9-6 ハンター

おー全周囲モニターで見るこの景色、なんか久々だなー。

サイズを合わしたパワードスーツでのグリップ感もバッチリ。


「グランドロア、制御系の方はどう?」


『問題無く。いつも通りサポートしますね』


「あー、ちょっとか間自力でやってみる。」


『了解』


さてさて、慣らし運転がてらに周囲を見て回るとすっか。




だいたい30分後


「………やっぱこの武器弱えよな」


今、暇すぎて武器の試射をやってんだけど、腕部内側のサーベルはまぁ使い勝手良かった。

そのままならビームガンにもなるし外してサーベルにもなり、隠し武器的な扱い方もできる。

肩の隠し腕で振り回せるハイパービームなサーベルもそのままキャノンとして使え、スゲー威力だ。

頭部バルカンも牽制用だが割と良い威力だし、バックパック搭載の有線式遠隔攻撃端末もグランドロアが制御するけど使いやすく、飛ばした端末を更に射出する隠し玉も良い。

射出後対象が三枚刃でエグい削れ方するのは「考え出した人、人の心ないんか?」とか思うが。

リミッター外すシステムも感染してなく無事だったのも良い。



が。



『普通のライフルと変わりませんね』


「ハイパーの意味無えな。取り回し良くして威力落ちてたら意味が無え」


これなんだよなあ……トーリスの最大の欠点携行武器が弱い。

どう弱いかというと、元はジェネレーター直結だった為高威力で、携行武器としてはバズーカレベルのライフルだったのだが、エネルギーパック方式(つまりマガジンがエネルギーカートリッジのやつ)に変更した事で出力半減してハイパーにする前よりも弱くなった。


「弾数増えて継戦能力増えたとみるか他が強いから問題無いとみるか……」


どっかにジェネレーター直結式落ちてませんかねえ?


『ケイト!悪ぃ!しくった!』


え?姉貴?


「姉貴どした!?」


『格納庫ハッチ開けっからジーナと一緒にコイツをどうにかしてくれ!!』


コイツ?なになに?何に遭遇したの?

とりまジーナにも連絡して格納庫のハッチが開くのを警戒しながら待ってると、地響きと共に地面が左右に分かれていく。


『すご……』


「地下の格納庫って事で予想はしてたが……こりゃスゲーわ……」


ざっくり300mか?奥ってかなんてーかそっちは500m…つまり幅300の長さ500って事だな。

それが少し(5mほど)地下に下がって左右に分かれていくのは圧巻だ。

これってもしかして戦艦のドック?

今立ってる所からでも直角になってるみたいでスロープは見えない、てかまだ10m分開いたとこだから暗くて下見えん。


「ジーナ。先行する」


『了解』


確かライトか暗視が標準でついてた…うん、両方あるな。ここはライトで下を照らして……結構深いぞコレ。200はあるか?

バーニア吹かして着地っと。

バーニア吹かしつつゆっくり降りるのが普通なんだが、あたいは着地の直前で一気に吹かすのが好き。

あのフワッと感の後にズンッて着地すんのが良いのよ!姉貴には怒られたが、ヒーローみてぇでカッコイイだろ?


『脚部関節に負荷がかかるので止めていただきたい』


「んなんで壊れるかよ」


『ドロアちゃんの言う通り止めたほうがいいわよ?』


ジーナにまで注意された。


「てか、ドロアちゃんって……」


『ジーナさんやメイミさんにそう呼ばれてるのです!その方がカワイイのです!』


カワイイ……?本体30m近い図体なのに?縦にも横にもでかい重装型なのに?


「……………………………ま、いっか」


とりまクリアリング。


「クリア……ってやっぱり!」


ハッチが大分開いたから日が差して格納庫内が顕になってきた。

やっぱ戦艦の格納庫じゃん!

中身空だけど。

と、姉貴はどこかな?……お、発見。

奥の方でなんか高速バックしながらバイオウェポン(アサルトライフル)で何かと応戦してる?

ハッチが開き切り姉貴が戦ってる相手がはっきり見えてきた。


「姉貴何と戦って……はぁ!?」


『アレは何!?』


姉貴が戦ってる相手、一言で言えば。


「狼か!」


それも全身機械の。

細長い顔は犬っぽいが、動きが犬より野性的。

てー事は狼って事。


『私には犬に見えるけど!?』


「動きが野性的だ!あの動きは間違いなくハンターだ」


つってもあんま変わんないけど。

昔、ダウンタウンを中心にまとめてたマフィアのボスが犬好きでハスキー飼ってて、軽いをした部下に滾々と、延々と犬や狼に関して勉強会と称した地獄のお説教をしてたから何となく違いがわかる。



……そうだよ!常連だったよ!チクショー!



ま、あたいとボスはヤクだけは絶対に許さなかったから、お説教の内容の大半が「連絡しろ」とか「報告しろ」「連携をだな」ばっかだったんだが。


『500年前の大戦時データと照合終わったのです!アレは機械生命体の一つで機体名はロイバーヴォルフ!人類軍に味方した数少ない個体なのです!』


500年前の?よく動けるなー。

ロイバーヴォルフ……えーとヴォルフはドイツ語で狼だから……ロイバーロイバーロイバー……同じくドイツ語で強奪者とかそう言う意味だったか?

てか、どう見てもゾ○ド。

何でもありかこの世界……ありか。

が、人類側だったのなら味方のはず。


「姉貴何したん?」


『知らん!コールドスリープのカプセルがあったから調べてたらこのざまだ!』


いやそれだろ。

此処に入る時のスキャンでは特に無かった。

そんでコールドスリープのカプセル調べたらコイツが出てきた。

恐らくコールドスリープのカプセルに近づく、あるいは触れたりするのが条件のトラップなんだろう。

つまり、この狼は。


「さしずめ守護者ガーディアンってとこか?」


ふむ……姉貴のアサルトライフルもバイオウェポンだからビーム系のはず。

装甲厚で弾けるもんじゃないのに全く効いてない……コーティングされてるのか?


「姉貴!交代だスイッチ!」


『任せた!』


姉貴がこっち側に誘導する。

ハイパーじゃないハイパーなこの武器でも姉貴のアサルトライフルよりかは威力は上!


「落ちろ!」


不意打ち気味のビームが正面から狼に迫る。

が、体を捻って直撃を避けた。

はえーなおい。


「だがダメージは入ったな!」


上手く避けたつもりだろうが、ケツに掠ってんぜー?これならぴょんぴょん跳ねて動き回りにくいだろ?

狼は掠った事で警戒しだしたのか、動きを止め

一定の距離を保ちだした。


『ケイトさん!対象の被弾箇所見てください!』


視界の端にズームされた狼の被弾箇所が映し出される。


「げっ。自動回復かよ!?」


ビームで溶けた箇所がどんどん戻っていく。

マジかー、500年経っても動けんのコレがあったからかー。

常に最高品質に保たれてたんだなー。

それに姉貴のアサルトライフルが効かなかったのも単純に回復量が上回ってたからだな。

この場合、一点集中でその部分の回復量を上回るか、高威力の一発で倒すしか手がねえな。


「てーこたぁこれっきゃねーな」


肩の隠し腕を起動しバックパック搭載のキャノンをサーベルとして起動する。

コイツの出力は普通のサーベルより高い。

だから、大抵のもんは貫けるはず。

狙うは頭部。


「貫き通す!」


グッと姿勢を落とし狙いを定める。

どうやら相手も同じ狙いらしい。

低い唸り声を上げつつ狼も構える。

後はタイミング次第……。


『ケイト!』


こっそり回り込んでいたジーナが狼に仕掛けるとたまたま目の近くを掠め姿勢が崩れた。


「今だ!」


一気にバーニアをフルに吹かして吶喊!


「グガアッ!」


少し遅れて狼も突っ込んできた!

だがこっちにはまだ奥の手がある!

ライフルを捨て両腕の内側のサーベルを起動!

四方向からの突き、食らえ!!


「そこまで!!」


突如響いた声に思わず動きを止める。

狼も動きを止め、声がした方に振り向き歩き出した。


「クゥ〜ンクゥ〜ン」


………えらく無防備なんですが。

てか、機械の尻尾が捥げ飛びそうな勢いで回転してるせいでちょっとした突風で動きづらいんですが。

あ、伏せしないで?地面がボッコンボッコンしてエライ事になってますよ?


「お〜よーしよし」


声がした方をズームするとゴーグルがついたタンクメットを被った………全裸のオッサン(多分30前後)が。


「よーしよーし…そこのマッシブアーマーの!すまねえな!」


『あー……いや?』


これは……大丈夫かな?

狼もワンコ化してオッサンの側で伏せてるし。


「ちょい話してくるわ」


『了解なのです』


コクピットを降り、オッサンに近づく。


「お。すげー装備だな」


「パワードスーツ越しですまねえ。えーと」


この場合は……。


「鉄錆団から海洋都市レヴィアに出向中のケイト・アーカイブだ」


「おう。俺は海洋都市レヴィア守備隊所属、戦部半太!!こっちはポチ!!よろしくな!」


————————————————————

オマケ


その頃のエンハンブレ

グレッグ「ついに完成したな」


エリーゼ「この短期間で本当に完成するとは思わなかったのですが」


サユリ「地球の奇跡ですから」


グ「地球の超高性能AI「ガイア」だったか?ガイア完成後、半月で俺等軍の開発部が長年作れなかった戦艦用ゲート…正確には量子ゲート発生機をあっさり作っちまうとは」


ガイア『そんな褒めないでくださいよー』


サ「人工とは言え一応女神様なので」


ガ『女神だなんてまたまたぁ』


グランドロア(以下ド)『凄いのです!うちの上位個体なのです!神様なのです!』


ガ『そんなに褒めても何も出ませんよぅデュへへへへ』


グ「……惜しむらくは性格がグランドロアに近い事か」


ド『どー言う意味なのです!?』


グ「ともかく!準備は整った!全艦通達!これよりエンハンブレⅡは単独にてゲートを潜り、行方不明となったケイト姉妹の救助に向かう!フィール工房、暫くの間頼みます」


カリン『おっけ〜』


グ「ゲート展開!」


エ「ゲート展開始め!」


オペレーターのミレイ「ゲート展開。展開率50…60…70…80…90…展開完了。量子エネルギー圧縮開始します…後10秒で臨海到達…7、6、5、4、3、2…臨海到達。量子エネルギー境界面安定しました」


グ「シールド展開後、機関最大」


エ「シールド展開後機関最大!」


ミ「シールド展開……完了しました」


エ「機関始動!」


ミ「機関始動、エンジン出力80%…90…100%出力最大到達完了」


エ「艦長」


グ「うむ。エンハンブレⅡ発進!」


ミ「境界面突破………凄い……星が流れて万華鏡のよう……」


エ「これが量子ワープの……」


ガ『あ。やべ』


グ「?ガイア殿?」


ミ「……?む〜……!ぜ、前方に乱れたエネルギー場発生!!」


グ「何!?」


ガ『次元の嵐ディメンションストームですね』


グ「ディメンションストーム!?なんだそりゃ!?」


ガ『滅多に起こらないんですけどねー。たまーに主張が激しい次元同士が張り合っちゃうんですよ』


グ「次元に主張とかあんのかよ。で、どんな影響がでる!?」


ガ『引き裂かれたりとかは無いんですけどねーちょっと知らない世界に突っ込んだりしちゃったり?』


グ「大惨事じゃねーかぁぁぁぁぁぁ!!」


操舵士のゲイリー「舵が効かねえ!!」


ミ「コントロール不能!他の次元の境界面にぶつかります!!」


グ「総員対ショック防御!何かに掴まれ!!」





グ「………揺れがおさまった?状況!!って全員気を失ってるのか……自分でやるか。機体確認……外傷無し、各機関問題無し、グランドロアが目を回してぶっ倒れてるのが意味分からんが、まぁいい……で?」


モニター一面に広がる大森林


グ「何処だ此処ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)かつての歴戦のハンターは、大戦の元凶を倒した後、人の為に生き、病により志半ばで力尽きた。

目覚めた時、全盛期の姿となった男は、かつての仇敵と再び相対し、多くの犠牲と引き換えに打倒し、三度甦る事を予見し眠りについた。

次回「乗り物のプロ」

乗り物ならば何でもござれ。

(ちゃんらーちゃん!)


今回は早めにあげれ……た?

危うくオマケが本編になるとこだったのだ!

稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&なんと90000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

居酒屋のぶドラマ版がおもろすぎる。

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