8-8 放浪者

「おーし、そこのブースター引っ張り出してー。それ肩パーツだから」


「マジっすか!ロケットのジャンクだと思ってたぜ……」


「動かしまーす」


何故かヘンリー少尉が重機動かしてるが、操縦訓練代わりなんだろう。

最初はトニー君がやろうとしてたんだがな。

ともあれ、粗方掘り出せたかなー。

ズラリと並ぶスクラップもといジャンク品。


『バックパックとの有線ケーブルが切れてますね』


「マジか!?あー……切れた配線の頑丈な繋げ方どうやるんだったかな……」


「あ、この複雑なヤツっすね?コレとコレが一緒だから、両方バラして絡ませて……」


うお、すげー!

切れてなかったみてーに繋がった!


「後は軽くハンダ付けて……ビニテでぐるぐるーっと。出来たっす」


「上手いな。機体丸ごと組んだだけはある」


「アザッス!」


トニー君、トニーの名に恥じない技術力!

彼ならネタ教えるだけで作れんじゃね?

ジェラルミンに入った鋼鉄スーツ。


「後はシリンダー直したりして組み上げだな」


「そこはなんとかしてみるっすよ」


「経験あるもんな?粗方の設計図やらなんやらをそっちの端末に送っとく。グランドロア」


『はいな。MAと大差無いんで10分後には設計図送れまっす』


流石の速さ。

サブとは言えグランドロアがいるからちゃっちゃか進んでるが、いなかったらハードモードだったぜ。


「それで…組み上げ終わったら機体名を決めないといけませんね」


「ん?あぁ、コイツはデミバ…」


「グーテン・モルゲンっすね!」


は?


「いや……え?なんで?」


「響きが良いっすから!」


「意味わかって言ってる?」


「知らねっすね!」


「知らねえのかよ!でもなして?」


「前に旧文明の書籍で響きが良かったんで!」


Oh……マジかー。

まぁ、本人が良いなら良いけどさ。


「ケイトさん、その、意味は?」


ヘンリー少尉がコソッと聞いてきた。


「意味は…「おはようございます」だ」


「……なんとも彼らしいですね……じゃあ、彼が組み上げたグーテン・タークは……」


「「こんにちわ」だ」


トニー、後々見つけた機体全部挨拶とかになりそう。


「あ、帰ってきた」


トニーの声に振り向くと、1台の機体が。

なんだぁあの機体。

ポニテの美少女な機体だな……。

プラモでもそんな機体見た事あるが……実物見ると関節部とかの強度どうなってんだか。


「トニー、あの機体は?」


「最近やってきた奴で、詳しくは知らねーんすよ」


ふーん、とか見てるとハンガーに格納してパイロットが降りてきた。

機体と同じく黒のポニテのクールビューティーで、ボロマントで隠してるがピッチリスーツを着てる。

割りとスレンダーな彼女がこっちに気づいてやってきた。


「何時から鉄錆団ここは幼稚園になったのかしら」


「ちょ、ジーナさん!?」


これはご挨拶だなぁ。

その流儀で返してやるか。


「ここは託児所でも、ましてやジュニアハイスクールでもねぇんだ。中学生は怪我する前にお家に帰んな」


「……喧嘩を売ってるのかしら?」


「最初に安売りしたのはそっちだろ?セール品はお買い得だからな。買える時に買っとかねぇとな?」


「そう、ならサービスしてあげるわ!」


言うなりちょいステップからのローキック!

しかしリックのローより断然!


「おっそ」


伸びた美脚(笑)を平均台に見立てて側転しての浴びせ蹴りーっと。


「…!このっ!」


おっと足首掴まれーた。

咄嗟の判断で足首掴むか……いいね。

けどな……そのまま反対側の地面に叩き付けようとしてきたけど、そりゃ悪手だわ。


「そい」


「ガッ……!」


掴まれていない反対側の足で顔面を踏みつけ。引っ張る自身の力がそのままスタンプの威力に加算される。

顔面蹴り抜いた事で足から手が離れ自由になったので、体を捻って着地。


「…っと。今の叩き付けするなら大きく円を描くか捻りつつ真下に落とさなきゃ。今みたいにカウンター食らうぜー?」


「………良い勉強になったわ……ならこれはどう!?」


思っきり蹴り上げてきたな。

体を撚るだけで避けれるが……おう、やっぱ蹴り上げで意表を突いた(つもり)の踵落とし。

けどな?


「ほい」


「え?」


それ、動けない相手にするヤツなんよ。

前にダッシュで彼女が羽織ってるマントに突っ込めー。


「何処に……」


後ろに振り向いてもそこにあたいは居ませんよ?

マントの中だし。

さて………。


「お尻ペンペンだ」


「え……きゃん!」


ペチーンと叩くと驚いて飛び上がったよ。

更に纏わりついてペチーン。

ついでに脚にしがみついて一緒に移動。

もいっちょペチーン。

更にペチーン。

オマケのペチーン。

トドメのペチーン。

と、流石に手でガード仕出したから、股の下潜ってぴょーんと飛び出す。

ちょーど掴みやすいとこに頭が。


「……あ」


「どもー……よっと」


前から肩に乗っかると足で首を引っ掛けて全力のバク転!地面に叩き付けるのではなく、丸め込む!


「ウラカン・ラナ・インペルティダ!」


叩き付けはフランケンシュタイナーな?

あたいは彼女の両肩を両足で挟み込んでそのまま座る。

動けねーんだよなーこれ。


「……負けた。完敗ね」


「スゲー!!」


「凄いな……」


「いやいや、あたいより強い奴5人は浮かぶぜ」


リックだろ、姉貴だろ、リー先生だろ、ドボルグおじさんだろ、マリアさんだろ、カリンさんだろ、マキナさんだろ、艦長だろ……。


「すまん、8人だったわ」


「居すぎでしょ!?」


しゃーないて。

他にも居るかも知れんが。

あたいはよっこいしょと拘束を解いて立ち上がり手を差し出す。


「ケイト・アーカイブ」


「ジーナ・トウドウよ」


差し出した手をお互い軽く握って握手っと。

此処に来て面白い奴と出会えたぜ。


————————————————————

補足


中央政府以外の発掘兵器

ケイト達が居る惑星ルストには、過去の大戦における大量の兵器が埋まっている。

その兵器群は、現在の技術力では作る事ができず発掘されたパーツを組み合わせて作成されており、中央政府以外は有り合わせで組み上げた機体を使用している。

しかし、そうした中でも稀に機体丸ごと発掘される事があり、それ等を所有するジャンク屋は機体所有数が質と腕が良いジャンク屋として扱われる。

その中でも鉄錆団は完品の多さ、再生品の多さが他社よりも多く、消失数が多く貴重品となっている旋盤等の工作機器も一通り保有している為、ジャンク屋界隈では大手とされている。


※(ちゃーらーらーらっらーちゃーららっらーらー)食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。

光刺さぬ奈落の底で、押し込められたあらゆる悪徳が煮詰まる地下の街。

ここは独裁政権が産み落とし押し込めた都市アロガントのスラム。

ケイトの躰に染みついた硝煙の臭いに惹かれて、危険な奴らが集まってくる。

次回「スラム」

ケイトが頼んだコーヒーは薄い。

(ちゃんらーちゃん!)


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座います&70000PV突破感謝なのだ!

ストックがもう無いから毎日更新は出来なくなってるのだ……出来次第上げるのでまったり待っててもらえると有り難いのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

某2サイトにて鉄錆の世界での機体を上げてるのだ!良かったら見てくださいなのだ!

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