9-7 乗り物のプロ

目の前にいる全裸のオッサン。

確かジョセフィーヌエイトのボディに残ってたデータに戦況をひっくり返した1人に車両の扱いが上手い人物ってのがいたな。

ゴーグルキャップを被り慣れた感じだし、もしかして?


「えーと……」


「おっと、先に聞かせてくれ。今何年だ?」


何年?

あー……そう言や今が何年か気にしてなかったから、全く覚えてねーや。


『今現在は統制歴1546年なのです』


「どっどっからか声が!?てか1546!?な、何月だ!?」


『丁度1週間ほど前にきっかり500年経ったので9月なのです』


「うーわマジかー…きっかり500年かー…ポチすまねぇなあ。えらく待たしちまった」


『クゥ〜ン』


狼が「いいよー」って感じでお顔スリスリ。

こうしてみるとカワイイな……でかいけど。


「っと、遮ってすまん」


「いえ。状況から察するに500年前に人類側が押し返した時の、異界からの車両のエキスパートとお見受けしますが」


「おう。間違いないぜ」


ビンゴ!

当時の生き証人!

大戦について詳しく聞けるし、当然強いはずだから戦力的にもありがてえ!


「おっ…イクサべ殿。海洋都市レヴィアにて当時の話をお聞きしたいのだが」


「いいぜ!500年でどんだけ変わったのか見てみたいしな。あー……その前によ?」


「何か?」


「喋りづらそうだから素でいいよー」


「お!そりゃ助かる!固っ苦しいのは姉貴の分野だからしんどくてしんどくて」


「わかるー。俺も当時英雄だの何だのって言われてたが、元ハンターの整備屋の親父だぜ?水質研究もやってたがよ。お綺麗な喋りは他所でやってくれってんだ」


うーわ、こっちもわかるー。


「OK。とりまレヴィアに戻ろーぜー」


「OK!……その前に」


「ん?」


「どっかに服ねーか?手持ち全部古い戦車よろしくチートからチリになっちまった」


旧日本軍の戦車かよ。

わかりにくいわ。





「いやー、昔も色んな機体あったが、500年で変わった機体出てきたんだなー」


あの後、風化してない軍服みっけて基地を出たんだが、ジーナやあたいが乗るトーリスの機体が500年前には無かったらしく、半太のおっさんから質問攻めに。

ジーナの機体は完全に機密らしく困ってたのでトーリスについてだけ教えといた。


「地面に埋まってる機体の大半が量産機だもんな。ワンオフの専用機やら試作機はそう無いって。てか、保護対象のおっさんに運転させてすまん」


んで今、半太のおっさんたっての希望でおっさんがキャリアー運転して、トーリスに姉貴が乗ってジーナと一緒に護衛役。

あたいとメイミがおっさんの相手してる。

………ポチは荷台で丸くなってる。


「良いって良いって。ハンターは乗りもん乗ってなんぼだしな。他人の運転より自分で運転する方が安心すんだわ」


「でも、なんだか申し訳無いですわ」


「クラウデン家にはそれなりに世話になってたから気にすんなって。にしてもそのパワードスーツ、ずっと着てるんだな」


そりゃまだ重症人ですしおすし。


「まだ体完治してねーんすよ。脱いだら動けなくなっちゃう……いやでも、流石と言うかなんてーか、めちゃくちゃ運転上手いな。荒野だからもっと…」


「大きく揺れねえだろ?コツがあんのよ。真っ直ぐ行ってるように見えるだろうが、踏んだら車体が揺れそうな石とか細かく避けてんだよ」


は?


「いやいやいや、見えてんの?地面が?」


「見えるってか見ないと。キャタピラだったら無視するんだが、タイヤだしな。見てねーと摩耗するだけならいいが、傷入って破裂したら意味ねえからな……例えばもうすぐ左に割とでかい石とかその先10m右側に溝」


思わずフロントガラスに張り付いて目を凝らすと後10秒で割とでかい石(キャリアーのタイヤなら踏みつぶせる)が見えた……右側の溝なんて見えんが。


「あ、ちょいちょいちょいっと」


ヌルッと車体が左側へ寄っていき石を避けた瞬間、右の方に乾燥だかなんだかで出来た溝がそのまま後方へ流れていく。


「「すげー!」」


「全部が全部じゃないがな?この車両のタイヤの径なら分厚いし車体の重さがあるから石は踏んでも問題ないし、車高もあるから下に潜らせた。だが溝の上を走るとどーしても揺れるし、破裂や脱輪のリスクもあるしな」


「それをずっとやってんのか!?」


「まぁな。流石に速度特化の車両だったらひーこら言ってるが、この車両は速さよりパワーだから運転中のお遊びだな」


あーあれだ。

チャリとかで次の信号まで一漕ぎで行けるかとか、日本人だったら縁石?ってのを降りずに家に帰れるかーとか。

そんな感覚でやってんの!?


「さっすがハンター。車両のプロってのは伊達じゃねえ」


「褒めるなよ。むしろあんなマッシブアーマーデカブツに乗れるあんた等の方がスゲーって思うぜ」


「そーかー?まぁ、操縦系統が違うし、立体的な空間把握がいるから分からんでもないが…」


ん?そう言えば。


「半太さんよ。500年前に戦車タイプのマッシブアーマー乗ってなかったか?」


「あー……乗ってたな。てかなんで知ってんだ?」


ビンゴ!


「やっぱそうか。いやなに、掘り出した機体と昔の記録にそれっぽいのがあったからな。ちょい連絡するわ」


端末から所長宛にメール飛ばしてっと。


「メイミー。半太さんにジョセフィーヌエイトとあのデータ、帰ったら見せてやってくれ」


「勿論ですわ」


当時の人間である半太さんにもっと詳しく聞ければ、もう1つの格闘戦特化機体の在り処とか分かるかもしれんし。

さて、そろそろレヴィアが見えて……。


「おいおい、マジかよ」


レヴィアから無数に立ち昇る煙。

そしてレヴィアを包囲する無数のモンスターども。

土地的に今いる場所は少し高い場所の為、都市の周囲を黒い絨毯が囲んでいるように見える。


『ケイト!』


「ケイト!車何処に着ければいい!?」


「ちょい北の廃教会に!姉貴も!ジーナはそのままレヴィアに!」


『『「了解!」』』


「メイミ!」


あたいはキャリアーの通信機のマイクをメイミに投げ渡した。


「メイミ・クラウデンですわ!ジョセフィーヌ!」


『待ってたにゃ!』


「北の廃教会に来れます!?」


『Mr.Eに任せて向かうにゃ!』


「先にポチを向かわせる!」


「頼んます!!」


さて、間に合うかどうか分かんねえが。

端末のメールが使えるなら……!


「……繋がった!こちらケイト!鉄錆団聞こえるか!?繰り返す!こちらケイト!鉄錆団応答してくれ!」


『…ちら鉄錆団。何があった?』


団長が出てくれた!

結構な距離あったが、メールが届くならいけるとチャレンジして正解だったな。


「レヴィアが大規模な襲撃にあってる!飛べる機体中心に救援求む!」


『了解した。トニー、リュー、聴いていたな?』


『バッチリっす……ってうわっ!』


「どうしたトニー!?」


『青い方のエンジェウォートが急に動いて飛び出してったっす………』


飛び出してった?


「………ドロアか?」


『なのです!今ので繋げられたので自動操縦でお姉さんの元に来るように設定したのです!』


「ナイスアシスト!姉貴!」


『了解だ!廃教会でトーリス渡すぞ!』


「あいよ!機体が来るまでテリーのザウォ使ってくれ!水中用装備をテリーとおやっさん達が地上用に換装してたはずだから直ぐにでも使えるはずだ!」


『任せろ!』


『ケイト!姉さん達にも連絡しておいたわ!』


「ジーナ助かる!」


後はどれだけ保たせられるか。

今見えてる範囲だと、前回の襲撃の比じゃなく大小含めてザッと5万以上。

まるで中世の城攻めみてーだ。

てーかどっから現れた?

こんだけの数が移動したなら、サブになって性能が落ちてるとは言え、グランドロアが気づかないはずがない。

えーと、機体輸送用で元々軍用であるこのキャリアーに…あったあった。

こう言うのは周囲の警戒や偵察、哨戒用にダッシュボードに予備の双眼鏡置いてたりするんだよな……まず使わないんだが。


「さーて、どっから来たんだ……?」


黒い絨毯の外周を観察……ん?あの岩のとこに何かある?あっちのでかい岩陰にも!てことは!


「あった!姉貴!作戦変更だ!半太さん止まって!姉貴今すぐ交代!ジーナは先行して指定のポイントに向かってくれ!」


『了解したわ』


『何か見つけたのか?直ぐ代わる!』


あたいはキャリアーのドアを開けると飛び起きて並走してたポチに声をかける。


「ポチ!半太さんの言う事以外聞きたくないのは分かるが頼む!先行するジーナを守ってくれ!」


いけるか?


『………ガウッ!!』


少しの沈黙の後一声鳴くとジーナの方に走っていった。

めっちゃ良い子!


『ケイト!交代だ!』


トーリスから姉貴が降りてきた。

そこに半太さんがキャリアーを横付けする。


「ポチが俺以外の言う事聞くとはな。行ってこい!」


「あざっす!姉貴は半太さんとそのまま教会に向かって!ザウォに乗ったらあのポイントに」


あたいが向かうポイントとは別の教会に近い方を指しながら双眼鏡を姉貴に渡す。


「……あー……そう言う事か。受け取り次第直ぐに向かう」


「テリーがなんぞゴネたら」


「蹴飛ばしとく」


連絡してるから無いだろうが、最近シミュレーターで腕を上げてきてる(それでもアロガントの防衛隊より弱い)から「俺様ちゃんがバシッと決めてやんよ!」とか言いそうだし。

さて、トーリスに乗り込んでとっとと出撃しますか!


————————————————————

オマケ


テリー「オーライ、オーライ、オーライOK」


ダン「いやー、換装するとこうまで変わるもんかね」


テリー「なかなかにてんこ盛りだぜ!共通の武装パーツあって良かった」


ダ「でもよ。テリー、お前さんこんだけの武装使いこなせんのかい?」


テ「ゔ……でででできらぁ!姐さん方お手製のシミュレーターでも腕上がってきてんだぜ!イケるに決まってる!」


ダ「そうかい……両肩と両脚部上部前面にスラスター兼追加装甲、バックパックにフレキシブルマルチフレームを介して大型ビームキャノン内蔵大型ブースター、近中距離用120mm軽機関銃2門、右側には広域殲滅用大型ガトリング砲、左側に近接用パイルバンカー、手持ちは右手に長距離狙撃用ビームスナイパーライフルに左手には逆手に持った回避困難なレーザーマシンガン………無理だな」


テ「どこが!?」


ダ「まず機体バランスが右寄りになってる。ガトリング砲とスナイパーライフルを持ってるからな。追加装甲兼スラスターも吹かせば急制動になるからシミュレーターで1分ともたんお前さんだとあらぬ方向に吹っ飛ぶ。出来ると思ってんのかぁ?高速でほぼ直角に曲がる機体制御すんの」


テ「グッ!」


ダ「それにだ。左側の武装は全部玄人向け。パイルバンカーなんて使った事ねえだろ。ましてやレーザーマシンガンなんて弾道の見えんもんを動く相手にコンマ何秒当てるなんて芸当、プロの軍人でも難しいのに出来る訳ねえだろ」


テ「光ったら当たるんだから行けるっしょ!」


ダ「当たってもダメージ出るまで時間がかかるって言ってんだ!それに近中距離用だぞ!むしろ近距離用だ!中距離以上は良くて焦げる程度で離れられたら強めの懐中電灯じゃ!それに補助があるとは言えこんだけ複雑な火器管制システムをお前が状況に応じて使える訳ねえだろうが!!」


テ「ズボシッ!」


ダ「ともかく、塗装もしなおしたし機体が無いケイトの姐さんにでも使って……む?」


テ「……おい!ダンの旦那!街が襲撃受けてっぞ!」


ダ「なんだと!?」


テ「どどどどうする!?」


ダ「むう……直ぐに向かいてえが俺はマッシブアーマー乗りじゃあねえし……」


テ「なら俺が!」


ダ「おめえが乗るぐらいなら俺が乗った方がマシだ!」


テ「ドイヒッ!……おん?うちのキャリアーが帰ってきた?」


ケイト姉「おいテリヤキ!ダン殿!」


テ「ドイヒッ……って、その言い方は姉さんの方か。てかなに?そのパワードスーツ……いやそれより姐さんの言い付け通り、機体の整備と換装終ってますよ」


ダ「これが新調した機体のデータでさあ」


姉「武装面が充実したな。近接火力も上がったと……塗装もダークグリーンに変えたのか」


ダ「欠点は複雑な火器管制と右寄りの重心で、扱うのには相応の技量が必要だ。姉さんが行くので?」


姉「使いこなしてみせるさ」


ダ「姉さんが出るぞ!発進準備急げ!」


テ「お、おう!……俺の機体……」


姉「今、俺の機体がオートでこっちに向かってる。乗り換えたあとの回収頼む……そうだ。この機体のネームは決まってるか?」


ダ「まだですね」


テ「あ、じゃあアヤム……」


姉「よし、機体名ゼルトナーだ」


ダ「意味は?」


姉「妹がいた惑星でのドイツ?って国の言葉で「傭兵」って意味だ」


ダ「傭兵たぁそりゃいい!ワンマン過ぎですがねえ。おら!何してる!発進準備急げ!」


テ「(´・ω・`)ショボーン」


姉「ダン殿後は任せた!ゼルトナー出るぞ!」




※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)鋼鉄の巨人が走る、跳ぶ、吼える。

機銃が唸り、ミサイルが弾ける。

恐れを知らぬ怪物の腕が、堅牢なる門の扉を歪ませる。

炎の向こうに待ち受ける、ゆらめく影は何だ。

次回「都市防衛戦」

異なる世界の英雄達の終わりなき輪舞曲、御照覧あれ。

(ちゃんらーちゃん!)


昨日あげるつもりが予告をパク…参考にするのが遅くなって今日になったのだ!

マジスマヌorz

テリーが言った「アヤム」はインドネシア語で「鶏🐔」と言う意味なのだ!

稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&なんと90000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

SAOFBで今は亡き神田さんの声が聞けるのは涙出そうになるね。

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