4-5  その時間帯は

「そ、そそそれより!」


このアトランって奴、まだしゃべる事あんのかい。

いや、むしろ威圧されててしゃべれるから、案外やれるのか?


「いい加減戻ってきたまえ。君が居なくては我等の縁談が進まんではないか」


縁談?


「それに関しては既に終わっている。僕も彼女も、両親も断ったはずだよ?」


「そんなのは気の迷いと言う物だ!我等両家が一つになれば、業界トップの座を得る事も可能!それこそが君にも妹にも最高の幸せなのだ!!さあ!この婚姻届にサインをしたまへ!」


「だからしないと言っているだろ!ミリヤちゃんも意味が無いと言ってたはずだ!」


「知りませーん聞いてませーん」


うっわ、小学生かこいつ。


「ともかく、まだ僕にはやる事がある。父や母にも許可を取ってある。戻るつもりはないんだ。いい加減理解してくれ」


「やはりか!やはりそうなのか!」


は?何が?

何か急に理解した!って感じで声をあげたアトランが、あたいの側に来る。


「いくらだ?」


へ?


「いくらでなら手を引く?」


え?何言ってんのこいつ?


「とぼけるな!貴様が彼を手篭めにしているんだろ!洗脳しているのかも知れフガッ!」


あ、ヤバ。キレそう。

思わずアサルトライフルを実体化させて口に突っ込んじまった。

汚えな。


「黙れ三下。あたいがキレる前にパパのミルクでも飲みに帰れ」


「ケイト。それを言うならママのミルクだ。それじゃあイカ臭くなる」


「汚物以下の言語よりマシじゃね?さて、今あたいは最っ高に気分が悪い。何でか分かるか?」


あたいの問いに半泣きで首を横に振るアトラン。


「それはな?リックが案内してくれた最っ高のテーマパークにてめえみてぇな汚物が落ちてたからだ。分かるか?あ?わかりまちゅかぁ?」


ゴンゴンと喉の奥を突っついてやる。

あ、吐きそうだから止めとこ。

あたいがアサルトライフルをしまうとアトランは噎せながら後退り。


「ゲホッ、ゴホッ……こ、これだから下賎な者は……所詮は売たわぶっ」


アトランが何か言おうとした瞬間、リックの拳がアトランの顔面を貫き、アトランがキリモミ回転しながら弧を描いて吹っ飛んだ。

今のリックの動きって。


「箭疾歩(せんしっぽ)?」


「地球ではそう言う技名なのかな?僕が教わった流派での体重移動で飛び込んでの突きはパイルショットって言うんだ。体重移動を使った歩みができないと一撃で倒す威力がでないから難しいんだよ」


ん~……昔、あたいに戦い方を教えてくれたオジサマ達の内の一人、リー先生が一撃を重視する流派があるって教えてくれたけど、それに似てるなあ……宇宙でも武術ってあるんだな。

そういや、サユリが日本のスクールの先生がマジモンに教わってて、自分も教わったーって言ってたな。

あたい自身はリー先生から「この動きがタイジーチュェンでウーシューの中にはナンチュェンとかチャンチュェンとか有るけど、取り敢えず体が小さいから、チャンチュェンから簡易の24式から教えようか」って言われて教わった。



何言ってっかわかんねーだろうが、あたいも分からん。



今度サユリに聞いておこーっと。


「で?あれどうする?」


地面に突っ伏して動かないアトラン。


「ほっといていいよ。その内警備係が処理するさ」


「あ、そう」


「…………聞かないのかい?」


「聞いてほしいのか?」


「隠してる訳じゃないけどね………」


「んな事よりアレ!アレ乗ろうぜ!」


そう言ってあたいはバカでかい観覧車を指差す。


「アレかい?一周30分はかかるよ?」


「良いって。それにこのまま彷徨いてたって警備に職質されるの目に見えてっからな」


「それもそうだね」


せっかくの休みに詰問されて1日無駄にすんのは勘弁だからなー。

そして2人で列に並び順番を待つ……が、なんだろう?スゲー居心地が悪いってか、場違い感が半端無いってか。


「さ、順番だよ。乗ろう」


「お、おう」


ゆっくりと回って来るゴンドラに乗り込み、窓の外を眺める。


「おー………スゲー眺め」


「そりゃね」


「でかいとは思ったけど、どんだけでかいんだ?」


「高さ250m、1周40分、登場可能人数は1750名。完成は2年前。作ったのは5年程前に救助された地球のイタリア人」


「ほーん、地球人がねぇ?えらく詳しいな?」


「まぁね。地球で作った物と同じ物を作ったらしい。本当はもっと大きな物を想定してたみたいだけど、初めての試みだったから収益がどうなるかでこうなった」


「へぇ、結果は?」


「ご覧の通り、大成功。もう少し予算割いても良かったかなぁ………」


ん?


「あ、そうそう。今日のホテルだけど、手配しておいたから、これが終わったら迎えが来るよ」


「お、おう」


明言はしてないけどリックってもしかして?


「そ、それより、よ?ただの観覧車だってのに、違和感ってか場違い感半端無かったんだが……」


「あぁ~…それは多分、時間帯かな?」


「時間?」


言われて端末を確認すると丁度20時過ぎ。

ゴンドラの窓から見える景色は、ギルドと言うコロニー内にも関わらずテーマパーク内は照明が落とされ、他の乗り物の照明だけ。

そしてその観覧車の巨大さ故に眼下に見える景色は100万ドルの夜景を軽く凌駕………




ん?これって?




ふと、リックを見る。

パッと見はインテリ系のひ弱そーな感じに見えるが、正面切っての近接戦闘において多分あたいより強いだろうし、設計や修理なんかもそつなくなんなくこなしていくしメガネ外すとほら優しい感じで美形で整っててそのくせたくましくて「えっと、僕のメガネを外してどうしたのかな?」スカイブルーの瞳が綺麗で困った顔もまたなんとも……え?


ふと、自分の手を見るとそこにはリックの本体(メガネ)が………


「あ。いやっこ、これは!その!違くて」


「と言うか近いんだけど?」


Oh………



――――――――――――――――――――

補足


ケイトの師達

リック「でも格闘とか詳しいね?」


ケイト「地球で戦ってた時に、避難場所にいたその道の有名人達に教わったー」


リ「へぇー、どんな人達?」


ケ「カラーテやブラジリアンの使い手のオジイサマに、ウーシューの使い手で俳優のリー先生に、元州知事でボディビルダーで俳優だったじいちゃん、元レスラーで俳優のスキンヘッドのおっちゃんとか………自分で言ってて何だがアクションスターばっかだな」


リ「俳優なのにみんな強いの?」


ケ「もち!その道の人達が俳優になってるから、ガチの軍人よりスゲー時がある!中には軍人から敬礼されて困惑してた事もあった」


リ「でも本職じゃないんだろ?」


ケ「細かい所や最新型の扱い方なんかはプロが教えてくれたけど、その本職が「自分なんかが貴殿方に教えるなんて!」って恐縮しちゃって………」


リ「……よく戦ってこれたね」


ケ「それな(σ´・∀・)σ」



※リー先生はマジヒーロー。バカンス中に地震による津波でホテルのロビーが浸水する中、転倒した娘さんを起こして山の方へ逃げ切ったとニュースになった。

現在、10年以上闘病しておられるが、徐々に若くなっていく姿はマジヒーロー。


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

4000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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