2-6 ピフピヘット2

艦の外部カメラからの映像に写し出されたのは、少し離れた別のドックの搬入口から外に飛ばされる宇宙服を着た何人かの人と、砕け散った物資だった。


『おいおっさん!今の振動何だ!何が起きてんだ!?』


ブリッジに呼び出しが入る。

モニターに映し出されたケイト達を確認するとグレッグが状況を確認する。


「ケイトか!エリーゼとサユリも居るな!?ファクトリーからの反応は!?」


「反応無し!混乱しているもようです!」


「分かった!エンハンブレ緊急発進!!一旦離れて様子を伺うぞ!」


「了解!………ダメです!!ファクトリー側のアンカーが先程の衝撃で此方からの信号を受け付けません!!発進出来ません!!!」


「マジか!………ケイト!!」


『あいよ』


「白兵装備で何が起きたか調査してくれ!エリーゼ!エスコート頼む!人員は任せた!」


『了解しました』


エリーゼが頷くのを確認するとグレッグは指示を出した。


「他の者は吹き飛ばされてる奴の救助!出来れば物資も集められるだけ集めろ!」


「物資もか?」


「ファクトリー側と他の船籍へ恩を売っときゃ何かと都合が良いからな。後………」


「宇宙は助け合い、じゃな?艦長?」


「ったりめーだ」


「よし!ワシ等研究班も出るぞ!」

――――――――――――――――――――

エリーゼさんからの艦長命令と、艦内放送でなんとなーく事態を把握。

結構な事が起こったみてーだな?


「て、事でサユリ。いけっか?」


「勿論、任せて」


言うが早いか、サユリは買ってきた紙袋の中身を開封しだす。


「ちょっと、あ、貴女達、戦闘訓練受けてないんじゃないの!?状況から考えたらファクトリーで爆発よ!?テロかも知れないのよ!?」


エリーゼさんが慌てて止めに入るが、あたい達は気にせず装備をカチャカチャ。

無視すんのも悪いから言っとくか。


「あー………エリーゼさんよ、あたい等地球人舐めてないか?地球を脱出したけどよ?直前まで訳分からん侵略者とドンパチやってたんだぜ?特にあたいとサユリは最後の方だったからな。志願兵でもあったんだぜ?」


「でも宇宙、無重力下での撃ち方知らないでしょ?」


そー言えばそーだねー………なんてな!


「ハッ!オタクを舐めんなよ?下手に撃ったら後ろにひっくり返るって知ってんだ。撃つ時はそうならない様に前に飛ぶかしゃがんで踏ん張るよ」


「ほとんど宇宙に出てない地球人が何で知ってんのよ………」


「星の船の通信士達」ってアニメで見たからなーっと言いながらあたいもウェポンパックを取り出し腰に付ける。

スイッチを押すと槍の様に細長い銃身が現れる。



う~ん、赤黒いけど、どう見ても竜の顔だな。眼があるし。



あたいが構えるとスコープがにょきっ!と生えてくる………うん、ブレてないね。


「外の状況は?」


エリーゼが壁の端末モニターで外の様子を確認する。


「搬入口の1つから火災………爆破されたみたいね」


「やっぱテロか。実行犯は?」


「此処からでは何とも」


「警備隊とかは?」


エリーゼが自身の腕の端末で何処かへ連絡を取る。


「……ええ……分かった。今、警備隊に連絡を取ったわ。搬入口付近でテログループと交戦中よ。他の協力者達と連携を取って事態の収集にあたって。準備でき次第、私も出るわ」


「「了解」」


あたいとサユリは宇宙服(あたいはオレンジのたぼだぼ、サユリは一般兵用のピッチリスーツ)に着替え、搬入口へと向かう。

搬入口の周りでは、宇宙服を着た作業員達が右往左往して混乱の極みと化していた。

あたいとサユリは左右に分かれ、内部を確認する………煙で何も見えねぇな。

ハンドサインであたいが先に身を屈めて侵入するし、積み荷に身を隠すとサユリも侵入。

クリアリングを繰り返しながら進むと先の方で銃撃戦が繰り広げられていた。


『ありゃあ警備隊か?奥には………テレンテテーレ人か?他には……宇宙服で分かんねえな』


『私としてはテレンテテーレ人が宇宙服無しで活動出来る事にびっくりだよ』


『種族的なモンなんだろうな。警備隊にコンタクトを取ってみる』


あたいは通信回線を切り替え、コンテナを盾にして応戦している警備隊に声をかけた。


『此方輸送艦エンハンブレ所属のモンだ。代表は誰か?』


『エンハンブレ!?外部協力者か!連絡は受けている!ファクトリー警備隊のダクラクだ!』


メット越しじゃあ良くわかんねーが、獣人種族の熊の人みてーだな。


『ケイトだ。こっちはサユリ。状況は!?』


『ご覧の通りだ!アイツ等の弾幕が厚くて先に進めやしねえ!!』


『普通警備隊って中にいるもんじゃねーのか?』


『俺達は港担当だ!中は中で……あー!カンカンカンカンうっせぇぞゴラァ!!』


ダクラクがアサルトライフルをフルオートに切り替え適当に撃ちまくり、マガジンを排出しながら再び身を隠すと、新しいマガジンに交換する。


『えぇい!……中央からの街担当が遅れてやがる!何やってんだ!!』


ダクラクが叫ぶと隣にいた別の隊員も叫ぶ。


『中央から遠いからじゃね!?恐らく出動に時間の掛かる中央より脱出に邪魔なこっちを先に叩く算段なんだろうよ!!』


いや、この場合は中にも犯行グループがいて中央を抑えてんだろ?


んー……どうすっかな?

テロった奴等が何を目的にしてるかわっかんねーんだよな。


『相手の要求とかは?』


『知らん!いきなり爆破してきた!』


手口としては爆破テロ。

問題はその目的。

さっき別の隊員が言った通りなら、相手としたら此処をとっとと制圧したいはず。

最初の爆発から既に数分経ってる。


『ダクラクさんよ。後、どれぐらい持ちそうだ?』


『あん!?手持ちで後、3分ってとこだ!全員弾が尽きる!』


『バイオウェポン持ちは居ねぇのか?』


『居ねぇよ!俺等警備隊はあくまで警備!基本的に非殺傷だからな!特殊部隊じゃねーから殺傷弾は制限されてんだ!!今だってぶっぱなしてんのは捕縛用だからな!』


どーりで、さっきからアサルトで撃つばっかでフラッシュも何も使ってなかったんだなって、フラッシュも無いのかよ!?


『何でフラッシュがねーんだ!?』


『んなモン普段持ち歩くかっつーの!』


あー……そーですねー……お巡りさんですもんねー……


『てーこたぁ………』


うん、大体読めた。

大元の目的は分からんが、今、目の前の奴等の目論見は。


『………サユリ!手元は狙えるか!?』


『出来る』


サユリが答えると同時にその場に寝そべりスコープを覗く。


『お、おい!正気か!?吹っ飛ばされるぞ!?』


『だーいじょーぶ。グレネードは来ねぇよ』


『いけるよー』


準備終わったな。

あたいがゴーサインを出すとサユリがトリガーを引く。

ほとんど音が無く、ほっそりとしたビームが飛んでいき、ガタイが大きい奴が持ってたアサルトライフルを砕いた。

突然暴発したみたいになった手元を何が起きたのか理解できずにポカーンとしてやがる。

更にサユリは間髪入れずに次々と撃ち落としていく。



相変わらずヤベェ芋砂………

まぁ、サユリの本当にヤベェのは近接なんだがな。



唖然とする相手をあたいは確認すると、ダクラクの持ってたアサルトライフルをスルッと奪うと、地面を蹴って地面スレスレに平行に飛んでいく………無重力っておもしれー。

何か後ろでダクラクが叫んでるが無視して相手に肉薄すると3点バーストで撃つ。

撃たれた相手は異様に吹っ飛ばされる………非殺傷弾だと思って撃っているが、なかなかにエグいなコレ!

あたいは体を捻って近くのコンテナを蹴り方向を変えると、目に入った相手を次々と撃つ。

これで残り3。

更にコンテナや壁を蹴って色んな角度から撃ちまくり、一気に制圧完了っと。


『ふう』


『お、おい!スゲーな!あんた等!』


興奮気味にダクラク達警備隊が駆け寄ってくる。

あたいはアサルトライフルをポイッとダクラクに投げ返す。


『だろ?』



――――――――――――――――――――

補足


芋砂

FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム。シューティングゲームの一種で、操作するキャラクターの本人視点でゲーム中の世界・空間を任意で移動でき、武器もしくは素手などを用いて戦うコンピュータゲーム)において定点スナイパー専門のプレイスタイルを揶揄する隠語。

元々はスナイパーライフルを構えて伏せてもぞもぞしている様子が芋虫みたいだったからで、そこから転じて、現在はキャンパー(定点篭り)全般を指して芋と呼ぶ人もいる。

どうでもいい補足だな。



※いざという時の地球人は肝が座ってるのだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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