1-9 アエードーン

「色々とナノマシンの恩恵はあるが、居場所の特定にも使われるからな。本来なら強制はしない。しかし、救助者に関しては言語が通じなければ混乱が起きる。故に先行して打たせてもらった。それより、此処に何の用で来られたのかな?ケイトの知り合いみたいだが?」


「その事なのですが、他の方々は軍に保護されるとケイトから聞きました」


「それで間違いない」


「私をケイトと同じく雇って頂きたいです」


「理由は?」


「知り合いに出会えたんです。離れるよりは一緒に居たいですし、それに、恐らくグランシード……でしたか?私にも扱えます」


艦長が少し考える。

あたいが助け船を出すべきか?


「雇うのはいい。だが、一つ問題がある」


「なんでしょう?」


艦長はゆっくり立ち上がりため息混じりに呟いた。


「………機体がない」


「は?そりゃまそうだな。あたいのグランシードだけだもんな、あのコクピットを搭載してんの」


「いや、ケイト、コクピットはあるんだ。博士が作ったグランシード用の予備がな。純粋に搭載できる機体が無いんだ。余剰分を回せば何機かはいけるが……そうなるといざって時にパーツが………」


あー………いや、だったら他の要員としてならどうだ?


「いや、別にパイロットでなくても良いだろ?」


「そうはいかん。本来ならケイトの事も軍に報告せにゃならんのを貴重なパイロットだったから特例法を使うつもりで雇ったんだ。パイロット以外では特例法を使うのも難しいんだよ」


特例法………?


「なんだその特例法?ってのは?」


「簡単に言えば保護対象の知的生命体を軍を通さず雇い入れる為の法だ。ケイト達みたいに軍から保護対象として指定されている種族の場合、必ず軍に報告し一時的にでも軍に引き渡さなきゃならない」


「破ったらどうなんの?」


「かなりキツイ制限が課せられる。何せ保護対象だからな……報告自体は「特例法使います」「研究の助手です」「テストパイロットです」で行けるのだが、二人目となると肝心のテスト機が無いのが……」


いやいやいやいや、グランシードのテストパイロット、二人でも良くない?


「あの……テストパイロット以外ではダメなのでしょうか?」


「軍からしたら「他で雇え」ってなる。だが専用機のテストパイロットでなら通せるんだ」


「いや、艦長さんよ。前提が分からん。何でパイロットでならいけんだ?」


「ん?あぁ!博士から聞いてなかったのか!それは分からんな。この艦は軍からの依頼で新型機のテストを行う艦でもあるんだ。だからな、あの機体をこの艦にいるパイロットの誰もマトモに動かせなかったから、唯一動かせたケイトは特例法で雇い入れられる」


「ほーん。なら、サユリも同じく行けんじゃねぇーの?予備のテストパイロットが居たって良いだろ?」


「そうはいかん………これは先の話になるがな?ケイトが叩き出した戦績もテスト艦の依頼の品として提出しなければならない。そしてそのデータを見た軍はどう思う?同じ事のできるパイロット候補が居るなら寄越せ、となるだろう?此方としてはそれを特例法を盾に「社員です」と突っぱねたい。その為にも機体がいる」


ふーみゅ………艦長は考えてくれているのだが、その特例法の条件ってのが面倒臭いのな。


「あの……艦長。でしたら作ってしまいませんか?」


「は?」


「え?」


「え?ですよね?テスト機があれば私とケイトが出したデータを軍に渡す条件で雇ってもらえるのですよね?」


いや、そうだけど。

だけどあたいが言うのも何だが、MA一機造るのに結構時間掛かりそうだぞ?

それに組み立てるのならともかく、艦の隅っこで造れる様なもんじゃ………


「はぁ……ケイト。私が誰か忘れちゃった?思い出してよ」



………?




……………………?




「あ!」


思い出したよ。


「あー……艦長。許可だけでいい3日くれ」


「か、構わんが……何故3日?」


「さっすがケイト、ナイスチョイス♪では早速始めましょ?」




――――――――――――――――――――

3日後



「おい。残部材とか使っていいと許可は出したが何だこれは?」


「この度完成したDMC搭載型長距離航行強襲支援戦闘用MA「アエードーン」です」


格納庫のグランシードの横に鎮座しているその機体は、グランシードよりもでかく胴長で腕部が異常に長い機体ゴリラだった。

基本ボディと脚部部分はファイターを使い、頭部はゴブリンのバイザーを被せ、腕部は、ショルダーアーマーには可動式ブースターを組み込み、背面にもブースター2基搭載と言う何とも言えない機体だった。


「えっと……ゴブリン?ファイター……か?この無駄にでかい腕、脚?は何だ?ブースターも4基も使って何するんだ?」


「ではご説明致しましょう!この機体「アエードーン」は後部を切り取ったゴブリンのバイザーとファイターの本体を組み合わせ、既存のエネルギー容量を倍にし出力も倍に腕部にソルジャーのレッグパーツを使う事でブースターとし接近戦をオミットする事で長距離航行を可能にして他のMAを運搬可能にした機体で各種モードで航空性能を持たせた機体です!また、エネルギー効率を見直した事でビーム兵器も使用可能で支援機としての役割もこなせ中遠距離に特化しましたそれによりより高い空間把握能力が要求されますが私が使うので問題ないでしょう更にグランシードの背部とドッキングする事で腕部に取り付けたレッグパーツを切り札とも言える大出力のメガビームキャノンへと変形させ使用する事が可能で」


「いやいやいやいやいやいやいやいや長いしなんちゅうもん作ってんだよ!!あれか!俺に対する嫌がらせか何かか!?」


「諦めてくれ艦長。サユリはこーゆーの得意なんだよ」


サユリは日本のオタクって奴で、プラモでいくつもこんなん作ってたからな。

実際組み合わせたのは博士だが、基本設計はサユリ、プログラムもサユリ、乗るのもサユリだ。


「艦長!この娘は素晴らしい!!ぜひ助手として雇いたい!!隠蔽してでも手元に置くべきじゃ!!!」


「おいこらジジイ。報告書どーすんだよ。報告できねぇぞこんなもん!!」


「そんなん知らん。それよりもテスト飛行したいから許可出せ」


「ざっけんな………はぁ……で?いくらかかった?」


あ、諦めた。


「ジャンクからじゃから、対して掛かっとらんわ。一から組み立てるのならざっとソルジャーの1.5倍ほどか?元がゴブリンとファイターじゃし、ソルジャー部分はレッグパーツだけじゃ。その段階で2割は安い。一番掛かるのはその改造と変形機構の組み込みだけじゃな。問題があるとすればエンジンを2基積む為のスペースとグランシードの背部を改造せにゃならんかったのが問題か?」


「何でグランシードの改造が有るのか分からんがそんだけ盛ってながら意外に安いな……払い下げのソルジャー1機半出すだけでバケモンみたいな機体が手に入るか……で?動くのか?」


「無論!更に今、このデータを元に配線やらなんやらを見直し、メカニックどもに手を借りて他の機体を調整しとる」


「何がどう変わる?」


「まず、ブースターのエネルギー効率が変わり全機体継戦能力が向上した。加速性能も上がり、ゴブリン、ファイター共に20%性能が上がったわい」


「そいつはすげぇなぁ……ほんと、どう報告すっかなぁ………」


まぁ、良い様に報告してくだせぇ。



――――――――――――――――――――

補足


特例法

軍が長い航海の中で出会った種族の中には、戦争をしている種族も存在する。

基本的に軍は他種族同士の争いには不干渉だが、巻き込まれたり、相手側(関わった側であっても)が倫理的に受け入れられない場合(侵略しかしない、または滅ぼすしかしない)介入する事もある。

特例法はその介入に際し、協力者を軍の庇護下に(一時的に)置く為のモノである。

現在では一般にも普及しており、グレッグの会社の様な民間企業でも特例法を盾に、多種多様な種族を雇い入れている。




※無いなら作るは基本。


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とか下さるともっと嬉しいのだ!!

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