8-17 嘲り

「いやー!やっっっっっと着いたー!」


500年前の勇者の元を離れ丸2日。

MAならもっと速かったんだが、この世界も見てみたかったしな。

とは言え、グランドロアが中央政府から引っこ抜いた世界地図と500年前の機体…マッシブアーマーだっけ?どー見ても某熱血小隊長が乗ってたイージーな機体にしか見えんかったが、そこから得た世界地図を照らし合わせて大体把握してるが。

まー500年だからな、地形自体大して変わってないんだが、今居る場所が元海洋国家アイファズフトって国の海洋都市レヴィアで、現在では国は無く都市だけ残った。

んで、鉄錆団や中央政府があったのが元技術大国オルグイユの都市アロガント。

他にも軍事国家コレールや世界中の食文化が集まる料理国家ゲフレッスィヒカイト……なんだよ料理国家って。

国営でカジノをやってる商業連合国ハープギアや女性中心の女王制国家アンピュルテ、世界最大のテーマパークが有名な大国スロウス等々。

この背徳感満載の7大国家と真反対の7国を中心とした79国があったのが500年前。

現在だと7大都市ぐらい?残ってんの。

それでも大半がスラムや廃墟や荒野で、国として機能してんのがアロガントのあるオルグイユと戦地と距離が離れていたアンピュルテぐらい?後は都市というよりそう言う名前があった地域みたいなもんだったりする。

実際、辿り着いたレヴィアは都市って言ってるくせに見た目は港としての機能がある港町にしか見えねーし。

つまり、どこも国として機能してないってこったな。

そう考えると中央政府が曲がりなりにも残ってんのってすげーなー。


「さて、鉄錆団の団員はどこかなー?」


そこらのおっちゃんにでも聞くかな?


「知らん帰れ」

「鉄錆団?………ぷ」

「シッシッ」

「けぇれけぇれ!」


なぁにこれー?

鉄錆団の名を出したらこれ。

嫌われてんのか?

この場合……格納庫がありそうな場所を当たればいっか?

いや、今通り過ぎた酒場かな?

てか、木造の西部劇に出てくる作りの酒場って珍しい……荒廃してるから有りなのか?

とりま入ってみる……一気に静まり返り訝しんだおっさん共の目線はテンプレテンプレ。

正面一番奥でムスッとしながらコップ拭いてるレスラーばりにガタイの良いのが此処のマスターだな。

カウンターの椅子にぴょいと座ってと。


「マスター、コーラ」


「んなもん無え。何の用だ?」


「人探してんだ。テリーって名前の」


「……知らん。他をあたんな」


ん?テリーの名前出したら周りの何人かが反応した?


「つれないねぇ……どうもこの街のうだつの上がらねえ住人は人の話を聞く耳を海に捨ててるらしい」


マスターがピクッと反応、後ろのおっさん共が立ち上がったな。


「……おいガキ、口の聞き方に気を付けな」


「そりゃあ相手による。で、コーラまだ?」


後ろのおっさん共がにじり寄って来る。

こっそり端末いじって………。


「無えって言ってんだろ」


「でも、後ろは知ってるみてーだぜ?」


すかさずバイオウェポン起動!

アサルトライフルのファフニールを起動し、端末からは念の為に持ってたリボルバー、スクラップから削り出したサタデーナイトスペシャルなんだが、使わなきゃヘーキヘーキ。


「うっ……!」


後ろ見ると3人居て、その内の真ん中のやつれたおっさんが何処にあったのか鉄パイプを振り上げてた……鉄パイプ持ち歩いてんのか?


「あんま舐めんなよ?ガキの使いじゃ無えーんだ。痛い目見る前にお座りした方が良いぜ?」


「………ガキが!!」


3人組の左側、スキンヘッドのマッチョが掴みかかってくる。

が、ドボルグおじさん以下しかない迫力と速度じゃあ意味が無い。


「おっそ」


椅子から降りるだけで簡単回避。

ファフニールで足を払うと顔面からカウンターに突っ込む……痛そ。


「このっ!」


鉄パイプ野郎が振り上げてた鉄パイプをわざわざ降ろし振り上げる。


「意味ないて」


「ぐほっ!」


ファフニールで空きまくったお腹にドスッと。

加減してるから痛いだけだろうけど、刺さってないかちょい不安。


「上げてたんならそのまま振り下ろせよ」


「こ、このガキ!」


最後の奴がハンドガンを抜こうとしてる。

ので。


「ほいっと」


「あぐっ」


左手に持ってたリボルバーを顔面めがけて投げつけると、スコーンと当たって仰け反る。そこにサマソッ!


「ンヒョホゥッ……!」


バク転しながらのあたいの華麗な蹴りが男の股間にHit!む、目測誤ってつま先が掠ったか。

……身長差って怖いね。

もっと踏み込めばよかった……。


「ふう……」


これで一息と思った瞬間、男に当たったリボルバーがクルクルと地面に落ちパンッと暴発。


「あぶねっ!」


……………これだからサタデーナイトスペシャルは。


「……投げるなら弾抜いとけよ」


「……スマン」


さて。

マスターはともかく、騒動の主犯格である3人組をふん縛ってと。


「んで?幼気な美少女をぶん殴ろうとしたのはなんでだ?」


「どこが幼気なん…」


「あ”?」


「いえっ!何でもないっす……」


「で?」


「アッハイ。実は……」


ふむふむ、鉄錆団のテリーさんは物資やらの補給と海洋都市レヴィアを根城にする反政府組織とコンタクトを取りに来たと。

所長、それ言ってくれよ。

困ってるから手伝って、としか聞いてねーよ。

んで、協力する前に実力を見せろと言われてボロッくそに負けたと。


「ふむ。で、テリーは何処に?」


「ま、街外れの廃工場で機体の修理をしてまさあ」


修理中ね。

あたいが呼ばれた理由が分かった気がした。


「おーし。じゃ、案内して?」






街外れの廃工場




「着きやしたぜ」


3人組の1人、スキンヘッドのマッチョ(ダンって名前らしい。他の2人は帰らせた)に肩車してもらいつつ到着したのはボロッボロのサビッサビの今にも崩れそうな廃工場。

人居なさそうだが、大きさ的にMA…こっちじゃマッシブアーマーだが、1台分なら格納できそうな感じ。

そのまま中に入ると確かに1台マッシブアーマーが………コレ、ザ○ォートか?軽量か中量級な感じは。

マッチョが叫ぶ。


「鉄錆の!出てこい!お前さんに来客だ!!」


暫くするとコクピットハッチが開き、肩まで伸びた金髪のツナギ着た兄ちゃんが降りてきた。


「ダン……な、何の用だ?」


「客だ客……そう身構えんな」


「客?」


視線が上がりあたいに訝しんだ目線をおくる。

まぁ、気持ちはわかるが。


「あんたがテリーか。所長から聞いてんだろ?応援要員のケイトだ」


「あんたが?……どう見ても子ど」


「姐さんを侮辱すんじゃねえ!」


「ピィ!」


ピィって……ダンに一喝されてビビるのはわかるが。


「まーまーダンさんや、落ち着け」


「へえ」


此処に来るまでちょいとダンと話したが、ならず者っぽいけど、こう見えて海洋都市レヴィアの自警団の一員で、さっきのケンカの時は珍しく酔ってただけらしい。

だからあたいの挑発に簡単に引っかかった訳だ。

酔いが覚めたみたいなので話してみると、近所で頼れる厳ついおっちゃんで、昨日たまたま奥さんと喧嘩して虫の居所が悪かったんだそうな。

ちゃんと謝っとけ?

んで、何故か姐さんと呼ばれるようになった。

何故だ。


「街で聞いたぜー?ボロクソに負けたって」


「うぐっ……」


「協力する条件が代表同士で戦って負けを認めさせる事……だったか?」


「そうだ」


この機体、専用機程じゃ無いにしろそこそこ性能が高い機体なんだが……。


「姐さん、その時の映像見た方が早いですぜ。こいつの機体にもレコーダーはあるはず」


お?せやね。

とりま機体の映像データを見せてもらう……あー……これはひどい。

海洋都市と言うだけあって、相手の機体は水泳部な機体ばっか。

本来なら陸上、空中戦で高機動かつ立体的に動けるこっちが有利なんだが。


「しょっぼ!まーだ乗って1日目の新兵の方が動けんじゃん!」


「はうっ!?」


「おま、なんでこの機体乗ってんの?もっと動ける機体だぞ?なんで止まってんの?これじゃ反撃するカカシじゃん!そら負けるわ!バズーカと爆弾あったら歩兵数人でも勝てるわ!下手すりゃエアガン1丁でも乗っ取れるわ!」


「ひ、ひでぇ……」


「いやー流石に俺でもそう思う」


所長もなんでこんなん送るかな!?


「あーもーグランドロア!どう操縦してたかデータ見れるか!?」


『はいな………これは……』


どれどれ……初めてゲームのコントローラー持った小学生かな?いや、小学生の方がまだ上手いか。


「テリーさんよ?M…マッシブアーマーの操縦歴は?」


「えっと…その……」


「歴は?」


「…………ボコされた時が初日です」


「おま良くそれで決闘条件のんだなオイ!」


「しゃ、車両と同じだと思ってイケると思ったんだよ!」


「アホかぁぁぁぁぁ!!」


MAでもそうだが戦闘機の操縦が出来ないと機体は操縦出来ないし、逆にMA動かせるなら戦闘機は慣れれば余裕。

だけど、車両は……戦闘機や機体動かせるなら簡単だが、逆は無理。

ハンドル回して機体が動くのって特殊すぎて宇宙でも再現できん。

しかし………これは困ったな。

相手からしたら少し実力を見たかっただけのはず。なのに、馬鹿にされてるとしか思えんもん見させられたんだ、そら街ぐるみで嫌うわ。


「ダンさんや、うちのアホが失礼極まりないほど失礼しました。鉄錆団全員に代わって謝罪いたします」


「俺に謝られても困るんですが……」


「今度はあたいがちゃんとした実力をお見せしますので、なんとかトップと繋ぎをつけてくれませんか?」


「ん〜……姐さんの頼みなら、なんとか掛け合ってみます。一応知り合いなんで」


良し!相手の機嫌次第だが上手く行けばなんとかなる!後は…………。


「こいつに手を加えるか」


あたいは目の前の機体を見上げるのだった。


————————————————————

おまけ


教えて!ケイト先生!

ダン「そういや姐さん。酒場で使ってたジャンクガン、サタデーナイトスペシャルって呼んでやしたが、そう言う銃なんで?」


ケイト「いや?ただのジャンクだぞ?」


ダ「じゃあ何でそう呼んでるんです?」


ケ「そうだな……あたいが元居た場所、地球って惑星のアメリカって国でなんだが、むか〜しチンピラやらなんやらが幅きかせてた時代があってな?基本ならず者だからみんな金が無くて、それでも銃が欲しくて低価格・低品質の銃が出回ったんだ」


ダ「それは護身用で?」


ケ「それもあるし抗争用ってのもあるし、売れ行き悪いガンスミスの小遣い稼ぎってのもあるな。んで、質が悪いから事故も多くて、かつバカみてぇな数が出回ったから負傷者がめっちゃ出た。それが週末に集中してたもんだから医者が「土曜の夜は特別に患者が多くて大混乱だ」ってんでサタデーナイトスペシャルって言われるようになったんだな」


ダ「へー、じゃあ俺等が使ってんのも廃材から作ってっからそうなんですかね?」


ケ「その前に曜日の概念あるのか?」


ダ「一応?」


ケ「疑問形かよ!」


後に惑星ルフトで出回っている廃材銃は全て(値段に関わらず)サタデーナイトスペシャルと呼ばれるようになったとか。



※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)突き付けられた新たな条件。

それはより厳しいものだった。

光刺さぬ深淵で、天使の実力が試される。

次回「潜行」

魚でも溺れる時は溺れる。

(ちゃんらーちゃん!)


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&80000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

ザ○ォートは作って良しカスタムして良しな名キット。はっきりわかんだね。

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