4-2 多すぎる

あれから更に30分ほど過ぎ、ようやくギルドに到着したあたい達は、警備と受け渡し要員を残し、パイロットを中心に数日休暇となった。


「艦長ー、どんぐらい滞在すんだ?」


「滞在自体は10日だな。前半の5日間は俺等が、後半は居残り組だ。つっても、俺はそんなに休めんがなー」


やる事多いもんなー


「一応、ケイトとサユリ、ピフピヘットとその親衛隊共には、小遣いって形で今現在までの稼いだ分の金を渡しとくから、端末で確認しといてくれ…………無駄遣いすんじゃねーぞ?」


え!小遣いでんの!?ヤッフゥゥゥゥゥ!!

てか、親衛隊って何だ………あ、お兄様率いる技術屋集団か。

そんな事より確認だ!




………は?




「ギルドの案内はピフピヘットにでも聞いてくれ。じゃ、解散!」


「あ、ちょっ……」


艦長が行ってしまった……慌ててあたいはエリーゼさんか姉貴かサユリかピフピヘットを探しに艦内を駆けずり回る。


「姉貴!」


「おん?どした?」


「こ、こここ、こここここここれ!見てくれ!」


「ケイチョウかお前は」


ケイチョウとは地球で言うところの鶏である。ではなく。

あたいは姉貴に端末を見せる。


「……?ほーん、確か救助されてから3ヶ月も経って無かったよな?結構稼いだな?」


「姉貴、何でそんなに冷静なのさ!?」


「そりゃよ、エンハンブレに所属してるっても正確には軍人じゃねーからな。それに俺等は会社勤め、あー…リーマン?ていうのか?でもねぇからそれくらい普通だ」


マジで?


「多分、それでも弾代とか修理費とか身の回りのもんは引かれてるぞ?そんだけ稼いだって事だな」


「にしても多すぎねぇか!?」


あたいの口座に振り込まれていた金額はなんと3000万!!


「専用機のパイロットで技術屋で整備や調整もしてるだろ?更に新機体を作ったのがでかい。ついでに遭難者特約も付いてるからな」


実際に機体を作ったのはサユリなんだが……んで、特約とはなんぞ?


「特約ってのは宇宙で遭難した時、救助した側とされた側双方に軍から保険会社を通して支払われる一時金だな。救助後直ぐに動けるならともかく、お前やサユリは右も左もわっかんねーだろ?それを救助した側、今回はグレッグ艦長だな、一時金として1年は生活できる金額を預けられ、救助者へ定期的に渡す制度だ」


はー………そんなんあんのね。

ん?でもそれって………


「姉貴、それってがめる事できんじゃね?」


「否定はできねぇな。実際、金だけ取って救助者を放置、または奴隷の様に扱う輩が未だに後を断ってねぇんだ。軍でも取り締まりはしてたんだがなぁ……定期的な査察じゃ隠されて終わりだからな、限界がある」


つまりお役所仕事になっちまうっつー事か。

そっか、だから博士は軍の発表より「少ないか多い」って言ったのか。

「少ない」場合は単純に詐欺と誇張。救助したと言い張ってバレてカウントされなかったり、軍の方は救助者が少ないと無能呼ばわりされるから少し多めに発表した。

「多い」場合はそれこそ姉貴が言ったみたいに奴隷になってたりで軍が掴んでない救助者がいるって事。

あたいとしては後者かなぁ?

何故なら1000人は少なすぎるからで、地球の全人口は襲撃前で確か80億で、地球脱出時には20億ほどに減っていた。

減った、と言っても20億。そのほとんどが地球脱出しているし、脱出挺にはあたい等が乗ってた船みたいに小型でも400人は乗ってる。

地球から全方向にてんでばらばらに逃げても300年の間に全滅するとは考えにくい。

もっと見つかっても良いはずだ…………



いや?宇宙なんて広大な広さの中で、20億人ほどなんてゴミみたいな物か?

そう考えると1000人は多い……?


「なあ姉貴」


「おん?」


「確率的に考えて1000人って多いのか?」


「ん?んー………ビミョー?いくらレーダーが良くても救難信号も無きゃデブリと思ってスルー安定だしなぁ………逃げた方向がバラバラだったら見つけられんし………」


そっかぁ………


「事故も多いしな?そう考えたらさ、その1000人は運が良かったんだろうさ」


「だな」


「その中でもケイトとサユリは更に頭抜けてるがな?」


「ほえ?」


「そりゃそうだろ!広い宇宙で脱出艦事故ってんのに通りかかった艦に拾われて!しかもその艦がエンハンブレで!それだけでも奇跡だっつーのに、わずか3ヶ月で専用機のパイロットやってそんだけ稼いでんだぜ!?」


そ、そうか?そうなのか?…そうか。


「あ、そだ。勘違いしないように言っとくが、その3000万の大半は機体開発の報酬だからな?」


言われて口座に添えられた収支内訳を確認すると………


ソウナンシャトクヤク |………………… 200,000

ゲキハホウシュウ  |………………… 4,000,000

内|エリートゲキハ×2…… 3,000,000

|他……………… 1,000,000

ソウナンシャキュウジョホ|………………… 2,000,000

ウシュウ

キタイカイハツホウシュウ |………………… 20,000,000


一部だが、こんな感じ?

まー、端数は省いてるけど凄まじいな。

姉貴曰く、フリーの扱い(独り親方って感じ)だから割合が高く、こうなってるらしい。

無理だろーなーと姉貴の収入聞いたら、嫌々ながら教えてくれた。

姉貴が軍にいた時は、給料自体はあたいの特約と大して変わんないけど、それ以外は軍が出してる依頼クエストをこなす事で稼いでいたらしく、未開惑星の原生生物の討伐やらサンプル採取、訓練生の教官等様々な依頼をこなしていたとの事。

それでもフリーでの機体開発報酬ほどは稼げないみたいで、うらやましがってた。


「てか、何でこんなに入ってんだ?」


「ばっか、お前、MA1機いくらすると思ってんだ?ファイターやゴブリンならウン千万だが、ソルジャーなんてプロトタイプは億だぞ億!グランシードに至っては10億超えてるはずだ。それを使いもんになるようにして尚且つサユリと一緒にアエードーン作ったんだ!そのかかった金額はいくらだ?備品と廃材だろ?これを普通に工場のラインに乗っけても1億かかんねぇんじゃねぇか?しかも現行のどの機体よりも高性能ときた!それがどれ程の利益を生み出すか………つまり、そう言う事だ。入金額はサユリと2人で1台分弱だろう……後3・4割増しが販売額だとして結構な儲けだぞこりゃ……後は機体が売れる度2人にもリターンが見込めるからコンスタントに増えていくかもな」


――――――――――――――――――――

補足


アエードーンの販売額


エリーゼ「艦長、アエードーンの件ですが」


グレッグ「概算出たか?」


エ「はい。ほとんどが備品ですが、新規で作っても8千万程で出来ます」


グ「ファイターよりかは1千万高いか……」


エ「ブースターや変形機構用のパーツ分ですね。大半はブースターですが。DMCユニット装備型ですと9千万を超えますが……」


グ「それでもソルジャーより2千万近く安いのは凄い。使い方次第でソルジャー以上の働きが見込めるし」


エ「ソルジャーは軍の次期主力量産機ですし高い分、全体的な性能も高いですから……アエードーンの推力とコストの安さが異常なんです」


グ「……よりコストを下げるとしたら?」


エ「グランシードとの合体・変形機構を無くして、変形プログラムや操縦を簡易化すれば………無論DMCユニットを外す事前提ですが。それでなら7千万程に押さえられます。まぁ、部材費だけでしたらもっと安いですが」


グ「いいね。よし!まず軍に報告だけ出して大佐経由で市場に出すぞ!」


エ「製作者にはどうされます?」


グ「ケイトとサユリには1台分……7000万をサユリ依りで分けて入金しといてくれ。後は売れたらサユリには3%、ケイトには1%、残りの売り上げは大佐4で俺等6で」


エ「カリン大佐、怒りませんか?」


グ「前の戦闘で赤字だからな。それに軍やギルドを介さない養成所やエンハンブレ自体も新しくしたいからな……ともかく、それで打診してくれ」


エ「了解しました」



※なお、販売額は9000万に決まったのだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

4000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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