協力要請
3-1 スピリット
あの後、諸々の手続きの為ファクトリーに足止めとなったあたいとサユリは、カリンオーナーのいるテチテットの店にやって来た。
「てー事でよう、テロリスト達の受け入れが終わるまではファクトリーに滞在する事になったんで」
「あらん、そちらも色々大変ねぇ?」
「ん。ファクトリー代表相手によくやった。あのドケチ相手に対して十分な戦果」
そなの?
テチテットさんが「そーねー」と体をくねらせる。
「ん~……今回はエンハンブレがほぼ単独でテロリストを押さえたじゃない?お店のお客様から聞いたんだけど、警備隊が機体を出すのも上は渋ってたみたいでね。あなた達がいなかったらファクトリーは大破してたかも。そうなったら被害額がえげつない事にもなってたでしょうからね、一定の謝礼金は出るはず…………だけど絶対自身が損をしないようにするはずよん?でもね?そんなドケチが「金のなる木」を手放して謝礼金を払う事はなかなか無いのよん」
「でも艦長曰く「謝礼は十分」らしいぜ?」
「技師達にかかる費用と謝礼金なら謝礼金の方が安く上がると判断。軍だとファクトリーの修繕費。雇うと修繕費と給金と開発費。なら謝礼金だけの方が長期的に見て儲かる」
「なるほど」
艦長がもし「謝礼金はいらない、引き取りもしない」と言った場合、ファクトリー側は軍に引き渡すか雇うかの二択で損しか無く、こっちが引き取らなければ損と考えたんだなー。
「ま、そこは「後で吠え面かけ」だ。それはそうとカリンの姐御」
「ん?」
「どっかにMA作れる工場持った商人とか知らねぇか?テロリスト達が作ったデータはファクトリーから謝礼金として売っぱらうけどさ、艦長含めあたい等技術班はその先、ファクトリーに渡す機体以上のモンを作る予定なんよ。その為にもテスト機作ったり、量産ライン作ったりしなきゃならなくてさー」
「フムフム」
「かといって謝礼金以上のモンはファクトリーには売る気無いって艦長は言ってるし、軍なんてもってのほかだしさ」
「いいよ」
「だよなー。基本あたいとサユリが案出してってなに?いいよ?」
「ウチがスポンサーになる。だからグレッグ連れてきて」
思わぬ返答に慌てて艦長とエリーゼさんを店に呼び出した。
「此処にいたのは知ってたんですが」
「ん。久しぶり」
「ハッ……すみません、ウチのクルーがお世話になります」
ん?なーんか艦長、緊張してる?
それにサユリがさっきからほわほわしてるしなんだこれ?
「それで……お話とは?」
「ウチがスポンサーになる」
「は?」
艦長が「えーと」と少し考える。
「………あっ、よろしいので?」
「データ見た。戦闘も。だから」
「……それだけでは無いでしょう?目的はやはり」
「ん」
よくこれで会話になるなー。
カリンの姐御は端的にしか話さないから、何を伝えたいかこっちが考えないと成立しないんだよな会話。
流石にあたいも分かんなくなってきたので、サユリに聞いてみる。
「なあ、これって何がどうなってんだ?」
「……え、あ、そ、それはね?カリンさんは目的があって、軍よりも上の技術を持った人達を以前から探してて、ウチがスポンサーを探してるのを知ったのと、前の戦闘と私達の機体データを見て、スポンサーになるって手を挙げてくれたんだよ」
まあ、それはなんとか分かるが。
「ではなく。何で艦長が緊張してんだって」
「忘れたの?艦長とカリンさんは軍にいる時に同じチームだったって。写真みたでしょ?こないだ」
あーそう言えば。
「サユリは知ってるみたいだな。そうだ。俺と彼女は同じチームでな。メンバーのクセは強かったがそれなりに有名な
「そうですよ。「千変万化」のグレッグと呼ばれて多くの兵達に人気だったんですよ」
何故か興奮気味に語るエリーゼさん。
一瞬、ほんとに一瞬だが目が乙女になった…気がした。
「野郎ばっかにだがな?」
「あら?私じゃ御不満ですか艦長?」
「おまっ、ファンの一人だったのかよ!いや不満は無いけどな?」
「などと満更でも無いグレッグ艦長だった」
「おい、解説すんな」
おっと。
「でもさ、「千変万化」ってなんだ?自称か?」
「な訳ねぇよ。勝手に付いた二つ名なんだが種族的なモンでな。色々できんだよ。潜入、隠密、変装に尾行、成り済ましからハゲデブのムカつく教官からアイドルに役者、保育士に幼稚園児に死にかけの寝たきり爺さん……そうそう、地球のサムライっての?
「いやまてー!!言ってる事が無茶苦茶だ!姿形どころか年齢まで無茶苦茶じゃねーか!それにニンジャ!?ニンジャナンデ!?コワイ!!」
思わず突っ込んだが、本当に無茶苦茶だ。
だが、そんなあたいを全員が不思議そうに見る……サユリまでも。
「……あぁ!ごめんケイト。話して無かったわ。艦長すみません、カリンさんから聞いた事をケイトに話すの忘れてました」
「あー……テロでごたついてたからな。仕方ないさ。えっとなケイト。俺の種族は「スピリット」って種族でな。基本的にこの姿なんだが……」
そう言うと艦長の姿が光の塊になり、うにょんとうねるとそこに立っていたのは……
「アイエェェェェェッ!ナンデ!ニンジャナンデ!!」
黒い装束を身に纏い、黒い頭巾で顔を隠した忍者だった。
「ドーモ、ケイト=サン、ハイクを詠め……ってな。んで……」
耐性の無いニュービーがニンジャを見た事で引き起こされる
「……おろ?」
「チームシンセン!?おまけにサムライ
てか、何で艦長、地球のアニメネタ知ってんだよ。
「流石アメリカ人ね。ノリが良い」
「アメリカ人関係無ぇよ!」
「ん。出来れば魔法ショタが良かった」
「なんだよ魔法ショタって!その一部にしか刺さらんパワーワードは!」
あたいが肩で息をしハーハー言ってるのをエリーゼさんがなだめる。
いや、分かってやってるんだがな?
「冗談はさておき、それが艦長の種族で?」
「おう。基本的に決まった姿を持たない種族でな。精神生命体ってヤツだ。地球のアニメとか宗教でもあるだろ?全にして個、個にして全って神様気取りのが。俺等の種族もそうなんだが、個の方が強い種族でな。他種族の職業とか見て種族全体で情報として共有してるんだ」
艦長が何時もの姿に戻る。
「全の部分はそれだけで、別に意思を統一とかはしてない……てか、してたが辞めた」
「何で?ある意味生物の最終進化点に思うんだが?」
「進化って言う点ではな。だがよ、これはある意味退化でもある。肉体を捨て意思統一で一つになったまでは良かった、良かった?んだが、他にも似た種族が居てな。同じ進化をした者達同士で食い合いが起きた。そりゃそうだ、似てるだけで別種族、どっちが正しいかで折り合う訳ねぇよ。言ってる事一緒だしよ。それに、これも別種族だったんだが、統一されてるはずの意識に運悪くエラー吐いた奴が出た種族が居てな。そのエラーで自殺したもんだから一気に広まって、その種族は絶滅したんよ」
「うわぁ……」
「壮絶……ですね」
そっか、右向け右だからエラーでもなんでもそれが決定されたらそうもなる…か。
「他にも他種族に対してミスが起きても、責任取らないしな?「自分達が正義!自分達に間違いはない!」ってな。んで、それ等を観察してた俺等種族は「これは進化でもなんでもない。傲慢、エゴが肥大しただけ、意味が全くない」と判断した………怖くなったんだな。そこで情報だけ共有して、個で生きるようになった。それが俺達「スピリット」だ」
――――――――――――――――――――
補足
スピリット以外の精神生命体
スピリットは進化の過程で肉体を捨て、精神だけの存在となった者達の事で、現在確認できているだけでも数えるほどしか居ない。
その中で、一種族のみが人類(平和的知的生命体)に対して協力(共存)している。
それがグレッグの種族であり、グレッグ自身が語った通り統一意識を辞めた種族である。
それ以外の精神生命体は未だ統一意識を続けており、その大半は観測者や神を名乗り傍観者に徹している。
傍観者、観測者の中には対話能力すら失くしある種のエネルギー体になり、生物の進化を促したり、善き進化を促す為(当事者にとって良いか悪いかは関係無い)に力を貸したりしている。
彼等の大半は偽善的(本人達はそう思ってない)であり、「良かれと思って」行動している。
グレッグ達の種族はそれを良しとせず、同じ進化を促すならば、共に生きる道を選んでいる。
これは他のスピリット達に対する牽制であり、抑制でもある。
※アイエェェェェ!!
稚拙な作品をお読み下さり有難う御座いますなのだ!
3000PV突破感謝なのだ!
少しでも笑ってもらえたら大変嬉しいのだ!
そしてより多くの方に読んで頂けるように☆とかツッコミとか下さるともっと嬉しいのだ!!
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