7-3 プロレス

リングに上がったドボルグおじさんが上着を脱ぐと、パンプアップされた肉体と、左肩から胸にかけて彫られたタトゥが顕になる。


「おい森の熊さん。お前は何の為に戦う?」


おじさんがビシッと熊さんを指差し問う。

こ、これは!


「あ〜ん?」


「何の、為に、戦うかと、聞いている!」


「来るぞ来るぞ来るぞ!!」


「ケイト、何が来るって?」


姉貴が何か言ってるが今は無視!

艦長達も「どうした?」って顔で見てくるが無視だ!

ちなみにサユリは苦笑いな。


「俺は軍人だ。軍人だから戦ってんだ」


「そうか………だが!!」


おじさんが目を閉じ天を仰ぐ。

そして目を見開き全霊を持って叫ぶ!!


「「It doesn't貴様の考 matter whatえなど関 you think係なし!」」


「イヤッフゥゥゥゥー!!」


おじさんのマイクパフォーマンスにハモれたぜぇぇぇ!!


「てめえ!」


「おっと熊さん、左のストレートを繰り出した!

しかしおじさんの右手に受け止められた!

熊さん、焦って右のアッパー!

しかしこれも浅い!またもおじさんに止められた!」


「ついに実況しだしたよ」


「艦長、諦めろ。さて、実況ってんなら俺とリックの出番かな?」


「だろうね。あ、リー先生、僕等はプロレスは分からないんで解説をお願いしたいのですが」


「僕もそこまで詳しい訳ではないのだけれどね」




※表記変更再びなのだ!


ケ「さあ、両腕が塞がったこの状況、熊さんはどう動く!?」


姉「普通なら蹴りを出す場面だが」


リ「これは多分無理だね」


姉「と言うと?」


リ「完全に押さえ込まれてる」


先生「いい読みだ。彼の腕力、いや、握力はギネス…全地球人類のトップの記録なのだが、現役時代に当時のトップと同数値を出している」


リ「その数値は?」


先「192kg」


姉「それは本当に人間種か?」


ケ「さあ熊さん動けない!体が沈んでいく!体が地面に着きそうだ!ここでザ・ラックが手を離す!熊さん思わず両手を庇った!」


リ「あれは手が使い物にならないだろうね」


ケ「ラックが両手を合わせ天に掲げ………熊さんの背中に叩き付ける!!ダブル・スレッジ・ハンマーだ!!」


先「あれは痛そうだ」


ケ「失礼、叩き付けるのに軽くジャンプしてんのは?凄え音してるけど、大半マットの音じゃ?」


先「聞かせているんだよ、俺のナックルは痛いんだぞと。僕達にね」


リ「僕達ですか」


先「あくまでもショーだからね。殺し合いでもケンカでもないんだ。もう直ぐわかる」


ケ「おっと?ラック、叩き付けるのを止め後ろに下がり…「立て!」とアピール!熊さん顔を歪めながらも立ち上がったー!」


先「いいファイトスピリッツだ」


ケ「そしてラック、自分の胸を叩き打ってこいとアピール!戸惑いながらも熊さんパンチを繰り出す!……が、ラック、片眉を上げて「効いてないぞ」と指を振る!熊さん怒りのラッシュ!1発!2発!3発!4発!5発!渾身の力を込めたー……6発目!しかし、ラック、1歩下がっただけ!」


リ「なるほど、確かにショーだ。ケンカや戦場でわざわざ相手の攻撃を受ける必要は無いからね」


先「プロレスは自身も相手も全て出し切り出し切らせ、その上で自身が勝つ。そこに熱さがある。それを見せる…魅せるのがプロレスさ」


ケ「効かない!全く効いてないぞとラック!そして次は俺の番だと次々と拳を繰り出した!」


先「ナックルパンチの連打か。そろそろ決める気だね」


ケ「そしてトドメと言わんばかりの張り手だ!!」


姉「マジか!あの熊さんがぶっ飛んだぞ!!」


先「立ち上がったけど意識とんだね。どっちがでるかな?」


ケ「ラック、熊さんの腕と首を極めた!出るぞ!必殺のー………ラック・ボトム!!サユリ!」


サ「ハイハイ」


姉「今、片手で熊さん持ち上げたのか!!」


リ「凄いパワーだ」


ケ「ラック、そのままホールド!」


サ「ワン!ツー!……スリー!!」


ケ「スリーカウント!決まったー!!勝者!ザ・ラァァァァァァァァァクッ!!!」


リ「押さえ込んでスリーカウントで決着……分かりやすいね」


先「厳密には背中が着いてないとダメなんだけどね。久しぶりに良い試合だった」



※表記戻りまー



おじさんはコーナーポストに駆け上がり、天高く拳を掲げた。

勝った時におじさんがよくやるポーズだ。

その姿に集まったギャラリーから怒号の様な歓声が上がる。

コーナー4つをフルに使いアピールすると、熊さんに近づき起こし、熊さんの腕を挙げて健闘を称える。

ギャラリーから熊さんにも惜しみない拍手が送られ試合は終了した。


「ナイスファイト!おじさん、どうだった?」


「信じられん。現役、いやそれ以上に調子が良い。ナノマシンの事は聞いていたが……これならショットも動けるんじゃないか?」


「確かに調子は良いが、肝心の体力がね。それに教官は他にいるだろう?」


「それに関しては問題ない。軍からの依頼で受けてる新兵の教育で手が回ってない。それに、うちのエリート達は癖が強い。教官役にもってこいなのは違う部分で忙しいからな」


と言って艦長はあたい等の方を見る。

色々やってる自覚あるけど、あたい等が?


「簡単に言うと実戦経験の差だ。特にMAが出てきてからというもの、操縦技術ばかりが注目されてCQCや撃ち合いは二の次だ。MAにだってそういった経験が活かされるのにな」


「そりゃ…確かにそうだ」


実際、MAでの行動も言ってしまえば生身でやってた事をMAでやってるだけだもんな。

個々の技術も必要だが、チームとしての連携とかが物を言うし。


「それに教官役を考えた場合、ダブルケイトは最高水準なのは分かる。が、見た目で舐めてくる奴等も多い。リックは教えるのは上手いが通常の操縦桿使えないだろ?そこで舐められる。年も近いしな。サユリは教官より技術者だ。それに今いる教官は純粋に数が足りん」


「そこで俺達って事か」


「地球で戦ってたのなら実戦経験は問題ないだろうし、役者なら教官のような役もあったのでは?」


「そこを突かれるとな」


「それより」


いきなりカリンさんがにゅっと割って入って来る。


「ビジネスしたい」


そう言うと思った。

頭に「?」を浮かべるおじさん達に説明しねぇとなー。


「ドボルグおじさん、カリンさんは今の試合を興業にしたいんだと。んで、その為の話し合いをしたいんだと」


カリンさんが首もげるんじゃ無いかってぐらい頷いてるから、間違ってないみたいだな。


「興業にか?」


「良いんじゃないか?宇宙でプロレス、異種格闘技戦。この部屋の熱気を見れば成功するだろう?」


あたい等は今こーして会話してるが、実は終了後からずっとクルー達が叫び倒しててうっさいんだよな。

中には火が着いたのかリング上でどつき合いやってる奴等もいたりする。

プロレスじゃなくてパンクラスになってんな。


「ルールを決めて浸透させないとな」


「別枠でパンクラスもやればいいんじゃないか?ボクシングもできそうだ」


パンクラスとかボクシングを聞いたカリンさんが「なにそれ!」って顔になって更に興奮しだした……むふーむふーって言ってるだけだけど。


「キックボクシングもできるな」


「スモーやカラテは難しいか?ジュードーも」


「ショットのクンフーとかは?」


「僕のは試合では使えない。演技と言うのもあるけど、技の性質上危険すぎる」


流石その道のプロ……次々興業に使える物が出てくる出てくる。

カリンさんが破裂しそうなくらい興奮しとる。


「別の所で話さないか?こっちのオファーも検討してもらいたいからな」


「そうだな」


「姉御は少し落ち着こうな?」


「むふー!むふー!むふー!」


カリンさん、地球での格闘技を説明しないと治まらんな、こりゃ。



————————————————————

補足


エンハンブレの訓練生の教育とダブルケイトの教官としての評価

現在、エンハンブレでは100人の訓練生に対し、教官役をしているクルーは実質1人しかおらず、負担が増している。

理由として、有り得ない数の海賊に囲まれた折に(対ヒートヘイズ戦)教官役の大半を撃墜された事、教官として厳しすぎる事で有名なマリア・アーカイブが嬉々としてシゴク事が挙げられる。

マリアが教官をした時は、現役の兵士達ですら音を上げる訓練内容をさも当然の様に盛り込む為、軍から預かる立場のグレッグはフォローに駆けずり回る事になる。

この事は訓練用資料として入手した地球製映像から「微笑みデブ量産事件」として知られ、要警戒事項として軍の方で軍の規約に「マリア・アーカイブに教官をさせない事」として載っている。

対してケイト姉は、マリアの教育と言う名のシゴキが日常だった為、訓練学校入学時から教官のシゴキが軽いジョギング程度でしかなく、そこで世間とのズレを学んだ。

入隊時には、その能力の高さから入隊即フェニックス隊に配属され、グレッグの指導もあり無理なく能力を向上させる教官として人気No.1教官になった(見た目含む)

一方ケイトは一般人だったが、ミ=ゴとの戦いの中、必死に戦う兵士達(+先生達)に憧れを懐き、事ある毎に全ての兵士達に教えを乞いに回った。

見た目の事もあり、兵士達から娘や妹の様に扱われ(一部違う奴もいたが)、結果、無理なく能力が向上、ベテラン兵士も舌を巻く実力をつけた。

その経験上、漸進性や超回復の理論で訓練生を指導(立場上雑談)する事があり、その内容もケイト姉とほぼ同じであった(更に弱点克服も指導する)。

この事を知ったグレッグは2人に教官を頼もうかと考えていたが、ドボルグとリーが加わった事で2人にオファーした。



※ドボルグおじさんもリー先生も生き残る為にアメリカ軍兵士から色々教わっているのだ!!でもケイトの方がヤバイぐらいに強くなったのだ!!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

RGゴット○ンダム作ってたら60000PV突破してた!感謝なのだ!

止まらない通知音に震えて眠ってるのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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