4-3 ケイト姉さんの宇宙講座(速度編)
多すぎる給料の事を聞いた後、姉貴が小遣い稼ぎをすると言うので着いていく事にした。
艦を降りたあたい達は、ギルドの周囲を回る衛星……サテライトポーターから直通の電車に乗って中央へと向かった。
『本日はぁ、ギルド直通トランスポーターに御乗車くださりぃ、誠にぃ有り難うございます。この電車はぁ、ギルド本部内ぃ、クエストカウンタァ、受け付け前ぇ、行きとなりますぅ。到着予定時刻は、30分後とぉ、なりますぅ』
「なんか粘り気すげぇな……30分て……中央まで見た目以上に距離あるだろ……」
「ざっと1万kmだったか?ま、宇宙でリニアならそんぐらいだろ?これでも第一宇宙速度の半分も出てないはずだぜ?」
「………ブリッジやアニメでよく聞くけど、そのなんちゃら宇宙速度って何なん?どんくらいの速度なん?」
「ん~……時間あるし教えとくか。て、言っても宇宙で速度を語るのも無意味だが」
言いながら姉貴がメモ帳とペンを出す。
前もそうだったけど、昔は教官もしてたみたいだし、質問されんの馴れてんだろうなあ。
軍人じゃなきゃ姉貴は学校の先生やってたんじゃないか?
「え~まず、艦の速度だが、基本的に地球の尺度とあんま変わらん。微速や強速とかな?んで、第一から第五まで戦速がある。あ、船速とは違うぜ?」
「その違いは?」
「戦ってるかどうか、もしくは軍艦か民間船かだな。軍では船速の方はまず使わねぇ。使うのは企業や個人店が多いな。エンハンブレは元軍艦だから戦速を使ってる。んで、第一宇宙速度とかの速度だが、第一ってのは、これは惑星内での軌道速度だな」
「軌道速度て?」
「引力に引かれて落ちもせず、その星の軌道上をぐるぐる回れる速度の事だぜ。次にその惑星を脱出する速度が第二。第三になるとその星系、地球で言う所の太陽系を脱出できる速度だな。第四は銀河を脱出、第五以降は亜光速。第一亜光速、第二亜光速と区切られて、第七で光速の99%になる。ここら辺はうちらの方の決め方だから、地球や他の船団とかは違うぜ?」
「地球だと?」
「第五で99%」
ほーん、そうなんだー……地球人のあたいが知らないのはどうなんだって思うけど。
「他の船団?他にもいんの?」
「そりゃそうだろ。あくまで軍が縄張りにしてんのは精々1光年弱程度。そっから先は向かうとなると最速で1年ちょいかかるのは管理出来ねぇ。当然、何万、何億光年も離れりゃ他に同じく母星を脱出して旅をしてる種族もいるさ」
そりゃそっか。
「ま、それでも何百年も前から軍中心に旅をしてるからな。記録上出会った事もある。それがピフピヘット達の種族なんだが。で、話を戻すと、第一宇宙速度の具体的な速度だけど、時速で言えばざっくり30000だな」
「30000!?」
「そ。地球での定義はもうちょい細かいが軍で設定してんのは30000km/h。秒速だと秒間7.9kmだ。重力が惑星によって異なるからざっくり。大体それぐらいって事。んで、第二は40000から50000ってとこだ。そんだけあれば大抵の惑星は脱出できる。勿論、エンジン全開でも脱出が無理な惑星もあるけどな。そして第三宇宙速度は60000から70000だ。外宇宙へ繰り出すのにそんぐらい無いと何十年もかかるからな」
「じゃあ、戦速は?」
「あくまで戦闘用の速度だ。どんだけ速くても第一宇宙速度じゃ小回りが効かねぇから、第一より遅い。宇宙速度はこんなとこで、まぁ、後は倍々だ。一応言っとくが、エンハンブレの最高速度は第六亜光速までだ。一線級っても、なんだかんだで割りと老朽艦だからなぁ………それに輸送艦に改装する時に本来の武装をオミットしてるから激しい戦闘には耐えられん。」
へー、やっぱエンハンブレって老朽艦だったんだ。
「じゃ、艦長から聞いてたけど、やっぱまだワープとかは無理なんだ」
「ムーリー。ワープの理論を応用して亜空間通信は出来たんだが、空間歪めて宇宙の外へってのは無理。空間穿って固定化する技術が無いからな」
「その亜空間通信ってのは?」
「簡単に言えば、通信電波だけ別の宇宙に飛ばして行う通信だな。あ、亜空間ってのは通常の宇宙空間とは性質の異なる物理量を持つ空間の事で、強い亜空間だとマジで別の宇宙だし、弱いと電磁場や重力場と変わらんかったりする。ぶっちゃけ、まともに理解出来ねぇからそんなもんと思っとけばいい」
なんかややこしいな。
「ついでにだけど、物体を量子にまで分解して再構築する量子テレポート的なモンはどうなん?」
量子ってのは物理学において用いられる様々な物理現象における物理量の最小単位で、その形は粒であり波でもあるから、原子や原子核なんかも量子だ。
「量子テレポートかぁ……てか量子は知ってんのな?量子テレポートは短距離のみで恒星間は無理」
「艦長がアイテムとかはいけるって」
それに旗艦クラスならバカでっかい装置があるって言ってたし。
「アイテムはな?まだ生命体には使えねぇ。安全性が確保出来てねぇからな………」
安全性ねぇ。
「前に死刑囚を移送するついでに実験した事が軍命令であったらしくてな?そりゃ酷いもんだったらしいぜ?」
「どう酷かったんよ?」
「俺も又聞きで聞いたんだが……移送開始日が死刑執行になった」
うわー………
「分解・再構築は出来たんだが、死んでたらしい。2人ほど生きてたみたいだが、1人は発狂してて、もう1人はめっちゃ悔い改めて今じゃ軍で1番の牧師様だ。再構築の後の変わり様が凄すぎて「もう、これで刑期を終えたで良いんじゃね?」ってなったらしい。僅か1時間ほどの移送だったんだが、その牧師様曰く「かつて私が量子となったあの時、私は宇宙の真理を観た」とさ」
あ~……なんか悟っちゃったのね。
「て、事があったので量子テレポートはアイテムにしか使ってない。しかもその端末機、軍では支給されてるんだが、一般にまだほとんど出回ってないから、クソ高ぇんだ」
カリンさんがいくつかパクってたヤツだな?
「いくらすんの?」
「こないだ通販で見たの1000万。フツーのデバイスで軍用が5万な?」
「たっか!支給品の横流し品だろ?ぼり過ぎじゃね?」
「そんだけ出回ってないんだ。あ、民間用は2・3万ほどだからな?」
うっわ、マジたけぇ……
『まもなくぅ、ギルド本部内ぃ、クエストカウンタァ、受け付け前、に、到着しますぅ』
お、もう着くのか。
話に夢中になって景色見んの忘れてた。
「姉貴、予定は?」
「艦長命令で知り合いに会いに行く。小遣い稼ぎはその後だな」
そっか。
じゃ、ギルドじゃ別行動だな。
そして到着すると、姉貴は慣れた足付きで人混みの中へと消えていった。
さて、あたいは………何しよ?クエストは受けてみたいけど無理そうだし、流石に5日間もホテルでゴロゴロってのもな。
………それ以前にホテルって何処?
しばらく彷徨いてみる………やべぇ、ショーウィンドウ内の値段がががが………
いくら金持ってるっても、服1着10万単位って、高過ぎだろ!
慌てて別の店、武器とかも扱ってるっぽい店を覗いてみる………
こっちのカッコいい最新式腕輪型端末機、なんとお値段、特価の18万!
こちらの端末機は機体とのリンクがスムーズな軍用モデル最新型で新品特価の36万8000J!
超目玉商品のアイテムボックス付きは数量限定サービス大特価999万Jだ!!
高ぇよ!!
あ、J、ジュールと言う単位ね。
サユリ曰く1J=1円らしい。
……余談だが、此処だけの話、アメリカ……だけでなく日本除いた世界中が宇宙人ミ=ゴの襲撃で株価が暴落しちゃってさ、取引所が機能しなくなった時には1$辺りが50円ぐらいだったのよ。
なのであたいはその前の180円の段階で全財産円に替えてやったわ!
知らせてくれたサユリに感謝!
………宇宙じゃ関係ないけど。
――――――――――――――――――――
補足
ワープ、量子テレポート以外の移動方法
宇宙での移動方法にはいくつかあり、現在使われているのが亜光速航法である。
軍での亜光速航法は第一から第七まであり、第七で光速の99%であり、エンハンブレは光速の80%ほどの速度で進む事ができる。
しかし、地球よりも高度(日本除く)な文明を持つ軍であっても光を超える粒子を発見できておらず、その研究は頓挫している。
また、ワームホールによる移動方法も、不安定な穴を固定化する技術も無い為、実現していない(観測は出来ている)
が、軍部は諦めておらず、かつて惨敗したミ=ゴとの交戦記録に残るミ=ゴ達が使用したワープにより、実現可能と判断し日夜研究を続けている。
※速度に関してはあくまで宇宙軍基準なのだ!
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!
4000PV突破感謝なのだ!
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
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