1-3 起動!グランシード
少し前
「御託はいい!!説明しろー!!!」
突然現れた全裸の幼女に一瞬博士が固まった。
「な、なんじゃお主!?いつからそこにおった!?てか服ぅ!!」
「んなこたぁどうでもいいんだよ!何が起きてる!」
『5番隊前に出すぎるな!は?何でお前がそこに居るんだ!?……おい爺さん!』
ブリッジと繋ぎっぱなしだった為、艦長も一瞬己が目を疑った。
「いいから状況を説明しろー!!!」
状況説明を求める幼女に面倒臭さを感じた艦長はすかさず博士に投げる事にした。
『爺さんそっちは任せた!!』
「投げるな若造!」
全裸でふんぞり返る幼女に対してこっちが状況説明を求めたかったが、有無を言わせない雰囲気に博士は諦めた。
「………ったく、いいか「何でも屋」。今ワシ等は海賊共に囲まれとる。使っとる兵装自体はこっちが上じゃが、数が違いすぎる。向こうは落とす気は無いようじゃがな。捕まったら何される事かわからん」
「あ?「何でも屋」ってんだそりゃ?……ともかく、擦り潰されるってか?」
「このままでわな。せめてアレが使えれば何とかなるんじゃが………」
博士が格納庫の奥に目を向ける。
シートで覆われているが、モニター越しに見える他の機体よりも一回り大きく、別物にみえた。
「……他と毛色が違うな。爺さんありゃなんだ?出さないのか?」
「乗り手がおらん。ワシが1から造ったのじゃが、操縦系統が特殊でな。皆感覚がついてこれんでな。慣れれば行けそうな奴もおったが、育つ前に今の状況になった」
「どんな操縦系統なんだ?」
「ハッ!聞いて驚け!ワシが造った操縦系統は「ズブの素人」でも手足を動かす感覚で操れるコクピット、ダイレクトモーショントレースコントロールユニット通称「DMC」じゃ!!!」
「何か悪魔が泣きそうな名前だな………それってつまり、操縦桿とか火気管制装置とかの扱い方を覚えたり考えなくていいと?」
「そうじゃ!乗り手がブドーの達人なら機体も強くなるんじゃ!!」
ふむ、と幼女が少し考える。
「武器や武装の切り替えとかは?」
「そこはシステムに組み込んだマインドスキャンにするか音声認識で声に出す事にするかで迷っとる。まぁ、パイロットに合わせるつもりで両方積んどるがな」
「………てぇ事は、どっちかなら直ぐに使えるって事だな?」
「両方イケるぞ………お、お前さん、まさか乗る気か!?」
「有るんだったら使わない手はねぇだろ?それとも爺さんは折角造った傑作機を
言いながら幼女は機体に向かっていく。
「メガネくんじゃと!?リックの事か!若造がどうかしたのか!?」
「あー……ハッチのスイッチはっと……あ?メガネくんなら今キンキンに冷えてる……あ、あったあった」
機体横のスイッチが押されハッチが開き、幼女が中に入る。
「へー、割りと広いなー此処に足乗っけんのか?」
「冷えとるってどう言うこっちゃ!?」
博士の問いを無視し幼女は空気椅子の形をしたペラペラな紙人形みたいな物に腰を掛ける。
「冷た!うぅ…シートも冷えてやがる………ん?……んー!んー!…………届かねぇ……手も足も届かねぇぞ!おいジジイ!」
「むぅ…リックの事といい艦内にいた事といい「何でも屋」では無く救助者の方か?ならば…短い手足で何をジタバタと……あーもー!!火を入れて機動させるから黙っとれ!」
座った人形に博士が手を伸ばし腰の辺りのスイッチを押すと、軽い駆動音と同時に照明がつき明るくなり、幼女の目の前に小さなモニターが天井から降りてくる。
「本来なら正規パイロットにしかさせんがこの際じゃ!画面に従ってパイロット登録をしてくれ!それが終われば勝手にサイズ調整してくれる!!」
「マジで?オーケーオーケー……で、これ、タッチパネルだよな?」
「当たり前じゃろうが!!」
「時代確認しただけだろうが!………と、終わったぜ!」
自身のが座ったまま操作できる様にモニターを一度シートから降りて引き寄せ、打ち込んでいく。
打ち込まれたデータを元に幼女がスキャンされ、登録が終わりシートが幼女の体型に大きさを合わせる。
「何か調子が狂いよるな……限界ギリギリじゃな。「何でも屋」……じゃないのう、お前さん年はいくつなんじゃ?」
「あ?18歳だが?」
「はぁ?やはり公式と違う……ふむ、じゃがの、どう見てもはっさ」
「チビで悪かったなあ!!!」
「お、おおぅ……すまん………何じゃ?地球の科学文明には不老不死の研究も含まれとったんか?」
「何か言ったか!?」
「いや別に」
起動シーケンスが終了すると、幼女の目に光が当てられる。
「うおっ!眩しっ!?」
「我慢せい。網膜投射でシステムと眼球の動きをリンクさせとるんじゃ」
「う~………ロックオンの仕方は?」
「基本は思考制御じゃが、サブとしてどっちがいい?視線ロックオンと音声認識と」
「ん~…………両方だな。「ロック」の音声の後に視線でロックオン。「ファイア」で発射とか?」
「ちょい待っとれ」
博士がモニターパネルの裏からキーボードをスライドさせ打ち込んでいく。
「プログラムを打つ時はこっちの方が速いんじゃ」
「キーボードあんのかよ。しかし、そこら辺は変わんねぇなぁ」
博士は打ち込み終わると外へと出てコクピットハッチを閉める。
一瞬真っ暗になるが、システムが切り替わり視界が機体目線の視界になる。
『これで一通り終了じゃ!後は任せるがパイロットスーツを着とらんからな!墜とされるなよ!!即死するぞ!!!』
「あいよ!……網膜投射ディスプレイか。そりゃ酔うわな。」
視界の端に艦長と呼ばれてた男性が写る。
ついでに博士も。
『艦長!!機体を出すぞ!!!』
『はぁ!?囲まれて身動き取れねぇって時に何言ってん…おまっ!!マジで行けんのか!?』
「当たり前だ!!そんな事より出るぞ!」
『現在使える武装は内蔵武器だけじゃ!音声認識で確認できるから今の内に確認しておけ!そんなに弾も無いからな!』
「あいよ!武装チェック……ほーん。おい、偉そうなおっさん!」
『艦長だ!って、今更何言って……』
「今この艦を囲んでる敵の位置を送ってくれ。出ましたが位置がわかりませんじゃ、話にならねぇ」
『はあ?何とかなるってのか?てかお前はどっから通信してんだ?』
「格納庫にあった機体」
『あの「置き物」か!?予備機じゃなくて?動かせるのか!?』
「いいから速くデータをくれー」
催促する様に幼女が手を動かすと外の博士が慌てる。
『こりゃ!動くな!手をバタつかせるな!』
「あ、悪りぃ。あたいが動くと機体も動くの忘れてた」
『マジで動かせるのか……よし!データを送った!4番ドックのハッチ開け!緊急発進を許可する!行けるな?』
「おうよ!早速出るぜ!!」
よっこらしょと立ち上がり(正確にはシートが座位から立位に変わった)、軽く伸びをすると機体も同じ様に動く。
『お、おお!スムーズに動いとる!ここまでスムーズに動かせた人間はお主が初めてじゃぞ!!流石「何でも屋」!』
「だから何なんだ「何でも屋」って……ま、いっか、そいつぁどーも………重量級だからか、ちょいと重いな………」
開きつつあるハッチへ向かって動こうとすると艦長から待ったがかかる。
『ハッチが開いたらカタパルトに乗れ!そんで出る時に所属はともかく機体名と誰が行くか言え!寝ぼけてんのか!?』
「おっと、お約束だな。爺さん、コイツの名前は……いや、いい。コイツ自身が教えてくれたぜ」
思考制御の為か、視界の端に機体の詳細データが現れた。
「思考に対する反応がはえーな……じーさんよ!どうやらコイツに気に入られたみたいだぜ!!………ま、よろしくな」
その瞬間、少しだけ機体が軽くなった様に感じ、幼女がニヤリと笑みを浮かべた。
完全に開いたハッチの前に立つと、ハッチ横のランプが赤く点灯すると今度はオペレーターらしい女性が端に浮かぶ。
『カタパルト開放完了。発進シークエンススタンバイ。オペレーターのミレイです。お話は聞いてました。貴女に託します……発進シークエンスクリア、進路オールグリーン。発進どうぞ!』
ランプが緑に変わり、機体の単眼のセンサーアイが意思を持つかの様にブンッと光る。
「任せろ!!ケイト・アーカイブ!!グランシード、出る!!!」
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補足
DMC
DMC(ダイレクトモーショントレースコントロールユニット)とは博士が作成した「ズブの素人」でも手足を動かす感覚で操れるコクピットで、機体に搭載されている学習型AIがパイロットの思考を読み取り行動を反映させるシステムで、複雑な操縦技術や機体制御を必要としないコクピットである。
従来のコクピットは航空機に近く、長期間の訓練が必要である。
これには戦闘機パイロットの養成も兼ねているため、MAパイロットになれなくても航空支援のパイロットにもなれる為、人員の確保にもなるが、流石に時間がかかる。
博士はそれを憂い、「誰でも扱える物を」を目指し開発に着手した。
が、プログラムだけでなくコクピットその物も一から作成しなければならない為、莫大な費用がかかっており、グランシード用と予備の二つしか作成できていない。
博士が安直に「ダイレクトに動きをトレースするコクピット、いやコントロールユニットで良いか」と適当に
Direct
MotionTrace
Controlunit
の頭文字から命名。
※2話連続投稿って言ったな?アレは嘘だ。
やっとまともに名前と機体名が出たのだ。
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