宙軍は、ありとあらゆる種族と交流を持ちながら旅を続けていた。

だが、多種族ではあるが大半が服装等を必要としない、もしくは文化が統一されている種族郡であり、人型の種族(厳密に言えば地球人の様な人間ではない)であってもサブカルチャー的な物は発展していなかった。

民間であろうと軍部であろうと、パイロットスーツや軍服、無地の上下が一般的であり、大半が軍から支給された物だった。

しかし、地球圏に到着した際、彼等から見れば1つの種族である地球人のあまりにも多種多様な文化に触れ、直接関わった者達(ほぼ女性兵士)から取り入れるべきと声が上がったが、軍上層部に聞き入れられる事は無かった。

フィール工房はオーナーであるカリン・フィールが、そんな女性達の要望を受け(むしろ先頭に立ち)設立した会社である。

そのジャンルは多岐に渡り、地球の文化を(密航して)取り入れ、コスメやファッションに始まり、生理用品、音楽(アイドル)や食(お菓子)、果ては介護用品に至るまで網羅している。

また、新しいデザインでのMA開発を始めようと着手しようとしていた。

これは普及されているMAの大半が一般的な男性パイロットを基準にコクピット周りが作られており、いざと言う時の予備スーツ及びその他備品に女性用が無く、女性の体型に合わせたシートも無かった為であり、また、量産型の為、無骨なデザインで「可愛くない」と感じたからでもある。



※一般兵も有象無象ではないのだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

あっという間の30000PV突破感謝なのだ!

止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る