3-2 サユリの目的と共通の敵

「つまり艦長はおもしろコスプレ種族なのは分かったけどさ」


「いや言い方!?」


「それが姐御がスポンサーになってくれる件とどう繋がるんだ?」


知り合いのよしみってんなら一口噛むぐらいで、わざわざ軍やファクトリーを敵に回す事はしないはずなんだよな。


「それなんだけどさ……カリンさんは生き別れた弟さんを探してるんだよ。そしてその人の事は私が知ってる。何処に居るかもね。その為にも戦力が必要なの」


「ほーん。人探しなのは分かったが………なんで戦力が必要なんだ?」


「その場所、と言うかそこに行くには必ず行かなきゃいけない場所がある……地球よ」


「地球だって!?」


地球………謎の生物どもに攻め込まれ、あたい達が捨てなければならなくなった惑星。

反抗する者達がいなくなったあの星は、軍が3割の被害を一瞬で被り、誰も近付けなくなったあたい達の母星。


「そう………どうしてもそこに行かなきゃいけない。私の、私達の目的の為にもね?その為にも今ある技術、を量産しないと、できないと勝ち目は無いの」


「おい、ちょっと待て。その目的ってのはなんだ?地球の奪還か?それならエンハンブレウチじゃなく軍に行った方が速くねぇか?過去に救助された地球人と合流して、トップを説得できりゃあ可能だろ?」


艦長の言う通り、軍が一番可能性がある。

あたいだって地球を取り戻したい……が。

何だろ?サユリが言ってる事になんか違和感ってのか?そんなのを感じる。


「それは多分不可能です。救助されてから調べましたが、軍の今の技術では確実に負けますし、軍に協力を仰いだとしても……それに救助された他の地球人も不可能です」


日本人ではない?

それがなんか関係するのか?


「……サユリ。俺は艦長だ。クルーを守る義務がある。はっきり言え。何が目的で動いてる?事と次第じゃ協力しても良い」


良い、と言いながらも艦長の目はサユリを殺すつもりの目をしてる。


「ありがとうございます艦長。カリンさんにも話した事なのですが……」


「ん。ぶっちゃける。そろそろ限界」


カリンさんが「限界」と言ったその瞬間、艦長が腰の銃を抜き放ちサユリに突き付ける。

と同時にあたいは艦長とサユリに、エリーゼさんがあたいに、カリンさんが艦長に武器を突き付けていた。


「……サユリ、艦長。止めてくれ。恩人やダチにこんな事したくない……」


「グレッグ、止める」


「………俺はスピリットの中でも変わり者でな。多少の内緒話は良いが陰謀めいた事が大嫌いなんだ」


「知ってる。昔からそう」


サユリ以外全員がお互いに銃を突き付け一触即発だ。

そんな超緊張状態のなか、サユリはうっすらと微笑んでいる……サユリってこんなに肝が座ってたのか?


「ごめんケイト、艦長。別に陰謀でもなんでもないです艦長。私がある目的………はっきり言った方がいいですね。私の本当の目的はケイト、あなたを日本に招待する事だったの」


「あたいを?」


「そ。たまたまアメリカ留学してた私に日本のとある研究所からあなたと接触し、時期を見て日本に招待する様に頼まれてたの。まあ、その前からケイトとは付き合いがあったけどね?まあ、招待する前にミ=ゴ達に襲われちゃったんだけどね」


ミ=ゴ。

あたい達が死に物狂いで戦っていたSF小説に出てくる超科学を持った人型の虫みたいなヤツ。

ふと艦長とエリーゼさんを見ると、2人とも驚いた表情をしていた。


「………サユリさん……地球を今支配しているのって……」


「やはりミ=ゴ……か」


「ええ。運良く、なのかは分かりませんが、ケイトと一緒に地球を脱出した私は、救助されてから日本と連絡をどうやって取ろうかずっと考えてました。それに軍の公開されているデータベースに載っていた救助者の一部が知り合いなので密かに連絡取りましたけど、話し合いの結果、軍部に協力を仰ぐのはリスクがあり……」


「そりゃそうだ。相手がミ=ゴだってんなら軍は動かねぇどころか直ぐにでも地球圏の恒星である太陽を破壊して不可侵領域に指定する………クソッ!そりゃ軍には頼れねえ!」


艦長が銃をしまい、エリーゼさんもそれに倣うのだが、艦長は悔しそうに、エリーゼさんは呆然とした顔をしている。

あたいも銃をしまうが、地球で散々戦ったあの虫野郎を、艦長達が恐れているのが分かんねぇ。


「艦長、散々戦ったあたいが言うのもなんだが、アイツ等数が多いだけでそこまで強くはなかったぞ?」


「そりゃ多分……地球を制圧したのがろくに装備が整ってない海賊レベルだったからだ。今は地球の資源を使って偵察隊レベルになってるがな……」


は?海賊レベル?装備が整ってない?


「ど、どう言う事だ?サユリ?」


「そこは艦長達の方が詳しいんじゃないかな?ですよね?」


「あぁ……奴等は肉体的にはケイト達とそんなに変わらん。むしろ弱い。だが、恐ろしいのはその科学力と……数だ」


「科学力は分かるが数?」


「ああ。さっきも言ったが、今地球を占拠しているのははっきり言えば偵察隊レベルだ。本隊はその比じゃねぇ。以前、軍に在籍していた時にその本隊と全軍挙げて戦った事があった。結果は惨敗。そりゃそうだ、こっちの戦力は新兵含めてざっと5万、対するミ=ゴの本隊の総数は確認できただけで10億………もっといるかもしれねぇ………言い訳にしかならんが白兵戦闘なら俺等だって負けてねぇけど、事宇宙戦闘については技術力が違いすぎた。俺等ができた事は全軍挙げての撤退戦。直に戦った俺だけじゃねぇ。当時、非戦闘員だったエリーゼもあの無限に攻めてくる虫面に恐怖を覚えている」


艦長の言うのも分かるなー。

あたい等も地球で戦ってた時、昼夜問わずひっきりなしに押し寄せる虫どもにうんざりしたもんだ。


「そして奴等の技術力は俺等の技術の先を行っている。奴等が使う銃の威力は未だ再現出来ていないし、航宙技術に関しても俺達……いや、軍の方でも亜光速が限界だが、奴等は普通にワープしやがる」


「ワープ?あれって調べたけど、今の時代の軍でも理論上出来ても実現は不可能に近かったんじゃ?」


「そうだ。まだ俺等の種族でも宇宙の歪みを見つけて利用する事が出来てない」


あたい等の時代の技術から300年は先を行ってる艦長達の技術でも、ワープ航法やワームホールは無理か。

あたい等もアニメとかでしかないし、そもそも亜光速すら不可能だしな。


「やっぱ不可能か?ワームホールとか量子テレポートとか」


「目に見えない布地にどうやって針と糸を通すんだ?ヘタにあけて別次元の宇宙に行ったら帰ってこれんぞ?別次元ならまだしも、宇宙同士の隙間……何もない「無」の空間だったら目も当てれん。それに量子テレポートも比較的短い距離だけだ。艦丸ごとってのは出来なくもないが………」


え!量子テレポート出来んの!?


「量子テレポートが出来るのですか!?」


「サユリが食い付くとは。んー……出来るんだが、丁度いい小型化、つまり艦隊用に小型化が出来てないんだ。軍の方でも旗艦クラスっても分からんか、エンハンブレの数十倍のバカデカイ装置を使う。んで、莫大な経費を払って動かすから、それこそ大規模な作戦にしか使えん……ま、極端だが荷物ぐらいになら応用できなくはないから、軍で使ってる個人端末は荷物を量子化して収納出来るんだがな」


えっ!何それ!めっちゃ便利じゃん!!



――――――――――――――――――――

補足


ミ=ゴ

ミ=ゴとは、H.P.ラブクラフトの小説「闇に囁くもの」で登場した容姿は甲殻類風、性質は菌類風の宇宙人。体長は5フィート(約1.5m)ほど、薄桃色の甲殻類のような姿だが、性質としては菌類に近い生物である。

渦巻き状の楕円形の頭にはアンテナのような突起物が幾つか生え、鉤爪のついた手足を多数持ち、全ての足を使って歩行することも、一対の足のみで直立歩行することも出来る。背中には一対の蝙蝠のような翼を持つ(翼をもたない個体もいる)。

特徴としては


写真に写らず、死体は数時間で分解して消える。


エーテルをはじく翼で宇宙空間を生身で飛行する。


一種の冬眠状態になって生命活動を中断できる。


暗黒世界の出身であるために光を苦手としている。


等が挙げられる。

その見た目からケイト達は「虫」と呼び、地球を脱出するまで戦い続けた。

ケイト達地球人が戦えたのは、地球にやって来たミ=ゴ達が、グレッグの言う通りろくな装備をせずに襲ってきたからで、脱出直前では地球の資源を使い装備を整えていた。

それでも戦えたのは地球人の知恵と結束が高かった為と、ミ=ゴ自体が打たれ弱かった為である。



※ワープは説明できないけど量子テレポートは説明出来るのだ!


稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!

3000PV突破感謝なのだ!

少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!

そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!

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