8-9 スラム

何か体が疼いたのかトニーとヘンリー少尉が組手始めたのを尻目に、近くの廃材の上に2人で座る。


「ケイトは強いわね?久々に負けたわ」


「師匠達が良いんでね」


「達?だから複合的な動きだったのね……基本は何?」


「基本はストリート。そこに武術とプロレスとCQC」


だけじゃないがな?


「プロレス?最後の丸め込まれたヤツ?」


「そっそ。プロレスは基本パワーで投げ飛ばすけど、さっきみたいな速度と体重移動を利用したのもある」


「面白いわね……足の上で側転したのは武術かしら?」


「ありゃ曲芸だ。武術に近いが。武術は中に入り込む時の足捌きだなー」


「本当に世界は広いわ……本気じゃなかったわよね?」


「まーなー。あたいが本気だったら最初の蹴りを肘で砕いて体制崩れたとこで内臓か顔面砕いてる」


「こっわ!」


「これでも姉貴に負けたんだよなースタミナ切れの判定負けで」


あん時そこそこ本気だったんだがな……。

姉貴返してくるから……。


「なかなか強いお姉さんね……」


「それでもリックには勝てねぇ……あ、リックってのは同僚で師匠達ぐらいしか相手に出来ないぐらい強い。あたいと姉貴2人掛かりで立ち合った段階で負けたわ」


「それほんとに人間?」


「一応な?」


「貴女も別次元からの転移者よね?」


「ジーナもそうだよな?使ってる機体が見た事無え系統だしよ」


基本的なフレーム構造が違いすぎるんだよな。

女性が乗る事を意識して作られたにしてはまんま過ぎる。

それにコクピットブロック何処にあんだ!?


「……動きにくそうだな」


「そこは機密で」


だろうなー。

突っ込みゃしねーが。


「でもまぁ、自分の機体があるだけマシ。あたいと姉貴なんか輸送機に乗っててだぜ?」


「パイロットなのね。じゃあ、今は?」


「政府の発掘品がめる予定。今日はテストだから戻らにゃ怪しまれる」


「政府の事は聞いてるわ。なかなかに独裁政権よね」


「おかげで末端まで腐ってら」


一整備士共が調子こいてるみてーだしな。

戻ったらあいつ等どうしてやろうか?


「ま、戻ってもうちょい調べたらこっちに協力するさ」


その方が鉄錆団としても都合が良いと思うし。

それに、帰還方法も探さにゃならんしさ。


「ケイトー、そろそろ戻るぞー」


おっと、姉貴が呼びに来た。

と、その後ろで幽霊みたいになってんの主人公君…確かリューとか言ったか?しぼられたなー。


「おっ、新顔さんかい?」


「姉貴、こっちはジーナ。あたい等と同じ転移者だ。ジーナ、こっちが姉貴の方のケイト」


「驚いた、双子だったのね……ジーナよ」


「正確には三つ子か?ケイトだ。2人一緒の時は中尉か妹の事をケイティって呼んでくれ」


「中尉……あたしで軍曹なのに凄いわね。ジーナよ。よろしく」


「それ言ったら妹はわずか数カ月で少尉だぜ?こっちが凄い」


「数カ月で少尉!勝てない訳だわ……」


やめて、恥ずい。

本来ならそうポコポコ階級なんて上がんねーっての。


「んで?そっちの彼は?」


「リューってんだ。ちょいとばかり疲れてるが向上心はパネェからケイトも今度手合わせしてやってくれ」


それはちょっと可哀想な気がするんだが?


「で?そっちのアホ共は何やってんだ?」


振り向くとヘンリー少尉とトニーがクロスカウンターでダブルKOしてた。

アホか。






「では帰還しよう。計画については帰りながら話す」


「了解」


機体に乗り込み帰路へと着く。

トニーにはデータで設計図渡しといたから、次に会う時に鉄錆団仕様のデミバ……じゃねーグーテン・モルゲンが完成してるだろう。

ついでにクルツ団長やアンジュ副団長、リュー君の機体データからの正しい運用方法と改善点も渡しといた。

勝手な事をと思われただろうが、フルクロスの性能を活かしきれてないのは勿体無い。

多分、団長自身も細々とした隠し武器を把握出来てないんだろうな。

アンジュ副団長の機体自体は問題無いが、過去の運用データで活かしきれてないのがわかったからな。

長距離用のキャノン持ってて真っ先に突っ込むのは意味ねーだろ。先ず撃てよ。ディープアームズの名が泣くぜ。

リュー君の機体は意外なとこにある武器を彼が使いこなせてない。

その使い方は次回に持ち越しだから、地力を鍛えるように言っといた。

他にも今回出会わなかったテリーって言う奴も居るらしいので、そいつは次回だな。

ジーナの場合、どう動くのかまだ見てないが、機体見せてもらった感じ中〜遠距離支援型みたいだし、腕は良さそうだから特に言う事無いかな?代わりにトニーの機体組みを見てやってもらう事にした。


「それで計画は?」


「うむ。簡単にだが、他のレジスタンスと連携を取ってアロガントを包囲、同時に内部にいる我々が蜂起する予定だ」


「タイミングが肝か……あと連携。裏切られた時が問題か」


「そこは信じるしか無いな」


調べるたって限界あるし、土壇場で情勢が悪いからって寝返る事もあるからな。

てー事で戻ってきた訳だが……このままだと処置(洗脳)済みの兵達の部屋(牢獄とも言う)に入れられそうだったので、中佐の言う事以外はガン無視。

こっちの博士が「調整器の故障か?」とか言ってたが、な訳無ぇし知った事か。

んで、バンマス中佐が手続きの為にヘンリーにあたい等を任せ離れたが……ここぞとばかりに遠巻きにこっち見てる整備士3人ウザいからどうすっか?

ヘンリー少尉が睨み効かしてんのによー。

せや!

姉貴にこっそり近付き小声で呟く。


(姉貴、あのアホ3人の足元に砂鉄集めれる?)

(何する気だ?ちょっと待ってろ……)


相変わらず発動が分からないが、地面を見るとゆっくりとだが奴等の足元に黒い砂鉄が集まっていく。

そろそろ良いかな?

右手を隠して………発動!


「「「フゴッペッ!」」」


「なんだ!?」


「おい!三馬鹿がケツ押さえて倒れたぞ!」


「ぷぷっ」


「ほっとけ、医務室には自分達でいけんだろ?」


「ざまぁ」


あら〜、誰も助けようとしないでやんの。

日頃から嫌われてたのね。


(お前何した?)

(文字通り鉛玉をぶち込んでやったんよ、ケツにな?)


多分だがあいつ等、洗脳された兵達に手ぇ出してた筈だ……エロ同人みてぇに。

たまにはてめえ等が掘られろってんだ。

しかし、大分慣れてきたな術式。

今みたいに鉄も元は鉱石って考えてやってみたが、思った以上に動いてくれた。

直感だが、めちゃくちゃ消耗する代わりに相手の機体にも作用させられそうだ。

今度試そ。

とか言ってる間にバンマス中佐が手続きを終えて戻ってきた。


「さて、君達を私名義で専属の部下として扱えるようになったのだが、1つ見ておいてもらいたい場所がある」


と言ってバンマス中佐があたい等を連れてきた場所は中央政府の地下。


「今から演技をするが、本心ではないので留意してくれ。ヘンリー少尉も冷静にな」


「ハッ!」


演技ねえ。

監視対策なんだろうな。

何処で誰が見てるか分かんねぇからな。

地下の施設から1歩外へ踏み出すと現れたのはほとんど光の刺さない荒れた都市。

まるでと言うより完全にスラムだ。

人は……蹲ってるのがちらほら。

それよか物陰で隙を覗ってるのが多いな。


「これより反乱分子が居ないかどうかの視察を行う!!」


わざと大声で言うって事は遠回しに隠れとけって言ってるようなもんだな………どうにも伝わってない気がするが。

敵意ダダ漏れじゃねーか。

振動感知使うまでも無く此処に居ますよって言ってんじゃん。

こりゃ反乱起きても常に先読みして行動してる大統領にあっさり潰されるな。

と、そん時によっぼよぼのボロを纏った爺さんがフラフラと近付いてきた。


「おねげぇします……どうかお恵みを……」


「配給日は今日では無い。どけ」


「どうか…どうか…」


爺さんが中佐にしがみつく……へえ。

ヘンリー少尉が慌てて爺さんを引き剥がす。

うーん……見てらんないな。

あたいはそっと引き剥がされ倒れた爺さんの顔を覗き込むように近付く。


(変装するならもっとディテールに拘れよ。そんな綺麗なおててした浮浪者が居るかよ)


「!…あんた…」


バレバレだっつーの。

中佐子飼いの調査員なんだろうが、FBIやCIAの方がもっと上手いし、下手すりゃ動画配信者の方が上手いまであるぞ。

ま、事情を知らないであろう周りに隠れてる奴等は気付いて無いがな。

多分ヘンリー少尉も気付いて無いな。


「何をしている。行くぞ」


へいへいっと。


————————————————————

その頃のエンハンブレ


カリン「召喚術式ならある」


サユリ「あるんですか!?」


カリン「転移はその応用。ただ、どっちも難しい。不可能と言っても過言じゃない」


サユリ「でも出来るんですよね?」


カリン「簡単に言うと召喚は大雑把。この人を〜とかは無理。人だったら人。生物なら犬とか猫とか。転移は目に見えてる所か知ってる場所だけ」


サユリ「異世界……別の世界とかは?」


カリン「う〜ん……場所を指定しなければワンチャン?サユリなら分かるんじゃ?」


サユリ「………専門外なので」


カリン「じゃあ専門家に聞けば?居るんでしょ?」


サユリ「まぁ……でも距離が。アステロイドベルトを越えないといけませんし、それに……」


カリン「ピアースやキャバリー使えば大丈夫。それに虫が寄ってきてもデータ取れる」


サユリ「死んでこいって言ってません!?」


※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)抗う術を持つ者達が鋼の巨人を操る時、そこに生まれるのは敵愾心かそれとも反骨心か。

戦場を踊る姉妹とイカれた天使達。

共に争い合うのは必然なのか、それとも何者かの思惑なのか。

次回「模擬戦〜シミュレーター〜」

踊り子達よ、この天使達はやばい。

(ちゃんらーちゃん!)


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&70000PV突破感謝なのだ!

ストックがもう無いから毎日更新は出来なくなってるのだ……出来次第上げるのでまったり待っててもらえると有り難いのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

某2サイトにて鉄錆の世界での機体を上げてるのだ!良かったら見てくださいなのだ!

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