1-7 回収

廃棄された地球脱出船コスモス。

かつて、地球を脱出した人類が乗っていた方舟……いや、正確にはまだ乗っている……のだが、機械的なトラブルか何かは分からないが、既にその機能を停止し、今では立派なデブリと化している。


「こうして外から見ると、完全にデブリだな」


『そりゃそうじゃ。前に調べた時に此処のデータベースを漁ってみたがな、停止してから20年は経っとった。お前さんを見つけられただけでも奇跡じゃよ』


そーだよなー。

この破損の仕方から見て、アステロイドにでも突っ込んだか、隕石でも当たったか。

物の見事に砕け散っている。

だが。


「爺さん、あたいが居た区画はこっちか?」


『この艦に乗っとったのに覚えとらんのか?そうじゃ。ソルジャーが通れる隙間がわかるか?回収するためにマリアが抉じ開けたから分かりやすい筈じゃ』


いや、めちゃくちゃになってますしおすし。

覚えるも何も周りの人間に放り込まれたから覚えてねぇんだよな。

爺さんに言われた通り辺りを調べると、なるなる、言われてみりゃあ、不自然に大きい隙間があるな。

あたいはソルジャーよりも一回り以上でかいグランシードが通れる様に、更に隙間を広げる。


『その先じゃ。まだ損傷が軽微な区画がある。お前さんが居た区画じゃ』


グランシードのライトをつけ、博士の指示で瓦礫を退かせながら進むと、大量の冷凍睡眠カプセルが置かれた区画へと出た。

ライトを向けると霜で見えにくいが、干からびた人の腕が見えた。

恐らく事故の時に緊急解凍したはいいが、カプセルが開かなかったのだろう。

また、別のカプセルは開いたは良いが、大穴開いた外が真空だった為、そのままお亡くなりになったのだろう。

どちらにしろ地獄だったのは変わらない。

無念の死をとげた同胞の悔しさを偲べば良いのか、自分が助かった事を喜べば良いのか。


「いたたまれねぇな……爺さん。過去に助けられた地球人はどんぐらいかわかっか?」


『そうさなぁ……軍の公式発表じゃと、1000人ほどじゃが、実際の所はもっと少ないか逆に多いかじゃろうな。元々太陽系外のワシ等が地球の惨状を知ったのは15年ほど前じゃ。見つけられた大半がワシ等より技術力の低い船じゃからな、此処と大差なかったと聞いとる』


「そっか………」


割りとドライだと自分自身思ってたが、流石にキツイな。

あたいは大会優勝後、アメリカ本国に帰国して暫くTVとかに出まくって有名人になってたから、最終的にその影響で割と高性能のコールドスリープに入れられたが、抗う事を決めた我が心の祖国、日本はどうなったのだろうか。

このコールドスリープもテラ・マーテル研究所から送られた物(企業ロゴがそうだった)だから、それ以上の物で生き延びているのだろうか?それとも既に………


「なぁ爺さん。地球はどうなってると思う?音信不通なのは知ってるが」


『外から見た感じじゃと絶望的じゃな。15年前……昔ワシが軍に居た時に、近付いただけで艦隊が撤退を余儀なくされたからの。ファイターやソルジャーは当時は無かったが、あっちゅう間に3割の被害が出たからのう』


「今ならどうだ?」


『グランシードクラスが普及すればなんとかなるとワシは思う』


実質無理じゃねぇか。

厳しい事には変わらんか。

せめてあたいの知る何人かが生き延びていたなら希望が有るんだが………


『此処じゃ、お前さんが居た場所は』


博士の声で立ち止まると、確かに一ヶ所だけ空いた場所があった。


『で、お前さん、此処に何の用があるんじゃ?』


あたいはグランシードとのリンクを切ると、袖とかを捲った宇宙服を元に戻し、ズレないように手首とか足首をテープで絞めてサイズを合わせるとコクピットを降り、他のカプセルを調べ始めた。


『………やっぱそうか』


『何がじゃ?』


『爺さん、艦長に頼んで人を寄越してくれ!ざっと100人は助けられるぞ!!』



――――――――――――――――――――

補足


MAの誕生

軍が他の星系から太陽系へと来たのは実は最近で、15年ほど前までは艦隊や戦闘機による戦力が中心だった。

しかし、新たな星系である太陽系に来てすぐ様々な理由で宇宙をさまよう輸送機と思わしき船を発見。

それが地球からの脱出挺と判明し、人命救助を兼ねて地球を偵察。

だが、謎の勢力の不意討ちにより艦隊の3割を消耗、混乱しながら撤退した。

コールドスリープから助けられた僅かな生存者から何が起きたのかを聞き、地球を一時的に不可侵領域と認定。

謎の勢力との戦いにおいて小回りの効く戦力を生み出すべく、地球人の協力の元(地球人の「ロボットで良いんじゃね?」の一言からはじまった。技術力は軍から見ても100年ほどは劣るがサブカルチャーは100年ほど先を行っている)軍用MAが誕生した。

ゴブリンとファイターのデザインがケイトの言った通り潰れたゴリラなのは、協力者がアメリカ人だった為(アメリカのロボット物は基本的にパワードスーツ、つまり鎧や戦車や装甲車の延長線上だからである)

対してソルジャーは日本的であり、日本のロボット(ガン◯ムとか)を意識したデザインで関わったアメリカ人が、自国のロボットよりもそっちが好きだった為。

しかし、グランシードは明らかに日本人がデザインしたとしか思えず、ぶっ飛んだ思考の博士では有り得ない為、ケイトはシステムも含め疑っている。




※ケイトの宇宙服(船外活動服)がダボダボなのは丁度子供用の予備が切れてたからのだ。

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