4-20 潜入するのは誰にするか
「量子教だと?軍本部で流行ってる宗教じゃねぇか。間違い無いのか?」
「間違いねぇ。交戦記録に残ってる」
あの時に相手のパイロットがはっきりと「清き清浄なる量子の元に」って言ってたからな。
「よし、それをコピーしておいてくれ。問い詰めてやる……多分無駄だろうがな」
「だろうな」
やっぱそうなるよなー。
なんせ証拠が少ない。
交戦記録があろうが機体があろうが、「確認する」って言って時間稼がれたり、「本当にそのパイロットが信徒なのですか?」と言われれば確証が無い。
脱出したパイロットを逃がしたのは痛いな。
いや、居ても意味無いか?
それこそ、相手の切りようがない幹部クラスが映った映像でもないと、いくらでも言い逃れできちまう。
「となるとじゃ。内部から証拠を集めねばならんな」
「内部かー……内部ねぇ」
博士の言に艦長が面倒臭そうな顔をする。
「艦長や准将の知り合いに潜入できる人材居ねーの?」
「ふむ……元調査部の者は居るには居るが」
レオンさんの方には居ると。
「相手が悪い。これが非合法組織や国ならば送れるが、相手は宗教団体。リスクが高すぎる」
「と言うと?」
「こう言う輩は問答無用で洗脳してくる」
洗脳かぁ~。
「そうなれば逆に此方の情報を相手に提供してしまうからな。洗脳の効かん専門家でなければ判断しにくい」
「しかもケイトの時代……てか地球と違って洗脳手段はいくらでも有るんだ。だから俺も准将も迷ってる」
「姉貴はどう?」
「流石に顔が知れ渡ってるからムリー。お前もそうだぜ?この中でリック以外に私との違いを判別できる人間は居ねぇからな。ケイトが潜入能力が高くても、私と思われて捕まるのがオチだ」
「まぁ、居ない訳では無いんだが……凄い問題が発生する」
「どんな問題?」
「なあケイト。エンハンブレの運営やってみるか?」
いやムリだろ。
案外リックなら回せそうだが。
「いやいや艦長。あたいにんな事出来ねーっての。それと問題がどう繋がるんだ?」
「だからな?洗脳が効かず顔もバレないプロフェッショナルが居るんだが、そうなるとエリーゼが困る」
「だから誰なんだよ」
「俺だ」
あ。
「俺が行けばどんな情報だろうと手に入れてみせる……が、エンハンブレの運営が出来んからな」
それはあかん。
「流石に艦長が居られないと、今後の活動に支障が出てきます……」
艦長が不在の場合、少しの間なら大丈夫なんだろうが、なんだかんだで艦長の仕事振りを見てきたから分かる。
言うなりゃ24時間中24時間艦長やってるんだ。
艦長の種族はスピリット、精神生命体だ。
肉体的疲労に左右されず寝る必要がない為、ずっと働いている。
ブラックに見えるけど、艦長達の種族が個性を重視する前、何百年と宇宙を彷徨っていたから、今の生活は逆に楽らしい。
よく休ませろって言ってるけど、遠回しに違う
その艦長が居なくなると、資金繰りやら進めてるプロジェクトが出来なくなる。
あたいは前にちょろっと聞いたから知ってるが、そのプロジェクトが成功すると日雇いみたいな生活してる姉貴や、冒険者が安定した収入を得られ、軍がやらないMAを使った仕事が出来る人材が増える。
まぁ、つまりはパイロット養成所を作るプロジェクトなんだが、現状のギルドと軍の関係上、軍としては新人の実地訓練をしようにも資金が掛かり、外部委託したくても任せられる企業なんかはエンハンブレぐらい。
特に軍を辞めた現冒険者なんかは即戦力ではあるものの自己管理がしづらく、MAを持ってても整備は外部委託になるから、資金が掛かり高難度依頼が受けれず、Dばかり回して飽和状態になり、高ランク依頼も塩漬けになり、新人はベテランに依頼を取られ安い依頼しかできず成長できない。
そこを艦長は養成所みたいなのをギルドと提携して作り、姉貴みたいな凄腕を教員として雇ってMAの操縦出来る冒険者の最低値をCにまで押し上げようとしている。
そうなるとMAが使えないが腕の良い冒険者や新人がDランクの依頼を回しやすくなり、Dに固執してた冒険者がC以上を受けやすくなって人も育つ。
更に高ランク過ぎて依頼を受けにくい人材は教員として稼げ、みんなのWin-Winになる。
そーだいな目標だが、計画は進んでいるらしく後はもう少しの資金と時間だけらしい。
「んー……あんまりやりたくねーんだが、仲間に頼るか」
仲間?
――――――――――――――――――――
補足
ギルドの現状
現在の軍はギルドと同じく兵士用に依頼があるが、その大半が討伐やら調査やらで、民間の依頼は受けていない。
その分、MAの整備や補給は軍が受け持ち、兵士達は既に天引きされた報酬を受け取る。
その事に慣れた兵士達が軍を退役した後に冒険者になると、どう足掻いても兵士でしか無い彼等が、全て自己管理する事は出来ず、冒険者になっても上手くいかない。
結果、ギルドでCランク以上の仕事をすると大抵トラブルになりやすい。
高い依頼はMAが必要でその為には自分達で整備するよりプロに任せた方が良い為、町工場に頼み、すると費用が掛かる。
プラスにする為にはより難度の高い依頼か、多少整備してなくてもこなせる安い依頼を回数重ねるしかなく、最終的に整備不良で依頼が達成できずジリ貧になる。
そうなるとギルドに高ランクの塩漬けの依頼だけが残り、本来高ランクの冒険者が低ランク依頼を独占してしまい、新人冒険者は依頼もほとんど出来ずに冒険者が育たない悪循環な環境が出来上がる。
グレッグ艦長はその状況をなんとかする事を以前から画策していた。
なお、ケイト姉は軍・民間・近所のおばちゃんの頼み事問わず出来そうな依頼を全てこなしている。
※グレッグ艦長もケイト姉も伝説なのだ!
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!
あっという間の30000PV突破感謝なのだ!
止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
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