8-12 脱出

ついに立つ中佐に整備士達が沸き立つ中、ポカーンとしてるのが約2名ほど。


「おうチビ共。ボケッとしてどした?」


「お前もチビだ…」


ゴスッ


「誰がチビだコラ。ぶん殴んぞ」


「っつ〜……もう殴ってんじゃねぇか!」


「うっせ。んな事より、何ボケッとしてんだ。逃げ出す絶好のチャンスだったのによ」


「あ……」


「スラムで生きるんだったら周りをよく見ろ。機会は逃すな。隙を覗え。ま、逃げる必要無いんだが。中佐ぁ!」


「何かなケイト君?」


「こいつ等どうすん?」


中佐が何の目的で連れてきたかしんねーけど、スラムのガキンチョ2人をこのままにしとく訳にもいかねーしな。


「ふむ……彼等には公務の妨害と言う理由の私預かりでうちに来てもらう」


自分家連れてくの?

まさか独身拗らせてそんな趣味が!?


「え……」


「おい、今何考えたこら」


「いえ別に」


「……今、少し、君の上司の苦労が分かった気がする……ともかく、ヘンリー少尉!モルジアナ殿、メイサ殿も」


「ハッ!」


「何よ」


「この2人を連れ私の家に来てくれ。今後の事を相談したい」


中佐はこれからの事を話し合いたいみたいだな。


「整備士長、部下に機体のメンテナンスを。整備士長も来てくれ」


「了解しました」


なんかめっちゃ金髪美人の人なんだが……この人が整備士長だったんだな。

その後、主要メンバーで中佐の家へ。

凄く高いビルの1階部分(地上に出てて主要道路と繋がってる部分が1階扱い)のフロアの角部屋が中佐の家らしく、社宅…軍の寮なんだろうが、フロアの4分の1が自宅とは結構広く取ってんな……残りは同じ階級の方々らしい。

他の場所にもあるらしいが、下の階に行くと階級が下がっていき、上の階に行くと階級が上がっていくらしく、この1階部分は本来なら少尉クラスが住む場所らしくて、ヘンリー少尉は隣に住んでるらしい。

着いた時に貴重品取りに行ってたな。

なので本来なら中佐はもっと上の階なんだが、駐車場直結で建物周りを自分の庭と同じ様に扱える1階部分にしがみついているそうだ。



この走り屋め。



あ、着いて早々グランドロアに中佐の家のセキュリティを牢獄レベルにまで引き上げてもらったぞ。


「だからよ、スんのにぶつかるのは相手が同等でない限りは二流なんよ。一流や超一流ってのは、ほれ、この通り」


「あ!俺の財布袋!いつの間に!?」


「ほらよ。少尉も」


「そんな!チェーンつけてたのに!」


「ザッとこんなもんか?」


「「スゲー!」」


「手癖悪いわねあなた……それより少尉は隙が多いわよ?はい」


「え!今返してもらったばかりなのに!?」


へー、ヘンリー少尉が左の胸の内ポッケに財布を入れた瞬間に、左から声をかけ反対側からぬるっと抜き取ったよ。


「スゲー!スゲー!」


「モルジアナ殿もやるようで」


「いえいえ、あなた程では」


「「フッフッフッフッ」」


「うちの妹の手癖悪くてすまんな」


「うちの姉がご迷惑を……」


「おいこらお前等」


おや、中佐がこめかみ押さえてらっしゃる。


「アーカイブ姉妹が着いてきたのはこの際だから不問とするが……子供達に何教えてるんだ!」


何って。


「スラムで生きる生活の知恵?」


「むしろ一般人の為のリスク管理かしら?」


どうもモルさんはあたいと近い感覚持ってるみたいで、スラム時代に出会ってたらライバル、てか喧嘩仲間みてーな付き合いしてたろうな。


「でもこれ、手品にも応用出来るから、仕事の幅増えるわよー?」


「そうそう、知ってたらカモられる心配も少なくなるし、手先が器用に越した事ねぇし。何でもやってみんのが一番」


大体の仕組み知ってりゃ初見でも対処しやすいからな。


「しごと!?しごとできんの!やった!これで飯が食える!」


「やったね兄ちゃ!」


いやーイコールって訳じゃねーんだが。

そう言や、何でも中佐は此処に2人を連れてきたんだ?


「で、中佐。何で2人を連れてきたんだ?」


「ああ、それは……」


その時、遅れて整備士長がやって来た。


「今日は一段と多いわねー」


「ん?おかえり。整備の方は?」


「通常メンテだけだからね。部下に任せてきたわ。それより夕食にするから……はーい、みんな手伝ってー!」


整備士長が全員に声をかけ、半ば強制的に手伝わされた。


「あなたはキャベツ切って。あなたは人参。あなたは玉ねぎ。少尉は食器を並べてー」


「……えーと、モルさん。整備士長って一体?」


「モルさんって……はあ……知らないわよ!」


「ん?カレンがどうかしたか?」


へー、カレンっていうんだー。


「いや、どう言うご関係で?」


「私の妻だが?」


ふーん妻ですかそうですか……


「「って工エエェェ(´д`)ェェエエ工」」


「中佐って結婚してたん!?」


「当然だ。何だと思ってたんだ?」


「独身拗らせた変態かと」


「よし今すぐぶん殴る!少尉!ケイトを捕まえろ!」


「ええっ!?」


ハッ!そう簡単に捕まるかよ!!


「たまには怒られとけ?」


「姉貴!?」


なんか姉貴が生暖かい笑みで肩を押さえ込んできた!?動けねえ!!


「ケイト姉覚悟!」


「かくごー!」


兄妹まで飛び込んできただと!?

と、その時。


「アハハハハハハハハッ!!」


「カレン!?」


「ハーッハーッ……いやーこんなに笑ったの何時振りかしら!むしろ人生初かも?」


「……そうだな。過去には無かったな」


「ありがとうケイトちゃん。主人があなた達が切り札だと言っていた意味が分かったわ。今の政府じゃこんな風にバカ騒ぎ出来ないのに」


「うむ。家から1歩外に出れば常に監視だからな。まともに会話も出来ん。都市の外、荒野に出れば問題が無いが」


まー、監視自体が悪い訳ではないが、安全の為の監視と支配の為の監視じゃあ、意味合いが違いすぎるってばよ。

それと……


「家の中でも変わんねーよ。中佐は家の中で計画の事話した事ある?」


「いや、計画に関しては家の中でも警戒して普段の愚痴ぐらい……まさか!?」


そのまさかなんだよなー。

サブでもグランドロアが居て助かるわー。

端末の画面をみんなに見やすいようにおっきくして宙に浮かべる。

兄妹だけじゃ無く中佐達も驚いていたが。

モルさん達も目を見開いていたから、この技術はあたい等の方が進んでるみたいだな。

グランドロアにも驚いていたが無視してグランドロアに報告させる。


『ご覧の様に建物内部、壁内に集音器が多数仕込まれてます。家具には無い様ですが』


「信じられん……ここまでやるのかアイツは!!」


『念の為に周辺施設もスキャンしときやしたがね、政府が建てた施設は多かれ少なかれ仕込まれてますな。前にデータベースに入った時の記録と照らし合わせて……仕込みが始まった時と現大統領が2期目に就任した時が重なってますんで、既に10年以上は諜報活動してる事になりますね』


「まー、テロや反乱防ぐ為に監視すんのは良くある事なんだが」


軍の寮だけでなく、上級将校が個人で持ってる家にまで……いや、その人の実家まで監視してんのはやり過ぎだ。

なんかあった時用に人質取りますよって言ってるようなもんじゃん。

てー事ぁ、ちょっとした事からでも革命の事バレてると見て間違い無いだろうな。


「にしてもやり過ぎだな……ん?」


じゃあ大統領は中佐を泳がせてる?

何故に?主犯格を見つける為。

どうして?まとめて排除する為。

どうやって?特殊部隊か私設部隊または傭兵使って取り囲んで………やべえ!!


「グランドロア!!」


『ですよねー。確認したです。だもんで今、4機ほどタクシー呼んだのですが間に合いませんね』


タクて。


「合流ポイントは!?」


『300m先の百貨店ですね。それ以上はこちらに向かってる部隊と鉢合わせになる可能性大ですね』


「猶予は!」


『10分以内に出れば部隊とすれ違わずにポイントに着けます。が、気付いた部隊が直ぐに引き返すと予測されますので、結構ギリ』


「全員荷物まとめて百貨店まで行くぞ!!姉貴!」


「中佐は車を、カレンさんは荷物を、少尉とメイサ殿はカレンさんを手伝って、モルジアナ殿は兄妹を、俺、ケイトは殿を務める」


流石姉貴!判断早い!


「えっ?なになに?なんなの!?」


モルさんと兄妹は困惑しとるな。


「ほら中佐急いで!」


「あ、あぁ……」


中佐は戸惑いながら車を出しに。

意外にもカレンさんは少し考えると直ぐに動き出した。


「……!ヘンリー少尉、メイサさん!寝室のクローゼットに避難用!横に大きめの鞄が2つあるから引き出しの下着類詰め込んで!私は少しでも食料を!!」


「了解しました」


「エッ!?ア、ハイ!!」


メイサさんは冷静だなー……いかなる時も慌てず卒なくがメイド道……とか言いそう。

ヘンリー少尉は……困惑はまだしてるみたいだが、命令があれば理解できてなくっても体は動くんだな。


「モルさん、2人を抱えて中佐の車に!」


「えっちょっ!何!?どうしたのよ!?」


まーだ分かってねーのかよ!?


「後8分以内に出ないと特殊部隊に囲まれんだよ!急げ!!」


それを聞いた瞬間、2人を抱えたモルさんの速い事速い事。あ、時間的にじゃなくガチ速度的にだから「速い」な?

窓開けたら突風吹いたぐらいの勢いで、2人抱えてんのに既に玄関蹴破った音聞こえたぞ。

後で怒られてください。

それから5分ほどでカレンさん達が荷物を持って出てきた。


「乗れ!……百貨店で良いんだな!?」


「荷物で全員は乗れてないわよ!?あんた達はどうすんの!?」


「構わず行け!!GoGoGoGoGoGoGo!!」


中佐がフルアクセルで発進。

流石、思い切りがいい。


「俺等も行くぞ!」


「あいよ!」


こういう時の為にひたすら腰にぶら下げてた赤いカードケースこと、バイオウェポンの出番!

こいつなら展開しなきゃ武器には見えないから取り上げられないんよな。


「アジ・ダハーカ!バイクモード!」


カードケースが一度粒子化し、大き目の旅行鞄ぐらいの大きさのバズーカへと姿を変え宙に浮き、ジャコッとバイクハンドルが飛び出る。

あたいが飛び乗ると姉貴が後ろに乗った。


「飛ばすぜー!」


————————————————————

オマケ


その時の大統領サイド


博士「お呼びですかな大統領閣下」


大統領「アレの進捗はどうか?」


博士「機体その物は完成しております。後は閣下と機体との同調システムの調整のみでございますれば」


大統領「確か……医療技術の応用で出来た機体のシステムだったな」


博士「はい。リスクはありますが普通に動かすだけならスコア2で人と同じ反応速度で動かせます」


大統領「3ならばどうだ?」


博士「専用の武装を遠隔で使えますが……発掘された時には失われておりましたので、機体性能の向上のみでございますれば。それよりもその先のリスクが……」


大統領「だが、そのリスクも無視できる方法も判明しているのだろう?」


博士「はい。しかしコアとなるモノとの相性が問題となりまして……しかしですが、特定の音声に反応がありまして、そこを突けば問題無く稼働するかと」


大統領「特定の反応か……対象は?」


博士「はい。先日異界より来た者……その名は」



※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)降り注ぐ弾丸。周囲を囲む兵達。

一人の野望が支配する都市を、天使達と踊り子達が飛翔する。

ささやかな望み、芽生えた愛、絆、健気な野心、老いも若きも、男も女も、昨日も明日も呑み込んで、動き出す邪心。

次回「蜘蛛」

地響きを上げ這い出るは地底のアラクネか。

(ちゃんらーちゃん!)


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&70000PV突破感謝なのだ!

ストックがもう無いから毎日更新は出来なくなってるのだ……出来次第上げるのでまったり待っててもらえると有り難いのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

中佐の機体なんにしよう………

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