4-4 リック

あー……300年前の地球だったらあたいのお財布はうっはうはだったのに……


「ん?でも考えたら今の方が大金持ってるのか?」


大会の賞金とかで貯めた20万$ほどを180円で換えたから……3600万円。

ちょい多い?

でも、そっから先稼ごうとしたら地球が壊滅してるから、生活出来る今の方が良いのか?


「ま、300年も経ってるし、気にしないでおこう」


1$=50円の段階で換金してたら72万$になってたのは気のせいって事で。





クソ………orz





ちょっと落ち込みながらギルド内をうろうろしてると、超広い広場で何やら人集りが。

そしてその中心に貫頭衣を着た男性が演説を始めた。


「かつて私が量子となったあの時、私は宇宙の真理を観た!」


あー、姉貴との話で出てきた悟っちゃった人かな?


「私が量子になったのではなく、量子と言う本来の姿に戻った。そこには善悪はなく、「個」と言う概念も「他」と言う概念も無い。ただ「私」と言う「群体」が群れを成し、再構築の時に皆で力を合わせ「私」と言う「個」を形成しているにすぎない。だが、「私」は「私達」の努力を知る。故に「個」である今、努力を成し得た「私達」が未だ成し得ていない他の「個」に手を差し出すのです!ともすればその「個」は「私」だったのかも知れないのだから!!」


んー……量子力学的には間違っちゃ無いんだが……


「宗教にするほどじゃないよね」


後ろから声が聞こえ振り向くと、そこには。


「メガネ君!」


「リックです」


知っとる。


「体はもう良いのか?」


「もちろん。ケイトのお陰でね」


リックとはちょこちょこ会ってはいたけど、体調が良さそうで何よりだ。


「何せ、新機体が次々とロールアウトされるし、新機体の設計に組み立て、テストとやる事多すぎで仕事がリハビリになったからね」


「……なんかスンマソン」


新機体の設計なんかは正確にはお兄様率いるピフピヘット親衛隊なんだが、機体のコンセプトなんかを提案したのはあたいだからな。

触発された親衛隊が次々と設計図書いて形にしようとするから、手が足りなくてリックも駆り出された。


「いいさ。それよりも、ケイトは何してるんだい?」


「いや、ホテルを探しがてら色々観てみようかなぁ~って」


「ギルド広いから迷うよ?」


「絶賛迷い中」


「じゃ、案内でもしようか?此処はよく知ってるし」


お、それは助かる。


「頼めっか?ヒーロー物のテーマパークは言った事あるけど、セレブな所は行った事無ぇし、ベガスは仕事で行ったぐらいで慣れてねぇんだ」


仕事って言ってもゲーム大会だが。

カジノ?

ありゃ22歳からだから、あたいは遊べないのよ。


「じゃ、泊まる場所も含めて回ろっか」


て事でリックの後ろをホイホイ着いていく。

歩きながらリックがどっかに連絡してたけども、知ってるホテルでも取ってくれたんかな?









「「あははははははは!!」」


あの後、あたい達は2人してジェットコースターに乗っている………いや、此処広すぎだろ!?2階がテーマパークってさ!

リックの話ではギルドがある1階はエントランス兼高級装備の店が集まり、2階から上がテーマパークと高級ホテルの商業施設、もっと上はギルドのトップが集まる運営になっている。

フツーはエントランスでクエストを終えて資金を得たら下の階層に行くらしいのだが、せっかくだからとリックがテーマパークに案内してくれた。

にしてもリックもジェットコースターいける口とは意外だな。


「もっと、大人しいかと思ってたぜ」


「僕はパイロットも目指してたからね。結局、細かい操作ができなくて技術者になったんだけど」


ほーん、細かい操作ねぇ。

つまりリックはある程度はそつなくこなせるけど、専門的になると限界になるタイプか。

ん?でもグランシードの整備や調整って、リックがやってたんじゃ?


「なあなあリック。グランシードって調整してたのリックだよな?」


「そうだね。でも、テストパイロットじゃないから腕とか足が動くかどうかのテストばっかりだったし、暇もなかったからね。一技術者にパイロットの真似事をする許可なんて下りないさ」


「そりゃそう………」


「おやおや、これはこれはリックお坊っちゃんじゃあないですか」


突如リックが声を掛けられ、その声に凄まじく面倒臭そうな顔をリックがした。


「……アトランか」


アトランと呼ばれたその男は、見た目にうざい、と言うか、黙って立ってればウェーブ掛かった金髪の美形なんだが、服装が中世の貴族のボンボン風と言うか、宇宙でそんな奴居ねーだろと言うか。

要約するとうざい。時代錯誤。そんな感じ?


「なんと珍しい、かの名門クリプトン家の御曹司様が妙竹林な者を引き連れておられるとは!」


イラッ☆

なんだこいつ、マジうぜぇな?


「………彼女は同僚だ」


「ほう!同僚だとは!てっきりペットか何かかと思ったよ!名門の者は変わった趣味の者が多いからね!てっきり君もそ…」


「おい。彼女の事を悪く言わないでもらえないか?失礼だ…ろ?」


ろ?と言った瞬間、リックの雰囲気が一変した。

こ、この感じ……胸毛の素敵なオジイサマや関西弁が得意な俳優のじいちゃん、元アクションスターの中国人チャイニーズのリーおじさんに型を教えてもらった時、一度だけ本気で対峙させてもらった時と同じ、絶対的な強者の感じ!

え?うそ?リックって師範マスタークラスなのか?

アトランもその雰囲気に気圧されたのか、ひきつった顔のまま動きが………止まってねぇな?


「……は、はは……冗談じゃないか。それにこのボクが君を敵に回す事なんか有りはしないじゃないっか」


ふみゅ……一瞬アトランもそうなのか?と思ったけど、逃げただけか。

あの睨みで動けるのも割りと凄いが。



――――――――――――――――――――

補足


ギルド内テーマパーク

ギルドには多くの商業施設があり、その中でも一際目立ち人気なのが、このテーマパークである。

2階から10階までの層をぶち抜いて作られたこのテーマパークは、超巨大観覧車やいくつも種類のあるジェットコースターが人気だが、中にはギルドの広さを活かして作られた小さな街の広さのホラーハウス(タウン)や、荘厳な建築物を使用したオペラハウスなどがあり、セレブのみならず依頼を受けに来た荒くれ者達にも評判が良い。

一番の目玉は6階層分の大きさを誇る超巨大観覧車で、夜間照明時間(夜とされる時間帯には照明が落とされる)にその観覧車の頂上付近でプロポーズをするのが流行している。



※筆者の中でリックが勝手に主人公(または王子様役)レベルで強くなってたのだ!

あくまでメカニック役だったのだが………


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

4000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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