4-6 リックの昇進

あれから一瞬に感じられた十数分を過ごし、観覧車を降りた。

途中からマジで一瞬だった………


「久々だったけど割りと良かったね」


「お、おう。そだな」


何がどう良かったのか。

あたい的には……うん、まあ、な?


「さて、そろそろだと……来たね」


来た?来たって何が?とか思ってると目の前に黒いリムジンが止まり、燕尾服を着たおじいちゃんが降りてきた。


「御待たせいたしましたリンクリンド様」


リンクリンド、さまぁ~?


「すまない爺。彼女はケイト特務曹長。同僚で正規パイロットだ。失礼の無いように。それと今の僕はリックだ」


「は。御意にございます。向こうにもそうお伝えしておきます」


「頼む。じゃ、ケイト。乗って」


リックに促され、怖ず怖ずとリムジンに乗り込む。


「何か飲む?」


「い、いや、いい」


場違い感半端無いから落ち着かねーし!

リムジンなんてほとんど乗った事ねーし!

昔、ゲーム大会で優勝した時のパレードで乗ったぐらいだし!

いや、ま、普通ならゲーム大会でリムジンなんて無いんだが、主催者がグレートブリテンのお金持ち兼コズピクの初代王者「絶対女王」(世界女王はヒジリ・カノウ)だったから豪勢だったんだがな。


暫くすると、運転席のじいちゃんからリックに報告が。

てか、じいちゃん運転うめーな!

カーブとか何度か曲がってるはずなのに、横揺れが全く感じられない。


「リンクリ…リック様」


「……何か」


「テンダースコーポレーションより抗議のお電話が」


テンダースコーポレーション?ってなんだ?


「抗議か……予想はつくが用件は?」


「身体的、精神的苦痛を受けたと」


リックがこめかみを押さえため息を吐きながら端末を操作。


「これを父と先方の……おばさん達に。詳細は帰宅後に自分で話す」


「承知しました」


「なあなあリック。何があったん?」


「あー……アトランは覚えてる?」


アトラン、アトラン………ああ!

あのゴミムシか!


「あのクソムシか。汚物が何だって?」


「テンダースコーポレーションは彼の実家」


あ、そゆことね。


「カワイイカワイイむすこちゃんが傷つけられてオカンムリってか?」


「騒いでるのは父親と彼だけだけどね……たった今、おばさ……母親と妹から正式な謝罪がきたよ。ま、それも含めて父と話し合うつもり。ケイトは気にせず休んでくれてて良いよ」


端末を操作しながらリックはそう言うが。


「いや、そーもいかんだろ?あたいも噛んでるしさ。状況説明すんのにあたいがいた方が良いだろ?」


リックはあたいを庇っただけだからな。

ディスられたあたい本人が証言すれば確実だろうし。


「助かる」


「所で………場所柄的に敬語使った方がよろしいでありますか?少尉殿?」


そう、リックは実はあたいより上の階級である少尉殿なのだ!

元々は技術士官であり、こないだまであたいと同じ曹長だったのだが、コールドスリープ状態のあたいを身をもって助けた事、エンハンブレの業務を多岐に渡り従事していた事が認められ、士官学校卒と言う事もあり、曹長から少尉へと昇進したのだ!


「よしてくれよ……それに場所柄って?」


「いやだって、間違い無く大豪邸に行くだろ!」


バカでかいリムジンに執事付で、更に便所虫が名門って言ってたから、間違い無くこのギルドの有力者だろ!?


「……否定は出来ない……かな?けど、今回昇進できたのは君のお陰なんだよ?人命救助に新型機のテスト、細かい事務作業と色々認められはしたけど、ケイトがいなかったら多分技術者止まりだったからね。今日も実家に帰ろうと思ったのも、ケイトのお陰で昇進出来たからだしさ。本来なら父との約束で来年までに尉官になれなければ家を継ぐつもりだったんだ」


「辞めるつもりだったんだ?」


「まぁね。パイロットに憧れて入隊したけども、向いてなかったみたいだから」


向いてないねぇ………

細かい操作が苦手って言ってたな………


「だから、公な場所以外では普通で良いよ」


「ん、わかった………なぁリック」


「ん?」


「明日ちょっと付き合ってくれね?」


べ、別に変な意味じゃ無いんだからな!


「時間有るかな……?」


「無理にとは言わねぇよ。休暇終わりでも問題ねぇからさ」


「わかったよ。テンダースとのゴタゴタが終わり次第時間を作るとするよ」


よしよし、言質は取った。

――――――――――――――――――――

補足


リックの昇進

今回、本来なら年に一度上層部と人事課による会議で昇進するかどうかを決めるのだが、ケイト救助の際の身を挺した働きと、復帰後すぐに技術関係で多大な貢献をした事により(グランシードの整備だけでなくアエードーンの組み立て後の整備、医療スタッフの補助に食堂の手伝い、他多数)特例として尉官へと昇進した。

これには、ほっとくと勝手に機体開発をしたり、艦内を自由に彷徨く(立ち入り禁止区域含む)ケイトのお目付け役としてグレッグが期待したからである。

何故なら、他に人材はと探すも、ケイト(姉)と同じく自由人な為、何故か居場所を把握できているリックしかいなかった(サユリですら読めない)

一部隊員達の間では「ケイト用GPS」「ケイトレーダー」「探知機」と呼ばれている。



※更に金持ち設定が生えてきた……だと!?


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

4000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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