8-10 模擬戦〜シミュレーター〜

あの後、殺意マシマシな視線に晒されながらスラム内を何するでも無くぐるぐると。

あ、中佐はツンデレの極みみたいな事やってたな。

丁度終わり際だったんだが、お約束みたいにスラムのガキンチョが中佐のポッケをピックポケットしにきたんよ。

とーぜん捕まったんだが。


「私に仕掛けてくるとは良い度胸をしている」


見事に首根っこ掴まれてやんのー。


「離せ!はなせ!HA・NA・SE!」


「知っているか少年」


「んぎぎぎ……」


「政府の関係者に手を出すと年齢・性別問わずに極刑になる」


「ウヒッ!」


「選ばせてやろう。今此処で死ぬか後で大々的に死ぬか」


それどの道死ぬじゃーん。

演技してなかったらおもっきり突っ込むんだがな〜。

と、その時新たなお約束が。


「兄ちゃ!」


とてててーと4歳ぐらいの女の子が走ってきた

……あ、転んだ。

女の子は泣きそうになりながらも起き上がり中佐の足にしがみつく。


「兄ちゃはなしてー!兄ちゃわるくないのー!はーなーしーてー!」


「はなせこのー!」


2人して中佐をポコポコ蹴りまくる……この兄妹ガッツあり過ぎじゃね?

さてさて中佐は如何するのかな?


「ふむ、公務執行妨害により2人を拘束する」


兄妹の蹴りに動じず妹も反対の腕で小脇に抱えた。


「一度戻る」


「ハッ!」


おや、もうお戻りで。

もと来た道を再び殺意の視線を浴びつつ中央へと戻る。

ちょっとだけだが現状は把握した。

中佐だからアレで済んだが、他の兵達だったら死人が出ててもおかしくないな。

実際、スラムの住人の何割かは死んでそうだけどな。

さて、エレベーターシャフト内だが……未だ暴れてる兄妹を無視して黙ったままか。

安全圏までそのまま行く気だな?

そして再び格納庫っと。


「待ちなさい!」


おや?誰かと思ったらピンクツインテのモルジアナさんとメイドのメイサさんじゃありませんか。


「今すぐその子達を離しなさい!」


「何故?」


「な、何故って……まだ子供じゃない!」


「子供であろうとも公務執行妨害だ」


「子供のする事に何言ってんの!」


「子供であろうとも人は殺せる。むしろその場で処刑しなかっただけでも恩赦を与えてるのだが?」


「そんな身勝手な理屈!」


モルジアナさんはどうやら子供達の事でオカンムリみたいで。

良い人っぽいから味方に引き込みたいが、この場で勧誘は……無理だな。


「ではモルジアナ殿はこの2人を助けようと?スラムの他の住人達がどうなろうとこの2人さえ助かれば良いと?」


「な、何を言っているの!?」


「あの場で処刑していれば隠れていた者達が暴れていたであろう。そうなれば我々も鎮圧に動かねばならない。その後どうなるかはお分かりになるだろう?」


鎮圧と言いつつスラム壊滅待ったなしになるだろうなー。

それに気付いてモルジアナさんは押し黙った。


「どうやらまだ納得出来てない御様子。ならば賭けをせんか?」


「賭け?」


「模擬戦だ。その模擬戦でモルジアナ殿が勝てばこの2人の扱いはモルジアナ殿に一任する。こちらが勝てばこの2人の処遇は我々が決めるし、2人には公務の妨害の責を取ってもらう」


「負けた時に不利じゃない!……良いわ。どうせ私が勝つ。方法は?実際に戦っても良いけど」


「方法はお互いの機体をリンクさせてのシミュレーター。戦うのはこの2人。そちらも2人で来るといい」


「ふーん」


「だが、2人が使用している機体は本来使用していた機体とは違う」


「あら?ハンデかしら?それぐらいは…」


「逆だ。本気でこい。言い訳をされても困るからな」


おいこらおっさん。


「……秒で潰す」


あーもー怒らせちゃったよーもー。






てー事で急遽あたいと姉貴のコクピットシートを交換、細かい調整を施す。


「いけるな」


「そらいけっけどよー」


「機体内部ならサポートが効くからな。2人を引き込めると踏んだ」


「丸投げじゃんよー。で?あのチビっ子共はどーすんのよ」


モニターで外を見ると整備班に押さえられてるな、あの兄妹。


「そこは気にしなくていい。今すぐには無理だが晩には丸く収まる」


ホントかよ。

じゃーやってみますかー。


「動力ON各種機体チェック…OK、姉貴」


『こっちもOKだ』


「グランドロア」


『何時でも……シミュレーターなのでいじれますが?』


マジで?


「例えば?」


『うちに乗れます。中尉はまだ新機体が無いのでフレスベルクになりますが』


「中佐!」


「君達の本来の機体か……興味あるな。彼女等には悪いが……」


「本気でこいって言ったの中佐だし、向こうは自身の機体だろ?これならハンデ無くなっから……あ、操縦方法」


『うちが脳波を受け取って機体を動かすので思いっきり妄想垂れ流してくださいな』


妄想て。


『ま、やってみようぜ』


「ああ、吠え面かかせてやろうぜ」


中佐にハッチを閉めてもらいシミュレートスタートだ!

場所は……宇宙かよ。

機体はグランドロアになってんな……おっ!モーリアン装備かよ!

動作は……思った通り動くぜ!


『悪いわね!私達の機体は宇宙でもいけるのよ!』


モルジアナが叫んでるが、こっちもそ~なんだよな〜。

さてさて?そのモルジアナの機体はどんなんかなー……はあ?

キラッキラに輝く赤の機体は、ツインテ美少女だった件。


「姉貴……あの機体は」


『もしかしてジーナと同郷か?後ろのメイドもそうなのか』


モルジアナ機の後ろに付いてきているのは本人そっくりなメイドな機体。

見た感じ両脚部に付いてるのはキャノンか?いや……なーんか違う気がする。


「姉貴、どっちとやる?」


『お姉ちゃん対決といきたいが……派手なのは接近戦用みたいだから任せた。フレスベルクじゃ近付かれると不利だ』


「了解。全距離対応のグランドロアでお相手差し上げますわ」


『んだよその口調は』


笑いながら姉貴が飛行形態でメイサ機に攻撃を仕掛けた。


『ってはぁ!?あんた達機体が違うじゃないのよ!?小鳥みたいなのと重装タイプってどう言う事よ!?メイサ!?』


『速い!?』


驚いてる驚いてる。

ピアースONキャバリーほどじゃないがフレスベルクもかなり速いからなー。

じゃ、そろそろネタばらしすっか。


「驚いてる暇は無ぇぜ、お姉ちゃん!!ホーミングブラスター!!」


『えっ!?ちょ!あんた……って、えぇぇぇぇぇ!!』


10本のホーミングビームが多角的に飛来するも、モルジアナは躱す躱す。

端から見ると踊ってるみてーだ。

余計な武装や装甲が無く、大型ブースターやスラスターを装備してるから身軽かつ突進力に優れてるんだな。


『この!ホーミングごとき!!』


あんだけの数のホーミングを踊るように躱し切るってすげーが。

グランドロア相手に近〜中距離にいるんは悪手なんよ。


「マルチミサイル!」


両肩からアホみたいな数のミサイルがモルジアナ機に向かっていく。


「ついでのランサーマグナム!」


手首を折ってごんぶとビーム発射!


『今度はミサイル!?だけじゃない!?』


モルジアナ機が腰部にマウントしてたんだろう小銃を取り出しランサー避けながらミサイルを撃ち落としていく。

良い腕だ。


「おいおい、1発ぐらい当たってくれよ、お姉ちゃん?」


『あ、あんた……!』


「割りとハードモードだったんだが……」


じゃ、次はこれで。


「ベリーハードだ!近付く事が出来たら次はルナティックだ!マルチミサイル!ホーミングブラスター!ランサーマグナム!あーんど…」


今までのを全ブッパしつつ。


『出力50でOK?』


「100はルナティック過ぎるからなー。チャージ!」


『何時でも』


「あいよ!おら!躱してみろよお姉ちゃん!!出力50パーの……ガイアブラスタァァァァァァァァ!!」


機体の半分ぐらいの太さのビームが回避中のモルジアナ機に放たれる。

色んなゴミやらなんやらを破壊しながら伸びてくビーム……50でも十分ヤベーわ。

流石に消し飛んだか?


『まだまだぁ!!』


うおっ!?ビームん中から飛び出してきた!!耐えただと!?


『この距離ならぁ!!』


さっきの小銃、大型ナイフついてんのかよ!

やっべ!


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補足


グランドロア制御のシミュレーター

本来、各機体に備わっているシミュレーターはその機体のスペックを活かした物を使用するのだが、監視されている事を事前に把握していた為、監視カメラ等セキュリティをハッキングしていたグランドロアが記録していたデータを元に、データ的に再現したシミュレーターであり地上でのデータが少ない(経験が無い)為に宇宙での戦闘となった。

本来なら処理しきれないほどの情報量だが、グランドロア自身が簡易の分身体を作成、シミュレーターを通して無数に拡散し、並列思考(のようなもの)として処理を行っていた。

当然、いくら情報処理自体は分身体が行うとしても分析結果や状況報告を処理するのはグランドロアである為、後日「頭痛が痛い」と言い出すはめになる。

類似品に「スライム分裂体」等がある。


※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)夜空すら、踊り子すらも斬り裂いた彗星は、多くの者達に己の存在価値を示す。

戦ってる場が違うのだ、倒すべき相手が違うのだと。

次回「勧誘」

天使が舞うのは何時だって地獄。

(ちゃんらーちゃん!)


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&70000PV突破感謝なのだ!

ストックがもう無いから毎日更新は出来なくなってるのだ……出来次第上げるのでまったり待っててもらえると有り難いのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

トニー君用の機体「グーテン・モルゲン」出来たのだ!良かったら見てくださいなのだ!


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